東京株式市場の7割は海外外国人投資家による取引であり | 日本のお姉さん

東京株式市場の7割は海外外国人投資家による取引であり

運用最大手ブラックロック、日本経済と日本株を見放す
2016年4月16日 ニュース

世界最大の資産運用額を誇るブラックロック社が日本株を見放したとの海外報道がありました。海外株式投資家と日本の安倍首相の蜜月は終わり、離縁することになるのでしょうか。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)

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アベノミクスに大打撃。海外投資家と日本株、「蜜月」の終わり

報道のポイント

海外投資家は2016年正月早々から連続13週間、東京株式市場から資金を引き揚げている。これは1998年以来で最長の記録だ。

日本の経済状況が悪化し、日銀の景気刺激策も逆効果。思惑とは反対の円高になった為に輸出メーカーは利益減。それを見た海外投資家が46B$(約5兆円)の資金を東京市場から引き揚げた。

これにより2016年4月11日現在、TOPIX指数は18%下落した。これはイタリアに次ぐ急落記録となる。

東京市場で最も積極的なトレーダーは海外投資家であり、安部首相の成長戦略の成果を判別するリトマス試験紙だった。その彼らの信頼を失ったことが安倍首相にとって大きな打撃となっている。

2013年9月にNY株式市場を訪問した際に、首相は「これからは日本の再登場だ」とか「アベノミクスは買いだ」と言ってぶち上げ、株価は当時として8年来の最高値をつけた。しかし、その頃に得た上げ幅の半分は消えてしまった。

世界最大の資産運用会社であるブラックロック社(BlackRock)は、日本株の上げ基調は終焉したと主張している。

また、約115B$(約13兆円弱)を運用している豪AMPキャピタルのNader Naeimi氏も、これまで長い間日本株のファンだったが今は売却の機会を窺っており、「多くの人々がアベノミクスに対して疑いを持ち始めている」と見ている。

アベノミクスの「3本の矢」政策は失敗し、デフレに落ち込み、30年間の沈滞へと戻ってしまった。

東京株式市場の7割は海外外国人投資家による取引であり、2012~2015年の間、ネットで18.5兆円もの買い越しをしてきた。その強気も消えてしまい、3ヶ月連続での売り越しが続いており、1月第2週から継続して5兆円の売りを記録している。

クレディ・スイスグループに続き、シティグループも日本株の見通しを下げ、今回、ブラックロックも日本経済に対して失望したというわけだ。ブラックロック社は日本経済に対して、円高リスクによる輸出企業の業績悪化および変動幅の増加リスクを要因として格下げしている。

また、スイス系のLGTキャピタルパートナーは50B$(5.5兆円)を運用しているが、「日本再生」戦略を捨て、アベノミクスに対して悲観的な立場を取っている。

これについて日本株の専門家は、「アベノミクスに対する信用失墜、日銀の景気刺激策の失敗、円高による企業業績の落ち込みにより、海外投資家が日本株投資を見直すのは当然のことだろう」と語った――

Next: 外国人投資家、真の狙いは「帰りがけの駄賃」/マネーの逃避先は?
外国人投資家、真の狙いは「帰りがけの駄賃」

東京株式市場の取引の7割を占める外国人投資家、機関投資家、ヘッジファンドが一斉に撤退することを決めたからと言って、すぐに株価が垂直降下するような事態が起きると考えるのは早計です。

それでは彼らは自分で自分の首を絞めることになるからです。それとは逆に、帰りがけの駄賃に、残る3割の投資家からできるだけ絞り上げて戻ろうとするはずです。

残り3割の投資家は「今が底値だ」と早とちりの買いをするかもしれないからです。

外国人投資家は、必ず日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が「株価買い支え」のために動くはずだと信じているので、安心して仕掛けてくるでしょう。

その動きを電光石火の高速取引で根こそぎ持っていくヘッジファンドにとっては、この下落相場はできるだけ長期間、緩い傾斜角で継続するのが好ましい。その間、色々な仕掛けにより掠め取ることができるからです。

これからのマネーの逃避先は?

優秀な人材で固めているヘッジファンドや投資銀行が大きな損失を出している現在、安全な投資先はあるのでしょうか?

それは国営石油公社が救いようのない惨状となっている、世界経済第7位のブラジルでしょうか?それとも闇金融の王様たちが逮捕されだし、不動産バブルもミエミエの世界経済第2位の中国でしょうか?あるいは現在、株価が反転上昇しだした世界経済第3位の日本でしょうか?

