「デジタル遺品」がトラブルの原因に?若い人も今すぐに整理しよう! | 日本のお姉さん

「デジタル遺品」がトラブルの原因に?若い人も今すぐに整理しよう!

2回目の掲載かも?

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「デジタル遺品」がトラブルの原因に?若い人も今すぐに整理しよう!<第1回>

2016-07-05

 

高齢者のパソコン・インターネット利用率が年々上昇しており、本人が亡くなったときに、PCのハードディスクや各種記録メディア、金融取引で必要なログインパスワードの管理、さらにはクラウド上に残された「デジタル遺品」をめぐってトラブルが増加している。ワイドショーの話題に挙がる様なテーマかもしれないが、実は筆者の相談者においてもご家族の急死に伴いデジタル遺品の取り扱いで問題になったケースがあった。コミュニケーションツールとしてデジタルデータやクラウドサービスに慣れ親しんでいる現役のビジネスマンや若年層にとって、これはけっして他人事ではない。不慮の事故で若くして亡くなることも想定し、デジタル遺品を身近な問題として考えてみよう。

 

そもそもデジタル遺品とは?

 

PCやスマートフォンの中には、写真・画像や動画などのデジタルデータを始め、SNSのアカウント、各種パスワード、さらにはネット銀行、証券会社に預けている預金や有価証券など、個人に関する極めて重要なプライバシーと資産がたくさん詰まっている。

 

そこで、万一自分自身が急死したときを想定して、残された家族が困らない様、どんな情報がデジタルデータとして保存・管理されているのかを、概要くらいは普段から家族へ知らせておきたい。生前には家族に知られたくないが、死後には知らせるべき情報であれば、少なくともそれらの存在や内容を書き記したノート等を保管しておき、そのことを配偶者や子へ必ず伝えておくのがいいだろう。

 

金融取引と趣味趣向に関するデジタル情報がトラブルのもとに!?

 

個人が開設しているウェブサイトやブログあるいは、日常的に利用しているフェイスブックページやインスタグラム等のクラウドサービスは、本人が急死した後、たとえそのままの状態で放置されたとしても大した問題は起きないかもしれない。情報の更新が止まるだけで、有料サービスを利用していなければ課金され続けることもないからだ。でも、自分自身の死後もフェイスブックのページ等がそのまま公開され続けるのは、亡くなった本人にとっても家族にとってもけっして気持ちの良いものではない。死後にトラブルを引き起こすことはないとしても、それらのアカウントはやはり適切に削除する必要はあるだろう。

 

デジタル遺品に関するトラブルで多いのは、金融資産すなわち『お金関係』のものと、故人にとって誰にも知られたくない『趣味趣向』のものの2つだ。

 

とりわけお金関係の場合は、残された遺族が遺産分割の際、より深刻な事態に陥りやすいので、争いやトラブルが起きないよう、生前からネット銀行や証券会社との取引の存在や保有資産の状況が家族にも容易に確認できる様、情報をまとめて整理しておこう。

 

銀行預金において通帳と印鑑が取引に必要だった時代は、それらの保管場所を配偶者や同居家族が知っていれば、入出金などの取引内容と残高は万一の際、通帳記帳をすれば家族でも容易に確認できる。しかし、近年は通帳を発行しないネット専業銀行が少なくなく、取引内容はもとより銀行口座の存在を本人しか知らないケースも多い。夫が急死した後、夫のPCのインターネットブラウザのお気に入りに登録されているネット銀行サイトやスマートフォンのアプリを見つけて初めて、夫の隠し銀行口座(へそくり口座?)の存在を知ることもあるのだ。

 

たとえ大した預金残高がなくても、相続財産には違いなく、口座名義人である夫の死亡を一旦銀行に伝えると、口座は即座に凍結され、妻といえども自由にお金を引き出すことができなくなる。まとまった残高のある夫名義の預金口座から、葬式等の費用を支払うため資金を引き出そうとすれば、通常は亡くなった夫(被相続人)の戸籍謄本はもとより、法定相続人全員の同意を得た遺産分割協議書(相続人全員の印鑑証明書や戸籍謄本を添付)等の必要書類を提出しなければ、預金の引き出しや口座解約等の手続きをすることは出来ない。

 

