いつまでもあると思うな、親とカネー3兆3000億ドルとされる中国の外貨準備は、本当にあるのか?
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)9月9日(水曜日)弐
通算第4652号
いつまでもあると思うな、親とカネ
3兆3000億ドルとされる中国の外貨準備は、本当にあるのか?
***********************
中国の外貨準備高に「からくり」があることは屡々指摘してきたが、直近の統計数字から判断する限り、それは限りなく空っぽに近いようだ。
8日発表の中国輸出入統計8月速報では、輸出が5・5%の急減、とくに天津港からの輸出は17・3%も減っていた。輸入もじつに13・8%の急減、10ヶ月連続で前月比を割り込んでいた。
上海株がかろうじて3000台を維持できているのは、依然として「売るな」という当局の指令。それでも売りが絶えないため、すでに70兆円以上の資金を投入している。
中国からの資本流失が急増している。
15年上半期だけで5000億ドルが海外へ流れた(シティグループの調査)という。
アフリカの農地買収、スリランカとパキスタンの港湾整備事業、ニュージーランドとカナダのエネルギー企業買収などが最近目立つ投資だが、加えてAIIB、BRICS銀行ならびに「シルクロード構想」への資金拠出が予定されている。
このため保有する米国債や海外資産を取り崩し、さらに当局が目の敵とし始めたのが、海外旅行ブームによる外貨流失の列に加わり、とりわけ敵対する日本への爆買いツアーがやまないことに敵意さえ抱いているかのような論調が華字紙に散見される。
中国一の資産家とされる万達集団(CEO=王健林)は米国の私募債に6億5000万ドルを投じた。王健林ははやくから不動産ビジネスに見切りを付け、米国の映画館チェーンなどを買収してきた。
中国生保ナンバースリーの「安邦保険」はポルトガル企業買収に資金投入直前、ポルトガル当局から待ったをかけられているが、ことほど左様に「海外企業買収」に名を借りて、外国への資本逃避が起きている。
▲中国の対外債務は1兆5000億ドルと見積もられている
2014年末、中国の外貨準備高は3兆9900億ドルとされた。
2015年8月末の速報値で、それは3兆300億ドルに激減した。中国当局の発表でも「外貨準備高は3557億ドルに減った」とされた。
「原因は上海株暴落、人民元切り下げに嫌気しただけの逃避ではない」とするドイチェ銀行のジョージ・サラベロスは「もっとも重要なことは中国の外貨準備の性格の変化であり、世界の金融の流動性と連動している」
また中国の対外債務はすでに1兆5000億ドルに達しており、保有する米国債よりも多く、GDPの15%である。この先、さらに2兆ドルの外貨が必要である。
したがってある日突然、中国の外貨準備はブラックホールに吸い込まれるように消失する危険性が増している。
~~~~~~~~~~~~~~~~
◆書評 ◇しょひょう
安保法制議論に際して同盟関係とは何か、その本質の考察に有益
日英同盟はなぜ締結され、なぜ消滅を迎えたのかを地政学から考える。
♪
平間洋一『日英同盟』(角川ソフィア文庫)
@@@@@@@@@@@@@@@@@
日英同盟は当事者である両国、すなわち英国も日本も当時の激烈で、変化の急激な国際環境にあって、自国に有利と判断されたからこそ迅速に締結された。
国益が双方とも合致したからだ。
英国はボーア戦争をかかえ、ロシアの南下とドイツの海軍力増強を目の前で驚異視しており、日本もまた、当時の国際情勢のもとで、国益を考慮した打算に基づいて、ロシアを撰ぶか、英国と同盟関係を結ぶ方が有利かを撰ぶのが外交の優先事項であった。
本書で平間氏は、通説を越えて、当時の外国メディアの分析にもっとも力を注がれ、日本の判断より、外国がどう見ていたか、最初は高い評価だったのに、後日は中国とドイツの世論工作の前に、国際的評価が失われていく過程が描かれる。歴史を活写するダイナミズムが本書にあふれていて躍動感がある。
