政府への抗議激化=爆発で賠償・汚染訴え-中国天津
政府への抗議激化=爆発で賠償・汚染訴え-中国天津
2015年08月17日 18時38分 提供:時事通信
17日、天津市浜海新区で政府に抗議する住民
【天津時事】中国天津市の港湾地区「浜海新区」で発生した巨大爆発事故で自宅マンションなどが損壊した周辺住民300人以上が17日、市政府の記者会見が行われたホテル前で政府に対し、住宅の買い取りなどの補償や、有毒物質が拡散して汚染が広がったことへの賠償などを要求して抗議活動を展開した。
抗議は約3時間半にわたり続き、住民代表は当局ともみ合いの末、住民の訴えや不満を処理する地元政府の陳情窓口に向かった。今後も政府に対する住民の抗議が激化する可能性が高い。
ホテル内で開かれた記者会見には、安全生産担当の何樹山副市長が初登場。会見では、現場には約700トンに上る毒性の強いシアン化ナトリウムが残留し、爆発地点の地表の水では最大で基準値の27倍に達していたことが明らかにされ、住民の不安が高まっている。
17日午前時点の死者は114人で、身元が確認された54人のうち39人が消防関係者。行方不明者は70人に上っており、このうち64人が消防関係者となっている。このほか、負傷者698人が入院している。
抗議活動を起こしたのは、爆発地点から約600メートル離れたマンションを含む住宅群「海港城」などの住民。友人宅に避難したマンションの男性住民は「近隣住民の中には爆風による落下物で亡くなった子供がいるほか、多数の重軽傷者が出た。家の中はぐちゃぐちゃで、もう住めない」と述べ、「政府や開発業者から事前に(危険化学物質の倉庫があると)何も知らされていなかった。汚染が深刻化し、子供の健康はどうなるのか」と強く訴えた。 【時事通信社】
http://news.ameba.jp/20150817-919/
中共は異常な別世界
━━━━━━━━━
平井 修一
西側世界は「自由、民主、人権、法治」というのが国家統治のルールになっている。
小生は幸いにも共産主義独裁国家で暮らしたことがないので、上記のルールのない国での暮らしが実際どのようなものであるかはあまり見当がつかない。
田中信彦氏の論考「株価暴落の背後にある論理 ~『管理される』ことが当然の社会の限界」(WISDOM7/24)は、そんな疑問に答えてくれた。
田中氏は中国・上海在住。1983年早稲田大学政治経済学部卒。毎日新聞記者を経て、90年代初頭から中国での人事マネジメント領域で執筆、コンサルティング活動に従事している。
<*「判断停止社会」のもろさ
「中国経済は“何でもできる”権力者と、それに乗って儲けようとする人民という構造の上に成長している。
改めて言うまでもないが、これは甚だ危なっかしい構造である。
権力者が“何でもできる”ことが経済成長の重要な要素だとすれば、権力者が“何でもできるわけではない”ことが明らかになれば、成長の土台は崩れる。
平たく言ってしまえば、中国が常識ある“まともな”体制の国になればなるほど、経済成長の条件が崩れていくと言っているのに等しいからである」
これは1年半前、2014年1月に書いた連載第56回「『全知全能』の権力の終わり~『政府頼み』の限界でバブル崩壊の懸念も」の一節である。
今回の中国株式市場の暴落が即「成長の土台が崩れた」ことになるとは思わないが、上述した「甚だ危なっかしい」構造が露顕したことは間違いない。
中国の代表的な株価指数である上海総合指数は、年明け以降6割急騰し、6月12日の5166.35ポイント(終値)を直近のピークに3週間ほどで30%以上急落した。日本円で数百兆円という金額が吹き飛んだといわれる。
この急騰と暴落、そして、それへの権力者の対応を通じて改めて認識したのは、この国の「政府=権力」の存在感の大きさであり、権力に対する人々の、良く言えば期待、悪く言えば依存心(甘え)の強さである。
この国では権力が強力なあまり、世の中すべてのことが権力の意向によって動くと大多数の人々が思っている。
そのため、自らの判断軸を持たず、権力の思惑に沿って、それを利用して自らの利益を謀ることが当たり前の生き方とされている。