世界第8位のイタリアは?こちらも経済が破綻、焦げ付いたローンを抱える銀行業界に資金を注入しても再生するどころか全く駄目。そこで追加で資金注入するとの話が浮上するも、不良債権額から見てあまりにも少ない額であることが露呈し、4月11日の銀行株は墜落状態、午後から銀行株は取引停止となりました。

14位のスペインは?6位のフランスは?オーストリアは銀行破綻が目の前です。

第5位の金融大国イギリス、第12位の資源国オーストラリア、第11位のカナダ、第10位のロシア――どこもかも原油安、鉄・非鉄金属安で経済的に非常事態です。

そしてGDP世界第1位である米国の第1四半期のGDP予想(連銀予想)は目標2.6%に対して現在0.1%です。

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4月11日に連銀の臨時非公開会議を緊急招集。その後大統領府でイエレン議長とオバマ大統領、バイデン副大統領による臨時の緊急会議。続いて12日、連銀の銀行監督部門の臨時非公開会議が緊急招集。同時に12日および13日、ワシントンDCでG20財務大臣・中央銀行総裁会議。15日にワシントンで世界銀行会議とIMF会議。

何もなければ、こんなことはあり得ないでしょう。米国の金融大手各社の2016年第1四半期決算が公表される予定ですが、街のスズメの噂では、その内容はリーマンショック以降で最悪になるとのこと。ドイツ銀行も泥濘で身動きがとれない。

安全な投資先の国は一体全体どこなのでしょうか?すべてはマイナス金利へ!それでもいまだ安全な国債はあるのか?もう存在しないのなら、資金はどこへ向かうのでしょうか?「現物」でしょう。

Next: 金準備を積み増すロシア・中国が欧米中銀を追い詰める
金準備を積み増すロシア・中国が欧米中銀を追い詰める

こちらは2015年の公的部門、中央銀行の金準備買い増しに関する短い報道です。しかし重要です。

報道のポイント

2015年通年の中央銀行による金準備の購入総量は483トンで、金本位制の廃止時点から見て歴史上第2番目に多い年であった。

購入量はロシア中央銀行がトップで206トン。中国は下半期だけで104トンの買い増しであった(上半期の買い増し量は不明)。

こちらのチャートを見て下さい。

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各国中央銀行の金準備の売却、購入の歴史です。X軸の上側が購入、下側が売却です。2009年を中心にして、明らかに潮目が変化しました。今後も特定の中央銀行群は金準備を買い集めるでしょう。

それに対し、欧米の中央銀行群は、まったく買い集める努力をしないでしょう。もしかすると買い集めたくてもできないのかも?これだけ世界経済が不安定になれば、欧米の資本主義先進国も買い集めたくて仕方がないはずなのですが――。

【関連】中国が極秘裏に描く「世界金融戦争の終盤戦略」~金買い増しと資金流出のウラ
『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』(2016年4月8,15日号)より一部抜粋、再構成
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中国が極秘裏に描く「世界金融戦争の終盤戦略」~金買い増しと資金流出のウラ
2016年3月17日 ニュース

「中国は外貨準備として米ドルで3.2T$を保有しているが、中央指導部は米ドル覇権体制に対する戦いの最終盤戦に入ったと考えている。それで米ドル外貨準備に対するヘッジとしてゴールドを保有しようと声高に主張しているのだ」(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)

米ドル基軸体制に対する戦いの最終盤戦に入った中国

「中央指導部はゴールドを金融システム動乱に対するヘッジと見ている」

中国に詳しい、ゴールドセクターのアナリストのインタビュー記事を紹介します。
※China’s Global Gold Strategy

このインタビューの語り手はWillem Middelkoop氏で、解説では略称WMとしています。


オランダではジャーナリストという肩書きもありますが、この人物が名を上げたのは、2008年の金融危機を正確に予測し、その見識を生かして、貴金属鉱山の投資ファンドを立ち上げたことです。また、中国のゴールド投資戦略を描いた著作でも有名になったそうです。

今回のインタビューの要点としては、「中国の金準備買い増し方針」「人民による保有」「金融システムの建て直しに至る終盤戦での戦略」があります。質問者とWillem Middelkoop(WM)氏の対話形式です。

インタビューのポイント

質問:
中国はゴールドをどのように見ているのですか?