この文庫本の原本は2000年にPHPから出版された『日英同盟 同盟の盛衰と国家の選択』であり、文庫入りに際して大幅に加筆され、とくに中国の台頭という新しい国際環境の激変のもとの注釈も加えられた。
日露戦争で日本が勝利できた背景の一つは英国の後方支援である。
しかし「日露戦争後、日米関係は友好から対立へ、日露関係は対立から協調へと転換した。日米対立は満州問題と日本の移民問題にあったが、とくに講和会議を有利にしようとしたウィッテや、露西亜の敗北で孤立したドイツが、日英や日米を分断しようと黄禍論を展開したこと、アメリカが中国、とくに満州への経済的進出を阻止されたこと、さらに戦後に経済の低迷から多数の移民がアメリカ西海岸に急速の増加したことから加速した」(90p)。
つまりこれらの歴史的過程はそのまま日米戦争への布石である。
▲日英同盟は三回改訂されている。
「1905年8月12日に日英同盟は第一次改訂が合意され、この改訂で条約の適用範囲が清国と朝鮮からインドにまで拡大され」た。
「1911年7月の第二次改訂ではロシアという共通の敵が消滅し、日露協約、日仏協約、英露協商の締結、アメリカや自治領カナダ、オーストラリアの人種問題をめぐる対立もあり、日英同盟は存続の危機を迎えていた」のである。
つまり第二次改訂は英国有利な片務的内容に変質し、同盟関係の解消は時間の問題となっていた。
この間、コミンテルンが成立し、中国は日英同盟の離間工作を開始した。(130p)
そして、「日本が南洋群島を占領し、オーストラリアに対日警戒論が強まると、ドイツはこの変化を日英分断、英豪の連携弱化に利用した」(172p)
そして米国の対日外交が劇的に敵対化へ向かったのだ。
要するに「英米人がいう平和とは、自己に都合のよい現状維持のことであり、正義とか人道に関係なく、それに『人道主義という美名を冠したものに過ぎない』
(中略)
「しかし、欧米列強が植民地とその利益を独占している現状は、『人類の機会平等の原則』に反しており、国際連盟で最も利益を得るのは英米だけである」と近衛文麿は批判した。
戦後一貫して列強にはびこる「修正主義批判」とは正しい歴史解釈を敵視している。大東亜戦争とは言えず、東京裁判史観が蔓延し、日本は悪かったことにされている。
平間氏は強く主張する
「歴史を正さなければ日本の精神的復興は久遠に出来ない。歴史問題は国家の名誉、尊厳の問題であるだけではなく、国家存続の問題だからである」(211p)。
平間氏はマッキンダー、マハン、スパイクマン、ケナンの地政学をふまえ、南シナ海から海のシルクロードを構築して世界に覇権をもとめる中国を現代的世界史のパースペクティブに立脚した地政学にもとづいて、次のように解析されている。
「中央専制的な政治システムや陸軍主導のタイトな戦争指導に服する大陸国の海軍は、柔軟な対応を要求される海上作戦には不適で、悲劇的な敗北に終わることは、ドイツ海軍やフランス、ロシア海軍(ソ連)の歴史が教えているが、『人民解放軍――海軍』と陸軍の人民解放軍の下に置かれ、陸軍指揮官が多い共産党軍事委員会に指揮され、政治将校の監視を受け(ている中国軍がはたして)、柔軟に運用され、レーダー、近接信管、最後は原爆を次々に新兵器を開発する自由主義諸国の海軍に、外国技術のコピペの武器で対抗し、制海権を確立できるのであろうか」
最後に中国軍の実力に大きな疑義を呈されている。
□◎▽◇○
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<< 宮崎正弘の論文掲載予定 >>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(1)「世界の現場をゆく<連載7>南カフカス(下)」(『エルネオス』10月号。月末発行)
(2)「西郷隆盛伝説を往く」(『月刊日本』10月号、9月22日発売)
(3)「ワールド・ナウ(5)マニラ首都圏は拡大中」(『共同ウィークリ―』、9月14日号)
(4)「三島事件から四十五年」(『ジャポニズム』、秋号、10初旬発行)
♪