このような一種の「判断停止社会」のもろさが露呈したのが、今回の出来事だったと思う。
中国人の視点からこの間の問題を見ると、見え方は違ってくる。
もちろんここで言う「中国人」とは、いわゆる大陸、社会主義中国で育ち、暮らしている人々のことである。
中国国内の論調では、政府の「救市」策に驚きは全くなく、むしろ「今まで何をしていたんだ。さっさとやれ」という反応が普通である。
投資家たちの掲示板では、まれに「政府の介入は市場原理を歪め、将来に禍根を残す。控えるべき」という正論も見られるが、少数派だ。
それどころか「今回の暴落は政府のミスであり、いわば人災である。
損害を補填しろ」といった意見も少なくない。
市場の原則からすれば暴論だが、それが個人投資家の間で半ば「正論」として受け入れられている雰囲気がある。
中国政府がまるで狼狽したかのように破格の「救市」策を打ってきた背景には、こうした人々の受け止め方がある。
ではなぜ人々はそのような受け止め方をするのか。
そのことを考えるには、中国の人々が暮らしている社会の背景を理解する必要がある。
*「管理される」ことは生活の前提
現実の中国社会は、実に権力者による管理の多い社会である。
「一人っ子政策」という名で知られる「子供を持つ」ことに対する厳格な管理はまだ生きているし、中国には戸籍(戸口)制度というものがあって、だいぶ緩くなってきたとは言うものの、今でも中国の国民はどこに住んで、どこで働くか自由ではない。
多くの場合、現地の政府にお伺いを立てて許可をもらわないと、合法的に住むことも働くこともできない。
今や大都市では車を持つにも事実上の総量規制(ナンバー発給制限)やナンバー末尾の数字による運転不可日の制限などがあり、ネット上では、事実上世界のスタンダードと言っていいGoogleやフェイスブック、ユーチューブなどに接続させないという管理が存在している。
個人のプライバシーに対する感覚も大きく違う。中国社会ではすべての国民が身分証明書番号で統一管理されており、これらは居住地の行政および公安機関、勤務先、銀行や証券会社などの金融機関、税務局、交通チケットの購入、旅先での宿泊、携帯電話やインターネット接続の実名制などを通じて電子的に一元管理されている。
国民の行動や生活状況は、ほぼすべて把握が可能だ。
さらには中国全土の道路という道路、ほぼすべての公共空間には、くまなく監視カメラが設置されており、中国では自宅やオフィスの中にいるのでない限り、どこを歩いても車で通っても、その行動は録画されている。
そしてそのことを中国政府は積極的に公言している。
プライバシーも何もあったものではないが、中国の人々はこうした現状に慣れていて、不快感を唱える人は少ない。むしろ「別に何も悪いことはしていないから構わない。
生活が安全になったほうがいい」と肯定的に見る人が少なくとも私の周囲ではほとんどだ。
言い方を変えれば、「権力」というものが良くも悪くも非常に身近で、日常生活のすぐそこにいる。そして権力のやろうとすること(=政策)とは国民が異を唱えるような性質のものではなく、天災のように天から降ってくるもので、避けようがないものである。
やや極端な表現ではあるが、こんな感じが現実に近い。
権力による日常生活の管理と株式市場と何の関係があるのかと思われるかもしれないが、中国の人々は「権力が自分たちの日常を管理しているのだ」という感覚に慣れ切っていて、それが当たり前、いわば社会生活の前提になっているということが言いたいのである。
一党独裁の統治システムはすでに60年以上も続き、70代後半以上の世代を除き、こういう生活しか体験したことがない人が圧倒的多数を占めている。
人々は「社会とは権力者が管理するもの」と天真爛漫に考え、そういう仕組みに沿って動く。
国民の自由度が極端に低かった1960~70年代の「文化大革命」の時代は言わずもがな、1978年に始まった改革開放政策からすでに40年近く経とうとしている現在ですら、この社会は「原則不自由、権力が許したことだけ可」という枠組みは変わっていない。
それはあまりに当たり前すぎて、国民自身は「管理されている」ことすら意識していないことが多い。
