診療ミスで手足指20本切断 医療法人を提訴 | 日本のお姉さん

診療ミスで手足指20本切断 医療法人を提訴

いろんな医者の書き込みを読んでみると、なかなか一回で見抜くのは難しいらしい。
訴えても勝てないだろうということでした。このことから学んだことは、どんな傷でも早めに治すこと。かかとのひびは、治してしておくこと。虫歯も早めに治すこと。
どんなバイ菌が入り込むかわかったもんじゃない。

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診療ミスで手足指20本切断 医療法人を提訴
河北新報 12月3日(木)10時20分配信

宮城県岩沼市の整形外科クリニックを受診した宮城県南の60代の主婦が両手足の指20本を切断したのは、医師が病状を正しく認識せず適切な処置が遅れたためだとして、主婦が2日までに、病院を運営する同市の医療法人に約4400万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。

訴えによると、主婦は昨年11月、右脚が急に痛み出してクリニックを受診。医師は確定診断を下さず経過観察とし、主婦を帰宅させた。主婦は翌朝、激しい動悸(どうき)に襲われ、救急搬送先の別の医療機関が「壊死(えし)性筋膜炎」と診断した。主婦は次第に指先の血流が悪くなり、1カ月半後に壊死した両手足の指全てを切断した。

壊死性筋膜炎は病状の進行が速く、皮下組織の壊死につながる病気で、死亡率も高い。主婦は右足のかかとがひび割れており、細菌が侵入して発症した可能性がある。

主婦側は「症状から壊死性筋膜炎の恐れは十分考えられたのに、クリニックはよく似た別の病気を疑い、適切な医療機関に転送しなかった。初期診断が適切なら指の切断は防げた」と主張している。法人側は「訴訟に関するコメントは差し控える」と話している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151203-00000005-khks-soci

皮膚の壊死性感染症

皮膚の壊死性感染症は、感染した部分の皮膚が死んでしまうこと(壊死)が特徴の蜂巣炎の非常に重いタイプで、壊死性蜂巣炎、壊死性筋膜炎がこれに含まれます。

患部の皮膚は赤くなって触れると熱く感じられ、ときに腫れることもあり、また皮膚の下に気泡が生じることがあります。

通常、患者は非常に具合が悪くなり、高熱が出ます。

治療としては、壊死した皮膚を手術で取り除き、抗生物質を静脈内投与します。手術はときには広範囲に及ぶこともあります。

皮膚感染症の大半では、その部分の皮膚や付近の組織が死んでしまうことはありません。しかし、ときには細菌感染にかかった部分の皮膚にある微小な血管に血栓ができて詰まることがあります。血管が詰まると、その血管から栄養を受け取っている組織に血が流れなくなり、組織が死んでしまいます。血液を通じて体に行きわたる免疫防御のしくみ、つまり白血球や抗体などもその部分には届かなくなるため、感染症は急速に広がってコントロールするのが困難になります。こうなると、適切な治療を行っても患者が死亡することがあります。

皮膚の壊死性感染症の中には、筋肉の表面(筋膜)に沿って皮膚深部で壊死が広がるものがあり、これを壊死性筋膜炎といいます。皮膚の外側の層に沿って壊死が広がるものを、壊死性蜂巣炎といいます。皮膚の壊死性感染症を引き起こす細菌は、レンサ球菌属、クロストリジウム属など複数ありますが、多くの場合、この感染症は複数の細菌の組合せによって起こります。レンサ球菌による皮膚の壊死性感染症は、俗に「人喰い細菌症」と呼ばれていますが、他のものとほとんど違いはありません。

皮膚の壊死性感染症には刺し傷や裂傷がもとになって起こるものがあります。その傷口が土や泥で汚れている場合は特に起こりやすくなります。また、外科的な処置のため切開した部分や、特に傷のない正常な皮膚から始まることもあります。憩室炎(けいしつえん)、腸内の穿孔(せんこう)、腸の腫瘍がある人では、腹壁、性器周辺、大腿部などの皮膚に壊死性感染症が発症することがあります。これは、ある種の細菌が腸内から外へ出て皮膚まで広がることで起こります。この細菌は、まず腹腔内に膿瘍を形成し、それから皮膚表面へと直接広がるか、血流を介して皮膚や他の内臓に広がります。

症状と診断

多くの場合、蜂巣炎とほぼ同様の症状で始まります(細菌による皮膚感染症: 蜂巣炎(ほうそうえん)を参照)。感染部の皮膚は最初は青白く見えますが、すぐに赤くなるか日焼けしたような色になり、触れると熱をもっており、腫れることもあります。その後、皮膚は紫色に変化しますが、そこに液体の詰まった大きな水疱ができることがよくあります。この水疱の中にある液体は茶色くて水っぽく、嫌なにおいがすることもあります。皮膚組織が死んだ部分は黒くなります(壊疽[えそ])。クロストリジウム属やその他の細菌との組合せが原因の感染症では、その部分にガスが発生します(細菌感染症: ガス壊疽を参照)。そのガスは皮膚の下や水疱の中で泡をつくるため、その
部分の皮膚を押すとパチパチという音が聞こえます。初期段階では、感染症を起こした部分が痛みますが、皮膚組織が死ぬと神経が働かなくなるのでその部分は感覚を失い、何も感じなくなります。

