沖縄県民は 先住少数民族ではありません
国連人権理事会で基地問題の違和感
━━━━━━━━━━━━━━━━
仲新城 誠
沖縄県の翁長雄志知事は9月21日(日本時間22日)、スイス・ジュネーブ
で開かれた国連人権理事会で演説し、安倍晋三政権が進める米軍普天間飛
行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設について「沖縄の人々は自己決定権
や人権をないがしろにされている」「あらゆる手段を使って新基地建設を
止める」と訴えた。「自己決定権」という言葉は反基地派やマスコミに
よって「沖縄独立論」の根拠として使われることが多く、議論を呼ぶこと
は必至だ。
■独立国
「沖縄はかつて独立国として、営々とやってきた」
演説直前、同じ国連ビル内で「沖縄の軍事化と人権侵害」をテーマにした
シンポジウムが開かれた。出席した翁長知事は、辺野古反対の訴えに沖縄
の歴史を絡めた。
「日本の一部になったあと、県民は独自の言語を禁止されたが、より良い
日本人になろうと一生懸命、日本語を勉強した。沖縄戦では10万人以上の
県民が死亡し、独自の言語を使っているために日本軍からスパイ扱いされ
たりした」
「沖縄は日本に併合され、沖縄戦が終わったら今度は日本から切り離された」
知事は、沖縄の方言を「独自の言語」、琉球処分を「併合」と言い換え、
沖縄がつて琉球王国だったことを強調した。
沖縄が国の安全保障政策に抵抗し、他の都道府県に認められない「自己決
定権」を主張できるという理論的根拠は「沖縄はもともと日本ではない」
という一点に集約されていく。
シンポは知事に国連での発言時間を譲ったNGO「市民外交センター」など
が主催した。同センターの上村英明代表は、知事の言葉を継ぎ、さらに踏
み込んだ発言をした。
「日本は軍隊を派遣して首里城を包囲し、琉球王国を廃止して沖縄県を設
置した。ウィーン条約に明確に違反している」
さらに第二次大戦後、沖縄が米国の施政権下に置かれた経緯について「米
国、日本とも琉球を植民地と認定しているから、国連の信託統治にする
と、将来は独立させないといけない。だから日米が談合して支配した」と
独自の主張を展開。「自己決定権を明確に主張できる『先住民族』の枠組
みの中で、改めて日本政府の責任を考えてほしい」と、沖縄人を先住民族
に認定するよう要求した。
国連で先住民族の権利を擁護する活動をしているフィリピン人のビクトリ
ア・タウリ=コープス氏も「県民が先住民族と認識されれば、先住民族の
権利に関する国連宣言に入っているすべての権利を主張できる」と後押し
した。
知事が国連演説で「自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったも
のを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのか」
と、戦後70年の日本の歩みを否定するような発言をしたことも重要だ。
知事が国際社会に発信したメッセージの内容が明確に浮かび上がってくる。
明治時代、日本は国際法に違反し、武力で沖縄を併合、植民地支配した。
先住民族である沖縄県民は日本に自由、平等、人権、民主主義を侵害され
ている。国際社会の協力を得て自己決定権を取り戻し、米軍基地を撤去し
なくてはならない-。
■違和感
「知事らの発言内容を知ったら、県民はどう思うだろうか」
会場で知事演説を聞いた石垣市議の砥板芳行氏は、知事の「メッセージ」
に激しい違和感を訴える。
「シンポでは『先住民族』や『植民地支配』など、とんでもない言葉が並
んでい
た。人権理事会はシリアや北朝鮮など、現に人命が失われている問題の解
決に取り組
んでいる場だ。基地問題を国連で問題化しようとする知事の姿は、県民と
して恥ずか
しい」
知事に反論するため砥板氏らとジュネーブ入りしていた名護市民の我那
覇真子氏(26)は、翌22日、翁長知事の発言を念頭に、こう断言した。
「私は沖縄生まれの沖縄育ちですが、日本の一部として、世界最高水準
の人権と質の高い教育、福祉、医療、生活を享受しています。沖縄県民は 先住少数民族ではありません」
元米海兵隊幹部で、現在は沖縄でシンクタンク代表として活動するロバー ト・エルドリッジ氏(政治学博士)は、知事が主張する「自己決定権」に ついて「日本は連邦制ではなく、民主主義国家の
概念を否定するものだ」 と批判する。
「民主主義を言うのなら、辺野古の住民が条件付きで移設を容認してい
ることを知事はどう考えるのか。辺野古移設は民主的な手続きを踏まえて 進められており、新基地建設でもない」
「自己決定権」という言葉は基地撤去に向けた伝家の宝刀ではあるが、
沖縄と本土はおろか、沖縄内部の対立をも招きかねない危うさをはらむ。 しかし翁長知事自身は22日午後、国連ビル内で記者会見し、演説の意義を 強調した。
「私が世界に語ったことで、県民は勇気と誇りを持つことになっただろ
う」(八重山日報記者)
【八重山日報記者の知事同行記(上)】2015.10.4