それが「良いことか、悪いことか」という話ではない。
私がその状態を「支持しているか、いないか」という話でもない。
この社会ではそれが普通のことであって、多くの国民はそういう状態の下で生活しているということを忘れるべきではない。
*「政府の思惑に乗ったほうがトク」
このように権力者が社会生活を管理することが当たり前の社会になると、何が起こるか。それは冒頭で触れたこの連載の第56回でも紹介したように、権力者に「管理される人々」はそれに反発するよりも、このいわば「全知全能」の人たちを利用しようとするようになる。
相手は基本的に「何でもできる」のだから、やることは成功する可能性が極めて高い。だったら妙に反発するよりも、相手の思惑に乗ってしまったほうがトクで、効率が良い。
これは国民にとってはリスクが低く、ある意味ありがたい話である。
かくして中国では、人々が不動産のような大きな買い物をしたり、投資をしたり、自分の職業を選択したりする際に、まず考えることは「権力者が何を考えているか」である。
権力者が土地制度を改革し、不動産を市場化して政府所有の土地売却で利益を上げたいと思っていることがわかれば、不動産の値段が下がるはずはないから、誰もが不動産を買う。
そしてその行動は多くの場合、成功した。
株式投資も同じで、半年前、昨年12月にこの連載の第64回で私が「株価上昇は中国を変えるか ~進み始めた金融『市場化』の道」という文章を書いた頃、上海の友人たちは「政府が株価を上げたがっている。
絶対に儲かる」と口々に話し、中には不動産を売却して日本円で億に近い資金を株に投入した友人もいた。
結果的に株価はそこからわずか半年で6~7割上昇した。彼(女)らの多くは、4月に明らかになった信用取引規制強化の動きを見て、政府が株式市場の過熱を警戒していることを察知し、保有株の少なくとも一部は売却するなどの手を打った。
そして6月12日、当局が信用取引の規制と空売り規制の緩和を公表した直後から今回の暴落が始まった。
要するに株を買う人の多くが、政府の動きしか見ていないのである。
中国には2億人近い個人投資家がいる。
そして、そのほとんどはスマートフォンの株式売買ソフトやその附属する掲示板、中国版LINEの「微信(WeChat)」などでつながっている。
これらの人々がある日、一斉に市政府前の広場に「散歩」に出たら、もうどうしようもない。
権力者は民の無言の恫喝に日々さらされている。
「結果を出さねばならない」という強迫観念があるのである。
政府が今回の株価暴落に対して、世界の常識からは異常とも思えるほど巨大な「救市」対策を取ったのは、こういう背景がある。
中国の普通の人々からしてみれば、中国の株式市場は世界の常識で考える「市場(マーケット)」ではなく、中国の権力者が統治を有利に運ぶための装置でしかない。
そこに国民を呼び込んでカネを集めておいて、それが消失したのだから、その穴埋めを権力者の力で行うのは極めて当然の理屈である。
それができなかったら、民は怒る。
怒った民を黙らせるには、カネを渡すか、力で押さえるしかない。
今、中国の権力者はその両方をにらみつつ、戦々恐々とした日々を送っていると思う>(以上)
小生から見れば異常な世界だ。上意下達で、愚民はそれに従い、踊ったり、踊らされたり、あるいは裏をかいたり。
損をしたら「政府の責任だ、金を返せ」と主張する。
人民には「自由、民主、人権、法治」という権利がないのだから、義務も責任も本来はない。
近代国家は国民主権で、国民が選挙を通じて政府をつくる。
自立した国民はさまざまな権利を有すると同時に、納税、兵役、教育の義務を担う。
その意味で中共は絶対王政とか封建国家に近い。中共主権であり、人民は義務も責任も本来はないはずなのに納税と労働を義務化され、兵役もある。
改革開放までは奴隷に近い状態ではなかったか。
1日2ドル未満で暮らす貧困層は約2億4300万人もいるというから、それはおそらくほとんどが農民であり、今でも農奴的な状態ではないのか。
全体で9億の農民は未だに貧しいまま、経済大国を実感できないでいるだろう。