WM:
中国はゴールドを金融システム動乱に対するヘッジと見ており、それで現在、戦略的安全資産として金を準備しているのだ。

現在、中国は外貨準備として米ドルで3.2T$を保有しているが、米ドル覇権体制に対する戦いの最終盤戦に入ったと考えている。それで米ドル外貨準備に対するヘッジとしてゴールドを保有しようと声高に主張しているのだ。

欧米では、この中国の主張はほとんど紹介されていないが、中国国内で発行されているあらゆる記事に「最短時間で最大量の金準備を保有しよう」と書かれている。

昔、1920~1930年代頃の中国は結構な量のゴールドを保有していたが、それも日本軍が第二次世界大戦前に侵略して大半を奪い取ってしまった。残りのゴールドも、戦後に国民党が台湾に持ち出し、その後1990年代まで中国本土の金保管庫は空っぽのままだった。そのような経緯があったので、中国の金保有熱は非常に強いのだ。

質問:
中国の現在のゴールド保有量はどれくらいだと思いますか?

WM:
過去15年で積み上げた量を見るなら、公的金準備保管量だけを見ていては駄目だ。中国人民銀行の保有量は、比較的少ないからだ。

公的な金準備の数字は1800トン以下だが、それは全外貨準備の2%弱でしかない。これを10%にしたいのだ。ロシアはすでに10%以上だし、欧米ではもっと大きな比率になっている。西側が全世界の金準備の大体5割を握っている。

中国の公式な計画として「人民の間で金保有を!」という表現がある。それは昨年6月に中国人民銀行のホームページに公開された記事だ。ちょうど公的金準備を大幅修正発表した時期だ。

中国の現物ゴールド保有量総計は1万トン以上になっており、それらは一般の商業銀行、企業群だけでなく、一般市民が保有している合計数量である。その半分以上を中国国民が保有している。

中央指導部は金融史を非常に良く研究しており、金融危機には政府がゴールドを没収し、その対価としてペーパーマネーを渡すことができると熟知している。特に中国のような中央支配体制国家では、容易であると知っているのだ。

同様のことはアジア危機の時の韓国でも起きたし、1933年の米国では、時のルーズベルト大統領が米国民の保有するゴールドを没収したし、その後1974年まで、米国民はゴールドを買うことも保有することも禁止されていたのだ。

中国は必要とあらば金没収をするのは可能だが、そのような事態とは、例えば人民元防衛で外貨準備の多くを失ってしまった場合などが考えられる。そうなれば、中央政府は中国の一般国民から金を取り上げるだろうが、それはよほど状況が絶望的になった場合の治療薬のようなものだ。

Next: もし中国が金価格を1オンス3000ドルにしたいと考えればいつでもできる
質問:
中国は、そのような大量のゴールドを価格上昇させずに、これまでどのようにして蓄積することができたのでしょうか?

WM:
急激に価格が上昇してしまうような事態は避けたかったので、「米ドルに対するヘッジとして金保有をする」などとは公言しなかったのだ。そうではなく、前述のやり方で外貨準備に対する公的金準備を小さな比率に抑えてきた。これは賢明な手法だ。もし中国が金価格を1オンス3000ドルにしたいと考えればいつでもできる。例えば外貨準備の25%を短期間で金準備に代えれば、すぐにも可能だ。

質問:
上海黄金交易所は一体どのようなものなのですか?

WM:
COMEX先物市場の価格形成メカニズムを上海に持ち込みたかったのだ。それで上海に取引所を作ったのだが、そこではほとんど誰でも口座開設、先物取引ができる。少し異なる点としては、上海では市場参加者の3件の取引に対して1件は現物引渡しになっている。他方、COMEXでは、300件の取引で1件のみが現物引渡しになるだけだ。現在、銀先物取引で見れば、COMEX以上に上海での取引数が多いのだ。

質問:
中国が、ニューヨークとロンドンの金保管庫を買い取りましたね。

WM:
中国はゴールドがさらに重要視されるような次の段階(重大危機で没収するような事態)に備えているのは明らか。16B$程度の資金規模のゴールド投資基金も創設し、これで、新シルクロード周辺国(ユーラシア圏)の金鉱山に開発探査資金を貸し出すのだ。

金先物市場を創設すれば、次に現物引渡しのための決済システムが必要であり、そうなると現物地金の保管庫が、世界各地で必要となる。金保管庫を所有管理すれば、現物決済システム管理ができるゆえに、保管庫こそが金価格を決定する金先物取引の必要条件になるのだ。

先物市場は紙証文取引だが、それでも裏付けの現物が必要であり、それで保管庫が必要なのだ。保管庫の鍵を保有していなければ、保管庫内に実際に現物があるのかどうかも分からないではないか。それで中国はニューヨークのJ.P.Morgan金保管庫を買い取り、ロンドンのドイツ銀行の金保管庫を買い取ったのだ。

質問:
中国にとっての「終盤戦」とは、どのようなものになるのでしょう?

