予備選、ネバタ州ラスベガスの博打客は中国人が激増
トランプの中国攻撃は効果を挙げるか
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28 年(2016)2月24日(水曜日)弐
通算第4826号
予備選、ネバタ州ラスベガスの博打客は中国人が激増し
はたしてトランプの中国攻撃は効果を挙げるか
*******************
ネバタ州といえば砂漠に蜃気楼のごとき娯楽天国ラスベガス。
スーパーチューズディを前にして大統領選の方向性を決めけねないると言 われるネバタで、共和党予備レース、はたしてトランプは首位を維持でき るか?
というのもネバタ州は10年前まで経済最悪、失業率最高という貧困の地区 として知られたが、いまや高度成長、とくに中国からの博徒襲来(元寇な み)、ラスベガスの一流ホテルのギャンブル場に
どっと押し寄せたのは昨 年だけでも20万人、とくに中国人が集中するのはマレーシア華僑が40億ド ルを投じた「リゾートワールドホテル」の博打場である。
またネバタ州の鉱山関係は対中輸出で潤った。ということは実業界は中国 熱に侵され、なかなかの親中派でもある。
そのうえ中国はラスベガスからカリフォルニアを結ぶ高速鉄道の建設計画 をぶち挙げ、ネバタ州、カリフォルニア州の政財界を揺さぶる。
そうはいうものの、共和党候補者らはクルーズもルビオもトランプの後を 追って対中国批判のオクターブを挙げ、中国との貿易不均衡、なんらかの 制裁関税が必要と訴えている。南シナ海における
中国の軍のプレゼンスに ついても批判している。
中でもトランプは中国が「アメリカ人の雇用を奪った」、「為替操作国」 であり、「制裁措置を加えるべきであり」、「偉大なアメリカを取り返 せ」と主張している。
このため、中国はわざわざトランプ発言に反論し「我が国は為替を操作し ていない」と駁論を寄せているほどである。
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◆書評 ◎しょひょう ▼BOOKREVIEW ●書評 ▽
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本のメディアのスーチー礼讃はいつまで続けるのか
ミャンマーの日本大使館は首都のネピドーへ率先して移管せよ
寺井融『本音でミャンマー』(カナリア・コミュニケーションズ)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
のんびりとほのぼのとした文章には味があり、全体がアジア漫遊記のよう な体裁をとって、あちこち走馬燈のように旅の想い出が重なり、時空を越 えて、哲学的な箴言がちりばめられ、また鋭い観
察と提言が本書ではなさ れる。
ある時に著者はベトナムへ、タイへ、カンボジアへと飛ぶ。そして何回も 通い詰めるのは著者が愛して止まないミャンマーである。
かつて日本の新聞と言えば、ミャンマーの軍政は悪、スーチーは善玉とい う勧善懲悪的二元論で、ミャンマーを上から目線で裁いてきた。朝日に限 らず読売、産経も似たような記事が多かった。
いわく「ミャンマーは軍事政権で、民主的ではない」と批判していた、け れどもと疑問を寺井氏は投げかける。
「では、中国やベトナム、北朝鮮など、共産主義国家はどうなのか。共産 中国に比べて、ミャンマー報道が厳しすぎるのではないか」
がらりと変化が訪れたのは米国オバマ政権の「ピボット」である。制裁か ら友好へとスタンスを代えるや、経済支援強化、ミャンマー支援へと急激 に流れが変わり、安倍首相もヤンゴン入りし、日
本企業専用団地の起工式 に自ら出席するほど、日本の経済界はミャンマー進出に加速度を付けた。
全日空は直行便を飛ばし出し、ヤンゴン市内は建設ブームに沸き、駅前の 大規模開発に日本企業はチームを組む。
おっと。変わり身の早さで定評のある朝日は2013年10月12日付けで、一面 トップは「テインセイン大統領単独会見」とやった。
国会議員選挙はスーチー陣営の圧勝となり、スーチーは「大統領を超える 存在になる」と尊大な言辞をはいたため、さすがの日本のメディアも批判 的となった。スーチーの政治力はまったく未知
数、あのスタンスで過酷な 国際情勢に船出できるとは到底考えられないが、西側はまだミャンマーの 未来に期待する。
著者は本書の最後に提言している。
「大使館は首都のネピドーへ移管するべきではないのか」と。
移転しないのは制裁時代の名残であり、外交上からも首都に設置しない国 は、ほかに特殊事情のイスラエルくらいなものだろう。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28 年(2016)2月24日(水曜日)弐
通算第4826号
予備選、ネバタ州ラスベガスの博打客は中国人が激増し
はたしてトランプの中国攻撃は効果を挙げるか
*******************
ネバタ州といえば砂漠に蜃気楼のごとき娯楽天国ラスベガス。
スーパーチューズディを前にして大統領選の方向性を決めけねないると言 われるネバタで、共和党予備レース、はたしてトランプは首位を維持でき るか?