この異常な国は「自由、民主、人権、法治」を受け入れない。
受け入れるということは共産党独裁利権がなくなることであり、中共の崩壊を意味する。
一方で経済を維持・発展させるためには「自由、民主、人権、法治」を含めた資本主義へと改革開放=体制変換をさらに進めていかなければならない。
つまり西側の統治システムを拒否し続ければ中共経済は沈滞し、受け入れれば中共独裁は崩壊するということ。
独裁をとるか、それとも経済をとるか、いずれにしても今のままでの統治では未来はない。(2015/8/16)
~~~~
市民が住む街のまん中に軍事用の化学物質を保管していたのだから政府の責任で賠償しないとね。
これは、チュウゴク人の支配者である共産党の責任なんだから、工場の責任者を逮捕しただけでは済まない。責任を果たさない支配者は人民にとって悪魔だ。これほどの大災害に政府が何も賠償をしないとなると、外国だってチュウゴクをバカにするだろう。
奴隷に酷い目にあわせて平気でいる主人なんて、良い管理者ではない。たぶん、全てにおいて危機管理がなっていない管理者なんだろう。
アメリカのネットのニュースでは、車の工場がやられて燃えた車の残骸がたくさん映っていた。車の工場にも賠償金をきちんと払ってやってくださいよ。
◎<天津爆発>日本企業に影響拡大 操業停止、長期化の恐れ
中国天津市で発生した大規模な爆発事故で、日本企業に影響が広がってい
る。現場周辺では依然立ち入り制限が続いており、生産や販売などの正常
化に時間がかかる恐れもある。
トヨタ自動車は天津市内にある2工場について、夏休み明けの17日から19
日まで3日間、操業を停止すると決めた。周辺では避難勧告が続いてお
り、20日以降も操業再開は流動的だという。
トヨタは中国の自動車大手、第一汽車集団と合弁で、天津の2工場で主力
車種のカローラなどを生産している。2工場の最近の生産実績は年44万
台。3日間の操業停止による直接の影響は5500台程度と見られるが、停止
が長期化すれば中国事業への悪影響は避けられない。
富士重工業は現地工場を持っていないが、天津港を上海、広州と並ぶ主要
な荷揚げ港として利用している。爆発事故により、現場から約2キロ離れ
た物流拠点に保管していた新車百数十台が被害を受けた。天津港も当面使
用できない可能性が高く、荷揚げ場所の振り替えなどの検討を本格化する。
大塚製薬は天津市内にポカリスエットの製造工場があり、従業員の安全に
考慮して15日まで操業を停止した。ただ、工場は現場から約4キロ離れて
いるため大きな被害は受けておらず、17日以降の操業再開を検討してい
る。また、イオンによると、現場から2キロ離れた「イオンモール天津
TEDA」で、爆風によりガラスが割れるなどの被害が生じた。
毎日新聞 8月17日(月)11時47分配信
(読者の声2)天津の大爆発事故、日本の報道では当り障りのない映像・画像しか見られませんが、「中国茉莉花革命」というサイトには数十枚のショッキングな画像が掲載されています。
http://www.molihua.org/2015/08/58.html
最初はビルのガラス扉とともに吹き飛ばされる男性、時刻は 23:35:58。
焼死体では三段重ねのもの、レンガの前の炭化したもの、コンテナに押しつぶされたものなど多数。消防ホースと消防服の写真もありますが、身体は完全に燃えてしまったのか写っていません。
数千台が燃えた自動車、アルミホイールが溶けて水銀のよう。鉄道駅もボロボロ、駅の時計も11時35分で止まっています。
日本では神戸港が阪神淡路大震災で大きな被害をうけました。世界のコンテナ港ランキングで1980年に第3位、90年に第5位、震災のあった95年には23位に転落。以後、浮上することなく2012年には52位まで低下しています。天津港が今後もとの順位に戻ることはないでしょうね。
(PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)天津港の再開には少なくとも一年、あるいは数年を要するのではありませんか。「茉莉花」は「ジャスミン」の意味ですが、それにしても、これらの写真はショッキングですね。