患者は非常に具合が悪くなり、高熱、頻脈、また錯乱や意識消失などの精神的な症状がみられます。細菌が分泌した毒素と、感染症に対する体の反応の両方が原因となって血圧も下がります(敗血症性ショック-菌血症、敗血症、敗血症性ショック:
敗血症と敗血症性ショックを参照)。

皮膚の壊死性感染症の診断は、感染した部分の皮膚の様子、特に皮下に気泡が発生しているかどうかに基づいて行います。X線検査でもこのガスが発生しているかどうかがわかります。感染症の原因となった細菌の特定は、感染した体液と組織のサンプルを採取し、検査室で分析して行います。しかし、治療は原因細菌の特定を待つことなくすみやかに開始する必要があります。

予後(経過の見通し)と治療

全体としての死亡率は約30%です。高齢者、ほかの病気にもかかっている人、感染症がかなり進んだ段階にまで至った人では、さらに見通しが悪くなります。診断や治療が遅れたり、壊死した組織の外科的切除が不十分だった場合も予後は悪くなります。

壊死性筋膜炎の治療としては、外科手術により壊死した組織を切除した上で抗生物質の静脈内投与を行います。大量の皮膚、皮下組織、筋肉を切除しなければならない場合が多く、感染した腕や脚の切断が必要となることさえあります。高圧酸素室での治療を勧める医師もいますが、この方法がどれほど有効かについてはよくわかっていません。
原書最終査読/改訂月 2007年10月
http://merckmanuals.jp/home/%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E7%B4%B0%E8%8F%8C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%9A%AE%E8%86%9A%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%AE%E5%A3%8A%E6%AD%BB%E6%80%A7%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87.html
壊死性筋膜炎、これが疑うべき所見【研修最前線】
東京医科歯科大学、2013年研修医セミナー第25週「印象に残った症例の検討」-Vol.2
2014年5月7日 研修最前線 カテゴリ: 一般外科疾患・感染症・救急

「印象に残った症例の検討」
Vol.1◆急速に進行する壊死性筋膜炎
Vol.2◆壊死性筋膜炎、これが疑うべき所見
Vol.3◆敗血症で選択すべき抗菌薬は
Vol.4◆敗血症治療の目標は6時間以内
Vol.5◆「敗血症診療の基本」とは何か

急速に進行し、組織壊死を来す壊死性筋膜炎。
速やかな治療が求められるが、早期診断が難しい側面もある。
いかに鑑別し、治療すべきか。
東京医科歯科大学・研修医の生野由起氏が解説する。
まとめ:酒井夏子(m3.com編集部)

壊死性筋膜炎の鑑別
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講師は、東京医科歯科大学研修医の生野由起氏
生野 次に、私からは壊死性筋膜炎について説明したいと思います。

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壊死性筋膜炎の定義クリックすると大きな画像を閲覧できます。
壊死性筋膜炎とは、軟部組織感染症の1つです。皮膚は断面で見ますと、表皮、真皮、皮下組織の3層から構成されています。壊死性筋膜炎は、皮下組織、また浅層筋膜を炎症の場として急激に進む感染症です。その他に、軟部組織感染症の中には、蜂窩織炎や丹毒、毛包炎、よう、せつが含まれています。

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丹毒と毛包炎クリックすると大きな画像を閲覧できます。

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壊死性筋膜炎と蜂窩織炎クリックすると大きな画像を閲覧できます。

左側の写真は、丹毒です。主に顔面に好発します。突然発症し、急激に境界明瞭な浮腫性紅斑が拡大します。圧痛や熱感が強く、蜂窩織炎や壊死性筋膜炎より浅在性の病変で、紅斑は比較的明瞭です。右の写真が毛庖炎です。単一毛庖に限局した細菌性の感染症で紅斑を伴う膿胞として認めます。ニキビも毛庖炎の中に含まれています。毛庖炎は発達すると、「よう」や「せつ」と名前が変わります。

次の写真ですが、左が前述した壊死性筋膜炎の初診時の皮膚所見で、右が蜂窩織炎です。痛みのある発赤、腫脹は両方共通して見られる所見のため、鑑別に困難なこともあります。ただ、壊死性筋膜炎の方がさらに激烈な痛み、また病変部局所の紫斑、水庖、血庖、壊死が見られることが多く、壊死性筋膜炎の臨床診断上の大きなポイントとなります。

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壊死性筋膜炎の特徴クリックすると大きな画像を閲覧できます。

これが壊死性筋膜炎の特徴です。経過は急速に進行し、組織の壊死を来します。疼痛や不明熱が唯一の所見である場合、または初期には蜂窩織炎と類似した症状を呈しますので、判別が難しいことがありますので、1時間おきに症状を確認してください。皮膚が黒く壊死してきた場合には、必ず壊死性筋膜炎を疑うことが大事です。