いずれにしても、店舗のある一般の銀行の口座ならともかく、ネット専業銀行の口座を持っているのなら、口座を保有していることと、その銀行のウェブサイトへログインするためのIDとパスワード(少なくともそれらを書き記したノートの保管場所)を生前に家族に知らせておこう。そうすることで、早くから相続財産として把握され、後々相続人たちが遺産分割で揉める様なことを防げるかもしれない。

 

先物取引による多額の損失が遺族を苦しめることも

 

株式をはじめとする有価証券のネット取引で厄介なのは、先物取引や外国為替証拠金取引(いわゆるFX取引)だ。通常の株式や投資信託への投資であれば、証券会社から取引報告や計算書等の書類が定期的に自宅へ郵送されるので、生前に取引の存在を家族が知ることかできる。でも、FXや先物取引の場合、取引はもちろんのこと、事務連絡をはじめ取引報告書の発行は全てメールやネット上で完結してしまうケースが多いので、家族が取引の存在や実態を生前に知らないことが多い。

 

リスクの高いFXや先物取引では、夫の死後もそのまま取引の持ち高・ポジションが継続されて、相場の急変動により一気に数百万円~1千万円を超える評価損失を抱え、場合によっては強制ロスカットによる多額の損失確定や追加保証金の入金を余儀なくされる事態も起こりうる。夫の死後しばらく経って、取引業者からの連絡により初めて遺族が先物取引の存在と多額の損失が発生したことを知る羽目になるのだ。

 

常日頃から、自分自身の行っている投資や金融資産の全てを家族に開示しておくことに躊躇することはあるだろうが、取引している業者名と取引に必要なID・パスワードのリストくらいは必ず作成しプリントアウトしておく。つまり、PC内だけでそれらのパスワード類を管理するのは十分ではない。そして、家族に伝えておきたい大切な情報を記したノート(いわゆるエンディングノート)と一緒に保管しておけば、自分自身の死後、家族が金融取引の存在をすぐに知ることができ、多額の損失を被る等のトラブルを防げるかもしれない。

 

次回コラム記事では、デジタル遺産で問題になり得る『趣味趣向』に関するデジタルデータの取扱について取り上げるとともに、デジタル遺産に対する具体的な対処法について紹介したいと思う。

完山 芳男【かんやま よしお】

http://www.morningstar.co.jp/event/fp/2016/fp160705.html

「デジタル遺品」がトラブルの原因に?若い人も今すぐに整理しよう!<第2回>

 

2016-08-05

前回コラムでは、「デジタル遺品とは何か?」そして「デジタル遺品において問題になるものは、主に『お金関係』のものと『趣味趣向』のものの2つである」ことを説明した。そして『お金関係』のものの中で特に問題となり易い、家族が知らない金融取引と多額の損失発生の事例についても挙げた。

 

画像・動画データにも注意が必要!

 

さて、デジタル遺品でトラブルになりうるもので、もう一つの『趣味趣向』に関するデジタルデータには別の注意が必要である。多くの男性なら思い当たるフシがあるのではないだろうか?あえて婉曲的にいえば、PCやスマートフォンの中に保存されている、妻や家族には見られたくない画像や動画データのことである。若い独身男性であれば、彼女はもちろんのこと両親にも見らたくないだろうし、所帯を持っている男性であれば、妻はもちろんのこと子にみられることも憚れる類のデジタルデータのはずだ。まあ健全な成人男性である限り、軽度な内容のものであれば自分自身の死後家族にみられたとしても「個人的な趣味・嗜好の範囲内の卑猥な画像」ということで許されることだろう。でも、これがもし過去に交際した異性との写真であったり、不倫相手と一緒に写っている写真や男女間の生々しい表現を含んだメールやLINEのやり取りだったりすると大きな問題となるだろう。死後に自分自身の名誉を大きく傷つけるだけでなく、家族を苦しめることにもなりかねない。

 

誰しも突然亡くなる可能性がる・・・だから今から準備をしておこう

 

現在どれだけ健康的に暮らしている人でも、「突然亡くなる可能性」が常に考えておきたい。不慮の交通事故や突然死などは、まったく予期することはできず、年齢や環境、健康状態にかかわらず誰にでも起こり得る。デジタル技術が普及した現代社会だからこそ、そうした突然の死が、デジタル遺品の問題を引き起こすことになるのだ。特に、現役バリバリで働いている30歳~50歳代の人が、死への準備がまったく整っていない状態で突然亡くなることになれば、あらたな予期せぬ問題が遺族を困らせることになることを知っておこう。

