「13%が援助交際」撤回には海外は関心薄…数字よりも根本的な問題に関心? | 日本のお姉さん

「13%が援助交際」撤回には海外は関心薄…数字よりも根本的な問題に関心?

「13%が援助交際」撤回には海外は関心薄…数字よりも根本的な問題に関心?
更新日:2015年11月13日

国連の「児童の売買、児童買春、児童ポルノ」に関する特別報告者のマオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏は、10月、視察のため日本を訪れていたが、26日の記者会見で「日本の女子学生の13%が援助交際に関わっている」と発言した。外務省の抗議を受け、11日、同氏は発言は誤解を招くものだったと認め、事実上撤回した。

◆発言から撤回に至るまでの流れ
ド・ブーア=ブキッキオ氏は国連人権理事会から「児童の売買、児童買春、児童ポルノ」に関する特別報告者に任命されている。世界中の児童の搾取について調査し、国連総会、人権委員会に報告書を提出するのがその使命だ。

26日の記者会見は、日本視察の締めくくりに行われたもの。その模様は動画で公開されている。会見では、通訳を通して、「女子学生の3割」が援助交際をしていると発言が伝えられたが、これは通訳ミスで、後に「13%」に訂正された。

11月2日、外務省は、同氏側に対して、13%という数値の情報源および根拠を開示すべきだと申し入れた。

同日、同氏側は、この問題に関する『説明』を発表した。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のウェブサイトで確認することができる(日本語訳あり)。その中で氏は、

・訪日中に、日本の「JKビジネス」の拡大範囲について、公式な統計は提供されていません。

と明らかにした。その一方で、13%という数字に言及した理由について、次のように釈明している。

・しかしながら話を聞いた多くの方が、これは憂慮すべき傾向であり、利益性の高い当ビジネスにかかわる未成年者の性的搾取につながりやすいとの懸念を示しました。記者会見では、緊急な取り組みが必要なこの現象を強調するために、公になっている推定値に触れました。

9日、外務省は、同氏が確かなソースを挙げられなかったことを受け、発言の撤回を強く求めた。外務省側の主張は次のとおり。

・今回の発言は不適当かつきわめて遺憾である
・国連の肩書きを持つ者が発言することにより、それがあたかも事実であるかのような誤解を生むことになり、その影響は深刻である
・緊急に対応すべき問題であることを強調するために根拠に乏しい数字を引用しても良いとの考えや、情報源も明らかにできないような信頼するに足りない情報を、記者会見や報告書で引用することは、到底受け容れられるものではない

国連特別報告者の発言であるという重みによって、根拠のない数字が独り歩きを始めてしまう危険性を、外務省はよく承知していたのだろう。

11日、同氏は、日本政府の代表機関に書簡を送付した。その中で同氏は次のように説明した。

・更なる検討の結果、13%という十分に立証されていない数値を裏付ける公的かつ最近のデータはなく、13%という概算への言及は誤解を招くものであったとの結論に至った
・このため、今後この数値を使用するつもりはなく、国連人権理事会に提出する報告書でも言及しない

政府側はこの説明をもって、同氏が「事実上、発言を撤回した」と受け止めた。AFPによると、同氏側から、この問題についてこれ以上の発言を行わないことが表明されており、この問題は片が付いたとみてよいだろう。

◆「援助交際」という語の使われ方
「女子学生の13%が援助交際に関わっている」という同氏の発言は、日本国内では大きな驚きと疑念を呼んだが、一つ注意すべきなのは、同氏は「援助交際」という語を、非常に広い意味で使っていることだ。『説明』の中で、「援助交際(いわゆる女子高生またはJKビジネス)」という言い方をしていることから分かるとおり、同氏は「援助交際」と「JKビジネス」を一体視している。問題となった記者会見では、援助交際は、最初は「JKお散歩」といったような非常に罪のない形から始まる、と述べたと伝えられている。氏は、それがやがて売買春にまでエスカレートすると懸念しているようだが、逆にいえば、13%の全員が売春をしていると考えていたわけではなかった。(なお、OHCHRウェブサイトで後日公開されたプレスステートメントでは、両者は区別されている。)

