戦争に勝った国の論理をどうやって克服していくかというのが、負けた国の外交というものです | 日本のお姉さん

戦争に勝った国の論理をどうやって克服していくかというのが、負けた国の外交というものです

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)10月10日(土曜日)
通算第4678号 <前日発行>

ドイツも中国経済に見切りを付けた?
メルケル首相、財界を率いてインドを訪問していた
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就任以来、メルケルは七回、ドイツ経済界幹部を大量に引き連れて北京を訪問し、大々的な中国投資を展開してきた。
VWに代表されるように、ドイツにとって中国市場は貴重な存在だった。なにしろVWは昨年970万台を生産したが、このうち360万台を中国で販売したのだ。

メルケルのインド訪問は2011年以来である。
10月5日にモディ首相と会談し、一緒にバンガロールへ飛んでボッシュ工場を見学した。「ドイツの技術とインドのIT技術の連合により、独印経済協力は新しい地平を開く」などとして、さかんな投資への意気込みをみせた。当面、一億ユーロの対インド追加投資を発表した。

モディ首相は14年にドイツを訪問し、ハノーバーメッセでABB社のブースを見学し、両腕ロボットの展示に見入ったことがあり、積極的にドイツ企業のインド進出をプロモートしてきた経緯がある。

それにしても中国一辺倒だったドイツも、VWスキャンダルに加えて中国経済の失速を目の当たりにし、中国への態度を一変させたのかも知れない。
それとも、これは地殻変動のはじまりなのか。

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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評
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グローバリズムという妖怪の正体はいったい誰々か
かれらの思惑と目標は金融の世界支配なのか


馬渕睦夫『アメリカの社会主義者が日米戦争を仕組んだ』(KKベストセラー)
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次々と意欲作を世に問う元ウクライナ大使は、日米の真の和解のために、まず知っておくべきは歴史の裏側の真相だと言う。
グローバリズムという、わけのわからない主張を展開する社会主義者は、「革命家」という表の仮面を剥がすと、そこには、「国際金融資本家」という真相の風貌が現れる。ロシア革命も、支那事変も、「日米戦争」も、かれらがウィルソンとルーズベルトを操作して、巧妙に仕掛けたという裏面がある。
日本の近現代史は、自虐史観に脳天を侵されて久しく、左翼歴史家は、とくに階級史観や社会主義が進歩であるという奇妙なメンタリティに取り憑かれ、「不確実な明日のために確実なこんにち」をぶちこわし、破壊することに熱中してきた。
自虐史観など、それをGHQと一緒にばらまいた日教組や、左翼マスコミは「国家反逆罪」ではないか、と馬渕氏は提議され、現状の世界の絵解きから始める。
そこには民間企業でしかない連邦準備制度が法定通貨を発行するという、かれらの「傑作」が作動している。
まずはプーチンを悪役に仕立て上げるためにウクライナに暴動、騒擾を惹起したのは、「かれら」だった。
プロの傭兵軍団をウクライナ東部に投入し、プーチンをそそのかしてロシア軍の介入を呼び起こし、プーチンの転覆を謀ろうとした。それらはジョージ・ソロスの論文などでも明らかだが、慎重且つ入念に対応したプーチンが役者が一枚上だった。
シリアの泥沼にお手上げとなった欧米を尻目に、ロシアは空爆につづいて地上軍を投入したが、アメリカはプーチンが反政府軍を攻撃していると非難している。反政府軍とはアメリカがテコ入れしている武装ゲリラのことである。
プーチンを徒らに敵視するのは愚かしいことであり、日本はプーチンの年内訪問を熱心に説いており、また日米首脳会談で安倍首相はアメリカの了解を密かに取り付けたと馬渕氏は推定する。
国益を考えてみれば、日本は最大の仮想的中国の背後にあって、つねに中国を脅かすロシアに欧米と束になって敵対する必要はないのである。
ならば中ロ蜜月はどうなるか、という問題があるが、馬渕大使の回答は明快このうえない。
すなわち「中国経済は日米欧などの製造業が進出したお陰で急速に発展した模倣経済にすぎないことから、(ロシアがいかに)中国との経済関係を強化しても、ロシア経済の近代化に繋がることは決してありません」。
だから中ロ蜜月など、ときが来れば雲散霧消するのである。
なぜか。英国元首相パーマストンの次の箴言がある。
「永遠の敵国はいない。また永遠の友好国もいない。永遠に存在するのは国益のみである」と。