2015年08月17日 18時38分 提供:時事通信
17日、天津市浜海新区で政府に抗議する住民
【天津時事】中国天津市の港湾地区「浜海新区」で発生した巨大爆発事故で自宅マンションなどが損壊した周辺住民300人以上が17日、市政府の記者会見が行われたホテル前で政府に対し、住宅の買い取りなどの補償や、有毒物質が拡散して汚染が広がったことへの賠償などを要求して抗議活動を展開した。
抗議は約3時間半にわたり続き、住民代表は当局ともみ合いの末、住民の訴えや不満を処理する地元政府の陳情窓口に向かった。今後も政府に対する住民の抗議が激化する可能性が高い。
ホテル内で開かれた記者会見には、安全生産担当の何樹山副市長が初登場。会見では、現場には約700トンに上る毒性の強いシアン化ナトリウムが残留し、爆発地点の地表の水では最大で基準値の27倍に達していたことが明らかにされ、住民の不安が高まっている。
17日午前時点の死者は114人で、身元が確認された54人のうち39人が消防関係者。行方不明者は70人に上っており、このうち64人が消防関係者となっている。このほか、負傷者698人が入院している。
抗議活動を起こしたのは、爆発地点から約600メートル離れたマンションを含む住宅群「海港城」などの住民。友人宅に避難したマンションの男性住民は「近隣住民の中には爆風による落下物で亡くなった子供がいるほか、多数の重軽傷者が出た。家の中はぐちゃぐちゃで、もう住めない」と述べ、「政府や開発業者から事前に(危険化学物質の倉庫があると)何も知らされていなかった。汚染が深刻化し、子供の健康はどうなるのか」と強く訴えた。 【時事通信社】
http://news.ameba.jp/20150817-919/
中共は異常な別世界
━━━━━━━━━
平井 修一
西側世界は「自由、民主、人権、法治」というのが国家統治のルールになっている。
小生は幸いにも共産主義独裁国家で暮らしたことがないので、上記のルールのない国での暮らしが実際どのようなものであるかはあまり見当がつかない。
田中信彦氏の論考「株価暴落の背後にある論理 ~『管理される』ことが当然の社会の限界」(WISDOM7/24)は、そんな疑問に答えてくれた。
田中氏は中国・上海在住。1983年早稲田大学政治経済学部卒。毎日新聞記者を経て、90年代初頭から中国での人事マネジメント領域で執筆、コンサルティング活動に従事している。
<*「判断停止社会」のもろさ
「中国経済は“何でもできる”権力者と、それに乗って儲けようとする人民という構造の上に成長している。
改めて言うまでもないが、これは甚だ危なっかしい構造である。
権力者が“何でもできる”ことが経済成長の重要な要素だとすれば、権力者が“何でもできるわけではない”ことが明らかになれば、成長の土台は崩れる。
平たく言ってしまえば、中国が常識ある“まともな”体制の国になればなるほど、経済成長の条件が崩れていくと言っているのに等しいからである」
これは1年半前、2014年1月に書いた連載第56回「『全知全能』の権力の終わり~『政府頼み』の限界でバブル崩壊の懸念も」の一節である。
今回の中国株式市場の暴落が即「成長の土台が崩れた」ことになるとは思わないが、上述した「甚だ危なっかしい」構造が露顕したことは間違いない。
中国の代表的な株価指数である上海総合指数は、年明け以降6割急騰し、6月12日の5166.35ポイント(終値)を直近のピークに3週間ほどで30%以上急落した。日本円で数百兆円という金額が吹き飛んだといわれる。
この急騰と暴落、そして、それへの権力者の対応を通じて改めて認識したのは、この国の「政府=権力」の存在感の大きさであり、権力に対する人々の、良く言えば期待、悪く言えば依存心(甘え)の強さである。
この国では権力が強力なあまり、世の中すべてのことが権力の意向によって動くと大多数の人々が思っている。
そのため、自らの判断軸を持たず、権力の思惑に沿って、それを利用して自らの利益を謀ることが当たり前の生き方とされている。
このような一種の「判断停止社会」のもろさが露呈したのが、今回の出来事だったと思う。
