うちの県は
ノリが悪いことで
悪名が
たかい。
どのくらい
かというと
昔、堀内孝雄さんが
コンサートで
うちに
来てくれたとき
その前座で
田中ヨシタケさんが
歌うことに
なっていた。
ところが
会場は
堀内さん目当ての
一定年齢層以上の
お客さんが
多かったせいも
あるだろうが
田中さんが
いくら
歌っても
その合間に
トークをくりひろげても
会場に
目立った
反応がなかった。
そして
その
あまりの
無反応ぶりに
悲鳴を
あげたヨシタケさんが
「みんなオラのこと
しってるべ!
いいとも(タモさんの笑っていいとも)
みるべ(ヨシタケさんもでていた。)」
と叫ぶほど
であった。
ところで…
そんなノリの悪いわが県の
さかのぼること
わが高校時代、
『太平洋ひとりぼっち』
で知られる
ヨットマン・堀江謙一さんが
がっこうに
講演にきてくれた
ことがある。
たぶん
推測するに
次のヨット旅の
資金を貯めるための
講演活動を
行っていたの
だろう。
そして
何を隠そう
ボクは
その講演が決まる
よりも前から
堀江さんの
著書を
もっていたくらい
彼のことは
リスペクトしていた。
なので
内心
楽しみにしていた
講演でもあったのだ。
彼は
ヨットで
ひとり海を行く
苦労ばなしを
朴訥とした語り口で
いろいろと
話してくれた。
そして
「これで終わります。」
と講演の最後を
しめくくった。
普通なら
ここで
拍手がおきる
タイミングである。
が。
なぜか
そのとき
誰も拍手
しなかった。
教師も
生徒も
そして
そのなかのひとり
である
このぼくも
ふくめて。
けっして
話がどうだったとか
感銘をうけなかった
とか
そういうことでなく
ただ単純に
観衆のなか
先陣をきって
自分が
行動を起こすのが
こっぱずかしかった
からだ。
田舎には
そういう
はずかしがりや
さんな
空気が
場を
支配する
ことがある。
すくなくとも
むかしは
あった。
いまは
しらん。
そして
おれは
何十年たった今でも
このときのことを
たまに
思いだすことがあり
誰一人
拍手をしなくても
まっさきに
この俺が
先陣をきって
熱心な拍手を
すれば
よかったと
いまだに
歯がみして
夢にみる。
後悔って
そういうもんだ。
それ自体は
ほんとに
とるにたらない
ことなのに
何十年たっても
とげのように
心に
刺さりつづけて
いる。