神戸から大阪へ帰ろうと薄暗い夜道を歩いてる最中に後ろからチャリに乗ったおっちゃんに声をかけられた。

 

「すいません。どうか、飲み物を買って頂けないでしょうか。朝から何も飲んでいなくて、炭酸を飲ませて貰えないですか」

 

 何で炭酸?とツッコミを入れたかったけど、そのおっちゃんの身なりからして明らかにホームレスだと悟った。朝から色んな人に物乞いをして断られ、シカトされやっとの思いで僕にたどり着いたのだ。

普通の人なら確かにあまり関わりたくないだろうが、僕は好奇心が強い性格なので、ちょっと関わってみようと思い二つ返事で

 

「いいよ。飲みのもの買ってあげる。あそこにコンビニあるから一緒に行こう」

 

 その時のおっちゃんの顔がしんどい顔から安堵の表情に変化したのがすごく印象に残った。おっちゃんの飲みたい炭酸を購入しコンビニを出て凄く感謝されたのだが、急におっちゃんが僕に土下座をしてきたのだ。たかが炭酸ぐらいで土下座までするのかと僕は驚いたのだけどどうやらそういう事ではなくて、追加でのお願いをされた。

 

「どうかこの私に2000円を頂けないでしょうか。お願いします。本当にお願いします」

 

 土下座というのは僕の人生の中で友達との遊びの中でであったり、テレビのお笑いやコントの土下座しか見たことがなく、見ず知らずの人間にマジの土下座をされるのは初めての経験だった。僕は土下座する奴はプライドのないやつだと思っていた時期もあったけど、窮地に追い込まれた男の本気の土下座というのはこんなにも心が打たれるものなのかと胸が熱くなった。

 

「分かったよ。おっちゃん顔上げて!2000円はあげるよ」

 

 僕はおっちゃんに2000円とタバコをプレゼントした。でも何となくその時に思ったことがある。2000円なんて1週間も経てば無くなる、おっちゃんはこれからも物乞いを繰り返して生きるのだろうか?僕の場合はまだ若く働くことは可能だから2000円を取り返すことは容易いことだけど、おっちゃんは働きたくても年齢や体力の観点から雇ってくれる所は恐らくないだろう。同時にもしかしたら、自分が想像している以上に生きることは非常に大変で難しいことなのかもしれないとも考えたし、この少しの出来事の間に色んなことを考えた。これが今まで見えなかった社会の闇なのかも知れない。

 

 生きていて当たり前だと思っていたけど、その当たり前が出来ない人がいて、自分よりも人生経験浅い若造に土下座をして必死に生きようとする人間を目の前にした時に僕はどう生きるべきか本気で考えなければいけないのだと思った。