中国人の視点からこの間の問題を見ると、見え方は違ってくる。
もちろんここで言う「中国人」とは、いわゆる大陸、社会主義中国で育ち、暮らしている人々のことである。
中国国内の論調では、政府の「救市」策に驚きは全くなく、むしろ「今まで何をしていたんだ。さっさとやれ」という反応が普通である。
投資家たちの掲示板では、まれに「政府の介入は市場原理を歪め、将来に禍根を残す。控えるべき」という正論も見られるが、少数派だ。
それどころか「今回の暴落は政府のミスであり、いわば人災である。
損害を補填しろ」といった意見も少なくない。
市場の原則からすれば暴論だが、それが個人投資家の間で半ば「正論」として受け入れられている雰囲気がある。
中国政府がまるで狼狽したかのように破格の「救市」策を打ってきた背景には、こうした人々の受け止め方がある。
ではなぜ人々はそのような受け止め方をするのか。
そのことを考えるには、中国の人々が暮らしている社会の背景を理解する必要がある。
*「管理される」ことは生活の前提
現実の中国社会は、実に権力者による管理の多い社会である。
「一人っ子政策」という名で知られる「子供を持つ」ことに対する厳格な管理はまだ生きているし、中国には戸籍(戸口)制度というものがあって、だいぶ緩くなってきたとは言うものの、今でも中国の国民はどこに住んで、どこで働くか自由ではない。
多くの場合、現地の政府にお伺いを立てて許可をもらわないと、合法的に住むことも働くこともできない。
今や大都市では車を持つにも事実上の総量規制(ナンバー発給制限)やナンバー末尾の数字による運転不可日の制限などがあり、ネット上では、事実上世界のスタンダードと言っていいGoogleやフェイスブック、ユーチューブなどに接続させないという管理が存在している。
個人のプライバシーに対する感覚も大きく違う。中国社会ではすべての国民が身分証明書番号で統一管理されており、これらは居住地の行政および公安機関、勤務先、銀行や証券会社などの金融機関、税務局、交通チケットの購入、旅先での宿泊、携帯電話やインターネット接続の実名制などを通じて電子的に一元管理されている。
国民の行動や生活状況は、ほぼすべて把握が可能だ。
さらには中国全土の道路という道路、ほぼすべての公共空間には、くまなく監視カメラが設置されており、中国では自宅やオフィスの中にいるのでない限り、どこを歩いても車で通っても、その行動は録画されている。
そしてそのことを中国政府は積極的に公言している。
プライバシーも何もあったものではないが、中国の人々はこうした現状に慣れていて、不快感を唱える人は少ない。むしろ「別に何も悪いことはしていないから構わない。
生活が安全になったほうがいい」と肯定的に見る人が少なくとも私の周囲ではほとんどだ。
言い方を変えれば、「権力」というものが良くも悪くも非常に身近で、日常生活のすぐそこにいる。そして権力のやろうとすること(=政策)とは国民が異を唱えるような性質のものではなく、天災のように天から降ってくるもので、避けようがないものである。
やや極端な表現ではあるが、こんな感じが現実に近い。
権力による日常生活の管理と株式市場と何の関係があるのかと思われるかもしれないが、中国の人々は「権力が自分たちの日常を管理しているのだ」という感覚に慣れ切っていて、それが当たり前、いわば社会生活の前提になっているということが言いたいのである。
一党独裁の統治システムはすでに60年以上も続き、70代後半以上の世代を除き、こういう生活しか体験したことがない人が圧倒的多数を占めている。
人々は「社会とは権力者が管理するもの」と天真爛漫に考え、そういう仕組みに沿って動く。
国民の自由度が極端に低かった1960~70年代の「文化大革命」の時代は言わずもがな、1978年に始まった改革開放政策からすでに40年近く経とうとしている現在ですら、この社会は「原則不自由、権力が許したことだけ可」という枠組みは変わっていない。
それはあまりに当たり前すぎて、国民自身は「管理されている」ことすら意識していないことが多い。
それが「良いことか、悪いことか」という話ではない。
