映画「ブレードランナー」の悪役を思い出した。
太田述正コラム#8136(2016.1.5)
<映画評論46:007 スペクター(その1)>(2016.4.21公開)
1 始めに
映画を、昨日、鑑賞した順番は、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、
「007 スペクター」だったのですが、より面白かった後者から取り上げることに
しました。
豊洲のららぽーと内のシネコンに毎年1回、シネクラブで年1回提供される白
地鑑賞券2枚を使って、映画2本を鑑賞しに行き始めてから、誰かと一緒に行っ
た記憶がないことから、定かに記憶はないものの、これは、私が「独身」生活に
入ってからの「慣習」だということになります。
その際、概ね、毎回、1本目と2本目の間に、フードコートでセルフサービス
形式の夕食を食べてきたところ、今回、フードコートが廃止され、その跡が分割
されて、いくつかの単体レストランが、その分、増えていました。
昨4日はまだ正月のうちであり、仕事始めがまだの企業も少なくないはずなの
に、シネコンも各レストランも余り混んでいないことが気になりました。
築地市場が今年豊洲に移転すれば、状況が変わるかもしれませんが・・。
さて、「スターウォーズ」と「007」は、どちらも、大当たりしてきたシリー
ズものであり、しかも、どちらも、過去のシリーズのオマージュないし総集、と
いう趣があるという共通点があるのですが、どうして、「007」の方が「より面
白かった」かについては、思弁的・・ちと表現がオーバーか・・な説明は後に回
し、情緒的な説明を先にしておきましょう。
2 情緒的に面白かった理由
まず、ロケーションです。
メキシコシティから始まり、ロンドンへ、東京、ローマ、オーストリア・アル
プス、タンジール/砂漠(モロッコ)、そしてロンドンに戻り、と進行して話が
完結します。
メキシコシティは、スタンフォード大留学中の1975年に、日本人の友人2名と
私の愛車のフォード・ムスタングで陸路訪れており、途中、(全く街路灯のない
メキシコの田舎道で、これは、ほぼ不可抗力だったと思いますが、)夜道で右路
肩を歩いていて衝突する直前まで気付かなかった牛を跳ね飛ばして車のボンネッ
トと右側ボディをへこませるとともに血潮と肉片まみれにし、その翌々日だった
かには、(タイヤがすり減っていてアスファルトが雨後で泥まみれだったため
に)スリップして横向きになり、後続車に右側ボディに衝突され、車がオシャカ
になったとパニックで思い込み、裁判所で簡易裁判を受けて罰金を支払った後、
それでもめげずにバスに乗り換えて目的地のメキシコシティまで行って観光を行
い、帰途、現場に立ち寄り、警察が保管していたムスタングに試にキーを差し込
んで回したら始動したので、右半分が中破し、窓ガラスもなく横殴りの風が吹き
込む状態のこの車をはるばるスタンフォード大まで運転して帰りました。
(修理費が、買った金額と同じくらいかかりました。中古ですから安いですけ
どね。)
ですから、メキシコシティでの冒頭の大活劇シーンを見ていて、この私の若気
の至りの「大活劇」を思い出した、というわけです。
ロンドンは、私1988年に1年間滞在した場所であり、映画の最後に活劇の舞台
となるのが、その、シティー・ホール、テームズ川、ウェストミンスター橋、ラ
ンベス橋、ボクスホール・クロス、コヴェントガーデン、トラファルガー広場、
であり、
https://en.wikipedia.org/wiki/Spectre_(2015_film):A
このうち1988年に存在していなかった、冒頭のシティー・ホール
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB_(%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3)
を除き、私は、全て訪れたり通ったりしたことがあるので、懐かしいなんてもん
じゃありません。
東京は説明の要はありませんね。
ローマは、過去3回訪問していますし、ローマのシーンが、一部、チャーチル
の生誕地であるブレナム宮殿
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%8A%E3%83%A0%E5%AE
%AE%E6%AE%BF
・・ロンドン滞在中に、相当遠方ですが、訪れたことがあります・・で代替され
ていた(A)ので、これらについても思い出に耽りました。
そして、オーストリア・アルプスならぬフランス・アルプスは、やはりロンド
ン滞在中にスキーに一週間行きましたし、モロッコの砂漠ならぬエジプトの砂漠
は、同じサハラ砂漠であり、私の小学生時代の環境そのものですからね。
次に、この映画のヒロインです。
かつて、『永遠の0』を鑑賞した時に井上真央にはまっちゃった時以来です
が、この『007』では、レア・セドゥ
https://en.wikipedia.org/wiki/L%C3%A9a_Seydoux:B
