「領土問題が解決できるプーチン大統領」は幻想だ | 日本のお姉さん

「領土問題が解決できるプーチン大統領」は幻想だ

「領土問題が解決できるプーチン大統領」は幻想だ
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袴田 茂樹

≪支持率が上昇したクリミア併合≫

日露首脳会談が終わった。その問題点と今後の日露関係について考えたい。

食事を含めて3時間余りの事実上の「公式」会談が行われた。

安倍晋三首相が3回続けて-9月の訪問が実現すると4回続けて-訪露することになる。
この一方的「ロシア詣で」は異常で、国際的には対等の主権国家関係とは見られないだろう。

日露で最大の懸案事項である平和条約問題を首相はプーチン大統領と「2人で解決する」と述べ、35分の2人だけの会談も持たれた。
そして首相は「今までの発想にとらわれない新アプローチ」で交渉を進めることを提案、大統領も同意したとされ、「突破口を開く手応え」があったと述べた。

日本からは8項目の経済その他の対露協力提案がなされ、大統領は歓迎した。
2人の会談内容は公表されていないが、本当に平和条約交渉進展の可能性が生まれるのか。


「2人で解決」の考えは正しい。というのは領土問題解決という難しい課題は、結局は両国首脳の政治決断にかかっており、そのためには(1)両国に強力な政権(2)両首脳間の信頼関係(3)解決が両国にメリット-という3条件が必要だからだ。

ではそれは存在するか。


(1)について。一見、安倍政権もプーチン政権も強力に見える。
問題はプーチン氏が本当に領土問題で日本に譲歩しようとし、またその力があるのか、ということだ。

数年前、ロシアでは大規模な反プーチンデモが各地で起き、支持率は大幅に低下した。その後も経済・国民生活は悪化しているが、近年、彼の支持率は90%近くに急上昇した。

理由は「クリミアを併合した」すなわち彼は「失った領土を取り戻した」偉大な大統領ということで、国民および彼の支持基盤であるシロビキ(軍・治安関係者)の大国主義的ナショナリズムを大いに満足させたからだ。となると領土問題での譲歩は、とくに2018年の大統領選挙を考える
と、まず考えられないだろう。

≪領土問題の幕引き望む露大統領≫

今年3月、筆者は訪露して、大統領府・露外務省関係者、国際問題や日本問題専門家たちと話し合ったが、大統領が領土問題で日本に譲歩すると考えている者は一人もいなかった。必要なのは露側の言う延々たる話し合いの継続ではなく大統領の決断だけだが、その雰囲気はない。

プーチン氏は05年9月に「南クリール(北方四島)は第2次世界大戦の結果ロシア領となり、国際法的にも認められている」と述べ、12年3月、「ヒキワケ」発言をしたときも「日ソ共同宣言で歯舞、色丹を日本に引き渡しても、主権はロシアに残す」ことを示唆した。

今では、「引き渡し」は「返還」ではないと公然と述べられている。
先月、ラブロフ外相も「日本が第二次世界大戦の結果を受け入れないと、われわれは(交渉で)一歩も進むことはできない」と述べた。
これはプーチン氏の考えを受けたものだ。

≪領土問題の幕引き望む露大統領≫

今年3月、筆者は訪露して、大統領府・露外務省関係者、国際問題や日本問題専門家たちと話し合ったが、大統領が領土問題で日本に譲歩すると考えている者は一人もいなかった。

必要なのは露側の言う延々たる話し合いの継続ではなく大統領の決断だけだが、その雰囲気はない。

プーチン氏は05年9月に「南クリール(北方四島)は第2次世界大戦の結果ロシア領となり、国際法的にも認められている」と述べ、12年3月、「ヒキワケ」発言をしたときも「日ソ共同宣言で歯舞、色丹を日本に引き渡しても、主権はロシアに残す」ことを示唆した。

今では、「引き渡し」は「返還」ではないと公然と述べられている。
先月、ラブロフ外相も「日本が第二次世界大戦の結果を受け入れないと、われわれは(交渉で)一歩も進むことはできない」と述べた。
これはプーチン氏の考えを受けたものだ

さらにロシア側は最近しばしば、領土問題は存在しない、平和条約交渉は行うが領土問題と関係ない、とも述べている。
これらを総合的に考えると「北方領土問題を解決できる強力なプーチン大統領」というのは幻想である。
彼は問題の「幕引き」を強く望んでいるが、それは「解決」ではない。

(2)の日露首脳間の個人的信頼関係は、皮肉だが最大の同盟国のオバマ米大統領より強いだろう。

≪経済協力の先行は逆効果だ≫

(3)に関しては、ロシアは今、北方領土の経済開発と軍事力強化を精力的に進めている。つまり、その戦略的・軍事的意味をより重視するようになり、ロシア化も進展させているのだ。

さらに、北極海航路の開発にも熱心で、それが実現すると、北方領土は経済的にもロシアに欠かせない重要な中継地となる。

この状況下で北方領土の返還がロシアにとってもメリットになると理解させる方法は筆者には思
いつかない。
中露戦争でも始まれば別かもしれないが。

さらにロシア側は最近しばしば、領土問題は存在しない、平和条約交渉は行うが領土問題と関係ない、とも述べている。

これらを総合的に考えると「北方領土問題を解決できる強力なプーチン大統領」というのは幻想である。
彼は問題の「幕引き」を強く望んでいるが、それは「解決」ではない。


北方領土返還に悲観的な見通しを述べた。

この問題は国家主権侵害の問題であり、主権侵害に対しては、それは絶対に認めないということを言動で明確に示し続けること自体が、国際関係では最も重要なのだ。

首相は「新アプローチ」に言及したとき、「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するという基本方針は変わらない」とも述べている。
つまり領土交渉のわが国の根幹姿勢は変わらない、ということだ。

では新しい発想、アプローチとは何なのか。未公表だが考えられるのは、8項目の協力提案以外にも経済協力などを大幅に進め、また国際政治面での協力関係も深めること。

さらに当面は領土返還要求よりも、これら協力関係強化を優先させるということだろうか。

日本の基本的立場は、経済面などの協力と領土交渉を並行して進展させることだ。
日本が領土返還を求め必死に経済協力などを進めると、ロシア側は、領土問題を永遠に残すことにメリットを感じるのではないか。(新袴田茂樹 (はかまだ しげき・潟県立大学教授)

産経ニュース【正論】2016.5.
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プーチンは、馬の前に人参をずっと「ぶらさげて」馬を上手く使おうとしているんです。
人参に向かって走っているフリをしてプーチンを馬にとっていい位置に連れていけるのか。
日本にそんな外交能力があればいいけど。