イラン、戦略の調整期――現状は明王朝の末期に似てきたか
国というものは、孤立して世界から嫌われると
進歩しなくなって消えていくものなのだろうね。
~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)11月17日(火曜日)
通算第4728号 <前日発行>
シーア派過激思想はまわりをスンニ派に取り囲まれた
イラン、戦略の調整期――現状は明王朝の末期に似てきたか
***********************
気がつけば四面楚歌。項羽が慌てたように、イランはすっかり周囲を敵に囲まれたことに気がついたのではないか。IS(イスラム国)とて、イランのシーア派には敵対的である。
国家戦略とは国力が基本となって、その軍事力、経済力を総体比較し、さらに当該国家の国民の意思力による。合理的な自己洞察、自己評価、そして懸命な方策により生き残りの道を考えるのが戦略的発想の基本である。
イランはホメイニ師を仰ぐイスラム革命の成功に酔って、テヘランの米国大使館になぐりこみ、長期に人質をとって米国と敵対した。
『悪魔の詩』の作者、サルマン・ラシディに死刑判決を出し、世界各地にテロリストを送り込んだ。日本でも翻訳者が殺害された。
棚からぼた餅の革命だったのに、自己の革命思想の成功と誤断し、ナショナリズムによって狂信的な思想をイスラム圏に輸出し始める。世界はイランを嫌った。
イランの国家戦略の第一期調整はイラン・イラク戦争による。
ホメイニ師の死去にともない穏健派のラフサンジャニ師の政権ができると、より合理的な路線を歩み始める。
当面の国家目標はイラン・イラク戦争ですっかり疲弊した経済の再建と合理主義的な諸政策の立案で、外交的な路線に調整が見られた。ペルシアの伝統とイスラムの正統性を堅持しながらも、耐久の時代だったと総括できるかも知れない。
とは言っても米国とイスラエルの敵対路線は変更がなかった。
つぎなるイランの調整期はオサマ・ビンラディンの登場だった。
米国を襲った同時テロを受けて、イスラムの影響力の高まりとともにイランは核武装を志向し、ナタンズなどに核施設を建設する。ハタミ政権では伝統的なイスラムへの回帰が見られ、外交は原則的な調整が利かなかった。
イランは露骨に地域覇権を志向していると見られたが、これらは原油代金の高騰という背景があり、経済の回復とともに実現が可能だった。
そして狂信的なアーマドネジャット政権は真っ向から西側に挑戦をいどみ、その勇ましきナショナリズムが国内でさえ孤立していたことを指導者は気がつかなかった。知識人は親西側ではないが、もうすこし合理的は判断ができる知識人が主流だった。
しかし、エネルギー枯渇の中国、印度がさかんにイランから原油を輸入したため、経済力に余裕が生まれ、イランはSCOを積極的に活用しながら、周辺諸国への影響を浸透させる一方で中南米、アフリカ諸国へも進出を果たす。
こうしたイランの強気戦略はチュニジアから破綻が始まった。
第三の調整は「アラブの春」である。
各地でシーア派や過激派が跋扈し、その「民主革命」に失敗する段階で、イランはアサド政権にテコ入れを強化しつつ、ガザへの武器搬入を活発化した。
これですっかりイランへの警戒心を高めたのがサウジアラビア、UEA、そしてトルコだった。
スンニ派の跳ね上がりISがシリアからイラクへ南下し、欧米でもテロリズム活動を展開するや、世界のイランをみる目がすっかり変貌した。
中東の宗教地図はすっかりスンニ派になり、そのうえ原油代金は下落し、イラン経済を直撃した。イランはパラノイア的な狂信的シーア派思想の輸出を中断し、より穏健で合理的な道を歩む必要が求められた。
自制的で、合理的な外交政策を選択しなければ、「かつて明王朝は外敵から身を守るために万里の長城を築き、鎖国した結果、文化伝統の高揚はあったが、相対的な力の衰退を招き、ある日、満州族に政権を奪われた。この歴史のパターンが示すように、イランの周りがスンニ派の世界に変貌したことを甚大な危機として認識し始めた」(ケビン・リン、中東アナリスト、『ナショナル・インタレスト』誌、11月16日)。