というのもネバタ州は10年前まで経済最悪、失業率最高という貧困の地区 として知られたが、いまや高度成長、とくに中国からの博徒襲来(元寇な み)、ラスベガスの一流ホテルのギャンブル場に
どっと押し寄せたのは昨 年だけでも20万人、とくに中国人が集中するのはマレーシア華僑が40億ド ルを投じた「リゾートワールドホテル」の博打場である。
またネバタ州の鉱山関係は対中輸出で潤った。ということは実業界は中国 熱に侵され、なかなかの親中派でもある。
そのうえ中国はラスベガスからカリフォルニアを結ぶ高速鉄道の建設計画 をぶち挙げ、ネバタ州、カリフォルニア州の政財界を揺さぶる。
そうはいうものの、共和党候補者らはクルーズもルビオもトランプの後を 追って対中国批判のオクターブを挙げ、中国との貿易不均衡、なんらかの 制裁関税が必要と訴えている。南シナ海における
中国の軍のプレゼンスに ついても批判している。
中でもトランプは中国が「アメリカ人の雇用を奪った」、「為替操作国」 であり、「制裁措置を加えるべきであり」、「偉大なアメリカを取り返 せ」と主張している。
このため、中国はわざわざトランプ発言に反論し「我が国は為替を操作し ていない」と駁論を寄せているほどである。
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◆書評 ◎しょひょう ▼BOOKREVIEW ●書評 ▽
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日本のメディアのスーチー礼讃はいつまで続けるのか
ミャンマーの日本大使館は首都のネピドーへ率先して移管せよ
寺井融『本音でミャンマー』(カナリア・コミュニケーションズ)
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のんびりとほのぼのとした文章には味があり、全体がアジア漫遊記のよう な体裁をとって、あちこち走馬燈のように旅の想い出が重なり、時空を越 えて、哲学的な箴言がちりばめられ、また鋭い観
察と提言が本書ではなさ れる。
ある時に著者はベトナムへ、タイへ、カンボジアへと飛ぶ。そして何回も 通い詰めるのは著者が愛して止まないミャンマーである。
かつて日本の新聞と言えば、ミャンマーの軍政は悪、スーチーは善玉とい う勧善懲悪的二元論で、ミャンマーを上から目線で裁いてきた。朝日に限 らず読売、産経も似たような記事が多かった。
いわく「ミャンマーは軍事政権で、民主的ではない」と批判していた、け れどもと疑問を寺井氏は投げかける。
「では、中国やベトナム、北朝鮮など、共産主義国家はどうなのか。共産 中国に比べて、ミャンマー報道が厳しすぎるのではないか」
がらりと変化が訪れたのは米国オバマ政権の「ピボット」である。制裁か ら友好へとスタンスを代えるや、経済支援強化、ミャンマー支援へと急激 に流れが変わり、安倍首相もヤンゴン入りし、日
本企業専用団地の起工式 に自ら出席するほど、日本の経済界はミャンマー進出に加速度を付けた。
全日空は直行便を飛ばし出し、ヤンゴン市内は建設ブームに沸き、駅前の 大規模開発に日本企業はチームを組む。
おっと。変わり身の早さで定評のある朝日は2013年10月12日付けで、一面 トップは「テインセイン大統領単独会見」とやった。
国会議員選挙はスーチー陣営の圧勝となり、スーチーは「大統領を超える 存在になる」と尊大な言辞をはいたため、さすがの日本のメディアも批判 的となった。スーチーの政治力はまったく未知
数、あのスタンスで過酷な 国際情勢に船出できるとは到底考えられないが、西側はまだミャンマーの 未来に期待する。
著者は本書の最後に提言している。
「大使館は首都のネピドーへ移管するべきではないのか」と。
移転しないのは制裁時代の名残であり、外交上からも首都に設置しない国 は、ほかに特殊事情のイスラエルくらいなものだろう。