6.回復期  リハビリのコツ ST編

 

認知や記憶や判断、あるいは社会性に関する色々なこと。

それに顔の表情のマヒを担当してくれるST編です。

 

わたし(47)は脳卒中を発症して、2日後に親しいひとから電話がありました。

そのときにわたしの普段とは違う異変を感じた理由が、電話ごしの、まるで酒に酔ったような

ろれつの回らない喋り方だったそうです。

それまではそこまで自覚がありませんでしたが、まひが顔や舌にでていたものと思われます。

 

最初のリハビリはですから顔や舌の運動になります。

そしてこれを知っていれば、まだリハビリが始まっていない

早い段階でも、STのリハビリだけはさきに体の負担なくできます。

 

やりかたはまずマヒがわの顔の体操、マヒをすると顔の筋肉がさがってきますので

口を「いー」して口角をあげます。

そしてそれを10秒間キープしたり、10回上げたり。

このとき、あごをできるだけスライドさせないようにも言われました。

でないと、口を動かしているつもりが、あごだけ動かしていたとなってしまいます。

鏡をみながら、ほんとに上がっているか確認をしながら。

 

それから、「あいうえお」と発音どおりの口のかたちで、声をあげて、口の体操をする。

舌も出したりひっこめたり、回したり、突き出したまま上下左右に動かしたりします。

目玉も円を描くようにぐるぐると回します。

時計回りに。そして反時計回りに。

 

顔のまひがとれるのはわたしは早かったので、次はパズルやら、絵の間違い探し

数独などをやりました。そしてこういうのは宿題みたいにしてプリントにしてくれますから、食堂テーブル

でもできます。OTの先生も同様の字の練習のプリントをだしてくれました。

 

もらわなくても、差し入れてもらうのも可能です。

あたまの体操になるような、最初は簡単なもので。

 

また、食事のときですが、自分の順番がくるには時間がかかります。こういった場合でも、

プリントがあれば手持無沙汰にならず、しながら待てて、重宝でした。

 

それと脳の、相乗効果です。

STの授業では回復度合いを患者本人にも実感させるためでしょうか。

毎日時間を計りながら問題を解いて行くのですが、このとき解くスピードがあがっているのを

感じました。数独でもヒントをもらって解いていた問題がすらすらと解ける時期があって。

もちろん、わざと途中に簡単な問題をはさんだりで、達成感の演出はあったようです。

しかしそれとは違う原因で脳の処理速度があがっていました。

このときは洗濯バサミの訓練を、部屋でくりかえし実習していました。

それを看護婦さんに告げると、手の訓練の効果が、STの方にもあらわれてきたのかもという話でした。

 

ですからPT、OT、STは独立しているリハビリとは考えず、こんな子供の遊びのようなことでも

他の分野にも相乗効果が期待できるかもと考えると、問題を解くのにも身が入ります。

 

 

こういうのいい

 

 

字に関してです。さいしょはほんとにみみずが這ったような、なさけなくなる字しか書けないです。

枠の中にも収まりきらず書くスピードもおそい。

およそ使い物にはならないのではないかというレベルなのですが、それでもあきらめずに書く。

手本をよくみて線の引き方や角度などをそっくり再現するつもりで。

というのは、今やっている課題は字を書く練習ですが、それは表面の話で。

じつはマヒをした手をまたもとどおりにコントロールできるようにするのが、真の目的です。

ですから、OTの先生には字をかくときはきちんとした平らな台の上でやるようにもいわれました。

変な姿勢で変な力がかかってしまうと、これも訓練にならないからです。

 

わたしはいまはますめのなかにちゃんと汚い字が書けます。

汚いのはもともと。

 

お箸に関してですが。

回復がすすむとスプーンからバネを使った箸。やがて普通の箸になります。

箸も一足飛びではなく、左手用の箸からですが、わたしは内緒でひっくりかえして右手に持ち替えて使っていました。

ほんとはだめです。

先生が気を付けていたのは、無理に右手で箸を使って、そのために筋肉痛などがマヒの手に出て

それで回復が遅れることです。

だから、これは自己責任です。まねをしてはいけない。

ただ「日常でもまひがわの手をできるだけ参加させて使ってください」とはよく言われていました。

顔を洗う時。服にそでを通す時。

動きがないなりにマヒの手も参加させるのが訓練になると。

ですので考え方としては合っていると思います。

ただリスクはある。そのリスクは自分で引き受けます。

わたしはリスクがあっても、回復に重きをおきたいので。

 

 

つづきます。