中台安定維持へ第一投 翁明賢淡江大学国際事務戦略研究所長に聞く 上
中台安定維持へ第一投 翁明賢淡江大学国際事務戦略研究所長に聞く 上
2016年08月13日 20時38分44秒
テーマ:翁明賢淡江大学国際事務戦略研究所長に聞く
淡江大学国際事務戦略研究所の翁明賢所長に聞く 上
中台安定維持へ第一投 蔡英文総統
台湾の核武装はあり得ず
日本版台湾関係法に期待
米国の台湾政策は不変
台湾では5月20日、民進党の蔡英文総統が就任し、国民党の馬英九前政権時代に推進した対中傾斜に歯止めをかけ、中台関係の現状維持を求めることで台湾政局がどう変化していくのか、新政権に求められる課題は何かを中台関係に詳しい台湾の私立大学の名門、淡江大学の翁明賢国際事務戦略研究所長に聞いた。(聞き手・深川耕治、写真も)
☆ ~ ★ ~ ☆ ~ ★ ~ ☆ ~ ★ ~ ☆ ~ ★
――対中融和に傾斜した国民党から8年ぶりに政権を奪還した民進党を与党とする蔡英文総統は就任演説で中台が一体不可分の領土だとする「一つの中国」の原則に関する合意内容について「1992年の中台窓口機関による会談は若干の共通認識に達した歴史的事実を尊重する」と述べるに留まった。その真意は何か。
「共通認識」が「一つの中国」で合意したかどうかついては、あえて言及を避け、間接的に中国の主張する「一つの中国」が考え方として存在していることは理解しているとの立場を取った。現状維持からの変化を求めない米国に対して、蔡氏が訪米した際、あらかじめ同じ内容を米高官に伝えている。「一つの中国」を認めさせようとする中国に対して微妙な言い回しで中台の現状維持を継続したい一定配慮であり、中国への政治的メッセージだ。
――米国大統領選で民主党のヒラリー・クリントン候補、共和党のドナルド・トランプ候補のいずれかが当選した場合、米国の台湾政策はどう変化していくか。
現状ではドナルド・トランプ候補が当選する確率は低いだろう。かりに当選したとしても、日本や韓国に対する安全保障問題について過激な発言をした後に微妙に変化させたりしている。台湾に対しては、トランプ氏と言えども台湾関係法による中国の軍事的脅威から台湾を守る法的堅持は不変だ。ヒラリー・クリントン候補が当選した場合、もともと、対中政策に対しては厳しい(親台湾派の)立場なので、台湾政策に大きな変化はない。どちらの候補が当選しても、台湾関係法を堅持し、米国の豚肉や農産物などを台湾に輸入する動きが加速するだろう。
――トランプ候補が当選した場合、台湾も核武装することを進めるような動きはないか。
蒋経国時代、核開発する動きがあったが、米国は阻止した。中国も望んでいない。以来、核武装はありえないはずだ。核武装はたとえ日本や韓国に求めたとしても台湾には求めない。
――台湾関係法は台湾にとって安全保障上、台湾海峡危機を防止するためにきわめて重要な意味を持つが、日本版「台湾関係法」の立法化の声もある。どう見るか。
蔡英文政権は台湾周辺の第一列島線(九州を起点に沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島にいたるライン)、第二列島線(伊豆諸島を起点に小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至るライン)での防衛で日本や韓国、フィリピンなど近隣諸国の協力が重要であることを打ち出している。軍事面では、中国の軍事拡張著しい中、台湾の国防費はほぼ横ばいで米国が介在しても中国優位が進む。安倍晋三政権が親台湾の立場であることから日本の政府次第で大きく進む可能性もあると期待している。
――野党に下野した国民党は3月末、洪秀柱元立法院副院長が1919年の結党以来初の女性の党主席に選出された。党内情勢から見て、再び政権奪還に向けて党勢挽回できるか。
女性初の国民党主席となった洪氏は、外省人(戦後、台湾に住み始めた子孫)グループで馬英九前政権主流派よりも中台統一寄りの非主流派。惨敗した今回の選挙後、いち早く立候補した立場であり、党内求心力は、さほどない。立法院(国会=113議席)のうち、国民党は35議席しかないし、地方議会では民進党が与党となり、議長、副議長が辛うじて国民党という党勢のところが多い。党勢が回復できるかどうかは、党内の結束次第だ。ただし、国民党内も本省人(戦前から台湾に住んでいる子孫)による本土派が増える中、党内基盤が弱い洪氏がリーダーとなった国民党が中台統一派である新党のように急速に路線転換することはありえないだろう。むしろ、民進党の暴走を監視する役割を持つようになる。単独過半数を占めて与党となった民進党も、常に民意に添った改革、変革をしていかないと国民党と同じ運命をたどる。
【翁明賢(おう・みんけん)】台湾のカトリック系大学の輔仁大学ドイツ文学学士を経て淡江大学欧州研究所修士、独ケルン大学で政治学博士取得。台湾戦略研究学会理事長、国家安全会議諮問委員などを歴任し、現職。専門は中国の国家安全戦略と政策など。
以下、ビューポイント欄 で閲覧へ
http://ameblo.jp/fukachina/entry-12190051321.html
香港誌「前哨」の劉達文編集長(下) 香港「自治」の行方 連載第10回
2016年08月28日 20時51分15秒NEW !