(読者の声1)貴誌前号の李嘉誠グループの動向ですが、この企業群はなんといっても香港が拠点です。その香港を捨てることは無いと思いますが、如何でしょう。
老生は香港に駐在していた経験があり、あの株式市場を動かしているのは李嘉誠であること、それも株価は、李の動きと連動して動きました。
(NY生、宇都宮)
(宮崎正弘のコメント)香港の電力、エネルギー、ガスも傘下におさめている巨人ですから、従来のビジネスは続けるでしょう。問題は比重を減らすことで、本社登記も移転していますから、香港が本丸であるにせよ、無国籍企業ということになりますね。
江沢民と親しかったわけで、習近平政権になった途端、李嘉誠は逃げの態勢に入りました。権力闘争が深奥部で重く絡んでいることも明白です。
♪
(読者の声2) 一月の寒い日でしたが、大手町へでかけて宮?先生の講演(正論を聞く会)を拝聴しました。淡々と、しかし克明なデータをあげて、「やがて中国経済は失速するだろう」とした内容でしたが、半信半疑。その後、先生の『中国大破綻』『AIIBの凄惨な末路』(いずれもPHP研究所)や『中国の時代は終わった』(海竜社)などを購入し、我流に勉強してきました。
わたしは日本の中国投資専門の証券会社を通じて香港に上場されている『レッドチップ』などを買っておりましたが、結論的に六月に決断して全株売りました。ラッキーでした。上海株暴落は七月から本格化しました。先生の予想通りでしたね。
さて中国経済を云々するエコノミスト、経済学者がかなりの数ですが、わたしが他に参考とするのは渡邊哲也さん、そして産経に独特で辛辣な評論を展開される田村秀男さんです。昨日でしたか、貴誌によれば、この渡邊氏と、田村氏と宮?さんとで鼎談を出されるとか、さすがに目を付ける編集者がいるんですね。いまから楽しみです。
(GK生、横浜)
(宮?正弘のコメント)六月に中国株全株処分されたのですね。ラッキーでした。これからも上海株は、ギリシアのように間歇的な下落が何回か繰り返され、一年後には2000を割り込んでいるでしょうから。
●
故井尻千男さんを偲ぶ会のご案内
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
「主権回復運動」に命がけで取り組み、他方、数寄者の茶人として風流にも生きた稀有の文人、コラムニストだった井尻千男(拓殖大学名誉教授)さんが急逝されて早や百ケ日になろうとしております。
このたびゆかりの者の合議により、友人・知己・学友相集い、氏を追悼し、その憂国の熱情の想い出などを語らう集まりを開催することとなりました。
祖国の政局は故人が嘆いたように憂うべき惨状がつづいておりますが、この機会に主権回復の熱情を思い出し、決意を新たにする場とすると同時に、故人の風流を追憶したいと思います。
記
とき 9月26日(土曜) 午後二時(一時半開場)
ところ 市ヶ谷「ホテル・グランドヒル市ヶ谷」二階 白樺
http://www.ghi.gr.jp/access/
会費 おひとり一万円(当日遺稿集のお土産が間に合いませんので後日郵送します)
式次第 スライド上映、各自献花、献杯、追悼献茶 追悼挨拶 遺族謝辞
発起人 入江隆則 呉善花、小田村四郎、小堀桂一郎 小堀宗実、水島総、渡辺利夫
主催 「井尻千男さんを偲ぶ会」実行委員会
共催 拓殖大学日本文化研究所
事務局 東京都渋谷区渋谷1-1-16
日本文化チャンネル桜 気付(実行委員会 井上敏治 漆原亮太、大高未貴
花田太平、平野寛明、比留間誠司 宮崎正弘)
なおご出席を希望される方は下記へ一報ください。
(090)3526―9793(平野)
読者、ファンの方も希望者はご参加いただけます。
▲
宮崎正弘の新刊案内 http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
宮崎正弘のロングセラー
***********
『アジアインフラ投資銀行の凄惨な末路』(PHP研究所、999円)
『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収・合併する日』(ビジネス社)
