日本アメリカの立場から他国を批判しますがではどうする?何をどうすれば良いか?が抜けています。
★なぜ、習近平は、日本の「ユネスコ分担金停止」に歓喜するのか?
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
CGS動画、6回目が出ました。
私が体験した、
ロシア外務省附属モスクワ国際関係大学の教育について話しています。
秘密を知りたい方はこちら。
↓
https://www.youtube.com/watch?v=n3puylPO-HY
さて、最近読者さんから一番質問が多いのは、こちらです。
↓
<ユネスコ分担金「停止を」…自民外交部会が決議
読売新聞 10月14日(水)13時25分配信
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自民党外交部会などは14日午前の合同会議で、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)が「南京大虐殺の文書」を世界記憶遺産に登録した問題について議論し、ユネスコへの分担金の停止などを求める決議を採択した。
決議では、中国が登録を申請したことについて「国際機関の政治利用で、断じて容認できない」と批判。
ユネスコの対応についても、「中国側の一方的な主張に基づく申請を我が国の意見を聞くことなく登録したことに強く抗議する」とした。
そのうえで、
〈1〉ユネスコに登録撤回を提案する
〈2〉世界記憶遺産制度の改善を働きかける
〈3〉分担金や拠出金の支払いを停止するなど、ユネスコとの関係
を早急に見直す──ことを政府に求めた。>
ユネスコが、「南京大虐殺の文書」を「世界記憶遺産」に登録した。
それで日本は、「これは不当だから、ユネスコへの分担金を停止しよう」というのです。
ちなみに日本は、「ユネスコ分担金」の10.83%を払っていて、世
界2位だそうです。
1位はアメリカですが、2011年以降支払いを停止しているので、日本が事実上世界1。
これ、どうなんでしょうか?
▼ユネスコ分担金停止は、日本に大きなマイナス
私は、日本がユネスコ分担金の支払いを停止することに反対です。
なぜでしょうか?
1、日本政府はユネスコを「脅迫している」と思われる
そもそも今回の登録は、日本政府の完全な失敗です。
中国が南京大虐殺を「世界記憶遺産」に登録申請したのは2014年6月。
それから実際に登録されるまで1年4か月経っています。
日本政府や外務省は、この期間何をやっていたのでしょうか?
・目撃者がいない
・「30万人の大虐殺があった」というが、南京の人口は増えている
など、説得力のある証拠をそろえて反論したのでしょうか?
私の知る限り、そういう話はきいていません。
直前になって、抗議したが受け入れられなかった。
1年4か月もあれば、ユネスコの幹部たちにあって、「実は南京大虐殺ってウソなんですよ」と個別に説明することもできたはずです。
もちろん、それを証明するしっかりした証拠を提示しなければいけませんが。
<「中国側の一方的な主張に基づく申請を我が国の意見を聞くことなく登録したことに強く抗議する」>
とありますが、2014年6月からずっと意見をいいつづけなければいけないですよね。
何はともあれ、日本は中国にまたやられました。
しかしですよ。
「南京大虐殺の世界記憶遺産登録を取り消せ!
さもないと、分担金を払わないぞ!!!!」
というのは、普通【脅迫】といいます。
皆さん、2010年に中国の人権活動家・劉暁波さんがノーベル平和賞を受賞したことを覚えておられるでしょう?
中国政府は、まずノーベル賞選考委員会を脅迫した。
その後、ノルウェー国を脅迫した。
それでも受賞が決まってしまうと、今度は「授賞式に参加するな!」
と、全世界の国々を脅迫した。
中国が必死で脅迫すればするほど、世界はその「異常性」に驚き、中国の立場はますます悪化していきました。
もちろん、日本政府の「ユネスコ分担金停止」は、そこまでひどくありません。
アメリカも払ってませんし。
しかし、世界から見ると、
「日本は、ユネスコが自分のいうことを聞かないので、分担金停止をちらつかせて【脅迫】している」
と思われても仕方ありません。
2、「ユネスコ分担金停止」で日本の影響力は「ゼロ」になる
「金 = 力」です。
嫌な言い方ですが、それが世界の現実です。
日本は、「一番金払ってんのに、なんで日本より中国のいうこときくのだ!」とキレています。
それで「分担金を払わないぞ!」と脅している。
しかしですよ。
もし日本が分担金の支払いを停止すれば、それこそユネスコへの影響力は「ゼロ」になってしまいます。
そこでもし中国が、
「日本はなんというひどい国でしょう。
ご安心ください。
わが中国が、日本の分を肩代わりしましょう!」
といったらどうなりますか?
日本の影響力はゼロ。
中国は、ユネスコの苦境を救った英雄となり、最大の影響力をもつことになります。
そしたら、中国はどう動くと思いますか?