にはまっちゃいました。
彼女には、2013年のカンヌ映画祭で、監督に加えて、異例にも、もう一人の主
演女優とともにパルム・ドールが授与されています(B)が、不思議な魅力を湛
えた女優です。
『007』では、彼女が、マドレーヌ・スワンという、オックスフォード/ソルボ
ンヌ卒(映画)の才媛を演じているのですが、彼女の役名は私の第一の私小説の
ヒロインの名前を、そして、その役の上での才媛ぶりと精神の不安定さ・・調べ
たら、実際の彼女も精神が不安定なところがある(B)ようですね・・は私の第
三の私小説のヒロインを彷彿とさせるものがあって、胸がキュンとしたのです。
そう言われても、読者の方々にはさっぱり訳が分からないでしょうが、
『007』が私にとって「情緒的に面白かった理由」を語る際には、このことを省
くわけにはいかないので、ご理解のほどを。
(続く)
◎防衛省OB太田述正メルマガ のバックナンバーはこちら
⇒ http://archives.mag2.com/0000101909/index.html?l=fox08dd07c
~~~~~~~~~
太田氏の思い出は、他の人とはスケールが違うな。
エジプトの沙漠、イギリス、フランス、メキシコシティーなど、いろんな場所に行っているから、ちょうど、行ったことがある場所ばかり映画に出てきたから興味深かったんだね。
古い映画「ブレードランナー」の悪役が、ハリソン・フォードが演じる主人公に向かって、火星での経験などを語って聞かせる場面を思い出したのだ。
いろんな思い出があるのに、それらを他の人と共有できないままに全部心の中に秘めて孤独の内に死んでいくのが寂しいのだと悪役は言った。何の為に生まれたのか、何のために生きているのか。それを追求した結果、その悪役はハリソン・フォードが演じる警官(殺し屋?)から逃げているのだ。
何のために生きているのか。それを考えることができるだけで、もはや人造人間というよりも、人間そのものではないか。
太田氏も今回のメルマガは人間らしくてなかなか良い。「007 スペクター」は、007の意外な過去があぶりだされてきて、ちょっと神経質な恋人までできて、人間味が溢れる場面が盛りだくさん。世界統一政府を勝手に作り出している悪いヤツが出てくるんだけど、その悪いヤツのひねくれ具合も、悲しいぐらいに人間らしいのだ。
世界の全てを把握し、自由に資金を操り、自分の存在価値を貶める人間を抹殺することだけが夢だなんて、本当に悲しい。あれっ?ネタばれ?スマン。
<映画評論46:007 スペクター(その1)>(2016.4.21公開)
1 始めに
映画を、昨日、鑑賞した順番は、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、
「007 スペクター」だったのですが、より面白かった後者から取り上げることに
しました。
豊洲のららぽーと内のシネコンに毎年1回、シネクラブで年1回提供される白
地鑑賞券2枚を使って、映画2本を鑑賞しに行き始めてから、誰かと一緒に行っ
た記憶がないことから、定かに記憶はないものの、これは、私が「独身」生活に
入ってからの「慣習」だということになります。
その際、概ね、毎回、1本目と2本目の間に、フードコートでセルフサービス
形式の夕食を食べてきたところ、今回、フードコートが廃止され、その跡が分割
されて、いくつかの単体レストランが、その分、増えていました。
昨4日はまだ正月のうちであり、仕事始めがまだの企業も少なくないはずなの
に、シネコンも各レストランも余り混んでいないことが気になりました。
築地市場が今年豊洲に移転すれば、状況が変わるかもしれませんが・・。
さて、「スターウォーズ」と「007」は、どちらも、大当たりしてきたシリー
ズものであり、しかも、どちらも、過去のシリーズのオマージュないし総集、と
いう趣があるという共通点があるのですが、どうして、「007」の方が「より面
白かった」かについては、思弁的・・ちと表現がオーバーか・・な説明は後に回
し、情緒的な説明を先にしておきましょう。
2 情緒的に面白かった理由
まず、ロケーションです。
メキシコシティから始まり、ロンドンへ、東京、ローマ、オーストリア・アル
プス、タンジール/砂漠(モロッコ)、そしてロンドンに戻り、と進行して話が
完結します。
メキシコシティは、スタンフォード大留学中の1975年に、日本人の友人2名と
私の愛車のフォード・ムスタングで陸路訪れており、途中、(全く街路灯のない
メキシコの田舎道で、これは、ほぼ不可抗力だったと思いますが、)夜道で右路
肩を歩いていて衝突する直前まで気付かなかった牛を跳ね飛ばして車のボンネッ
トと右側ボディをへこませるとともに血潮と肉片まみれにし、その翌々日だった
かには、(タイヤがすり減っていてアスファルトが雨後で泥まみれだったため
に)スリップして横向きになり、後続車に右側ボディに衝突され、車がオシャカ
になったとパニックで思い込み、裁判所で簡易裁判を受けて罰金を支払った後、