 

自分自身の死後、SNSのアカウントを閉鎖することや他人に見られたくないデジタルデータを消去する方法はいくつか考えられる。今すぐにできる準備と対策を以下に挙げてみたので参考にしてもらいたい。エンディングノートに記載した内容のみで、遺族がデジタル遺品を容易かつ適切に把握でき、それら処分できる場合もあるだろうが、たいていの人であれば、以下の対策方法をいくつか組み合わせることが有効だと思われる。保有しているデジタルデータの内容・種類に応じて、今すぐできることから早速準備を始めて対処されることをお勧めする。

 

・エンディングノート(※1)の中に、インターネット上の持ち物リスト(※2)を記載しておき、必要に応じて内容を随時更新する。当然、家族にはエンディングノートの存在と保管場所を知らせておく。

※1 エンディングノートとは、人生の終盤に起こりうる万一の事態に備えて、治療や介護、葬儀などについての自分の希望や、家族への伝言、連絡すべき知人のリストなどを記しておくノートのことを指す。遺言状と異なり、法的な拘束力はないので気楽にいつでも書き直しや追加記入ができる。

※2 インターネット上の持ち物リストには、ブログ・SNS・メール等のアカウントや、ネット取引をしている金融機関の口座と取引用IDとパスワードといった全ての情報を纏めて記載しておく。それらの情報をPC内に保存しているだけだと、万一の際、遺族がID・パスワード等を確認することが難しくなる。

・信頼できる友人に、自分の死後にSNSアカウントの削除やデジタル遺品の管理・処分を生前に依頼する。

・行政書士等の専門家と「死後事務委任契約」を締結して、SNSやメール等のアカウントの削除とともに友人らに死亡を知らせる通知の送信を依頼する。当然費用はかかるが、IT関連のサービスだけなら、数万円程度で済む場合が多い。

・ヤフーのサービス利用者なら「Yahoo!エンディング」、グーグルアカウントの保有者なら「無効化管理ツール」をあらかじめ設定しておけば、自分の死後のアカウントの管理方法について削除を含めて事前に設定ができる。フェイスブックの利用者が亡くなった場合は、アカウントが「追悼アカウント」に変更され、生前に追悼アカウント管理人を指定することができる。

・「僕が死んだら…」という無料のソフトウェア・ツールを活用する。(http://bokugashindara.softonic.jp/)

このツールを利用することで、不慮の事故などで自分自身が亡くなったとき、PCに保存されている他人に絶対見られたくない情報(画像や動画を含むあらゆるファイル)が、誰にも気づかれないうちに完全削除される。削除したいフォルダやファイルを指定することで、死後に遺族が自分のPCのデスクトップに作成された「僕が死んだら…」ショートカットアイコンをクリックするだけで、指定したすべてのフォルダとファイルが完全に消去される。

尚、このソフトウェアをインストールして必要な設定をした際、自分自身が誤ってショートカットアイコンをクリックした場合でも、削除されたデジタルデータは復元できない。また自分の死後、遺族にこのショートカットをクリックさせることを促すため、ショートカットに「家族へ、○○○より」などと必ずクリックして開きたくなるような名前をつけておくことが効果的である。

私たちは誰もが突然亡くなってしまう可能性を背負って生きており、もし自分自信がその悲劇に見舞われたら、身の回りにあるデジタルデータがどうなるかをイメージしてみて欲しい。そして「家族に伝えなければならない情報」と「家族に見てもらいたくはない情報」をしっかり区別して、それらの管理と処分方法について普段から注意深く考え、今から適切な対応をとっておくことが大切なのである。

 

完山 芳男【かんやま よしお】

 

経歴:

慶応義塾大学商学部卒業。大手メーカーや複数の外資系企業の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレー校へ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。その後、2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。

 

保有資格:

米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)

 

FP専門分野:

ライフプランニング・金融資産設計・生命保険見直し・相続対策・不動産有効活用

 

活動歴:

これまでの相談件数は延べ1,000件以上。 公的機関や金融機関でのライフプラン・資産運用セミナーに関するセミナー講師を年間100件ほど務める。

 

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