『中国、韓国は自滅し、アジアの時代がやってくる!』(海竜社、1080円)
『中国大破綻 ついに失われる20年に突入する』(PHP研究所、1404円)
『日本と世界を動かす悪の「孫子」』(ビジネス社。1188円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、定価1620円)
『中国・韓国を“本気で”見捨て始めた世界』(徳間書店 1080円)
『台湾烈々 世界一の親日国家がヤバイ』(ビジネス社、1188円)
『「中国の時代」は終わった』(海竜社、定価1080円)
『中国共産党、三年以内に崩壊する!?』(海竜社、1080円)
『中国バブル崩壊が始まった』(海竜社、1080円)
『中国 大嘘つき国家の犯罪』(文芸社文庫、713円)
♪
<宮崎正弘の対談シリーズ>
************
宮崎正弘 v 渡邊哲也『激動する世界経済!』(ワック、994円)
宮崎正弘 v 室谷克実『日本に惨敗し ついに終わる中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 小川榮太郎『保守の原点』(海竜社。1620円)
宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 石平『2015年 中国の真実』(ワック、シリーズ第五弾)
(石平さんとの第六弾は、十月中旬発売予定です。ご期待下さい)
宮崎正弘 v 大竹慎一『中国崩壊で日本はこうなる』(1512円。徳間書店)
宮崎正弘 v 西部遭『日米安保五十年』(海竜社)
宮崎正弘 v 黄文雄『世界が知らない中国人の野蛮』(徳間書店)
宮崎正弘 v 佐藤優『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
(C)有限会社宮崎正弘事務所 2015 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示
平成27年(2015)9月9日(水曜日)弐
通算第4652号
いつまでもあると思うな、親とカネ
3兆3000億ドルとされる中国の外貨準備は、本当にあるのか?
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中国の外貨準備高に「からくり」があることは屡々指摘してきたが、直近の統計数字から判断する限り、それは限りなく空っぽに近いようだ。
8日発表の中国輸出入統計8月速報では、輸出が5・5%の急減、とくに天津港からの輸出は17・3%も減っていた。輸入もじつに13・8%の急減、10ヶ月連続で前月比を割り込んでいた。
上海株がかろうじて3000台を維持できているのは、依然として「売るな」という当局の指令。それでも売りが絶えないため、すでに70兆円以上の資金を投入している。
中国からの資本流失が急増している。
15年上半期だけで5000億ドルが海外へ流れた(シティグループの調査)という。
アフリカの農地買収、スリランカとパキスタンの港湾整備事業、ニュージーランドとカナダのエネルギー企業買収などが最近目立つ投資だが、加えてAIIB、BRICS銀行ならびに「シルクロード構想」への資金拠出が予定されている。
このため保有する米国債や海外資産を取り崩し、さらに当局が目の敵とし始めたのが、海外旅行ブームによる外貨流失の列に加わり、とりわけ敵対する日本への爆買いツアーがやまないことに敵意さえ抱いているかのような論調が華字紙に散見される。
中国一の資産家とされる万達集団(CEO=王健林)は米国の私募債に6億5000万ドルを投じた。王健林ははやくから不動産ビジネスに見切りを付け、米国の映画館チェーンなどを買収してきた。
中国生保ナンバースリーの「安邦保険」はポルトガル企業買収に資金投入直前、ポルトガル当局から待ったをかけられているが、ことほど左様に「海外企業買収」に名を借りて、外国への資本逃避が起きている。
▲中国の対外債務は1兆5000億ドルと見積もられている
2014年末、中国の外貨準備高は3兆9900億ドルとされた。
