中国が勝つような事態になった時に備えて、「軍事の自立」も急ぐ必要があります。
中国が勝つような事態になった時に備えて、「軍事の自立」も急ぐ必要があります。
【RPE】★●●●の加盟で強力になる「反米の砦」
ロシア政治経済ジャーナル No.1231
2015/7/10
「反米の砦」にあの大国が加わりそうです。
詳細は、【本文】で!↓
★●●●の加盟で強力になる「反米の砦」
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
(●RPEの読者さんは、「安保関連法案」をどう見ている?
詳細は【おたよりコーナー】で。)
皆さんご存知のように、私はモスクワに25年住んでいます。
(昔も今も、共産主義者ではありません。)
ロシアは今、欧米日による制裁下にあります。
インフレがひどく、食品の価格は前年比で倍ぐらいになった感じ。
近所のうわさ話で、「○○さんが首になった」という話もよく聞きます。
しかし、なんというか、ロシアの人は「打たれ強い」ですね。
首になった人が、「まだ仕事探しはじめない」などといいます。
「なぜ?」と聞くと、
「夏の間は、休暇だと思ってバカンスを楽しみ、秋からボチボチ探すよ」
などと気楽なことをいっている。
夏は、ダーチャ(近郊の別荘)で過ごすか、外国旅行にいくか。
とにかく「悲壮さ」が全然ありません。
そして、驚くべきことにプーチンの人気がまったく下がっていません。
世論調査では、ずっと80%以上を維持しています。
「そもそも独裁国家の世論調査など信用できるのか?」
という話もありますが・・・。
それで私は、ロシアの友人、知人の話に、じっくり耳を傾けてきいていますが、プーチン批判は聞かれません。
なぜかと考えるのですが、やはり「メディア統制の力」かなと。
日本の場合、メディア統制が行われていません。
それで、国民は、たとえば「安保関連法案」の意義がよくわからない。
とても健全で、「賛成意見」「反対意見」がある。
ところがロシアの場合、たとえば「クリミア併合がなぜ善なのか?」という情報はあふれている。
その一方で、「クリミア併合は悪かも」という意見はメディアに出ないのです。
そして、国民は、「プーチンのせいで生活が苦しくなった」とは考えません。
「私たちが苦しいのは、制裁を主導するアメリカのせい」と考えている。
いいか悪いかは別として、「見事」です。
それはそれとして。
日本や欧米では、「プーチンは世界の孤児だ!」などといわれています。
確かに、クリミア併合の結果、ロシアは孤立しました。
ロシアはG8のメンバーでしたが、追い出されてしまった。
日本、アメリカ、EUあわせると、だいたい世界GDPの半分になります。
これが一体化してロシア制裁しているので、確かに苦しい。
とはいえ、世界には、日欧米以外に「後半分」いる。
そして、ロシア都市のウファでは、「プーチンは世界の孤児とはいえない」証拠となる、二つの催しが行われています。
一つは、上海協力機構(SCO)の首脳会議。
もう一つは、ブリックスの首脳会議。
▼SCOとは?