特殊な壊死性筋膜炎とは

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壊死性軟部組織感染症クリックすると大きな画像を閲覧できます。
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溶血性レンサ球菌 Streptococcus pyogenesクリックすると大きな画像を閲覧できます。
軟部組織感染症の原因菌による分類を示しました。通常の壊死性筋膜炎には、Escherichia
coliやKlebsiellaが含まれます。今回はその中で特殊な壊死性筋膜炎を説明したいと思います。

その代表がA群β溶連菌によりTSS(Toxic Shock like Syndrome)をきたす劇症型A群β溶連菌感染症です。1987年にアメリカで最初に報告され、「ヒト食いバクテリア」などと呼ばれています。広範な壊死性筋膜炎に加え、急劇に、急性腎不全、血圧低下を伴い、発症24時間以内にそれらが合併するために早期診断の治療が極めて重要になります。

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ビブリオ Vibrio Vulnificusクリックすると大きな画像を閲覧できます。
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エアロモナス Aeromonas hydrophiliaクリックすると大きな画像を閲覧できます。

ビブリオも原因菌となります。世界中の海水に存在する嫌気性のグラム陰性桿菌で、感染経路はビブリオに汚染された魚介類の生食による経口感染が最も多く、他に海水の暴露で傷口等からの皮膚感染もあります。健常人では下痢や腹痛を生じる場合もありますが、重症化することは極めて稀となっています。基礎疾患としては、約90%が肝疾患を有しており、中でも肝硬変などが73%と高率です。一方で、敗血症型のビブリオ感染の症状は、数時間~2日程度で、早期に壊死性筋膜炎を呈し、短期間で敗血症ショックとなって死亡する極めて予後不良な感染症に分類されています。

エアロモナスですが、私たちがERで経験した症例の原因菌です。多くの症例が基礎疾患を有する免疫能低下の症例で、白血病や肝疾患が大半を占めます。基礎疾患のない例はわずか4%と言われています。感染経路は経口感染が多く、他に創部からの直接感染症を起こすこともあります。こちらも肝硬変などの肝疾患症例で、下肢の壊死性筋膜炎に対して切断を行っても敗血症に至り、救命できない例が多いと言われています。


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肝疾患に発症が多い理由クリックすると大きな画像を閲覧できます。

肝疾患に発症が多い理由としては、Kupffer細胞の細菌貪食能の低下や、側副血行路形成に伴う細菌の体循環への侵入、血清鉄濃度の上昇による細菌増殖との指摘もありましたが、まだまだ不明な点が多いのが現状のようです。

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診療アルゴリズムクリックすると大きな画像を閲覧できます。

壊死性筋膜炎を疑ったときの基本のアルゴリズムを示しました。皮膚軟部組織感染症の中で壊死性筋膜炎は比較的少なく、頻度は少ないものの、時に死に至る重症感染症です。前述したように起炎菌はさまざまですが、外科的なデブリドマンなしに救命は難しく、外科的診査が必要です。また、臨床的に起炎菌を絞り込むことは極めて困難のため、広域スペクトラムの抗菌薬が必須である点は共通しています。

壊死性筋膜炎の診断と治療

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診断クリックすると大きな画像を閲覧できます。

壊死性筋膜炎の診断ですが、外科的な診査が重要となってきます。壊死性筋膜炎を疑った場合には、速やかに外科にコンサルトして、病変部を切開し、筋肉の観察とグラム染色、培養による検討を行ってください。CTなどの画像も重要ですが、外科へのコンサルトが第一です。

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減張切開後クリックすると大きな画像を閲覧できます。

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切断線クリックすると大きな画像を閲覧できます。

本症例の減張切開後の写真です。まず可及的速やかに処置室で減張切開を行い、起因菌の検討・同定のために、血液や深部組織からの検体を培養に提出しています。左の写真のように下肢が壊死しておりましたので、広義のデブリドマンとしてアンプテーションを施行する方針としました。切断線が赤いラインです。

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デブリドマンの範囲クリックすると大きな画像を閲覧できます。

デブリドマンを行う範囲ですが、壊死に至っている黒い部分は勿論、まだ壊死に至っていない紅斑の部分も含めて、十分にデブリを行ってください。紅班のみの部分にも、壊死性筋膜炎の所見や細菌のコロニーが認められていたとの報告があるからです。また、初回のデブリドマンだけでは壊死組織が創内に残存し、それが深部感染症に発展することが有り得るために、2nd lookのデブリドマンが
有効と言われております。可能な限り1週間以内 に再度デブリドマンを行う必要があり、本症例でも行っています。

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まとめクリックすると大きな画像を閲覧できます。

以上をまとめますと、初診時の皮膚所見から壊死性筋膜炎を疑い、可及的速やかに処置室で減張切開し、血液と組織を培養に提出しました。その後、手術室でアンプテーションを施行し、ICUにてエンドトキシン吸着療法(PMX)や全身管理を行いました。次に、全身管理について竹内先生に説明していただきたいと思います(続く)。
https://www.m3.com/open/clinical/news/article/209377/