2015年8月末の速報値で、それは3兆300億ドルに激減した。中国当局の発表でも「外貨準備高は3557億ドルに減った」とされた。
「原因は上海株暴落、人民元切り下げに嫌気しただけの逃避ではない」とするドイチェ銀行のジョージ・サラベロスは「もっとも重要なことは中国の外貨準備の性格の変化であり、世界の金融の流動性と連動している」
また中国の対外債務はすでに1兆5000億ドルに達しており、保有する米国債よりも多く、GDPの15%である。この先、さらに2兆ドルの外貨が必要である。
したがってある日突然、中国の外貨準備はブラックホールに吸い込まれるように消失する危険性が増している。
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◆書評 ◇しょひょう
安保法制議論に際して同盟関係とは何か、その本質の考察に有益
日英同盟はなぜ締結され、なぜ消滅を迎えたのかを地政学から考える。
♪
平間洋一『日英同盟』(角川ソフィア文庫)
@@@@@@@@@@@@@@@@@
日英同盟は当事者である両国、すなわち英国も日本も当時の激烈で、変化の急激な国際環境にあって、自国に有利と判断されたからこそ迅速に締結された。
国益が双方とも合致したからだ。
英国はボーア戦争をかかえ、ロシアの南下とドイツの海軍力増強を目の前で驚異視しており、日本もまた、当時の国際情勢のもとで、国益を考慮した打算に基づいて、ロシアを撰ぶか、英国と同盟関係を結ぶ方が有利かを撰ぶのが外交の優先事項であった。
本書で平間氏は、通説を越えて、当時の外国メディアの分析にもっとも力を注がれ、日本の判断より、外国がどう見ていたか、最初は高い評価だったのに、後日は中国とドイツの世論工作の前に、国際的評価が失われていく過程が描かれる。歴史を活写するダイナミズムが本書にあふれていて躍動感がある。
この文庫本の原本は2000年にPHPから出版された『日英同盟 同盟の盛衰と国家の選択』であり、文庫入りに際して大幅に加筆され、とくに中国の台頭という新しい国際環境の激変のもとの注釈も加えられた。
日露戦争で日本が勝利できた背景の一つは英国の後方支援である。
しかし「日露戦争後、日米関係は友好から対立へ、日露関係は対立から協調へと転換した。日米対立は満州問題と日本の移民問題にあったが、とくに講和会議を有利にしようとしたウィッテや、露西亜の敗北で孤立したドイツが、日英や日米を分断しようと黄禍論を展開したこと、アメリカが中国、とくに満州への経済的進出を阻止されたこと、さらに戦後に経済の低迷から多数の移民がアメリカ西海岸に急速の増加したことから加速した」(90p)。
つまりこれらの歴史的過程はそのまま日米戦争への布石である。
▲日英同盟は三回改訂されている。
「1905年8月12日に日英同盟は第一次改訂が合意され、この改訂で条約の適用範囲が清国と朝鮮からインドにまで拡大され」た。
「1911年7月の第二次改訂ではロシアという共通の敵が消滅し、日露協約、日仏協約、英露協商の締結、アメリカや自治領カナダ、オーストラリアの人種問題をめぐる対立もあり、日英同盟は存続の危機を迎えていた」のである。
つまり第二次改訂は英国有利な片務的内容に変質し、同盟関係の解消は時間の問題となっていた。
この間、コミンテルンが成立し、中国は日英同盟の離間工作を開始した。(130p)
そして、「日本が南洋群島を占領し、オーストラリアに対日警戒論が強まると、ドイツはこの変化を日英分断、英豪の連携弱化に利用した」(172p)
そして米国の対日外交が劇的に敵対化へ向かったのだ。
要するに「英米人がいう平和とは、自己に都合のよい現状維持のことであり、正義とか人道に関係なく、それに『人道主義という美名を冠したものに過ぎない』
(中略)
「しかし、欧米列強が植民地とその利益を独占している現状は、『人類の機会平等の原則』に反しており、国際連盟で最も利益を得るのは英米だけである」と近衛文麿は批判した。
戦後一貫して列強にはびこる「修正主義批判」とは正しい歴史解釈を敵視している。大東亜戦争とは言えず、東京裁判史観が蔓延し、日本は悪かったことにされている。
