アルゼンチンが中国漁船を撃沈
アルゼンチンが中国漁船を撃沈、拍手喝采した国は?
JBpress 3月23日(水)6時10分配信
3月14日、アルゼンチンの沿岸警備隊が中国漁船を撃沈した。アルゼンチン南部の大西洋上、同国の排他的経済水域(EEZ)内で違法操業をしていた中国漁船に、アルゼンチンの沿岸警備隊の艦艇が発砲し撃沈したという。
違法操業していた中国漁船の写真はこちら(JBpressの元記事に飛びます)
自国の領海に中国船が侵入を重ねてもなんの実効措置もとらない日本とは対照的な対応である。日本人から見ると、アルゼンチンの対応は性急で強硬に映るかもしれない。だが、国際社会ではアルゼンチンの軍事力行使を非難する声はあがらなかった。逆にベトナムでは拍手や歓声が起きたほどだという。
アルゼンチン側を支持する国際世論が多いため、中国政府もなかなか強硬な報復策をとることができないようである。米国のオバマ大統領が3月23日にアルゼンチンを公式訪問することも、中国の姿勢に微妙な影響を与えそうだ。
■ 「ベトナムもアルゼンチンを見習うべき」
アルゼンチン当局の3月15日の発表によると、アルゼンチン沿岸警備隊は14日、首都ブエノスアイレスの南1300キロにあるプエルトマドリン地区沖合のEEZ内で違法操業中の中国漁船を発見し、停船を求めた。だが、中国漁船はこれを無視して逃走した。沿岸警備隊が漁船を追ったところ、沿岸警備隊の艦艇に繰り返し体当たりしようとした。そのため沿岸警備隊は射撃を加え、沈没させたという。
発表によると、沿岸警備隊は違法操業の漁船に何度も停船を求め、威嚇射撃も行った。ところが漁船は応答しないまま逃走し、警備隊の船が接近すると逆に体当たりしてきた。沈没した船には乗組員32人がいたが、全員が救助され、そのうち船長を含む4人が逮捕されたという。沿岸警備隊は、中国漁船が逃走してから撃沈されるまでの過程をビデオで撮影し、録画を公開した。
通常、EEZ内での漁業は、その沿岸国の許可を必要とする。だが中国漁船は許可を取っていないばかりか、アルゼンチン政府が漁業禁止とした海域でイカ漁の操業をしていたという。漁船の船体には「魯煙遠漁10」という船名が記されていた。この船は中国の山東省の煙台にある漁業会社に所属しているという。
アルゼンチン政府は撃沈措置をすぐに中国政府に通報した。中国側はそれに対して懸念を表明し、中国漁船に違法行為はなかったと主張して、アルゼンチン政府に事件の徹底した解明を求めた。
この事件は世界で報道された。米国のニュースメディアも一斉に取り上げたが、アルゼンチンによる撃沈措置を批判的に取り上げる報道は皆無だった。CNNなどは、中国の漁船が世界中で違法な操業を行っていることを強調して伝えていた。
アジアを見ると、中国との間で海洋紛争を抱えるベトナムの漁業関係者がこのアルゼンチンの措置に「拍手喝さいした」と報じられた。
東南アジアのニュースを主体に報道するネット新聞「グローバル・ニュース・アジア」(3月15日)によると、ベトナムの漁業関係者が次のように語ったという。
「ベトナムの漁船が自国の水域で合法的に操業していても、中国は攻撃してくる。一方、自分たちの違法操業は違法だと認めない。今回も中国側に落ち度があるとは認めないだろう。ベトナムもアルゼンチンのように武力を整え、きちんと対峙しなければならない」
■ “親中国”だったアルゼンチンが米国に接近
中国艦艇は単に日本の排他的経済水域(EEZ)だけでなく、尖閣諸島周辺の日本領海にまで違法に侵入を続けている。だが、アルゼンチンのように実力行使で排除する構えは、まったく見せていない。
アルゼンチンでは2015年12月の選挙で、それまで親中傾向のあった勢力が敗れ、中国とは距離をおこうとするマクリ新大統領が登場した。そのことも今回の撃沈措置の政治的背景として指摘されている。
マクリ政権は前政権の反米傾向とは対照的に、米国との関係を修復しようとしている。米側もそれに応じて、オバマ大統領が3月23日にアルゼンチンを訪問することとなった。米国の現職の大統領がアルゼンチンを公式に訪問するのはこの二十数年間で初めてである。今回の撃沈事件は、“親中国”だったアルゼンチンの中国離れを象徴する出来事ともいえそうだ。
ただし、中国は近年アルゼンチンに対して、投資や融資、貿易などの各面で絆を強める努力を重ねてきた。今回の事件でアルゼンチンに強硬な報復措置などをとるとこれまでの努力が無駄になり、アルゼンチンをさらに米国陣営に追いやることにもつながりかねない。だから中国はあまり強い抗議の行動はとらないのではないか、という観測も語られている。
古森 義久
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160323-00046408-jbpressz-int&p=1