グローバリストの正体は社会主義。彼らのなかには「日米戦争」をしかけた陰謀家がおおく、なによりも支那事変とは日本と中国の背後にあった英米との戦争であったように、表面のあぶくだけを見ていると、地下水流の流れはつかめないのである。
それにしても共産主義国家では、いかに簡単に生命を軽んじた大虐殺が繰り返されるのだろうか。
「彼ら流の『あるべき未来の姿』というイデオロギーには現実を無視するという論理的必然性があるからだ、未来のみに軸足を置き現在を無視する。結局、道徳を無視する結果」を産むことになるのである。ロシア革命も、中国革命も、カンボジアのポルポトの大虐殺も、すべてはそうだった。
現在日本に予測される最大最悪の事態とは、中国の経済失速(それはいまや秒読みだが)により中国で本格的な暴動が発生し、中国経済が壊滅するときに排外主義の謀略、暴力が起きるだろうと馬渕氏は言う。
「暴動が反政府運動に発展し、反政府運動の矛先をかわすために中国政府が排外主義を扇動する可能性が強い」
となると上海事件、通化事件のように駐在邦人の大虐殺がまたおこりうるだろう、と不気味な近未来を予測する。
本書は国際情勢に通暁する元大使の憂国と警告の書である。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評
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しつけも道徳も見失った日本人に生活の源流が分からなくなった
政治の本質、文化の深淵を縦横無尽に夫婦が語り合った


三浦朱門 v 曾野綾子『夫婦口論』(扶桑社)
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天下のおしどり夫婦が人生論、老後、家庭教育、国際貢献などを縦横無尽に語り合う。それだけでも興味津々だが、読み始めると、これは人生論というより政治論、文化論、文明論なのである。
国際的な常識と日本のそれが天と地ほどのちがいがあることは、あまねく知られるが、批評家が不在の時は、いったい自分は国際常識にそって行動しているのか、どうか。多くの人は不安に陥る。
まるで漂流する日本の姿を投影しているかのようだ。
こうした悩みをふたりはやさしい語彙を撰びながら平明に説得調で語り合うのだ。
三浦朱門は九十歳。生きていれば三島由紀夫と同年である。ということは『第三の新人』は先月阿川弘之氏が亡くなったので、生き残りは三浦氏ひとり、ということになる。三浦氏は作家の傍ら、文化庁長官も務めた。
曾野綾子さんは世界120ヶ国を旅して、ともかく誰も行かないアフリカの奥地へ行ったり、中東で誘拐されそうになったり「冒険家」の側面をもつベストセラー作家である。
三浦氏がこういう。
「日本も悪ければ、アメリカだってソ連だって悪い。
どっちもどっちだと言えば、それっきりなんですけれども、戦争に勝った国の論理をどうやって克服していくかというのが、負けた国の外交というものです。その点、日本は何もやっていない。それどころか、アメリカにさえ頼っていれば、世界に通用すると思っている。だけど、アメリカはもう日本がお荷物になっていますよ」
やさしい言葉だが、実際に言っていることはGHQ占領政策、東京裁判史観を克服せよ、という政治主張を置き換えているのである。
この言葉をひきとって曾野氏が言う。
「戦後日本のおかしなことの一つに、物事のはじめと終わりが分からなくなってしまったことがあると思います。(中略)戦後何もないところから、ここまで到達したんですもの。でもインフラが整備され、流通機構が発達した分、生活の源流が見えなくなった。つまり、生活に必要なものがどこでどうつくられて、自分のところへやってくるか分からない」
こうした有益な例え話が延々と続いている。

書評 しょひょう
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いずれ日本はなくなるという深刻な状況への危機感
生誕90年、没後45年にして戦後ニッポン論を集める


高丘卓編『三島由紀夫 終わり方の美学』(徳間文庫)
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編者の高丘氏には奇妙な三島体験があるという。世にも不思議な物語というほどではないのだが、三島作品の『人間喜劇』に関してである。
じつは『人間喜劇』は死後、発見され、全集第二巻(昭和四十九年発行)に初めて納められた。
すでに死後四年を閲していたのだ。ところがである。高丘氏は中学生だった昭和三十九年に初読し、そのあと何回も読み直していたので、時系列があわないことに気がついて愕然となった。長いこと、不思議と思っていたが、その謎が氷解した。
高丘氏の父親が編集者で、三島の『人間喜劇』を預かったまま、当時出ていた『光』という雑誌が休刊となってしまった経緯があった。
実際に書かれたのは昭和二十三年で、四月二十六日擱筆とされている。
だから高丘氏が中学時代から愛読していたのは父親が大切に保管していた、若き日の三島の肉筆原稿だったのだ。
その後、紆余曲折をへて父親は光文社の編集者として、三島に『葉隠入門』を依頼した。そのとき、「ところで、わたしの『人間喜劇』はどうなったのか?」と尋ねられ、ああ、そういえば「会社の金庫に大事に保管しています」(ホントは父親の自宅にあって、息子がその肉筆を愛読していたということになる)。
かくして三島の『人間喜劇』、じつに四半世紀あまりも埋もれていたことになる。