とはいえ世界はイランへの警戒感を緩めず、サウジアラビアはロシアに接近して外交上の挽回をはかり、欧米は中東の不安定化をおそれ、しかも原油代金は依然として低迷している。
輻輳する諸情勢のなか、いまや中東の政治地図はイスラエル vs パレスチナはすっかり色あせて傍流となった。
樋泉克夫の知道中国シリーズ 樋
【知道中国 1323回】
――「市店雜踏、穢臭衝鼻、覺頭痛??」(岡64)
岡千仞『觀光紀游』(岡千仞 明治二十五年)
△
23日は広州税関の前に山と積まれた輸出入物資を目にして貿易の盛行を実感するが、ここでも和服姿の岡は、蟻集する兵卒に取り囲まれ道を遮られてしまう。やはり中国人は物見高い。かれこれと岡の姿を評定しながら、無駄に時を過ごしたに違いない。であるからこそ「中国人は暇潰しの名人」との林語堂の指摘は至言というべきだ。
次に欧米租界に足を向ける。幕末長崎の出島と同じような構造で、1本の橋が現地社会とを結ぶ唯一のルートだが、その橋の上には、これみよがしに銃が並べられている。中国人に対する威嚇だろう。赤い軍服の兵士は座り込み、横になり、あるいはジャレ合ったりで規律がない。どうやら暴徒がフランス人を襲撃し、租界内の建物に火を放ったことから、租界側が防備のために常備兵を置いたとのこと。
この日、岡は広東語を学んでいる日本人の廣瀬某から広東語教科書を見せられ、
――北京ではイギリス人が編纂した「北京語學書」を目にしたが、「字句文意」はおおよそ理解できる。だが広東語に至っては一般の単語すらチンプンカンプンだ。聞くところでは他省の人が広東にやってきても言葉が通じない。筆談、あるいは英語で辛うじて意思疎通が可能とのこと。官吏は「官話」を話すが、庶民にとって「官話」は理解できない。そんなわけで官吏と庶民とは互いが「異邦人」のようであり、全く以て不便極まりない。(1月23日)――
かつて中国には(もちろん岡の時代にも)、全国で通用する共通の言葉はなかった。わずかに「官話」のみが全国で意思疎通が可能であったが、それは役人の世界に限られた話であり、専ら庶民は方言しか話さない。その方言は細分化され、極端な話では県境を越えればチンプンカンプンだった。そこでまたまた香港時代の思い出を。
香港で最初に学んだのは新亜書院の大学院組織である新亜研究所。もちろん在籍者の大部分は広東人である。若者だから中国語も話すが、広東語訛がキツクて隔靴掻痒。院生間の共通言語は、やはり広東語。先輩の中に、いつも仲間外れのような存在が1人いた。名前は麦さん。同じ広東省だが台山県出身。親しくなった先輩の1人に「どうして麦さんは仲間外れなのか」と尋ねると、「ヤツの研究は論文を読めば判るが、話す段になると台山語だ。台山方言は独特で、オレ達にはサッパリ判らない」と。はてさて、そういうものかと納得したものだが、ある時、その麦さんが論文審査で優秀との評価を得て、日本政府の奨学金で京都大学の大学院に2年間留学することとなった。
そして2年が過ぎる。大論文を仕上げて麦さんは“凱旋”。そこで院生仲間で歓迎の昼飯に。相変わらず麦さんは仲間外れ気味。もちろん京都大学大学院での赫々たる研究成果への嫉妬が混じっていたと思うが。とはいえ麦さんは2年前とは比較にならないくらい快活に振舞う。食事をしながらも話し、笑う。もちろん、お相手は小生のみ。
数日後、大学院の廊下ですれ違った先輩から、「おい、お前、いつ台山語を習ったんだ」と声を掛けられた。一瞬、何を言っているのか理解できなかったが、暫くして納得した。あの時、じつは麦さんとは日本語でバカ話をしていた。つまり広東人の先輩には台山語と日本語の区別がつかなかったのだ。日本語も台山語も同じ音に聞こえたに違いない。
百数十年も昔の岡の時代ではない。70年代前半の、しかも香港での話である。
このように中国においては方言が秘めた、ことに日常会話における影響力は絶対的だったであればこそ全国的な意思疎通を可能にするためには漢字という文字を並べ文章に綴るしかないのだが、厳密にいうなら方言は日本人が目にしたことのないような独特の漢字と文法体系を持つわけだから、なんとも始末に負えない・・・やはり、ヤレヤレ。
《QED》
♪
(読者の声1)フランスの今後予想――愛国心が極めて強いフランス 良い方にでることは歓迎だが悪い方にでてくる懸念は大だ!