私がその状態を「支持しているか、いないか」という話でもない。
この社会ではそれが普通のことであって、多くの国民はそういう状態の下で生活しているということを忘れるべきではない。
*「政府の思惑に乗ったほうがトク」
このように権力者が社会生活を管理することが当たり前の社会になると、何が起こるか。それは冒頭で触れたこの連載の第56回でも紹介したように、権力者に「管理される人々」はそれに反発するよりも、このいわば「全知全能」の人たちを利用しようとするようになる。
相手は基本的に「何でもできる」のだから、やることは成功する可能性が極めて高い。だったら妙に反発するよりも、相手の思惑に乗ってしまったほうがトクで、効率が良い。
これは国民にとってはリスクが低く、ある意味ありがたい話である。
かくして中国では、人々が不動産のような大きな買い物をしたり、投資をしたり、自分の職業を選択したりする際に、まず考えることは「権力者が何を考えているか」である。
権力者が土地制度を改革し、不動産を市場化して政府所有の土地売却で利益を上げたいと思っていることがわかれば、不動産の値段が下がるはずはないから、誰もが不動産を買う。
そしてその行動は多くの場合、成功した。
株式投資も同じで、半年前、昨年12月にこの連載の第64回で私が「株価上昇は中国を変えるか ~進み始めた金融『市場化』の道」という文章を書いた頃、上海の友人たちは「政府が株価を上げたがっている。
絶対に儲かる」と口々に話し、中には不動産を売却して日本円で億に近い資金を株に投入した友人もいた。
結果的に株価はそこからわずか半年で6~7割上昇した。彼(女)らの多くは、4月に明らかになった信用取引規制強化の動きを見て、政府が株式市場の過熱を警戒していることを察知し、保有株の少なくとも一部は売却するなどの手を打った。
そして6月12日、当局が信用取引の規制と空売り規制の緩和を公表した直後から今回の暴落が始まった。
要するに株を買う人の多くが、政府の動きしか見ていないのである。
中国には2億人近い個人投資家がいる。
そして、そのほとんどはスマートフォンの株式売買ソフトやその附属する掲示板、中国版LINEの「微信(WeChat)」などでつながっている。
これらの人々がある日、一斉に市政府前の広場に「散歩」に出たら、もうどうしようもない。
権力者は民の無言の恫喝に日々さらされている。
「結果を出さねばならない」という強迫観念があるのである。
政府が今回の株価暴落に対して、世界の常識からは異常とも思えるほど巨大な「救市」対策を取ったのは、こういう背景がある。
中国の普通の人々からしてみれば、中国の株式市場は世界の常識で考える「市場(マーケット)」ではなく、中国の権力者が統治を有利に運ぶための装置でしかない。
そこに国民を呼び込んでカネを集めておいて、それが消失したのだから、その穴埋めを権力者の力で行うのは極めて当然の理屈である。
それができなかったら、民は怒る。
怒った民を黙らせるには、カネを渡すか、力で押さえるしかない。
今、中国の権力者はその両方をにらみつつ、戦々恐々とした日々を送っていると思う>(以上)
小生から見れば異常な世界だ。上意下達で、愚民はそれに従い、踊ったり、踊らされたり、あるいは裏をかいたり。
損をしたら「政府の責任だ、金を返せ」と主張する。
人民には「自由、民主、人権、法治」という権利がないのだから、義務も責任も本来はない。
近代国家は国民主権で、国民が選挙を通じて政府をつくる。
自立した国民はさまざまな権利を有すると同時に、納税、兵役、教育の義務を担う。
その意味で中共は絶対王政とか封建国家に近い。中共主権であり、人民は義務も責任も本来はないはずなのに納税と労働を義務化され、兵役もある。
改革開放までは奴隷に近い状態ではなかったか。
1日2ドル未満で暮らす貧困層は約2億4300万人もいるというから、それはおそらくほとんどが農民であり、今でも農奴的な状態ではないのか。
全体で9億の農民は未だに貧しいまま、経済大国を実感できないでいるだろう。
この異常な国は「自由、民主、人権、法治」を受け入れない。
受け入れるということは共産党独裁利権がなくなることであり、中共の崩壊を意味する。