JBpress 3月23日(水)6時10分配信
3月14日、アルゼンチンの沿岸警備隊が中国漁船を撃沈した。アルゼンチン南部の大西洋上、同国の排他的経済水域(EEZ)内で違法操業をしていた中国漁船に、アルゼンチンの沿岸警備隊の艦艇が発砲し撃沈したという。
違法操業していた中国漁船の写真はこちら(JBpressの元記事に飛びます)
自国の領海に中国船が侵入を重ねてもなんの実効措置もとらない日本とは対照的な対応である。日本人から見ると、アルゼンチンの対応は性急で強硬に映るかもしれない。だが、国際社会ではアルゼンチンの軍事力行使を非難する声はあがらなかった。逆にベトナムでは拍手や歓声が起きたほどだという。
アルゼンチン側を支持する国際世論が多いため、中国政府もなかなか強硬な報復策をとることができないようである。米国のオバマ大統領が3月23日にアルゼンチンを公式訪問することも、中国の姿勢に微妙な影響を与えそうだ。
■ 「ベトナムもアルゼンチンを見習うべき」
アルゼンチン当局の3月15日の発表によると、アルゼンチン沿岸警備隊は14日、首都ブエノスアイレスの南1300キロにあるプエルトマドリン地区沖合のEEZ内で違法操業中の中国漁船を発見し、停船を求めた。だが、中国漁船はこれを無視して逃走した。沿岸警備隊が漁船を追ったところ、沿岸警備隊の艦艇に繰り返し体当たりしようとした。そのため沿岸警備隊は射撃を加え、沈没させたという。
発表によると、沿岸警備隊は違法操業の漁船に何度も停船を求め、威嚇射撃も行った。ところが漁船は応答しないまま逃走し、警備隊の船が接近すると逆に体当たりしてきた。沈没した船には乗組員32人がいたが、全員が救助され、そのうち船長を含む4人が逮捕されたという。沿岸警備隊は、中国漁船が逃走してから撃沈されるまでの過程をビデオで撮影し、録画を公開した。
通常、EEZ内での漁業は、その沿岸国の許可を必要とする。だが中国漁船は許可を取っていないばかりか、アルゼンチン政府が漁業禁止とした海域でイカ漁の操業をしていたという。漁船の船体には「魯煙遠漁10」という船名が記されていた。この船は中国の山東省の煙台にある漁業会社に所属しているという。
アルゼンチン政府は撃沈措置をすぐに中国政府に通報した。中国側はそれに対して懸念を表明し、中国漁船に違法行為はなかったと主張して、アルゼンチン政府に事件の徹底した解明を求めた。
この事件は世界で報道された。米国のニュースメディアも一斉に取り上げたが、アルゼンチンによる撃沈措置を批判的に取り上げる報道は皆無だった。CNNなどは、中国の漁船が世界中で違法な操業を行っていることを強調して伝えていた。
アジアを見ると、中国との間で海洋紛争を抱えるベトナムの漁業関係者がこのアルゼンチンの措置に「拍手喝さいした」と報じられた。
東南アジアのニュースを主体に報道するネット新聞「グローバル・ニュース・アジア」(3月15日)によると、ベトナムの漁業関係者が次のように語ったという。
「ベトナムの漁船が自国の水域で合法的に操業していても、中国は攻撃してくる。一方、自分たちの違法操業は違法だと認めない。今回も中国側に落ち度があるとは認めないだろう。ベトナムもアルゼンチンのように武力を整え、きちんと対峙しなければならない」
■ “親中国”だったアルゼンチンが米国に接近
中国艦艇は単に日本の排他的経済水域(EEZ)だけでなく、尖閣諸島周辺の日本領海にまで違法に侵入を続けている。だが、アルゼンチンのように実力行使で排除する構えは、まったく見せていない。
アルゼンチンでは2015年12月の選挙で、それまで親中傾向のあった勢力が敗れ、中国とは距離をおこうとするマクリ新大統領が登場した。そのことも今回の撃沈措置の政治的背景として指摘されている。
マクリ政権は前政権の反米傾向とは対照的に、米国との関係を修復しようとしている。米側もそれに応じて、オバマ大統領が3月23日にアルゼンチンを訪問することとなった。米国の現職の大統領がアルゼンチンを公式に訪問するのはこの二十数年間で初めてである。今回の撃沈事件は、“親中国”だったアルゼンチンの中国離れを象徴する出来事ともいえそうだ。
ただし、中国は近年アルゼンチンに対して、投資や融資、貿易などの各面で絆を強める努力を重ねてきた。今回の事件でアルゼンチンに強硬な報復措置などをとるとこれまでの努力が無駄になり、アルゼンチンをさらに米国陣営に追いやることにもつながりかねない。だから中国はあまり強い抗議の行動はとらないのではないか、という観測も語られている。
古森 義久
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160323-00046408-jbpressz-int&p=1