「援助交際」と「JKビジネス」の語の使い分けに関しては、AFPの説明のほうが日本での実態に近いようだ。それによると、「援助交際」は1990年代に出現したもので、年長の男性がティーンエージの少女に金を払って、セックスを含むことのあるデートを行うもの。一方「JKビジネス」という言い回しは、マッサージをしたり、男性に添い寝したり、一緒に散歩したりすることもある、より組織的かつ計画的な活動に適用される、としている。

BBCは、援助交際では、男性が、少女に交際してもらう代わりに現金や物を提供する、と抽象的に伝えている。

米外交専門誌フォーリン・ポリシー(FP)のニュースブログ「パスポート」となると、完全にド・ブーア=ブキッキオ氏の見方に飲み込まれている。援助交際は、年長の男性がティーンエージの女子学生にお金を払って、マッサージ、散歩からベッドでの添い寝まで、セックスにまではわずかに至らない行為をしてもらうものだと語る。通例、あからさまな性行為を含まないという点で売春と異なっている、と強調している。

◆海外メディアの関心はさほど高くない
日本国内での関心の高さに比べて、海外メディアのこの問題への関心はあまり高くなかった。26日の記者会見に関しては、「13%」発言よりも、「極端に児童ポルノ的な内容の漫画は禁止にすべきだ」という発言のほうが注目を集めていたかもしれない。

外務省が抗議を行ったことによって、ようやくニュースバリューを得た面もある。FPは、日本の「ハンバート・ハンバート」(小説『ロリータ』の主人公)たちは、日本政府の中に新たな力強い友人を得た、日本の「パパ」たちはひょっとすると、自分たちの国の政府の中に予想外の味方を見つけたかもしれない、とおどける。

外務省が発言の撤回を求めていることを伝えた報道であっても、報道の力点はむしろ、ド・ブーア=ブキッキオ氏側の主張、すなわち日本が抱えている問題は、緊急に取り組む必要があることを強調するため、この数字に言及したという説明に置かれているようだ。まさにその点に関して、外務省が反論を行ったことは、記事から省かれている。

背景にあるのは、日本はメディアにおける少女の性的な表現などに寛容すぎる、という海外メディアの認識だ。AFPは、ド・ブーア=ブキッキオ氏と外務省のやりとりについて、この小競り合いは、日本における少女の性的対象化という、厄介な側面とみなされるようになっているものを際立たせる、と語る。少女たちはメディアの中で、驚くほど際どく表現されることがしばしばで、これは国内では広く定着しているが、海外を驚かせることもあるものだ、と語っている。

同氏が発言を撤回したニュースとなると、海外メディアの反応はさらに薄い。AFPは律儀に続報として伝えている。しかし、性的虐待や違法行為の広がりの実態を正確に測定することは難しいことが判明している、と記事は語り、同氏をいくらか擁護していると見えなくもない。

(田所秀徳)
http://newsphere.jp/national/20151113-1/
「碧志摩メグ」の公認撤回、なぜ海外も注目? G7での安倍首相の立場を悪くするとも
更新日:2015年11月9日

「碧志摩メグ」の公認撤回、なぜ海外も注目? G7での安倍首相の立場を悪くするとも

三重県志摩市の海女の萌えキャラ「碧志摩メグ」が、「性的な部分を過剰に強調していて不快だ」という一部の現役海女らの抗議を受けていた問題で、志摩市は5日、同キャラクターの公認撤回を発表した。志摩市は来年5月のG7首脳会議(サミット)の開催地でもあることなどから、海外でもオタク系メディアばかりでなく、一般メディアでもこの問題がしばしば取り上げられてきた。今回の公認撤回については、お堅い経済紙として知られる英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)が詳しく報じている。