さて、本書は題名にあるように『終わり方の美学』を基軸に多くのエッセイなどを編まれたもので、「ニッポン人のための日本入門」や「日本語練習講座」のほかに、『若きサムライたちのための精神講話』『エロスと政治について』なども抄録され収録されている。
映画『人斬り』で三島が演じた田中新兵衛のこと、鶴田浩二のころなどに、「セバスチャンの殉教」が加わり、最後は『私のなかの二十五年』(日本が日本でなくなり、無機質でニュートラルな経済大国云々)が最後を飾る。
不思議な編集方針と思いながらもついつい引き込まれて読み終えた。
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(読者の声1)「歴史・公民」東京塾・第29回研修会のお知らせです。<大東亜戦争終結七十年、東條英機、F・ルーズベルト、どっちがワルか!>

<場 所> : 豊島区医師会館(池袋西口徒歩5分、東京芸術劇場前大通り(反対側、「ローソン」の横道を入って突き当たり)
TEL03-3986-2321 http://www.tsm.tokyo.med.or.jp/map/index.html
<日 時> ; 平成27年11月14日(土)午後1時00分~5時15分
1)研修会連続講座(PM1:00~1:30)質疑(5分)
「喫茶の伝統」その5 講師・石川陽子(日本の伝統と文化を語る集い)
2)講 演 !) (PM1:40~2:40)
「大東亜戦争はアメリカが悪い」(講師著書)~戦勝国アメリカへの遠慮史観からの脱却~
講師・ 鈴木敏明(近現代史研究家)
3)講 演 !) (PM2:55~3:55) 「大東亜戦争について考える」
~日本はなぜアメリカと戦わなければならなかったのか~
講師・ 石部勝彦(近現代史研究家)
4)鼎 談 (PM4:00~5:00)質疑(15分)
「大東亜戦争終結七十年、東條英機、F・ルーズベルト、どっちがワルか!」
語り手・鈴木敏明、石部勝彦、田中秀雄(近現代史研究家)
司会:平田由香(「つくる会」会員)

【懇親会】 PM5:30~7:30 同会館にて(研修会は¥1,500- 予約優先で先着90名様迄
懇親会は、¥3,500-で30名様予約制)
< 主 催 >: ≪日本の伝統と文化を語る集い≫
<企画・運営>:「新しい歴史教科書をつくる会」東京支部
<連絡先・島?宛> TEL;080-6722-5670 FAX;03-3660-5672
MAIL;simazaki@rondo.plala.or.jp

宮崎正弘の新刊案内 http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html

宮崎正弘のロングセラー
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『アジアインフラ投資銀行の凄惨な末路』(PHP研究所、999円)
『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収・合併する日』(ビジネス社)
『中国、韓国は自滅し、アジアの時代がやってくる!』(海竜社、1080円)
『中国大破綻 ついに失われる20年に突入する』(PHP研究所、1404円)
『日本と世界を動かす悪の「孫子」』(ビジネス社。1188円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、定価1620円)
『中国・韓国を“本気で”見捨て始めた世界』(徳間書店 1080円)
『台湾烈々 世界一の親日国家がヤバイ』(ビジネス社、1188円)
『「中国の時代」は終わった』(海竜社、定価1080円)
『中国共産党、三年以内に崩壊する!?』(海竜社、1080円)
『中国バブル崩壊が始まった』(海竜社、1080円)
『中国 大嘘つき国家の犯罪』(文芸社文庫、713円)


<宮崎正弘の対談シリーズ>
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宮崎正弘 v 室谷克実『日本に惨敗し ついに終わる中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 小川榮太郎『保守の原点』(海竜社。1620円)
宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 石平『2015年 中国の真実』(ワック、シリーズ第五弾)
宮崎正弘 v 大竹慎一『中国崩壊で日本はこうなる』(1512円。徳間書店)
宮崎正弘 v 西部遭『日米安保五十年』(海竜社)
宮崎正弘 v 黄文雄『世界が知らない中国人の野蛮』(徳間書店)
宮崎正弘 v 佐藤優『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
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