中国海軍の潜水艦能力は瞠目に値するレベルに向上している。 | 日本のお姉さん

中国海軍の潜水艦能力は瞠目に値するレベルに向上している。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)7月11日(月曜日)
通算第4959号 <前日発行>

「海中ドローンを開発し、南シナ海で中国潜水艦を駆逐する」(カーター)
中国海軍は「南シナ海に『海の万里の長城』を築く」とか。
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7月9日、中国は海軍艦船を百隻も動員し、南シナ海で実弾演習を展開した。
この作戦には呉勝利以下、四名の大将が参加し、演習を作戦指導し、その軍事力の偉容を内外に見せつけた。まさに「軍国主義ファシスト国家」=中国の晴れ舞台だった。

同時に中国はアセアン分断を積極的に工作し、中国よりのラオス、カンボジアに加えて、タイとブルネイを黙らせ、マレーシアは発言を控えるようになった。
ベトナムとフィリピンの孤立化を公然と狙い、ついで新政権が誕生したフィリピンに政治工作の的を絞り込んだ。

ドウテルテ大統領はアキノ前政権の展開した対中強硬路線を突然、引っ込め、領海紛争は話し合いで望み、資源開発は共同で行うべきだと、急激なトーンダウンをおこなった。マニアの華僑らが背後で動いたとされる。
ハーグの国際裁判所が中国の違反行為を明示する直前、国際世論を封じ込めようと脅しである。

一方、オバマ政権のアジアシフト、ピボット戦略を受けて、ようやく米国は予算化に動き出した。米国のアシュ・カーター国防長官は「17年度予算で80億ドルを投入し、海中で潜水艦を索敵し、攻撃できる海中ドローンを開発する」と発言している(16年四月、NY)。その二ヶ月前にハリー・ハリス太平洋司令官は「米海軍は必要とされる潜水艦を現在保有していない」と述べている。

中国は70隻の潜水艦を保有するが、このうち16隻が核兵器を搭載しているとペンタゴンペーパーは推定している。
埋め立て工事を終えたファイアリークロス岩礁を拠点に中国海軍はこれまで以上に潜水艦を南シナ海の海中を遊弋させることが出来る。
米軍の空母は付近の海域を航行するにしても、潜水艦からの「空母キラー」というミサイルを警戒しなければならない。

米海軍は75隻の原子力潜水艦を保有するとはいえ、アジア太平洋に投入されているのは僅か四隻のロスアンジェルツ級潜水艦で、グアムを拠点としている。

中国の潜水艦艦隊を率いるのはタカ派の孫建国・総督(64歳)で来年度の人事で呉勝利の後釜となる。毎年シンガポールで開催される「シャングリラ対話」などで、つねに強硬意見を吐き、米国に楯をついてきた人物で「ミスター潜水艦」の異名をとる。
孫建国は1985年に就航した「長征3」の初代艦長として中国海軍始まって以来の「90日間潜水」に成功した。


▼飛躍的に性能アップさせた中国海軍の潜水艦戦力

嘗てはディーゼル駆動潜水艦しかなかった旧時代とはことなり、中国海軍の潜水艦能力は瞠目に値するレベルに向上している。

2006年、米空母キティホークの直ぐ傍まで中国の潜水艦が近づいたという「事件」があった。
2015年10月には空母ロナルドレーガンとの至近距離に中国の潜水艦が接近していた。日米は、衝撃を受けた。

これらの事件は2001年四月、海南島上空で米軍の偵察飛行EP3型機に体当たりし、米軍機が海南島に強制着陸させられた事件に匹敵する衝撃を米国に与えた。

他方、パラセル群島(西砂)のウッディ岩礁を埋立てた中国は、地対空ミサイルをすでに実戦配備した上、殲10,同11型ジェット戦争機を配備し、あるいは間もなく7400キロ射程のJL2型ICBMを配備すると推測されている。

米国の新世代原潜の開発は遅れており、実戦配備は早くても2020年、急速な中国海軍の能力向上、戦闘力倍増により、空母や駆逐艦の「自由航行作戦」はやがて実施さえ難しい状況に陥る。
南シナ海で、米中の潜水艦戦争の勃発が近い?
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1438回】
――「此際、南洋道とか何とか立派なる・・・美名に變ずることを」(中橋2)
中橋徳五郎「台灣視察談」(安達朔壽 明治三十二年)


警察力を充実させ、住民に「生命財産の安固なるを得る」ことを明らかにすることができるなら、「吾々の想像し及ばざる如き」に「臺灣の土人は其無學無教育」ではあるが、「其勤勉に富む點に至りては、恐らくは世界有数の人民であるから」、安心して仕事に励み、「農業商業工業共に自然に發達するは疑を容れざる所である」と中橋は語る。