◆「いやらしい衣装と、海女という職業を軽く見たプロポーション」
FTは、『日本のG7開催市が、MANGAマスコットを性差別的とみなして取り下げ』という見出しで報じている。「碧志摩メグ」は、海女をモチーフにした長い黒髪の17歳の少女。最近ではほとんど見られなくなった白い伝統的な海女の衣装をアレンジした姿で、「巨乳」「はちきれそうな太もも」といった「萌え要素」が加味されている。FTは、これを「いやらしい衣装と、海女という職業を軽く見たプロポーション」と表現。そうした捉え方をし、不快感を覚えた現役の海女ら地元住民が今年8月、市に約300人分の署名を提出して、キャラクターの撤回を求めていた。

志摩市の大口秀和市長は、「およそ7割の海女に賛同をいただいたが、3割は公認を取り消してほしいということだった。そうしたことを考慮し、撤回の申し出を受けることにした」と説明した。FTは、この「碧志摩メグ」を巡る騒動を3つの論点で捉えている。

◆安倍首相にとってはG7に向け「デリケートな問題」
同紙は、「バラク・オバマや、アンゲラ・メルケルといったリーダーたちが5月に集う志摩市が、17歳のマスコット、碧志摩メグの公認を撤回すると発表した」という書き出しで今回の件を報じ、安倍首相がG7で受ける不利益に言及。「女性の職業」に対する差別が指摘されているだけに、「ウーマノミクス」を掲げる安倍首相の経済政策への影響を懸念する。「G7は安倍晋三首相の重要な見せ場になるが、この件はそこにデリケートな問題を投げかけるだろう」と指摘している。

また、日本の漫画・アニメにはびこる「児童ポルノ」に対する懸念も示している。国連の特別報告者が10月に日本に対して「子供を極端に性的に描いた漫画」を禁止するよう呼び掛けた件と結びつけ、志摩市のケースは「日本に広がる過度にセクシャルな漫画に対する懸念を象徴している」と述べる。ただし、同キャラクターが実在の海女をモデルにしているわけではなく、あくまで架空のファンタジックな存在だということも強調している。

さらに、海女をはじめとする日本の伝統産業の後継者不足と高齢化の問題を指摘。伊勢志摩地域の海女の現状を、平均年齢は65歳、1949年には6109人いた同地域の海女は昨年の統計では8分の1程度の761人に減っていると紹介したうえで、「若者たちは、安定収入が得られないことやダイビングの危険性を、海女になりたくない理由に挙げている。これは、日本の伝統産業全般に共通する傾向だ」と記している。

◆“エッチの母国”でも誰もがエッチなわけではない
一方、もともと「萌えキャラ」に肯定的な海外オタクたちの見方はどうか。米アニメ情報サイト『Anime News Network』の本件を伝える記事には、多くの読者コメントが寄せられて
いる。

・この問題を解決するのは簡単だ。今の衣装の代わりに現実の海女のようなウェットスーツを着せ、ショートカットにすればいい。それなら批判もなかったはずだ。(この書き込みへの返信)以前のマスコットはそんな感じだった。そして、全然人気がなかった。
・とてもがっかりだ。メグちゃんは自治体のもとを離れるだけで、何らかの形でサポートを続けるんだろうが……
・パール・ダイビングは、若い世代を惹きつけない限り数十年で滅びる。もし、若い人たちがこのマスコットを気に入っているのなら、年寄りの意見は無視するべきだ。
・真面目なところ、残念だ。このキャラクターはすごくかわいかったし、全く攻撃的とは言えないからね。

ゲームサイト『Playstation Lifestyle』も、この問題を取り上げている。同サイトは、日本製のゲームの中にはもっと「ecchi=エッチ」なキャラクターがいくらでもいるとし、「碧志摩メグ」は「むしろ退屈で保守的だ。みんなもそう思うだろう?」と記す。そして、日本の「萌えキャラ」が児童ポルノか否かという議論は、もう何年も続いているとしている。そのうえで、今回の騒動により、日本社会全体が「ニッチなゲームのエッチ」を受け入れているという、海外オタクの幻想が崩れたと指摘する。「ニッチなエッチの母国ですら、誰もがタッチスクリーンで14歳のHカップを揺らそうとするわけではないのだ」

(内村浩介)
http://newsphere.jp/national/20151109-1/