GHQの禁書処分で長らく忘れられていた名著の復刻長輿善郎『少年満洲読本』(徳間書店) | 日本のお姉さん

GHQの禁書処分で長らく忘れられていた名著の復刻長輿善郎『少年満洲読本』(徳間書店)

77年ぶりに蘇った大ベストセラー
GHQの禁書処分で長らく忘れられていた名著の復刻
長輿善郎『少年満洲読本』(徳間書店)
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昭和13年のベストセラーが77年ぶりに復刻された。長輿善郎といえば、当時「白樺派」の作家として武者小路、有島らに並んだ流行作家だった。
長輿は満州のあちらこちらをこまめに観察して歩いた。興安嶺奥地やツンドラ未開地にまで足を延ばし、見てきたこと、体験したことを父親がかみ砕いてやさしく子供に聴かせるような物語りとして、分かりやすく書いた。
近年、このスタイルを真似た「満鉄旅行記」なる本も随分と人口に膾炙されたが、政治的な主張を横に置いて、ともかく満州とはどんなところだったのか、人々の暮らし、済んでいる人の性格、気象件や特産品や、地形などを活写している。
「もうこんな小さな島に閉じこもって、そこばかりを生きる天下と思っていたようなケチくさい島国根性を以て引っ込んでいてはならないのだ」という惹句は多くの日本人を大陸雄飛に旅出させた。
父親の質問に少年が答える。
「日本はイギリスの本国のように狭くて、その上に国が貧乏だったのです。それなのに人口ばかりどんどん増えて行ったから、外へハミ出さずには生きて行けなくなったのでしょう」
「しかし誰も他人の国がはみ出ることを喜ぶものはない。シナは日本がまだ小国だったのを馬鹿にして、自分の方から朝鮮にはみ出し、日本の独立までも脅かしてきた」

当時の歴史解釈の常識がこのあたりからぱんぱんと飛び出してくる。いまの日本で流布している自虐史観の信奉者が聴いたら真っ青になるが、これが真実だ。
満州国は満州族がシナを攻め取った天下のあと、日本が支援した王朝だった。
「満州国がシナから独立し」というのが一つの解釈でもあるが、
「シナが満州を放したというより、満州の方でシナをシナに還しただけのことだ」。

さて満州鉄道は日本が開拓し、付属地として多くの都市を造った。
日本の開発した都市はいずれも素晴らしいものだったが、ロシアは侵略と搾取しか頭になく、大連と旅順に軍港を建設すること以外、じつに方々に殺風景な風景をこしらえていった。
日本が丹誠込めて建設した新京(いまの長春)は、曠野にとつじょ拓けた大都会だった。

こうして少年等をはこぶ満鉄の旅は大連からハルビンへ到り、チチハルから黒河へと。その旅の途中で歴史的な背景が簡潔にして明瞭に、しかし雄渾に語られて行くのである。

あの時代の日本の浪漫、日本人の若者が何を夢見て大陸へ渡ったのか、そしてGHQによって、こうした正しい歴史は封印され、本書は戦後七十年も封印されていた。
ところで、この復刻文庫本の欠点がひとつある。解説を満州建国が日本の侵略だとする戦後史観に洗脳されたヒョウロンカが書いていることである。
読者はこの解説部分をとばして読まれるほうが良いかも知れない。