●まずイスラムへの復讐心で非インテリ階層の怒りが爆発 何の罪も無いイスラム教徒やモスクにリンチ・モスク焼き討ちがいまそこにある危機としてある。それはパリのみならずフランス全域に広がるだろう
●難民に対する拒否がはっきりと出て来る。これなしには大統領選挙に勝てなくなる。この点は僕は歓迎だ。何故なら難民は単なる寄生虫的経済難民がほとんどでかつキチガイ集団が混ざっているからだ。現に今回も居た。
●こんな中で極右政党フロントナショナルのマリー・ル・ペン女史が大統領に当選の可能性がでてきた。彼女は父親(いま近親憎悪の関係だが)ゆずりの移民排斥の人種差別者である。
この場合、フランス全域で白人至上主義フランス人至上主義思想が、フランスの基本である自由・博愛・平等を基礎とする民主主義を破壊してしまい、ロシアよりの資金を梃に欧州に大混乱あるいは最悪戦争をもたらす可能性ある。
欧州がこれにより大混乱 ドイツ・北欧・オランダ・スイス・オーストリアに移民排斥・人種差別の極右政権が続々と誕生 ついにモスレム国家との世界戦争がユダヤも巻き込み噴火する。
その間隙をぬってシナが日本を占領 アメリカも人種差別者が大統領日本をシナに手放す。
こんな悪夢が現実化しそうだ!あの習屠殺人が今回ニンマリつまりウイグルのイスラム教徒弾圧のお墨付きをG20にて狙っているからだ。もちろんチベット独立運動もテロリストとして片付ける魂胆もある。
いよいよ地球は滅びるかも!
(AO生、世田谷)
♪
(読者の声2)貴誌4727号(読者の声2)で、「ST生」様は「新南群島(英語名:Spratly Island、中国名: 南沙諸島)」に関して、「日本政府いまでも国際法上日本が領有していると明言云々」
と書かれていますが、同島は、わが国はサンフランシスコ条約で領有権を放棄しています(第二条(f))。
何かの思い違いではありませんか?
(KT生 埼玉)
♪
(読者の声3)「外交」とは何だ?と感じさせられました。
戦いなれた国は違うものですね。これができていれば慰安婦も南京事件も無かったでしょう。
さて貴誌4727号「トルコ政府は、この中国システムの導入を中止すると発表し、まさに習近平の顔を泥を塗るかたちとなった」
まさかの「SDRいり」。日本の財務省などは消費税増税など姑息過ぎます。また評判を落とす事になるでしょう。「銭」の力は大きい。ODA 官庁外務省も使い方をシナに習いに行くべきであります。
「IMF理事会が人民元のSDR入りを原則承認したことで、にこにこ顔の習近平、ここでトルコから手痛いブローを受けた」
ごもっとも。
(桃太郎 岡山)
♪
(読者の声4)貴誌4727号(読者の声1)氏にR生氏が英国に「反日ムード満載でしたよ。その根は橋本土下座だと『当時』の自分は確信していました。謝罪すれば、一方的な悪役となるのが西洋文化です。アメリカでは、交通事故をしても決して誤らないといいますよね。橋本『土下座』訪英でイギリス人は日本人が一方的に悪いと確信したわけです」
と書かれました。
30年以上前、英国で働いていた時、週刊経済新聞「The Economist Newspaper」を定期購読し始め、それから20年間ほど読んでいました。
ある号に第二次大戦中の日本の捕虜虐待に関する記事がありましたが、翌号の読者の投書欄に元英国軍将校の投稿があり、第二次大戦中日本軍の捕虜となったが、日本軍は捕虜に対して良好な取扱いをしていたと自分の体験を引いて当該記事の間違いを指摘していました。分かる人はわかっているのです。
今から五十年位前、当時の皇太子殿下が訪英する前、英国で反対運動が起きました。
オックスフォード大学ラグビー部の部員たちが英国を代表する新聞である「The Times」に全面広告をだし、「我々は日本の皇太子の訪英を歓迎する」と訴えました。
その直前に日本で親善試合を行い、その際の心あたたまる対応を引いて、日本との友好の重要性を説きました。こういったことさらにこういったことが引き起こされるもととなる行為と言葉の積み重ねが重要です。
一刀両断に決めつけても、改善にはつながりません。
もっとも橋本元首相のようなぼんくらが首相とならないよう選挙民が投票することも肝要です。
(ST生、千葉)
□◎▽□○
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宮崎正弘 v 佐藤優『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
