福島の野生動物の被ばくは、チェルノブイリに比べ相当低く、動物の死亡は確認されていない | 日本のお姉さん

福島の野生動物の被ばくは、チェルノブイリに比べ相当低く、動物の死亡は確認されていない

原発事故と野生動物:福島で爆発的に増加する汚染イノシシ、チェルノブイリで今も残る影響
更新日:2016年4月17日

原発事故後、福島でイノシシの数が爆発的に増加しており、農作物などを荒らすなどの被害が深刻になっている。人がいなくなった避難指示区域で、繁殖が進んでいると見られており、地元は対策に頭を悩ませている。海外メディアは、同じく原発事故が起こったチェルノブイリの例をあげ、事故がもたらした野生動物への影響を報じている。

◆イノシシ大繁殖で被害も甚大
ワシントン・ポスト紙(WP)は、2011年の原発事故以来、福島県のイノシシによる農作物への被害は2倍に増加し、2014年度は金額にして9800万円を超えたという読売新聞の数字を紹介し、被害の深刻さを伝えている。

町をうろつくイノシシに攻撃され負傷したという事件も、ここ数年増加しており、イノシシの増加は、市民の安全にも深刻な脅威となっている。県はイノシシの駆除をハンターに奨励してきており、14年度に駆除されたイノシシの数は11年度の4倍以上に増え、約1万3000頭に達したという。

◆食用は無理。多すぎて処分できない
ところが、駆除したイノシシをめぐり、問題が起こっている。ロシアのニュース専門局RT(電子版) は、日本ではイノシシの肉は人気があるが、放射能に汚染された避難区域の
植物、木の実、小動物を食べているイノシシたちからは、基準の300倍という高いレベルのセシウム137が検出されており、食用には向かないと説明する。結局、廃棄するしかないのが実情だ。

RTによると、二本松市では死骸を埋めるため、各600頭を収容できる3ヶ所のスペースを確保したものの、ほぼ満杯になっているという。WPは、仕方なく自宅の庭に埋めたハンターもいたが、犬に掘り起こされるなどして、処分に困っていると報じている。

最良の処理方法は焼却してしまうことだが、放射性物質の拡散を防ぐ機能を持つ、特別な施設が必要だとWPは指摘する。相馬市の焼却場はその一つだが、イノシシ1頭の重さは100キロ近くにもなり、1日に3頭の処理が限度で、解決には程遠いと同紙は説明し、農民たちにとっては、イノシシの害がまさに経済的サバイバルの問題に発展していると述べている。

◆野生動物の敵は放射能より人間
フィナンシャル・タイムズ紙は、1986年にチェルノブイリの原発事故を経験した、ベラルーシとウクライナの立ち入り禁止区域について報じている。科学雑誌『Current Biology』に発表された研究によれば、かつ
て10万人以上が暮らしていた4200平方キロメートルのエリアには、イノシシ、シカ、オオカミやクマから、小動物や鳥まで、様々な動物が生息しており、いずれも事故直後には個体数は減少したものの、現在では事故前を大きく上回る数が確認されているという。

この結果に対し、研究を率いたポーツマス大学のジム・スミス氏は、「放射能が野生動物に良いということではなく、狩猟、農耕といった人間の営みのほうが動物にもっと悪影響を与えるということだ」と述べ、人がいなくなることによる恩恵のほうが、放射能による害よりも大きいとした。もっとも、最新の調査では、立ち入り禁止区域における動物への放射能の目に見える影響は確認されていないとのことだ。これは福島の場合でも同じで、研究に参加した福島大学環境放射能研究所のトム・ヒルトン氏は、福島の野生動物の被ばくは、チェルノブイリに比べ相当低く、動物の死亡は確認されていないと述べている(FT)。

◆欧州に残るチェルノブイリの被害
一方、英テレグラフ紙は、ドイツのイノシシに関し、2014年に気になるニュースを伝えてる。同紙によれば、ドイツのザクセン地方で検査されたイノシシの3頭に1頭が食用に適さない高い放射能レベルを示したらしい。ザクセン地方はチェルノブイリから1100キロほど離れているが、雨風によって土壌の放射能汚染がもたらされたようだ。イノシシたちが好んで食べるきのこ類は、人間の食用には適さないとされている。

