世界で高まる核テロの危険性、日本の原発の対策は十分か? 外と中からの攻撃への備え | 日本のお姉さん

世界で高まる核テロの危険性、日本の原発の対策は十分か? 外と中からの攻撃への備え

世界で高まる核テロの危険性、日本の原発の対策は十分か? 外と中からの攻撃への備え
更新日:2016年4月13日

欧州でISなどによるテロ攻撃が相次いて起きているが、今もっとも懸念されているのが、核テロだ。3月に起きたブリュッセルのテロのもともとの標的は原発だった可能性も報じられ、各国で原発の警備や労働者の身辺調査が強化されている。ところが、日本では全くと言っていいほど対策が取られていないと海外メディアが指摘している。

◆ますます現実味を帯びる核テロ
米原子力専門家、ジョー・チリンチオーネ氏は、ISテロリストによるブリュッセルの爆破事件が、もともとは地下鉄や空港を標的にしたものではなく、原発を狙っていたのではないかというニュースに多くの専門家が戦慄を覚えた、と述べる(CNN)。

核テロが起きる日は、我々が思うより近づいていると述べる同氏は、テロリストによって、(1)核兵器が盗み出され、「007」の映画のように脅迫材料に使われる、(2)核兵器製造の材料が盗まれ、それを使用した爆弾で都市が攻撃される、(3)セシウムやストロンチウムのような放射性物質を付帯した爆発物を使い、狭い範囲で放射性物質を拡散させてパニックを起こす、(4)大型航空機や、トラックでの連続自爆テロで原発を攻撃し、放射性物質を放出させ、チェルノブイリや福島の規模の放射能汚染を引き起こす、という現実的リスクを紹介している。

◆テロ対策は待ったなし
ハーバード・ケネディ・スクールのベルファー科学国際事務センターのグラハム・アリソン氏とウィリアム・H・トベイ氏は、世界中の原子力施設は脆弱なままだと指摘し、核テロに関する議論は、核爆弾の製造が可能な核物質をテロリストから守ることにフォーカスされがちで、原発へのテロ攻撃はしばしば見過ごされていると述べる(ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)。

両氏は、福島の事故により、各国の原発は事故に備えた安全対策を強化したものの、セキュリティに関しては明白なギャップが残ったままだと述べ、少なくとも核爆弾製造が可能な核物質や大規模な放射能拡散を引き起こす低濃縮燃料が存在するすべての施設に武装した警備員を配置すべきだと主張する。さらに、原発で働く労働者を雇用する前に、綿密な調査を行うことも必要だと述べている(NYT)。

◆日本は対策が遅れ過ぎ
それでは、日本の原発テロ対策はどうなっているのだろう。ウェブ誌『デイリー・ビースト』は、日本では原発の警備は各運営会社に任されており、法律で一般人の銃所持が不可能なことから、警備員は丸腰だと指摘し、テロリストが襲ってきても、止めるすべがないと説明する。

テロ対策として警察庁は、「サブマシンガン、ライフル、装甲車を持つ警察の特別班(原子力関連施設警備隊)が24時間体制ですべての原発を警戒しており、施設に侵入する者を厳しくチェックしている」(デイリー・ビースト)と回答しているが、北朝鮮やテロリストらが海上から携帯式ロケット弾などで攻撃してきた場合、警察の装備で十分に対応できるだろうか。元陸上幕僚長の冨澤暉氏は、「テロ対策は一義的には警察の役割。自衛隊はやりたくてもそういう治安活動の訓練はしていないのです。テロゲリラにとっては、日本の原発は非常に狙いやすい脆弱な状態です」(日刊ゲンダイ)と述べ、対策の遅れを指摘している。

◆テロリストが内部に侵入も
デイリービーストの取材に匿名で答えた警察庁のアドバイザーは、外からテロリストがやってきて施設を爆発する心配はあまりないとしながらも、作業員として彼らが内側に入り込む恐れを指摘している。実は主要原子力利用国のなかで、原発作業員の身元調査制度がないのは日本だけだという。同誌によれば、アメリカでは許可証はもちろん、犯罪歴や心理テストを含む身辺調査なしでは、作業員は原発に入れない。NYTによると、ベルギーでもテロ事件後に、原発従業員の個人記録の見直しが行われている。