上海協力機構(SCO)は2001年6月、上海で設立されました。
加盟国は、ロシア、中国、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス。
モンゴル、インド、パキスタン、イラン、アフガニスタンがオブザーバー。
プーチンがSCOを重視はじめたのは、05年頃でした。
アメリカとの対立が深刻になっていたからです。
02、03年、イラク戦争問題で、米ロは対立。
03年、ユコス問題で対立。
03年、ジョージア(旧名グルジア)で革命が起こり、親米反ロ政権誕生。
04年、ウクライナで革命が起こり、親米反ロ政権誕生。
05年、キルギスで革命が起こり、親米反ロ政権誕生。
ロシアの勢力圏である「旧ソ連諸国」でつぎつぎと革命が起こる。
そして、「親米反ロ傀儡政権」がたてられていく。
プーチンは強い危機感をもち、SCOを「反米の砦化」することを決意したのです。
SCO、07年からは、ほぼ毎年「合同軍事演習」を行うようになっています。
プーチン的には、「NATOに対抗する組織」に育てたい意図がある。
▼●●●の加盟で、強大化するSCO
さて、ウファで行われているSCO首脳会議。
アメリカの没落を決定的にしかねない重要なできごとが起こっています。
時事通信7月9日。
<ウファでは、新興5カ国(BRICS)と上海協力機構(SCO)の両首脳会議が開幕。
BRICSメンバーのインドは今回、SCOでも準加盟国からの加盟プロセスが始まる予定だ。
ただ、来年を目標とするパキスタンとの同時加盟にはインドの協力が不可欠という背景がある。>
インドが、オブザーバーから正式加盟国になる可能性が高くなっている。
これは、覇権を維持したいアメリカにとって、「極めて不都合な事態」ですね。
未来を見るに、「世界経済をけん引していける大国」は二つしかありません。
中国とインドです。
しかし、中国はすでに成長期後期で、栄華が終わりつつある。
一方で、インドはまだ成長期前期で、今後15年ぐらいは成長がのぞめる。
今から10年後、インドのGDPは、日本を軽く凌駕するようになっているでしょう。
(●インドのライフサイクルについての詳細は、「クレムリン・メソッド」を参考にしてください。)
いまはそれほど仲のよくない中国とインド。
しかし、中国、ロシアが、「インドと組めば、アメリカに勝てるよね」と考え、
取り込みに成功すれば、欧米の時代は決定的に終わります。
▼勝敗のカギは誰に?
08年まで、世界は「アメリカ一極時代」でした。
しかし、リーマンショックから世界的危機が起こり、アメリカが衰退した。
09年から世界は、「米中覇権争奪戦」を軸にまわっています。
14年3月、ロシアがクリミアを併合。
これでプーチン・ロシアが、「アメリカの敵ナンバー1」になりました。
15年3月、「AIIB事件」。
これは、「中国はアメリカのつくった世界秩序内で台頭したいだけ。
脅威になりません」
という、アメリカのお気楽リベラルの主張を粉砕しました。
「AIIB」は明らかに、「アメリカがつくった秩序の外に、【新たな秩序】を構築すること」だからです。
これで、キッシンジャーもブレジンスキーも「親中派をやめた」といわれています。
中国は、再びアメリカの仮想敵ナンバー1に返り咲き、世界は「米中覇権争奪戦」を軸にまわっています。
で、どっちが勝つのでしょうか?
これ、決めるのは、アメリカ、中国ではないのですね。
他の大国群が「どちらにつくか?」で決まるのです。
「他の大国群」とは、
・日本
・EU
・ロシア
・インド
など。
・日本
日本は、明確にアメリカ側についていると思いきや。「3000人訪中団事件」もあり、フラフラしている印象です。
・EU
EUは、明確にアメリカ側と思いきや。
「AIIB事件」では、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア他多くのEU諸国がアメリカを裏切り、中国側につきました。
・ロシア
ロシアは、「クリミア問題」で欧米にいじめられているので、明確に中国側についています。
ルトワックさんやミアシャイマーさんは、「ロシアを中国包囲網にいれろ!」と主張していますが、うまくいくかどうか。
・インド
完全自立外交をつづけるインド。
確かに親日ではありますが、ロシアとも良好な関係。
そして、中国とも和解を模索している。
結局、これら大国群が、「米中どっちにつくのがお得なのかな?」と考えながら、フラフラしている。
しかし、時と共に、勝敗が見えてくることでしょう。
中国の「成長期」が後3~5年で終わることから、ここ数年がとても重要であることがわかります。
日本は、情勢を熟視しつつ、今度は「勝つ方」につかなければなりません。
そして、中国が勝つような事態になった時に備えて、「軍事の自立」も急ぐ必要があります。
(そういう意味で、(手法の問題はありますが)「安保関連法案」の成立は不可欠だと思います。)
でなければ、
「僕のお父さんは、アメリカ幕府の天領・日本でうまれました。
僕自身は、中国の小日本省で生まれました。
学校で日本語の授業はありません。
中国語がうまく話せないので、中国人に差別されています。」
なんてことになりかねません。
【RPE】★●●●の加盟で強力になる「反米の砦」
ロシア政治経済ジャーナル No.1231
2015/7/10
「反米の砦」にあの大国が加わりそうです。
詳細は、【本文】で!↓
★●●●の加盟で強力になる「反米の砦」
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
(●RPEの読者さんは、「安保関連法案」をどう見ている?