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(C)有限会社宮崎正弘事務所 2015 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示
進歩しなくなって消えていくものなのだろうね。
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)11月17日(火曜日)
通算第4728号 <前日発行>
シーア派過激思想はまわりをスンニ派に取り囲まれた
イラン、戦略の調整期――現状は明王朝の末期に似てきたか
***********************
気がつけば四面楚歌。項羽が慌てたように、イランはすっかり周囲を敵に囲まれたことに気がついたのではないか。IS(イスラム国)とて、イランのシーア派には敵対的である。
国家戦略とは国力が基本となって、その軍事力、経済力を総体比較し、さらに当該国家の国民の意思力による。合理的な自己洞察、自己評価、そして懸命な方策により生き残りの道を考えるのが戦略的発想の基本である。
イランはホメイニ師を仰ぐイスラム革命の成功に酔って、テヘランの米国大使館になぐりこみ、長期に人質をとって米国と敵対した。
『悪魔の詩』の作者、サルマン・ラシディに死刑判決を出し、世界各地にテロリストを送り込んだ。日本でも翻訳者が殺害された。
棚からぼた餅の革命だったのに、自己の革命思想の成功と誤断し、ナショナリズムによって狂信的な思想をイスラム圏に輸出し始める。世界はイランを嫌った。
イランの国家戦略の第一期調整はイラン・イラク戦争による。
ホメイニ師の死去にともない穏健派のラフサンジャニ師の政権ができると、より合理的な路線を歩み始める。
当面の国家目標はイラン・イラク戦争ですっかり疲弊した経済の再建と合理主義的な諸政策の立案で、外交的な路線に調整が見られた。ペルシアの伝統とイスラムの正統性を堅持しながらも、耐久の時代だったと総括できるかも知れない。
とは言っても米国とイスラエルの敵対路線は変更がなかった。
つぎなるイランの調整期はオサマ・ビンラディンの登場だった。
米国を襲った同時テロを受けて、イスラムの影響力の高まりとともにイランは核武装を志向し、ナタンズなどに核施設を建設する。ハタミ政権では伝統的なイスラムへの回帰が見られ、外交は原則的な調整が利かなかった。
イランは露骨に地域覇権を志向していると見られたが、これらは原油代金の高騰という背景があり、経済の回復とともに実現が可能だった。
そして狂信的なアーマドネジャット政権は真っ向から西側に挑戦をいどみ、その勇ましきナショナリズムが国内でさえ孤立していたことを指導者は気がつかなかった。知識人は親西側ではないが、もうすこし合理的は判断ができる知識人が主流だった。
しかし、エネルギー枯渇の中国、印度がさかんにイランから原油を輸入したため、経済力に余裕が生まれ、イランはSCOを積極的に活用しながら、周辺諸国への影響を浸透させる一方で中南米、アフリカ諸国へも進出を果たす。
こうしたイランの強気戦略はチュニジアから破綻が始まった。
第三の調整は「アラブの春」である。
各地でシーア派や過激派が跋扈し、その「民主革命」に失敗する段階で、イランはアサド政権にテコ入れを強化しつつ、ガザへの武器搬入を活発化した。
これですっかりイランへの警戒心を高めたのがサウジアラビア、UEA、そしてトルコだった。
スンニ派の跳ね上がりISがシリアからイラクへ南下し、欧米でもテロリズム活動を展開するや、世界のイランをみる目がすっかり変貌した。
中東の宗教地図はすっかりスンニ派になり、そのうえ原油代金は下落し、イラン経済を直撃した。イランはパラノイア的な狂信的シーア派思想の輸出を中断し、より穏健で合理的な道を歩む必要が求められた。
自制的で、合理的な外交政策を選択しなければ、「かつて明王朝は外敵から身を守るために万里の長城を築き、鎖国した結果、文化伝統の高揚はあったが、相対的な力の衰退を招き、ある日、満州族に政権を奪われた。この歴史のパターンが示すように、イランの周りがスンニ派の世界に変貌したことを甚大な危機として認識し始めた」(ケビン・リン、中東アナリスト、『ナショナル・インタレスト』誌、11月16日)。