原子力規制委員会はデイリー・ビーストの取材に対して、昨年10月に作業員の身元調査に関する新ガイドラインの採用を決定したと回答している。しかしガイドラインは強制ではなく、新システムの導入の流れや開始時期の言及もない。これについて規制委は「多くの側面が考慮されるべきデリケートな問題」と答えたという。これに対し同誌は、ブリュッセルの事件から分かったように、テロリストのほうは全くデリケートではないと述べ、政府の遅れた対応を批判している。

ジャーナリストの鎌田慧氏は、身元調査制度がない本当の理由として「単に好ましくない者を除外すれば、作業員の確保が難しくなるから。それが日本の原発産業の現実で、汚く危険な仕事はだれもやりたがらない。原発再稼動が、すべての懸念より優先される」と説明している(デイリー・ビースト)。
(山川真智子)
http://newsphere.jp/national/20160413-2/

“テロリストの格好のターゲット” 日本の原子力施設、“安全神話”を海外メディア糾弾
更新日:2014年3月13日

福島第一原発の事故から3年。汚染水問題など、なお解決の見えない厳しい状況下、別の角度から警鐘を鳴らす声があがっている。

調査報道NPO『センター・フォー・パブリック・インテグリティ』は、日本の原子力施設においてテロへの対策が全くなされてないことを指摘する記事を掲載した。同記事は、NBC、フォーリン・ポリシーなど海外複数メディアが転載しており、大きな波紋を呼んでいる。

【アメリカではあり得ない緩い警備】
掲載された記事では、日本の原子力施設における緩い警備の例として、青森県六ヶ所村の使用済核燃料再処理工場を挙げている。

現在試験運転中のこの施設は、フル稼働すれば8000トンのプルトニウムを毎年生産できるとされており、その量は2600個の核兵器分に相当する。記事によると、ほんのグレープフルーツ1個ほどの固まりが、武器ひとつ作るのに十分な量となり、ひとたび悪人の手に渡ればとんでもないことになるという。

しかしここでは警備員は丸腰で、従業員の育ちや経歴に対する調査も行われない。これでは「テロリストの格好のターゲットだ」と同記事は指摘する。

実は、日本の原子力施設のセキュリティについては、アメリカ政府が何度もその脆弱性を指摘し、対策を促してきた。そのひとつとして、2005年に原子力安全・保安院が、当時の駐日米大使からテロ対策について助言を受けたことがある。ところが当局は「日本では銃の所持が禁止されているからテロの心配はない」と返したという。同記事によると、その返答に米大使は「冗談かと思った」くらい呆れたとのことだ。

【それでも日本が変わらない理由とは】
日本が安全に見えても確実に危機は存在する、と同記事は指摘する。オウム真理教は核爆弾欲しさに教徒をロシアへ赴かせ、武器の購入と旧ソ連兵のスカウトを企てていたという。2003年に逮捕されたアルカイダのテロリストは、成田から飛行機を乗っ取ってアメリカ大使館に突っ込む計画があったことを告白している。

しかし同記事の取材によると、再処理工場の広報は「六ヶ所村の従業員がテロを起こすなど100%ありえない」と発言したそうだ。

とはいえ、日本国内にも危機感を持つ声はある。同記事によると、原子力規制委員会の杉本伸正氏は「いつでもテロは起こりうる」との見方だという。

しかしそんな杉本氏ですら「それでも六ヶ所村の工場が武装警備する可能性は低いだろう」と言う。そんなことをしたら、国家的大論争に発展してしまうと同氏は語る。

【原発をめぐる不都合な真実】
原発事故前、原子力安全・保安院の代表がテロ対策検討のために、アメリカに向かったことがある。だがその帰国後、当時の首相・菅直人氏が受けた報告は「日本はアメリカと違いテロの心配がない」というものだったそうだ。反原発派である菅氏はこの件について「結局のところ原子力安全・保安院は、原発産業が支援の砦とする経済産業省の一味」と語ったそうである。つまり世論で原発施設の危機感が高まるような動きは好ましくないというのが日本の姿勢だ、と同記事は指摘する。

そんな中、カンザスの地元メディアが紹介する「福島の巨大な嘘」という記事も、日本の原発産業の背景には「世界の原発業界で躍進し、国内の景気を活性化させたい」という安倍首相の目論みが存在すると伝えている。

同メディアは、福島の事故を「原発に都合の悪い真実を隠そうとする政府が招いた人災」と伝えている。さらにアメリカでも、原発産業の利権を守ろうとする同様の政治が存在すると述べ、次の「Fukushima」となり得る可能性を示唆し、警鐘を鳴らしている。

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(Newsphere編集部)
http://newsphere.jp/national/20140313-1/