テーマ:香港「自治」の行方 識者に聞く
香港「自治」の行方 連載第10回
香港誌「前哨」の劉達文編集長に聞く(下)
ひまわり学連との交流、結束も
親中派も分裂、行政長官に批判も
――香港の雨傘運動を主導した新党「香港衆志(デモシスト)」の羅冠聡党主席や同党の周永康副秘書長は6月1日、台湾入りし、台湾のひまわり学生運動を行った台湾与党勢力である新政党「時代力量」の林昶佐(フレディ・リム)立法委員と討論して活発な交流をしている。今後、香港と台湾の若者の交流は香港政局にも影響を与えるか。
中国共産党の戦略が明確化したことで、台湾と香港の学生たちの連携交流が進む現象を生んでいる。原因は中国政府の台湾政策、香港政策にある。なぜ、英国植民地時代の香港でこんな現象が起こらなかったのか。香港返還当初もこんな動きはなかった。なぜ、この時期に台湾と香港の学生たちが連携する現象が起こっているか、中国政府はその原因を真摯に突き詰めるべきだ。一国二制度が香港の様々な矛盾を生み、台湾が受け入れる素地を得られていない。香港を一国二制度のモデルケースとして示すどころか、逆に独立を主張する動きが顕在化している矛盾に陥っている。台湾が蒋介石時代以降、台湾独立の動きが出てきたように香港も一国二制度の魅力が失われると、台湾は一国二制度をさらに評価せず、受け入れなくなる。とくに天安門事件の再評価をせず、民主自由を否定し続けている。中国共産党はこの点でも自己改善、刷新すべきだ。
――中国本土の禁書を扱う香港の銅鑼湾(コーズウェイベイ)書店関係者が中国本土で相次いで拘束され、林栄基店長が約半年ぶりに香港に戻って7月1日の民主化デモに参加する意向だったが、身の安全が不安との理由で参加を中止した。一国二制度の現状をどう見るか。
事情は非常に複雑であり、一国二制度の悲劇だ。一国二制度を崩壊させる危険性があり、中国政府の圧力で服従させていくことになる。ただ、林氏を個人的に弾圧することはないだろう。銅鑼湾書店の事件は中国政府にとっても非常に重たい事件だ。香港の反応はさらに深刻なので中国政府はその複雑な処理に追われている。
――同書店の大株主である李波氏は昨年10月、渡航したタイで失踪後、中国当局の取り調べを受け、3月24日、香港に突然帰還した後、捜査協力のために自らの意志で中国本土に渡ったのであり、拉致ではないので香港警察の捜査は必要ないと述べ、同25日には中国本土に戻ったままだ。
李波氏は非常に頭が良く、風向きを読める人物。中国政府も同事件について裁判の証人として李氏を使っている。
――なぜ、中国政府はこんな強硬措置に出たのか。
中国も香港も香港返還以前は一国二制度を経験したことがない。1997年の香港返還前は、香港が文化レベルでも政治形態でも先進国レベルだったが、中国は政治・経済双方でまだ開発途上国レベルだった。例えれば、小学校の校長が大学を経営するような状況だった。当然、最初からうまくいくはずがない。
――銅鑼湾書店の関係者5人が中国当局に拘束され、取り締まりを受けた背景には、同書店が出版した書籍の中に習近平中国国家主席の非常にプライベートな内容が中国当局の逆鱗に触れたとの見方もあるが、真相はどうか。
銅鑼湾書店の書籍は非常に政治的に敏感な問題が書かれている。事実を正確に書いているか、微妙なフィクションか、見分けにくい。従来、中国政府は、言論上の問題に関しては時間をかけながら裁判で決着させてきたが、この事件に関しては党中央が掲載内容に激怒し、従来の対処を度外視して政治権力を使ってしまった。親族のマネーロンダリングに関する疑惑などは対応が慣れているが、激怒したのは習近平氏の愛人疑惑に関する内容。習氏が福建省でアモイ副市長、福州市党委書記、福建省長などを歴任中、愛人がいたとの疑惑で、信憑性は高くないと個人的には思っている。(聞き手・深川耕治、写真も=連載終わり)
【劉達文(リュウ・ダーウェン)】1952年、中国広東省東莞生まれ。東莞華僑中学から1978年、恵陽師範科学学校(現・恵州大学)に入学し、中文系(国文科)、マスコミ学科を専攻。1981年1月香港へ移住。同年3月、月刊誌「争鳴」で勤務。現在、香港月刊誌「前哨」の編集長。ペンネームは蘇立文、暁沖、羅汝佳など。
【記者の眼】劉達文編集長は非常に気さくな人。「日本のメデイアでは共同通信が昔の写真のことで取材に来たことがあるなあ」と言っていた。日ごろは家庭菜園で瓜や野菜などを作って農作業するのが楽しい日課となっている。猫も飼っていて、とても可愛がっている。農作物を育てることが好きで愛猫家でもある。
以下、詳細はビューポイント欄 で閲覧へ
http://ameblo.jp/fukachina/entry-12190061535.html