とはいえ世界はイランへの警戒感を緩めず、サウジアラビアはロシアに接近して外交上の挽回をはかり、欧米は中東の不安定化をおそれ、しかも原油代金は依然として低迷している。
輻輳する諸情勢のなか、いまや中東の政治地図はイスラエル vs パレスチナはすっかり色あせて傍流となった。
樋泉克夫の知道中国シリーズ 樋
【知道中国 1323回】
――「市店雜踏、穢臭衝鼻、覺頭痛??」(岡64)
岡千仞『觀光紀游』(岡千仞 明治二十五年)
△
23日は広州税関の前に山と積まれた輸出入物資を目にして貿易の盛行を実感するが、ここでも和服姿の岡は、蟻集する兵卒に取り囲まれ道を遮られてしまう。やはり中国人は物見高い。かれこれと岡の姿を評定しながら、無駄に時を過ごしたに違いない。であるからこそ「中国人は暇潰しの名人」との林語堂の指摘は至言というべきだ。
次に欧米租界に足を向ける。幕末長崎の出島と同じような構造で、1本の橋が現地社会とを結ぶ唯一のルートだが、その橋の上には、これみよがしに銃が並べられている。中国人に対する威嚇だろう。赤い軍服の兵士は座り込み、横になり、あるいはジャレ合ったりで規律がない。どうやら暴徒がフランス人を襲撃し、租界内の建物に火を放ったことから、租界側が防備のために常備兵を置いたとのこと。
この日、岡は広東語を学んでいる日本人の廣瀬某から広東語教科書を見せられ、
――北京ではイギリス人が編纂した「北京語學書」を目にしたが、「字句文意」はおおよそ理解できる。だが広東語に至っては一般の単語すらチンプンカンプンだ。聞くところでは他省の人が広東にやってきても言葉が通じない。筆談、あるいは英語で辛うじて意思疎通が可能とのこと。官吏は「官話」を話すが、庶民にとって「官話」は理解できない。そんなわけで官吏と庶民とは互いが「異邦人」のようであり、全く以て不便極まりない。(1月23日)――
かつて中国には(もちろん岡の時代にも)、全国で通用する共通の言葉はなかった。わずかに「官話」のみが全国で意思疎通が可能であったが、それは役人の世界に限られた話であり、専ら庶民は方言しか話さない。その方言は細分化され、極端な話では県境を越えればチンプンカンプンだった。そこでまたまた香港時代の思い出を。
香港で最初に学んだのは新亜書院の大学院組織である新亜研究所。もちろん在籍者の大部分は広東人である。若者だから中国語も話すが、広東語訛がキツクて隔靴掻痒。院生間の共通言語は、やはり広東語。先輩の中に、いつも仲間外れのような存在が1人いた。名前は麦さん。同じ広東省だが台山県出身。親しくなった先輩の1人に「どうして麦さんは仲間外れなのか」と尋ねると、「ヤツの研究は論文を読めば判るが、話す段になると台山語だ。台山方言は独特で、オレ達にはサッパリ判らない」と。はてさて、そういうものかと納得したものだが、ある時、その麦さんが論文審査で優秀との評価を得て、日本政府の奨学金で京都大学の大学院に2年間留学することとなった。
そして2年が過ぎる。大論文を仕上げて麦さんは“凱旋”。そこで院生仲間で歓迎の昼飯に。相変わらず麦さんは仲間外れ気味。もちろん京都大学大学院での赫々たる研究成果への嫉妬が混じっていたと思うが。とはいえ麦さんは2年前とは比較にならないくらい快活に振舞う。食事をしながらも話し、笑う。もちろん、お相手は小生のみ。
数日後、大学院の廊下ですれ違った先輩から、「おい、お前、いつ台山語を習ったんだ」と声を掛けられた。一瞬、何を言っているのか理解できなかったが、暫くして納得した。あの時、じつは麦さんとは日本語でバカ話をしていた。つまり広東人の先輩には台山語と日本語の区別がつかなかったのだ。日本語も台山語も同じ音に聞こえたに違いない。
百数十年も昔の岡の時代ではない。70年代前半の、しかも香港での話である。
このように中国においては方言が秘めた、ことに日常会話における影響力は絶対的だったであればこそ全国的な意思疎通を可能にするためには漢字という文字を並べ文章に綴るしかないのだが、厳密にいうなら方言は日本人が目にしたことのないような独特の漢字と文法体系を持つわけだから、なんとも始末に負えない・・・やはり、ヤレヤレ。
《QED》
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(読者の声1)フランスの今後予想――愛国心が極めて強いフランス 良い方にでることは歓迎だが悪い方にでてくる懸念は大だ!