それでもめげずにバスに乗り換えて目的地のメキシコシティまで行って観光を行
い、帰途、現場に立ち寄り、警察が保管していたムスタングに試にキーを差し込
んで回したら始動したので、右半分が中破し、窓ガラスもなく横殴りの風が吹き
込む状態のこの車をはるばるスタンフォード大まで運転して帰りました。
(修理費が、買った金額と同じくらいかかりました。中古ですから安いですけ
どね。)
ですから、メキシコシティでの冒頭の大活劇シーンを見ていて、この私の若気
の至りの「大活劇」を思い出した、というわけです。
ロンドンは、私1988年に1年間滞在した場所であり、映画の最後に活劇の舞台
となるのが、その、シティー・ホール、テームズ川、ウェストミンスター橋、ラ
ンベス橋、ボクスホール・クロス、コヴェントガーデン、トラファルガー広場、
であり、
https://en.wikipedia.org/wiki/Spectre_(2015_film):A
このうち1988年に存在していなかった、冒頭のシティー・ホール
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB_(%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3)
を除き、私は、全て訪れたり通ったりしたことがあるので、懐かしいなんてもん
じゃありません。
東京は説明の要はありませんね。
ローマは、過去3回訪問していますし、ローマのシーンが、一部、チャーチル
の生誕地であるブレナム宮殿
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%8A%E3%83%A0%E5%AE
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・・ロンドン滞在中に、相当遠方ですが、訪れたことがあります・・で代替され
ていた(A)ので、これらについても思い出に耽りました。
そして、オーストリア・アルプスならぬフランス・アルプスは、やはりロンド
ン滞在中にスキーに一週間行きましたし、モロッコの砂漠ならぬエジプトの砂漠
は、同じサハラ砂漠であり、私の小学生時代の環境そのものですからね。
次に、この映画のヒロインです。
かつて、『永遠の0』を鑑賞した時に井上真央にはまっちゃった時以来です
が、この『007』では、レア・セドゥ
https://en.wikipedia.org/wiki/L%C3%A9a_Seydoux:B
にはまっちゃいました。
彼女には、2013年のカンヌ映画祭で、監督に加えて、異例にも、もう一人の主
演女優とともにパルム・ドールが授与されています(B)が、不思議な魅力を湛
えた女優です。
『007』では、彼女が、マドレーヌ・スワンという、オックスフォード/ソルボ
ンヌ卒(映画)の才媛を演じているのですが、彼女の役名は私の第一の私小説の
ヒロインの名前を、そして、その役の上での才媛ぶりと精神の不安定さ・・調べ
たら、実際の彼女も精神が不安定なところがある(B)ようですね・・は私の第
三の私小説のヒロインを彷彿とさせるものがあって、胸がキュンとしたのです。
そう言われても、読者の方々にはさっぱり訳が分からないでしょうが、
『007』が私にとって「情緒的に面白かった理由」を語る際には、このことを省
くわけにはいかないので、ご理解のほどを。
(続く)
◎防衛省OB太田述正メルマガ のバックナンバーはこちら
⇒ http://archives.mag2.com/0000101909/index.html?l=fox08dd07c
~~~~~~~~~
太田氏の思い出は、他の人とはスケールが違うな。
エジプトの沙漠、イギリス、フランス、メキシコシティーなど、いろんな場所に行っているから、ちょうど、行ったことがある場所ばかり映画に出てきたから興味深かったんだね。
古い映画「ブレードランナー」の悪役が、ハリソン・フォードが演じる主人公に向かって、火星での経験などを語って聞かせる場面を思い出したのだ。
いろんな思い出があるのに、それらを他の人と共有できないままに全部心の中に秘めて孤独の内に死んでいくのが寂しいのだと悪役は言った。何の為に生まれたのか、何のために生きているのか。それを追求した結果、その悪役はハリソン・フォードが演じる警官(殺し屋?)から逃げているのだ。
何のために生きているのか。それを考えることができるだけで、もはや人造人間というよりも、人間そのものではないか。
太田氏も今回のメルマガは人間らしくてなかなか良い。「007 スペクター」は、007の意外な過去があぶりだされてきて、ちょっと神経質な恋人までできて、人間味が溢れる場面が盛りだくさん。世界統一政府を勝手に作り出している悪いヤツが出てくるんだけど、その悪いヤツのひねくれ具合も、悲しいぐらいに人間らしいのだ。
世界の全てを把握し、自由に資金を操り、自分の存在価値を貶める人間を抹殺することだけが夢だなんて、本当に悲しい。あれっ?ネタばれ?スマン。