「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 | 日本のお姉さん

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)2月2日(火曜日)
通算第4795号

中国人民解放軍、七つの軍区から五つの「戦区」へ組織改変を発表したが

唐突な組織改編をなぜ習近平は急いでいるのか?
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突然の発表だった。
昨師走に四大総部体制を「改称」し、あらたに15の部門に組織改編をした旨の発表があり、つぎに習近平の「軍師」とされた劉源の「勇退」が発表された。
現在七つある「軍区」を四つ、或いは五つの「戦区」へ改変するとされた事前の情報は実現されず、およそ一ヶ月遅れて「唐突」に2月1日の発表となった。

2月1日に北京の「八一ビル」で「解放軍戦区成立大会」が挙行され、習近平自らが出席し、それぞれの司令員に隊旗を手渡す儀式も行われた。五つの新軍区とは、「東部戦区」「西部戦区」「北部戦区」「南部戦区」、そして「中部戦区」。

新人事は下記の通り
「東部」司令員 劉澳軍。政治委員 鄭衛平
「南部」司令員 王教成 政治委員 魏亮
「西部」司令員 越宗岐 政治委員 朱福照
「北部」司令員 宋普選 政治委員 猪益民
「中府」司令員 韓衛国 政治委員 殷方龍

では中味はどうかと言えば現職の横滑りが殆どである。
東部司令員の劉澳軍は蘭州軍区司令員だった。北部司令員の宋普選は北京軍区から、南部司令員の王教成は瀋陽軍区から。西部の越司令員は済南軍区司令員から、中部戦区の司令員となった韓衛だけが北京軍区副司令からの栄転である。
注目は、南京軍区司令員の蔡英挺だ。

蔡だけが「信任」のポストの発表がないことで(2月2日現在)、習近平がもっとも信頼する軍人と言われるだけに、もっとパワフルな新任ポストが用意されているのではないかと事情通はいう。

理由は蔡英挺が習近平の福建省長時代から、当該軍区幹部として信頼あつく、また2013年に習が初めて新大将人事を任命した際にも習がじきじきに蔡英挺に陸軍大将とした経緯がある。

いずれにしても新人事による幹部は全員が50歳代。一気に軍高層部の若がえり進んだ。

こうなると次に注目すべきは「新軍事ドクトリン」になる。

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◆書評 ◎しょひょう
人肉カーニバル、餓死、死体の山
誰が中国河南省の未曾有の飢饉を救ったのか?


劉震雲著、劉燕子訳『人間の条件 1942』(集広舎)
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中国では日本人が逆立ちしても考えられないことがよく起きる。ありもしなかったことを「あった」と言うのは平気(所謂『南京大虐殺』)、あったことを『なかった』と宣言するのも平気(天安門事件)。
ひとりの人間が死んでも大騒ぎをする日本と、三百万人(300人ではありません、念のため)が死んでも気にもしない中国。この彼我の隔たりはいったい何から来ているのだろう?
日本で餓死者が連続したのは室町末期、世の太平が崩れ、京は飢えと盗賊と、対決する匪賊と、そして命がけの食料奪取合戦。おもわず映画「鮫」を思い出した。応仁の乱の頃である。
ところが日本で言う昭和の御代にお隣の中国は飢餓、蝗害。

本書の副題は『誰が中国の飢餓難民を救ったか』、そして先に回答を書いておくと、それは日本軍だった。
慈悲深き日本人は飢え死にしてゆく無辜の民を捨て置く中国の軍閥指導者や政治家とはことなって自分の食料を犠牲にしても人道的救助に邁進する。
蒋介石は逃げるときに河南省の花園堤防を切って、溺死者が百万近くでたが「それは日本軍がやった」と空とぼけて、決して責任をとらなかった。
洪水の犠牲を最小限におさえ、蒋介石軍の追跡より溺死者の救助にあたったのは日本軍だった。この美談を決して中国では教えていない。
1942年、河南省では飢饉により、300万人が餓死し、ほかに300万人が山西省へ逃れた。かれらを救ったのも日本軍だった。日本軍は自らの糧食を供給し、人道的立場から餓死寸前の民を救援した。
しかし、このことを中国政府は一切口にせず、箝口令を敷いた。この日本軍の美談は箝口令が敷かれたのだ。
1989年6月4日、天安門事件で無辜の学生、市民を軍が虐殺し、世界は総立ちになって中国を制裁した。中国は孤立したが、対外矛盾とすり替え、学生運動を『反革命暴乱』などと定義した。
しかし経済的孤立に耐えきれず、日本が経済支援を開始する。それも方励之博士の米国亡命と引き替えに、1991年に日本が経済援助を再開するという(米国から飲まされた)筋立てがあった。そして日中の雪解けムードが先行し、ようやく中国で1993年、この本の原著の発表にこぎ着けた。しかも2012年は映画にもなった。
本書は、その埋もれていた日本軍の美談をルポルタージュ小説に仮託した原著と、映画のシナリオを併載した二部構成となっている。このように歴史に埋もれていた美談、もっともっと人口に膾炙してほしいものである。
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◆書評 ◎しょひょう