そう、「世界記憶遺産」は、「日本軍の悪行だらけ」になってしまうでしょう。
あの国は、「ウソだろうがなんだろうが」日本の評判を失墜させるためならなんでもやります。
というわけで、私は「ユネスコ分担金の停止」は、国益を大きく損ねる愚行だと思います。
そして、一番喜ぶのは、「日本孤立化」に成功する中国です。
「南京大虐殺を世界記憶遺産に登録できたことも大勝利だ。
しかし、日本がブチ切れて、『分担金支払いを停止』すると脅迫したことで、日本の『軍国主義的本性』があきらかになった!」
アメリカで冷遇され落ち込んでいた習近平も、今日は機嫌がとてもいいに違いありません。
▼日本は、「国際連盟脱退→ 世界的孤立」の愚を繰り返すな
私は最近、「なぜ日本は戦争に負けたのか?」を熱心に研究しています。
いろいろ「歴史的な岐路」がありました。
・日ロ戦争直後、アメリカを怒らせてしまった。
・第1次大戦時、同盟国イギリスの「陸軍派兵要請」を拒否しつづけ、戦後日英同盟を破棄された、
などなど。
30年代になると、やはり大きな岐路は、「満州国建国問題」と「国際連盟脱退」でしょう。
日本は1932年、傀儡国家「満州国」をつくりました。
ところが国際連盟で42か国がこれに反対。
建国支持は、「日本一国」という厳しい状況で、
日本は国際連盟を脱退してしまいます。(1933年)
日本はこの時点で、完全に孤立していました。
30年代前半の時点で、日本は「敗戦」に自ら突進していったのです。
日本は、【孤立したから負けた】。
これが先の大戦の、一番大きな教訓です。
ですから、今度は「孤立しないように」細心の注意を払って進む必要がある。
中国は、なぜ今になって70年以上も前のことを掘り返してくるのでしょうか?(しかもウソ)
それは、「日本を孤立させるため」です。
ここで日本が「ブチ切れたら」まさに中国の思惑どおりになってしまいます。
皆さん、町中で「キレた人」を見たことがありますか?
その怒りがどんなに正当であったとしても、まわりの人は皆、
「この人おかしい。
かかわらないようにしよう・・・・」」
と思うものです。
日本政府は気づいていないかもしれませんが、「ユネスコ分担金停止」も、世界から見ると、「日本キレてるよね」です。
しかも世界の大部分の人たちは、「南京大虐殺 = 真実」と信じ
ていますから、
「日本て異常だよね」ということになってしまいます。
▼ではどうするか?
「理屈はわかりますが、南京大虐殺=世界記憶遺産問題はどうすればいいのですか?」
ですね。
1、ユネスコに「圧倒的な証拠と共に」抗議をつづける
日本政府、そもそもの過ちは、「南京大虐殺=絶対的真実」と世界に認知されるまで、それを放置しておいたことです。
圧倒的証拠をそろえた上で抗議しなければ意味がありません。
2、中国の悪行を「世界記憶遺産登録申請」する。
・チベット大虐殺120万人
・新疆ウイグルにおける度重なる核兵器実験
・文化大革命による大虐殺
・天安門事件による大虐殺
これらを「世界記憶遺産申請」しましょう。
(@当事国でなくても申請できるか、調べていません。念のため)
3、ユネスコ幹部と仲良くなって懐柔しましょう
「分担金停止」すれば、影響力はゼロになります。
問題は「金だけ出して、全く影響力がない」という異常な状況
です。
日本は、ユネスコ幹部ともっと仲良くするべきです。
(どうやるかは詳しく書きませんが、会社勤めの人はわかりますね。)
▼日本政府、外務省は、こちらを是非食い止めてください。
南京大虐殺もひどいですが、ユネスコがらみでもう一件「重要案件」があります。
↓
<慰安婦「共同申請を奨励」=ユネスコから意見と中国─記憶遺産
時事通信 10月12日(月)18時42分配信
【北京時事】中国外務省の華春瑩・副報道局長は12日の記者会見で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に中国が申請し登録が見送られた旧日本軍の「従軍慰安婦」に関する資料につ
いて、ユネスコ側から「関係国との共同申請を勧める意見があった」と述べた。
従軍慰安婦に関する記録については、韓国も記憶遺産に申請する計画を進めており、2017年の登録を目指している。
華副局長は「ユネスコの意見を真剣に考慮し検討する」と述べ、再度の申請を目指す方針を示した。
華副局長によると、意見は「中国以外にも慰安婦問題の被害国がある。
このため、ユネスコの国際諮問委員会は規定に基づき、関係国の共同申請を奨励し、17年の次回会議で審査する」との内容だという。>
↑
中国は、韓国と共同で、「慰安婦」の「世界記憶遺産登録」を目指すことでしょう。
もし日本が分担金を停止すれば、「慰安婦登録」は「確定」と見ていいでしょう。
これに関して、
1、日本は、ユネスコ幹部に「圧倒的証拠」を提示し、「慰安婦問題はウソであること」納得してもらう。
(圧倒的証拠とは、たとえばこちら↓
アメリカ政府は7年かけて慰安婦問題を調査したが、「強制連行」「性奴隷」などの証拠は一つもなかった。
↓
http://ameblo.jp/workingkent/entry-11958461771.html )
2、ユネスコ幹部を取り込む
安倍総理、外務省の皆さん、なにとぞよろしくお願いいたします。
是非同じ失敗を繰り返さないでください。
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北野 幸伯
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●Yさまからのメール
北野様
毎回メルマガを読ませていただいております。
北野さんの主張は大変わかりやすくて理解しやすいです。
特にそれぞれの国がそれぞれの国として生きて行くのに彼らの立場で何を(世界戦略を)どのように考えているのかを冷静に分析(これが相手の国を本当に理解すること)していることです。
そして分析の結果、ではどうする?
