会いたかった
生まれて初めて
「どうしようもない悲しみ」というものを味わった
電車は
ただただ前へ進んでゆく
不規則なリズムが心地良く
目を閉じた
ウォークマンから流れてくる
彼の歌声は
私を
悲しみの海へ追い遣る
車窓の隙間から吹き込む風が
涙を乾かしてゆく
電車は
ただただ前へ進んでゆく
真夜中の訪問者
誰かが私を呼んでいる
目が覚めた
やすいっぽい蛍光灯の光が目に染み
・
・
・
意識を今に戻し (今思えば戻りきってはなかったのだろうか)
付けたままのその電気を消し
窓を開ける
ひら ひら ひらひら ひら ひら
風と共に頬に触れる
一枚の
桜の花びら
手にとり 眺めていると、
―それは暗闇の中で白く光っていたのだ
自分の存在を主張するように― 何故か優しい気持ちになる