そこで中橋は施政の急務として警察力の充実を挙げ、次に交通問題に話題を転じたが、ここでも「兎角吾々は、内地に於て極めて善良なる天然の良港を多數に有する島嶼の上に居住する眼を以て臺灣の港灣問題を觀察するが故」の勘違いを説く。確かに日本に較べれば劣っているが、諸外国の港湾事情をみるにつけ、台湾が劣っているわけではない。だから主な「港灣に相當の修築を加へ南北貫通の鉄道にして成功する暁には、臺中の一部と臺南の全部の産物は之を打狗に集め、臺中の北部と臺北の産物は之を淡水基隆に集むることが出来るから」、そうなったら「臺灣交通機關の設備は略ぼ成就した」といえる。専門家によれは港湾修築にしても南北貫通鉄道にしても多額の予算を必要とはしないとのこと。たとえば淀川改修と関連鉄道施設建設に較べれば「臺灣の築港費も亦安價ではありませんか」。

台湾帰りの日本人は台湾経営の難しさ、自然環境の劣悪さを盛んに口にするが、「火事場騒ぎの手傳人が火事の消江たる跡で手柄話をすると同じ」と、中橋は釘を刺す。自分の目、自分の足で歩けということだろうが、どうも日本人は、この種の「火事場騒ぎの手傳人」のホラ話に弱いようだ。まあ昨今のコメンテーターなどといった人種は「火事場騒ぎの手傳人」に近いように思える。

次に台湾経営全般について、いくつかの提案をしている。
第一が「臺灣の落武者」などといった表現にみられるような暗いイメージを一新するためにも、「南洋道とか何とか立派なる(中略)美名に變ずることを必要と思う」。

第二が「支那の役人の如く日本の裁判官は賄賂を取らない」ということから、住民の間に「裁判だけは多少信用を得たる様な傾きがある」。裁判所に対する信用は行政官への信用に繋がり、「施政の上よりして誠に結構の事である」が、裁判は日本語に加え、「土語」に「支那の官話」が必要となり複雑極まりない。そこで言語問題の解決が急務となる。

第三が「臺灣の商業のこと」。じつは「内地の商人は三萬の内地人」を、「土人の商人は三百萬の土人」を相手にして商売をしているだけで、相互交流がない点が問題だ。その「主たる原因は土人商人が内地商人を信用しないということである」。当初は交流があったようだが、内地商人が「或は持逃げをなし、或は損失の生じたる塲合に土人に多額の損失を負擔せしめたる等よりして全く向ふの信用を害したからである」。信用回復も急務に違いない。

そこで第四になるが、中橋は「内地商人が臺灣に於て後來非常に發達するといふ事は今の有様では殆ど六かしい」。そのわけは、「内地人は、軍人官吏は勿論各會社の支店若くは一個人の使用人が、給料の外に多額の手當を要」するなど「經費の高きが爲支那商人と競爭することが出來なくなるだろう」からだ。「多額の手當」の再考も急務となるようだ。

第五は「女子の渡航の事」である。明治31(1898)年の春より「素人女子の渡航の非常に盛んにな」り、役人にしても商人にしても家族同伴の渡航も多くみられるようになったことから、それまでの「非常に壞亂して惡病も亦餘程蔓延し」ていた情況が格段に好転したゆえに、「次第に好結果を生ずることゝ信じます」と。

かくて中橋は、「臺灣の商工業に付ては、其關係東京横濱にあらずして大阪神戸に在るの事実を巨細に陳述したいけれども餘りに長くなつた」からと、談話を打ち切った。
以後の大阪神戸と「臺灣の商工業」については、後日の考察に委ねたい。
《QED》

(読者の声1)三島由紀夫研究会事務局からのお知らせです。7月の会員例会は下記の通りです。

日時 7月22日(金)18時半~(18時開場)
場所 ホテルサンルート高田馬場大会議室
講師 荒岩宏奨(あらいわ ひろまさ)氏、展転社編集長
演題 「保田與重郎と日本浪曼派」
(講師略歴 昭和56年山口県生まれ。広島大学教育学部卒、プログラマー、雑誌編集者を経て現在展転社編集長。昨年の弊会における「蓮田善明と三島由紀夫」に続く日本浪曼派シリーズ第二弾です)
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『アジアインフラ投資銀行の凄惨な末路』(PHP研究所、999円)
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『日本と世界を動かす悪の「孫子」』(ビジネス社。1188円)
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<宮崎正弘の対談シリーズ>
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宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店、1080円)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 西部 遭『日米安保五十年』(海竜社)
宮崎正弘 v 佐藤 優『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/