に対して北野さんは自分の考えを明確に述べていることです。
それは北野さんがソ連、ロシアに長く住んで(出張でもない、滞在でもない)生活基盤があり、
而も業務をして政府高官、国有企業、民間?企業、庶民とも交流があり、生の声を聴き、
目的意識をもっているから出来るのかも知れません。
従って、ロシア、中国はどう考える、シリアはどう考える、アメリカはどう考えるかが彼らの立場に立って考えることが出来るのだと思います。
一般の保守系の人は、日本或いはアメリカの立場から他国(中国、ロシア、北朝鮮即ち日本にとって面白くない国)を批判しますが、ではどうする?何をどうすれば良いか?が抜けています。
具体的な対応策については明確な主張が見当たりません。
あっても個々の対処の方法しかありません。
総合的な対応の方法が見えません。
ただアメリカにくっついて相手をやっつけろ、としか聞こえません。
こんな方法ではいつかアメリカに突き放される時があります。
アメリカはアメリカの自己の都合で動いています。
中国やロシアを理解するとすぐ左翼と言って批判の対象となります。
理解をしてその国に友人がいることとその国の主張に同意すること或いはその主張を支持をすることとを混同しているのではないでしょうか。
理解をすること即ち反日ではありません。
みな一緒くたになっているように思います。
ましてや所謂左翼と言う人はただ日本政府を野党として批判し、自国に損害を与えるような発言をするばかりで何も建設的な意見が出てこない、と言うか聞こえてこない。
又、その左翼を感情的にしか思えないような表現で批判する一般保守系の一部は何をか況やです。
尚、最近気になることがあります。
「自虐史観」を批判する声が大きいです。
「自虐史観」を批判して戦前、戦後を見直すことに反対はしません
が、戦後の保守政権自体がそれを野放しにしてきたことにも触れなくてはならないのではないでしょうか。
さもなくば「自虐史観」はなくならない。
ただ単に批判するだけに終わってしまう。
なぜならば保守系の人にもいるからだ。
経済に関しても中国のバブルは崩壊すると言われ始めてから10年以上もたちます。
それなのに今になって中国の崩壊が世界経済に与える影響を大騒ぎしています。
10年以上も前に騒いで予測したのなら今まで何の対策を打ってきたのだ。「何を今更」です。
単に中国の発展が面白くないから批判していたに過ぎないのではないか、と思われても仕方ないのではないか。
勿論、嘘も多いがそれは今に始まったことではない。
中国の歴代の王朝の歴史が物語っている。
ま、多くの批評家にとっては「ほら、当たったでしょう」。
私から見れば「当たったから何?それで?」です。
私から見れば世界経済の歴史を見れば当然予測しうることです。
特に北野さんの言う国家の「ライフサイクルの位置」を知れば理解できることです。
日本の場当たり的な考え方では世界戦略を構築することはできません。
中国の軍事費の増大、尖閣列島の問題や北朝鮮のミサイルで日本が危機状態にあるから日米条約を強化するのではなく、きちんとした日本の世界戦略があっての日米条約強化、「アメリカ追随」でなければなりません。
ロシアとの北方領土問題もロシアが十分な見返りがあると判断しない限り戻ってこないでしょう。
北野さんの言う通りただ、返せ!では無理です。
ロシアにとってはやっと手に入れた南の海、太平洋への出口です。
北朝鮮との拉致問題も然りです。
人道主義、人権では戻ってこないです。
ミサイル、核開発もアメリカからの情報があったはずです。
上記の中国の問題も今始まったのではない。
西、南沙列島の問題の問題は私が初めて中国に出張した1973年には既に中国はこそこそやっていたし、尖閣列島に関しては日中国交回復時から問題になっていた。
軍備の急激な増大もITが進み出してすぐ始まりました。今、力がちょっとついたので調子に乗って実力行使に出てきたのに過ぎない。
しかしこれはアメリカの対応(日本ではない)と日米の関係をチェックしているのだ。
そのうえで中国は中国なりの世界戦略を構築しようとしているのだ。
貴長の分析と対処の方法がますます冴えることを希望します。
★編集後記
前シリーズまでのヒーローは、ほとんどでてきませんが。 かなり面白いです。
↓
https://www.youtube.com/watch?v=Idm6xBBSWtU
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