WM:
中国の計画は、最終的には金融システムの中でゴールドが最重要な役割となるような道程までの長期的なものだろう。金融システムの次の段階は、ゴールドがシステムの中で支配的な位置を占めるようなもので、それに備えている。そうなれば、金価格がさらに大きく上昇すると中国は考えていると思う。

以前James Rickards氏が語ったことだが、IMF内部では米欧中国で合意事項が存在し、それによると米国、ユーロ圏、中国は、それぞれの経済規模に応じての金準備を保有し、その合計量を3万トンにして、それをSDR(特別引き出し権)の準備バスケットにリンクさせるということだ。

中国は英国の王立国際研究所に、次世代の金融システムとはどのようなものか?という分析報告を依頼していたが、この分析では、ゴールドも次の金融システムに含まれるようになるとの報告となっている。中国が国際金融システムにゴールドの追加を望んでいるのは明白であり、それゆえ、未来のSDRはゴールドにリンクしたものになるだろう。

私が思うには、中国は米国やIMFと何らかの合意をしており、それには中国の金準備の一部を米国に預けたままにするだろうと想像している。

つまり中国が買い取ったニューヨーク金保管庫の中に預けたままにするのだ。この元J.P.Morgan金保管庫はJ.P.Morganの建物内に存在し、道を挟んでNY連銀ビルに隣接しており、そのNY連銀ビルの金保管庫はFort Knox基地を除くと世界最大の金地
金を保管しているのだ。

質問:
金地金を金融システム内で保管する利点は一体何なのでしょう?

WM:
金融システム内で保管しておけば、金融システムの信認が保たれ、それでハイパー・インフレを防止できるからだ。

それにSDRの通貨バスケットの裏付けに使えるからだ。もし、1オンスのゴールドの公定価格を現在の42ドルから8400ドルに評価し直せば、世界中の中央銀行にとって大きな利益となる。特に米国財務省と連銀のバランスシートは健全な状態になるからだ。

この公定価格の修正で、バランスシート上の金準備が11B$から一挙に2.2T$になる。混乱に対する容易な解決法は、この公的金価格の切り上げなのだ。

Next: いま中国人富裕層と中国共産党が最も恐れていること
質問:
中国人はゴールドを資金逃避に使っているのでしょうか?

WM:
中国人が恐れていることは多々ある。国家を裏切って金持ちになった腐敗汚職官僚は、海外に出国しようとしたり、偽旅券や、国外の住宅を買おうとしており、カナダ、米国、豪州等の住宅不動産を買う者も多い。しかし、そのような者たちは過去15年間に資産を持ってすでに出国している。

汚職官僚ではなく、もっと合法的な方法で資産を築いた中国人は沢山おり、彼らは人民元の大きな切り下げを恐れているのだ。このリスクを避けるために中国国外に資産を移したいと考えている普通の中国人がいる。しかしそんな事をせずとも、合法的に人民元でゴールドを中国国内で買い増しすれば、それで人民元切り下げに対するヘッジになると理解しているのだろう。

もちろん自国政府が信用できないときには、国外にゴールドを持ち出したいと考えるだろう。また、そのマネーが不法に得られたものであれば、そのような者は刑務所に放り込まれるだろう。

質問:
人民元切り下げに賭けているヘッジファンドがあるが、それは正しいのでしょうか?