平間氏は強く主張する
「歴史を正さなければ日本の精神的復興は久遠に出来ない。歴史問題は国家の名誉、尊厳の問題であるだけではなく、国家存続の問題だからである」(211p)。
平間氏はマッキンダー、マハン、スパイクマン、ケナンの地政学をふまえ、南シナ海から海のシルクロードを構築して世界に覇権をもとめる中国を現代的世界史のパースペクティブに立脚した地政学にもとづいて、次のように解析されている。
「中央専制的な政治システムや陸軍主導のタイトな戦争指導に服する大陸国の海軍は、柔軟な対応を要求される海上作戦には不適で、悲劇的な敗北に終わることは、ドイツ海軍やフランス、ロシア海軍(ソ連)の歴史が教えているが、『人民解放軍――海軍』と陸軍の人民解放軍の下に置かれ、陸軍指揮官が多い共産党軍事委員会に指揮され、政治将校の監視を受け(ている中国軍がはたして)、柔軟に運用され、レーダー、近接信管、最後は原爆を次々に新兵器を開発する自由主義諸国の海軍に、外国技術のコピペの武器で対抗し、制海権を確立できるのであろうか」
最後に中国軍の実力に大きな疑義を呈されている。
□◎▽◇○
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<< 宮崎正弘の論文掲載予定 >>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(1)「世界の現場をゆく<連載7>南カフカス(下)」(『エルネオス』10月号。月末発行)
(2)「西郷隆盛伝説を往く」(『月刊日本』10月号、9月22日発売)
(3)「ワールド・ナウ(5)マニラ首都圏は拡大中」(『共同ウィークリ―』、9月14日号)
(4)「三島事件から四十五年」(『ジャポニズム』、秋号、10初旬発行)
♪
(読者の声1)貴誌前号の李嘉誠グループの動向ですが、この企業群はなんといっても香港が拠点です。その香港を捨てることは無いと思いますが、如何でしょう。
老生は香港に駐在していた経験があり、あの株式市場を動かしているのは李嘉誠であること、それも株価は、李の動きと連動して動きました。
(NY生、宇都宮)
(宮崎正弘のコメント)香港の電力、エネルギー、ガスも傘下におさめている巨人ですから、従来のビジネスは続けるでしょう。問題は比重を減らすことで、本社登記も移転していますから、香港が本丸であるにせよ、無国籍企業ということになりますね。
江沢民と親しかったわけで、習近平政権になった途端、李嘉誠は逃げの態勢に入りました。権力闘争が深奥部で重く絡んでいることも明白です。
♪
(読者の声2) 一月の寒い日でしたが、大手町へでかけて宮?先生の講演(正論を聞く会)を拝聴しました。淡々と、しかし克明なデータをあげて、「やがて中国経済は失速するだろう」とした内容でしたが、半信半疑。その後、先生の『中国大破綻』『AIIBの凄惨な末路』(いずれもPHP研究所)や『中国の時代は終わった』(海竜社)などを購入し、我流に勉強してきました。
わたしは日本の中国投資専門の証券会社を通じて香港に上場されている『レッドチップ』などを買っておりましたが、結論的に六月に決断して全株売りました。ラッキーでした。上海株暴落は七月から本格化しました。先生の予想通りでしたね。
さて中国経済を云々するエコノミスト、経済学者がかなりの数ですが、わたしが他に参考とするのは渡邊哲也さん、そして産経に独特で辛辣な評論を展開される田村秀男さんです。昨日でしたか、貴誌によれば、この渡邊氏と、田村氏と宮?さんとで鼎談を出されるとか、さすがに目を付ける編集者がいるんですね。いまから楽しみです。
(GK生、横浜)
(宮?正弘のコメント)六月に中国株全株処分されたのですね。ラッキーでした。これからも上海株は、ギリシアのように間歇的な下落が何回か繰り返され、一年後には2000を割り込んでいるでしょうから。
●
故井尻千男さんを偲ぶ会のご案内
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