まったく迷惑千万、やっかいな国がわが隣国とは
現世の欲望に血道をあげる民族的特性、その歴史観とは何なのか


黄文雄『世界に災難をばら撒き続ける中国の戦争責任』(徳間書店)
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黄文雄節がまたまた大音響とともに炸裂した。
その名調子、名人芸。つねにぐさりと敵の心臓部を突き刺し、病根を抉り出す。
中国はなぜ弱い軍隊なのに、戦争をしたがるのだろうか?
アジアの独立を妨げ、日中戦争を引き起こし、南シナ海で紛争を拡大させる構えにあるのはなぜ?
それは病理ともいえる、歴史的な宿痾だろうが、本書で黄文雄氏は、別な角度から習近平の中国の病理を抉り出している。
欧米のパンダハガーらの中国離れは習近平政権になった途端から甚だしくなった。親中派(パンダハガー)だったマイケル・ピルスベリー然り。
習近平はいったい何を狙っているのだろう?
中国という国は、はたして「国家」と言えるかどうかの議論は措くにしても、汚職と腐敗と強欲と果てしない現世への執着。そしてカネと女をめぐる強欲。人類愛とか博愛とか、ビョウドウの精神とか、かれらの前では寝言でしかない。

とくに「滑稽にして異形」なのは、と黄文雄節が炸裂する。
「つねに敵対勢力を作り出し、それを殲滅するための『革命』という大義名分さえあれば、いかなる形の戦争も、強盗や虐殺ですら、政治、個人、集団の誰も『戦争責任』を負わない」のが中国人の特性である。
中国人とは、と黄節がつづいて炸裂する。
「極端に世俗化した民族で、宗教心が弱く、物欲が強い。物欲のぶつかり合いの歴史」それが、この欲望天国の歴史だった。
かれらの唯物主義的人生観、そのドライな人生感覚と激しい物欲。カネへの執着。いやこれぞ『中国教』という宗教なのではないのか。
たとえ理想を掲げても、精神的紐帯より、派閥抗争が大好き。だから暴力が政治を支配するという原理が生まれ、現代中国はいまも、この独特な悪趣味的な民族の習性は変わらない。たぶん永久に変わらない。
じつに厄介な隣人と日本は宿命的な歴史的運命とともに直面している。
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(読者の声1)貴誌前号の「(読者の声1)貴誌4791号(2月26日)で、(R生、ハノイ)様が「フランコと大日本帝国」(フロレンティーノ・ロダオ著)の記述を紹介されていますが、マニラ市街戦で、日本軍が憂さ晴らしに無防備の市民を襲ったとあるがいかがなものか。スペイン人は南米やフィリピンで現地人を気晴らしに殺したようだが日本軍人はそういうことはしない。また武器弾薬が不足している状況で、弾薬を無駄にはしない。ただ敵のスパイの処刑はあっただろう。万国、野戦では共通だ。勿論これは人種差別ではない。これを記した人物はスペイン内戦の敗北で欧州から極東に逃げてきていた共産主義者だったのだろうか」への回答です。
「東海林」さまへ。その文章はわたしが書いたものではありませんので回答はできません。さらにいえば、その文章の「110万の日本軍犠牲者は常識から変な数字だな」とわたしも感じていました。
(R生、ハノイ)

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