●まずイスラムへの復讐心で非インテリ階層の怒りが爆発 何の罪も無いイスラム教徒やモスクにリンチ・モスク焼き討ちがいまそこにある危機としてある。それはパリのみならずフランス全域に広がるだろう
●難民に対する拒否がはっきりと出て来る。これなしには大統領選挙に勝てなくなる。この点は僕は歓迎だ。何故なら難民は単なる寄生虫的経済難民がほとんどでかつキチガイ集団が混ざっているからだ。現に今回も居た。
●こんな中で極右政党フロントナショナルのマリー・ル・ペン女史が大統領に当選の可能性がでてきた。彼女は父親(いま近親憎悪の関係だが)ゆずりの移民排斥の人種差別者である。
この場合、フランス全域で白人至上主義フランス人至上主義思想が、フランスの基本である自由・博愛・平等を基礎とする民主主義を破壊してしまい、ロシアよりの資金を梃に欧州に大混乱あるいは最悪戦争をもたらす可能性ある。
欧州がこれにより大混乱 ドイツ・北欧・オランダ・スイス・オーストリアに移民排斥・人種差別の極右政権が続々と誕生 ついにモスレム国家との世界戦争がユダヤも巻き込み噴火する。
その間隙をぬってシナが日本を占領 アメリカも人種差別者が大統領日本をシナに手放す。
こんな悪夢が現実化しそうだ!あの習屠殺人が今回ニンマリつまりウイグルのイスラム教徒弾圧のお墨付きをG20にて狙っているからだ。もちろんチベット独立運動もテロリストとして片付ける魂胆もある。
いよいよ地球は滅びるかも!
(AO生、世田谷)
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(読者の声2)貴誌4727号(読者の声2)で、「ST生」様は「新南群島(英語名:Spratly Island、中国名: 南沙諸島)」に関して、「日本政府いまでも国際法上日本が領有していると明言云々」
と書かれていますが、同島は、わが国はサンフランシスコ条約で領有権を放棄しています(第二条(f))。
何かの思い違いではありませんか?
(KT生 埼玉)
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(読者の声3)「外交」とは何だ?と感じさせられました。
戦いなれた国は違うものですね。これができていれば慰安婦も南京事件も無かったでしょう。
さて貴誌4727号「トルコ政府は、この中国システムの導入を中止すると発表し、まさに習近平の顔を泥を塗るかたちとなった」
まさかの「SDRいり」。日本の財務省などは消費税増税など姑息過ぎます。また評判を落とす事になるでしょう。「銭」の力は大きい。ODA 官庁外務省も使い方をシナに習いに行くべきであります。
「IMF理事会が人民元のSDR入りを原則承認したことで、にこにこ顔の習近平、ここでトルコから手痛いブローを受けた」
ごもっとも。
(桃太郎 岡山)
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(読者の声4)貴誌4727号(読者の声1)氏にR生氏が英国に「反日ムード満載でしたよ。その根は橋本土下座だと『当時』の自分は確信していました。謝罪すれば、一方的な悪役となるのが西洋文化です。アメリカでは、交通事故をしても決して誤らないといいますよね。橋本『土下座』訪英でイギリス人は日本人が一方的に悪いと確信したわけです」
と書かれました。
30年以上前、英国で働いていた時、週刊経済新聞「The Economist Newspaper」を定期購読し始め、それから20年間ほど読んでいました。
ある号に第二次大戦中の日本の捕虜虐待に関する記事がありましたが、翌号の読者の投書欄に元英国軍将校の投稿があり、第二次大戦中日本軍の捕虜となったが、日本軍は捕虜に対して良好な取扱いをしていたと自分の体験を引いて当該記事の間違いを指摘していました。分かる人はわかっているのです。
今から五十年位前、当時の皇太子殿下が訪英する前、英国で反対運動が起きました。
オックスフォード大学ラグビー部の部員たちが英国を代表する新聞である「The Times」に全面広告をだし、「我々は日本の皇太子の訪英を歓迎する」と訴えました。
その直前に日本で親善試合を行い、その際の心あたたまる対応を引いて、日本との友好の重要性を説きました。こういったことさらにこういったことが引き起こされるもととなる行為と言葉の積み重ねが重要です。
一刀両断に決めつけても、改善にはつながりません。
もっとも橋本元首相のようなぼんくらが首相とならないよう選挙民が投票することも肝要です。
(ST生、千葉)
□◎▽□○
<<新刊予告>> 宮崎正弘 vs 宮脇淳子『中国壊死』(ビジネス社)
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宮崎正弘 vs 宮脇淳子
『中国壊死 百年変わらない腐敗の末路』(ビジネス社)