WM:
約70年前の1940年代後半に中国はハイパー・インフレに見舞われた。この金融動乱時に共産党政権はできた。それゆえ、中央指導部は常に人民元というペーパーマネーに対する信認の崩壊を恐れなければならないのだ。

共産党政権が唯一支配権を失う可能性があるのは、人民元への信認の崩壊だ。だからこそ、金融市場の大変動を恐れている。中央政府は金融市場、通貨市場を制御しなければならないし、そのために一番重要なのは金準備なのだ。それこそが権力を持ち続けられるかどうかの要諦となっている。

質問:
インドはどうなるのでしょう?インドは世界最大の金保有国と言われています。

WM:
金輸入関税が非常に高く、それで闇市場が大きなものとなっているが、中国はそうではない。インド経済は孤立した経済だと言える。インドと国際金市場の関係は、中国と比較してそれほど深く結びついているわけではない。

中国は昔は閉鎖された経済であったが、現在は国際経済の中で大きな部分を占めている。それで、世界経済システム内で重要になっているのだ――

インタビュー紹介はここまで。だからこそ、欧米では持っていなくても持っている振りをしなければならない…真実の数字は、外部の人間には分からないものです。しかし、奪われる側と奪う側は分かっているのです。

Next: 「中国からの資金流出」本当の理由、BIS(国際決済銀行)の分析
「中国からの資金流出」本当の理由、BIS(国際決済銀行)の分析

BIS(国際決済銀行)の分析報告によると、中国の外貨準備175B$(20兆円)の流出は、投資家が逃げ出したのではなく、ドル高を見越した各企業が抱えるドル建て債務の返済を急いだ為であるとの報道です。
※China’s $175 Billion Outflow Wasn’t Investor Flight: BIS

報道のポイント

最新のBIS分析報告によると、2014年夏以降からの中国の資金流出は、投資家が中国資産を処分して逃げ出していると言うよりも、中国企業が米ドルの先行き高をを予想して、米ドル建て債務の繰り上げ返済を開始したために、米ドル価値が上がったと見ている。

BISの分析によると、この中国の資金流出には2つの異なる説明が存在している。

1つは投資家による中国本土資産の大量売却。もう1つは中国系企業の米ドル債務の返済繰り上げである。

BISの分析として選ぶとすれば、後者の説明を採用するが、両者の説明で欠落している部分を指摘しておきたい。それは中国国外での人民元預金の減少である。

BISの昨年12月時点での分析では、新興国群の借入額が急速に拡大し、海外から中国への資金流入が反転し、2015年7月~9月の第3四半期ではネットで175B$の減少となったが、その中の12B$のみが中央銀行からの流出であり、残りの163B$は企業からの流出であった。

中国の公的な外貨準備ではない、すなわち一般企業等からの流出額が163B$である。その中の4分の3である121B$が人民元建て預金の流出減少である。そのうち国外へ資本流出したのが80B$であった。

さらに中国系企業が海外の金融機関から借りた外貨建て債務の返済で34B$。同じく中国系企業が中国国内の金融機関から借りた外貨建て債務の返済で7B$であった。

2015年第4四半期も中国からの資金流出が続いているようである。中国国外の人民元預金の減少は緩やかになったものの、中国企業による外国通貨建て債務の返済は増加しているようである。2016年の2月までの動きは昨年の第2半期よりも多く、大きな問題になると予想される。

中国人民銀行は「人民元を安定したレベルに保つとの意思を宣言したが、その意味は、主要通貨に対して米ドルが上昇しており、その米ドルに対して人民元を弱含みのレベルに保つとの意味であり、こうなれば、中国国外の預金者は人民元建て預金を保有をせずに、さらに中国系企業は米ドル建て債務の返済を急ぐことになるだろう」とBISは分析している。

BISの分析報告

この報道の元となった、BISの分析報告を紹介します。

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(ア)BIS報告書のオリジナル部分です。
(イ)桃色の棒グラフは中国国外での人民元建て預金の変化です。青色の折線グラフは中国人民元/米ドルの為替の変動チャートです。
(ウ)桃色の棒グラフは外貨建てローン債務残高-外貨建て預金残高です。返済を急いでいる様子が分かります。青色折線グラフは中国人民元/米ドルの為替変動チャートです。

外為市場では、かような、自分で自分の首を絞める現象が比較的高頻度で発生します。ドル高を見越して、ドル建て債務の返済を急ぐ。そのために人民元を売りドル買いをする。そうするとさらにドル高となり、周りも慌てて同じ行動をします。合成の誤謬です。

人民元の安定を願うのであれば、そして自国の外貨準備を守りたいと願うのであれば、焦らずに行動すべきなのですが、人間の心理としては、自分だけは安全に逃げ出したいと思うものです。もうこれは人間の消しがたい本能的な動きなのでしょう。

金融システムの崩壊も全く同じです。となれば、最初からリスク重視の観点で、誰よりも早く静かに準備行動をすべきです。

『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』(2016年3月11,17日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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http://www.mag2.com/p/money/8147