一方で経済を維持・発展させるためには「自由、民主、人権、法治」を含めた資本主義へと改革開放=体制変換をさらに進めていかなければならない。
つまり西側の統治システムを拒否し続ければ中共経済は沈滞し、受け入れれば中共独裁は崩壊するということ。
独裁をとるか、それとも経済をとるか、いずれにしても今のままでの統治では未来はない。(2015/8/16)
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市民が住む街のまん中に軍事用の化学物質を保管していたのだから政府の責任で賠償しないとね。
これは、チュウゴク人の支配者である共産党の責任なんだから、工場の責任者を逮捕しただけでは済まない。責任を果たさない支配者は人民にとって悪魔だ。これほどの大災害に政府が何も賠償をしないとなると、外国だってチュウゴクをバカにするだろう。
奴隷に酷い目にあわせて平気でいる主人なんて、良い管理者ではない。たぶん、全てにおいて危機管理がなっていない管理者なんだろう。
アメリカのネットのニュースでは、車の工場がやられて燃えた車の残骸がたくさん映っていた。車の工場にも賠償金をきちんと払ってやってくださいよ。
◎<天津爆発>日本企業に影響拡大 操業停止、長期化の恐れ
中国天津市で発生した大規模な爆発事故で、日本企業に影響が広がってい
る。現場周辺では依然立ち入り制限が続いており、生産や販売などの正常
化に時間がかかる恐れもある。
トヨタ自動車は天津市内にある2工場について、夏休み明けの17日から19
日まで3日間、操業を停止すると決めた。周辺では避難勧告が続いてお
り、20日以降も操業再開は流動的だという。
トヨタは中国の自動車大手、第一汽車集団と合弁で、天津の2工場で主力
車種のカローラなどを生産している。2工場の最近の生産実績は年44万
台。3日間の操業停止による直接の影響は5500台程度と見られるが、停止
が長期化すれば中国事業への悪影響は避けられない。
富士重工業は現地工場を持っていないが、天津港を上海、広州と並ぶ主要
な荷揚げ港として利用している。爆発事故により、現場から約2キロ離れ
た物流拠点に保管していた新車百数十台が被害を受けた。天津港も当面使
用できない可能性が高く、荷揚げ場所の振り替えなどの検討を本格化する。
大塚製薬は天津市内にポカリスエットの製造工場があり、従業員の安全に
考慮して15日まで操業を停止した。ただ、工場は現場から約4キロ離れて
いるため大きな被害は受けておらず、17日以降の操業再開を検討してい
る。また、イオンによると、現場から2キロ離れた「イオンモール天津
TEDA」で、爆風によりガラスが割れるなどの被害が生じた。
毎日新聞 8月17日(月)11時47分配信
(読者の声2)天津の大爆発事故、日本の報道では当り障りのない映像・画像しか見られませんが、「中国茉莉花革命」というサイトには数十枚のショッキングな画像が掲載されています。
http://www.molihua.org/2015/08/58.html
最初はビルのガラス扉とともに吹き飛ばされる男性、時刻は 23:35:58。
焼死体では三段重ねのもの、レンガの前の炭化したもの、コンテナに押しつぶされたものなど多数。消防ホースと消防服の写真もありますが、身体は完全に燃えてしまったのか写っていません。
数千台が燃えた自動車、アルミホイールが溶けて水銀のよう。鉄道駅もボロボロ、駅の時計も11時35分で止まっています。
日本では神戸港が阪神淡路大震災で大きな被害をうけました。世界のコンテナ港ランキングで1980年に第3位、90年に第5位、震災のあった95年には23位に転落。以後、浮上することなく2012年には52位まで低下しています。天津港が今後もとの順位に戻ることはないでしょうね。
(PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)天津港の再開には少なくとも一年、あるいは数年を要するのではありませんか。「茉莉花」は「ジャスミン」の意味ですが、それにしても、これらの写真はショッキングですね。