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近代史家の宮脇淳子さんは、モンゴル、満州、チベットにとくに造詣が深く、独自の文明観から中国史を説かれる。現代中国の経済分析では定評のある宮崎と縦横無尽にシナについて語り合った。
でてくる結末は中国が近いうちに「壊死」をむかえるのではないか、という未来予測だ!
――22日ごろ全国一斉発売(定価1188円)
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宮崎正弘の新刊案内 http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
宮崎正弘の書き下ろし最新刊 三刷!
『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』
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――経済成長はついに7%を切り、米中首脳会談も完全に失敗に終わった。
――新シルクロード構想やAIIBなども展望が開けず、泥沼化する権力闘争のなかで、追い詰められた習近平は国内統制と軍事覇権の追求にひた走っている。
――各国を丹念に取材してきた著者が、衰退と暴走を繰り返す中国を、ついに切り捨て始めた世界の変化を明らかにし、「習近平Xデー」の可能性と中国の末路を分析する。
――混乱と崩壊へと向かいつつある中国の実態と、今後の世界情勢がわかります。
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宮崎正弘 vs 石平 三刷出来!
『私たちの予測した通り、いよいよ自壊する中国』(ワック、972円)
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―今頃になって日本のマスコミは中国経済の崩壊予測を流し始めているが、バブル崩壊から、人民元の切り下げ、上海株暴落はふたりが以前から予測したとおりで、次におこることは未曾有のシナリオになる、とする。
―凄まじい権力闘争が中国国内で闘われている。日本のマスコミは、なぜ、その裏面をもっとつたえないのだろうか?
―中国論、必読の対話、封切り版。
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宮崎正弘のロングセラー
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『アジアインフラ投資銀行の凄惨な末路』(PHP研究所、999円)
『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収・合併する日』(ビジネス社)
『中国、韓国は自滅し、アジアの時代がやってくる!』(海竜社、1080円)
『中国大破綻 ついに失われる20年に突入する』(PHP研究所、1404円)
『日本と世界を動かす悪の「孫子」』(ビジネス社。1188円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、定価1620円)
『中国・韓国を“本気で”見捨て始めた世界』(徳間書店 1080円)
『台湾烈々 世界一の親日国家がヤバイ』(ビジネス社、1188円)
『「中国の時代」は終わった』(海竜社、定価1080円)
『中国共産党、三年以内に崩壊する!?』(海竜社、1080円)
『中国バブル崩壊が始まった』(海竜社、1080円)
『中国 大嘘つき国家の犯罪』(文芸社文庫、713円)
<宮崎正弘の対談シリーズ>
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宮崎正弘 v 渡邊哲也『激動する世界経済!』(ワック、994円)
宮崎正弘 v 室谷克実『日本に惨敗し ついに終わる中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 小川榮太郎『保守の原点』(海竜社。1620円)
宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 石平『2015年 中国の真実』(ワック、シリーズ第五弾)
宮崎正弘 v 大竹慎一『中国崩壊で日本はこうなる』(1512円。徳間書店)
宮崎正弘 v 西部遭『日米安保五十年』(海竜社)
宮崎正弘 v 黄文雄『世界が知らない中国人の野蛮』(徳間書店)
宮崎正弘 v 佐藤優『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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