(採録:松本市 久保田 康文)
━━━━━━━━━━━━━━━━
仲新城 誠
沖縄県の翁長雄志知事は9月21日(日本時間22日)、スイス・ジュネーブ
で開かれた国連人権理事会で演説し、安倍晋三政権が進める米軍普天間飛
行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設について「沖縄の人々は自己決定権
や人権をないがしろにされている」「あらゆる手段を使って新基地建設を
止める」と訴えた。「自己決定権」という言葉は反基地派やマスコミに
よって「沖縄独立論」の根拠として使われることが多く、議論を呼ぶこと
は必至だ。
■独立国
「沖縄はかつて独立国として、営々とやってきた」
演説直前、同じ国連ビル内で「沖縄の軍事化と人権侵害」をテーマにした
シンポジウムが開かれた。出席した翁長知事は、辺野古反対の訴えに沖縄
の歴史を絡めた。
「日本の一部になったあと、県民は独自の言語を禁止されたが、より良い
日本人になろうと一生懸命、日本語を勉強した。沖縄戦では10万人以上の
県民が死亡し、独自の言語を使っているために日本軍からスパイ扱いされ
たりした」
「沖縄は日本に併合され、沖縄戦が終わったら今度は日本から切り離された」
知事は、沖縄の方言を「独自の言語」、琉球処分を「併合」と言い換え、
沖縄がつて琉球王国だったことを強調した。
沖縄が国の安全保障政策に抵抗し、他の都道府県に認められない「自己決
定権」を主張できるという理論的根拠は「沖縄はもともと日本ではない」
という一点に集約されていく。
シンポは知事に国連での発言時間を譲ったNGO「市民外交センター」など
が主催した。同センターの上村英明代表は、知事の言葉を継ぎ、さらに踏
み込んだ発言をした。
「日本は軍隊を派遣して首里城を包囲し、琉球王国を廃止して沖縄県を設
置した。ウィーン条約に明確に違反している」
さらに第二次大戦後、沖縄が米国の施政権下に置かれた経緯について「米
国、日本とも琉球を植民地と認定しているから、国連の信託統治にする
と、将来は独立させないといけない。だから日米が談合して支配した」と
独自の主張を展開。「自己決定権を明確に主張できる『先住民族』の枠組
みの中で、改めて日本政府の責任を考えてほしい」と、沖縄人を先住民族
に認定するよう要求した。
国連で先住民族の権利を擁護する活動をしているフィリピン人のビクトリ
ア・タウリ=コープス氏も「県民が先住民族と認識されれば、先住民族の
権利に関する国連宣言に入っているすべての権利を主張できる」と後押し
した。
知事が国連演説で「自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったも
のを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのか」
と、戦後70年の日本の歩みを否定するような発言をしたことも重要だ。
知事が国際社会に発信したメッセージの内容が明確に浮かび上がってくる。
明治時代、日本は国際法に違反し、武力で沖縄を併合、植民地支配した。
先住民族である沖縄県民は日本に自由、平等、人権、民主主義を侵害され
ている。国際社会の協力を得て自己決定権を取り戻し、米軍基地を撤去し
なくてはならない-。
■違和感
「知事らの発言内容を知ったら、県民はどう思うだろうか」
会場で知事演説を聞いた石垣市議の砥板芳行氏は、知事の「メッセージ」
に激しい違和感を訴える。
「シンポでは『先住民族』や『植民地支配』など、とんでもない言葉が並
んでい
た。人権理事会はシリアや北朝鮮など、現に人命が失われている問題の解
決に取り組
んでいる場だ。基地問題を国連で問題化しようとする知事の姿は、県民と
して恥ずか
しい」
知事に反論するため砥板氏らとジュネーブ入りしていた名護市民の我那
覇真子氏(26)は、翌22日、翁長知事の発言を念頭に、こう断言した。
「私は沖縄生まれの沖縄育ちですが、日本の一部として、世界最高水準
の人権と質の高い教育、福祉、医療、生活を享受しています。沖縄県民は 先住少数民族ではありません」
元米海兵隊幹部で、現在は沖縄でシンクタンク代表として活動するロバー ト・エルドリッジ氏(政治学博士)は、知事が主張する「自己決定権」に ついて「日本は連邦制ではなく、民主主義国家の
概念を否定するものだ」 と批判する。
「民主主義を言うのなら、辺野古の住民が条件付きで移設を容認してい
ることを知事はどう考えるのか。辺野古移設は民主的な手続きを踏まえて 進められており、新基地建設でもない」
「自己決定権」という言葉は基地撤去に向けた伝家の宝刀ではあるが、
沖縄と本土はおろか、沖縄内部の対立をも招きかねない危うさをはらむ。 しかし翁長知事自身は22日午後、国連ビル内で記者会見し、演説の意義を 強調した。
「私が世界に語ったことで、県民は勇気と誇りを持つことになっただろ
う」(八重山日報記者)
【八重山日報記者の知事同行記(上)】2015.10.4
(採録:松本市 久保田 康文)