放射能に汚染されたイノシシは売買できないため、廃棄用の補償金は出るが、イノシシを売ることで得る利益までは補填されず、仕留めたハンターたちは迷惑顔だ。事故から28年経った今も汚染は続いており、今後50年は影響が残る、とドイツの専門家は指摘している(テレグラフ紙)。

※本文中「平成14年度」は「2014年度」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。(4/18)
(山川真智子)
http://newsphere.jp/national/20160417-1/

立ち入り禁止区域でも撮影された“事故の爪痕” 原発事故を描いた映画『家路』、海外も注目
更新日:2014年3月8日

立ち入り禁止区域でも撮影された“事故の爪痕” 原発事故を描いた映画『家路』、海外も注目

2011年の東日本大震災で引き起こされた原発事故から3年を経て、福島を舞台にした映画『家路』が全国で公開中だ。ひとつの家族のストーリーを通じ、福島の現状を伝えようとするこの作品に、海外メディアが注目する。

【あまりにリアルな背景】
『家路』は、福島の事故で住み慣れた家と土地を残して避難し、狭い仮設住宅に暮らしながら故郷へ戻る日を待ちわびている、ある農家の一家を描いている。2月には、ベルリン映画祭でも上映された。

ロイターはこの映画の背景を「あまりにリアル」と表現。実際、放射線量が高いため、政府によって一時立ち入り禁止とされたエリアで撮影されたシーンが、実際にいくつか使用されたという。

【空っぽの町と仮設のコントラスト】
ロイターは、日本国内で事故後停止している原発を再稼働させるかどうかという議論の中、久保田直監督は、ヒューマン・ストーリーを伝えることを選択したとし、監督が立ち入り禁止区域と仮設住宅のシーンを対照的に撮影していると報じている。

立ち入り禁止区域では、放置された牛が歩き回り、誰もいない通りには雑草が生い茂る。監督は、空っぽになった町を、「すべてが時間の中で凍ってしまった」と表現し、「美しいのに誰も住めない。ある意味、脅かすような何かがある」と述べたという。

その一方で、一列に並んだ窮屈な仮設住宅には、以前は広い家に暮らしていた家族が住んでいる。スカイニュースによれば、監督は「この状況が私たちの心から次第に消えていくことを止めたかった」と述べ、作品は、「(原発問題に)何らかの答えを提示するものではなく、時間を超えた家族の物語だ」と語った。

【原発問題の扱いはソフトに】
ロイターは、「立ち入り禁止区域にカメラを入れるのは、事故の爪痕を見せること」、「久保田監督は実は反原発なのではと思う」という映画評論家、前田有一氏のコメントを紹介し、原発問題の扱いの難しさについて論じている。

日本では、原発問題に過敏に反応することを避ける風潮があり、映画製作者が、「ソフトに足を踏み入れる」一番の理由は、映画の興行収入が減っていることに加え、政治的に一線を越えた重すぎる映画は嫌われるということだ。

福島を扱う上では、2012年の映画『希望の国』の製作の際に、園子温監督も同様のジレンマに直面したという。園監督は、「出資者に映画が原子力についてのものだと言ったとたん、タブーすぎると言われた」と言う。結局、映画の設定を架空の場所と不特定の未来としたことで問題を回避し、継ぎ接ぎするように資金を集めて乗り切った。

また、スカイニュースによれば、『家路』に出演した俳優、松山ケンイチも「映画は原子力に関して肯定も否定もしていない」と述べ、個人としても、映画に出演したことで原子力の是非を考えたかどうかはコメントすべきではないと語った。

『家路』の予告編はこちら

原発に「ふるさと」を奪われて~福島県飯舘村・酪農家の叫び[amazon]

(Newsphere編集部)
http://newsphere.jp/entertainment/20140308-1/