「主権回復運動」に命がけで取り組み、他方、数寄者の茶人として風流にも生きた稀有の文人、コラムニストだった井尻千男(拓殖大学名誉教授)さんが急逝されて早や百ケ日になろうとしております。
このたびゆかりの者の合議により、友人・知己・学友相集い、氏を追悼し、その憂国の熱情の想い出などを語らう集まりを開催することとなりました。
祖国の政局は故人が嘆いたように憂うべき惨状がつづいておりますが、この機会に主権回復の熱情を思い出し、決意を新たにする場とすると同時に、故人の風流を追憶したいと思います。
記
とき 9月26日(土曜) 午後二時(一時半開場)
ところ 市ヶ谷「ホテル・グランドヒル市ヶ谷」二階 白樺
http://www.ghi.gr.jp/access/
会費 おひとり一万円(当日遺稿集のお土産が間に合いませんので後日郵送します)
式次第 スライド上映、各自献花、献杯、追悼献茶 追悼挨拶 遺族謝辞
発起人 入江隆則 呉善花、小田村四郎、小堀桂一郎 小堀宗実、水島総、渡辺利夫
主催 「井尻千男さんを偲ぶ会」実行委員会
共催 拓殖大学日本文化研究所
事務局 東京都渋谷区渋谷1-1-16
日本文化チャンネル桜 気付(実行委員会 井上敏治 漆原亮太、大高未貴
花田太平、平野寛明、比留間誠司 宮崎正弘)
なおご出席を希望される方は下記へ一報ください。
(090)3526―9793(平野)
読者、ファンの方も希望者はご参加いただけます。
▲
宮崎正弘の新刊案内 http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
宮崎正弘のロングセラー
***********
『アジアインフラ投資銀行の凄惨な末路』(PHP研究所、999円)
『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収・合併する日』(ビジネス社)
『中国、韓国は自滅し、アジアの時代がやってくる!』(海竜社、1080円)
『中国大破綻 ついに失われる20年に突入する』(PHP研究所、1404円)
『日本と世界を動かす悪の「孫子」』(ビジネス社。1188円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、定価1620円)
『中国・韓国を“本気で”見捨て始めた世界』(徳間書店 1080円)
『台湾烈々 世界一の親日国家がヤバイ』(ビジネス社、1188円)
『「中国の時代」は終わった』(海竜社、定価1080円)
『中国共産党、三年以内に崩壊する!?』(海竜社、1080円)
『中国バブル崩壊が始まった』(海竜社、1080円)
『中国 大嘘つき国家の犯罪』(文芸社文庫、713円)
♪
<宮崎正弘の対談シリーズ>
************
宮崎正弘 v 渡邊哲也『激動する世界経済!』(ワック、994円)
宮崎正弘 v 室谷克実『日本に惨敗し ついに終わる中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 小川榮太郎『保守の原点』(海竜社。1620円)
宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 石平『2015年 中国の真実』(ワック、シリーズ第五弾)
(石平さんとの第六弾は、十月中旬発売予定です。ご期待下さい)
宮崎正弘 v 大竹慎一『中国崩壊で日本はこうなる』(1512円。徳間書店)
宮崎正弘 v 西部遭『日米安保五十年』(海竜社)
宮崎正弘 v 黄文雄『世界が知らない中国人の野蛮』(徳間書店)
宮崎正弘 v 佐藤優『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
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(C)有限会社宮崎正弘事務所 2015 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示