詳細は【おたよりコーナー】で。)
皆さんご存知のように、私はモスクワに25年住んでいます。
(昔も今も、共産主義者ではありません。)
ロシアは今、欧米日による制裁下にあります。
インフレがひどく、食品の価格は前年比で倍ぐらいになった感じ。
近所のうわさ話で、「○○さんが首になった」という話もよく聞きます。
しかし、なんというか、ロシアの人は「打たれ強い」ですね。
首になった人が、「まだ仕事探しはじめない」などといいます。
「なぜ?」と聞くと、
「夏の間は、休暇だと思ってバカンスを楽しみ、秋からボチボチ探すよ」
などと気楽なことをいっている。
夏は、ダーチャ(近郊の別荘)で過ごすか、外国旅行にいくか。
とにかく「悲壮さ」が全然ありません。
そして、驚くべきことにプーチンの人気がまったく下がっていません。
世論調査では、ずっと80%以上を維持しています。
「そもそも独裁国家の世論調査など信用できるのか?」
という話もありますが・・・。
それで私は、ロシアの友人、知人の話に、じっくり耳を傾けてきいていますが、プーチン批判は聞かれません。
なぜかと考えるのですが、やはり「メディア統制の力」かなと。
日本の場合、メディア統制が行われていません。
それで、国民は、たとえば「安保関連法案」の意義がよくわからない。
とても健全で、「賛成意見」「反対意見」がある。
ところがロシアの場合、たとえば「クリミア併合がなぜ善なのか?」という情報はあふれている。
その一方で、「クリミア併合は悪かも」という意見はメディアに出ないのです。
そして、国民は、「プーチンのせいで生活が苦しくなった」とは考えません。
「私たちが苦しいのは、制裁を主導するアメリカのせい」と考えている。
いいか悪いかは別として、「見事」です。
それはそれとして。
日本や欧米では、「プーチンは世界の孤児だ!」などといわれています。
確かに、クリミア併合の結果、ロシアは孤立しました。
ロシアはG8のメンバーでしたが、追い出されてしまった。
日本、アメリカ、EUあわせると、だいたい世界GDPの半分になります。
これが一体化してロシア制裁しているので、確かに苦しい。
とはいえ、世界には、日欧米以外に「後半分」いる。
そして、ロシア都市のウファでは、「プーチンは世界の孤児とはいえない」証拠となる、二つの催しが行われています。
一つは、上海協力機構(SCO)の首脳会議。
もう一つは、ブリックスの首脳会議。
▼SCOとは?
上海協力機構(SCO)は2001年6月、上海で設立されました。
加盟国は、ロシア、中国、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス。
モンゴル、インド、パキスタン、イラン、アフガニスタンがオブザーバー。
プーチンがSCOを重視はじめたのは、05年頃でした。
アメリカとの対立が深刻になっていたからです。
02、03年、イラク戦争問題で、米ロは対立。
03年、ユコス問題で対立。
03年、ジョージア(旧名グルジア)で革命が起こり、親米反ロ政権誕生。
04年、ウクライナで革命が起こり、親米反ロ政権誕生。
05年、キルギスで革命が起こり、親米反ロ政権誕生。
ロシアの勢力圏である「旧ソ連諸国」でつぎつぎと革命が起こる。
そして、「親米反ロ傀儡政権」がたてられていく。
プーチンは強い危機感をもち、SCOを「反米の砦化」することを決意したのです。
SCO、07年からは、ほぼ毎年「合同軍事演習」を行うようになっています。
プーチン的には、「NATOに対抗する組織」に育てたい意図がある。
▼●●●の加盟で、強大化するSCO
さて、ウファで行われているSCO首脳会議。
アメリカの没落を決定的にしかねない重要なできごとが起こっています。
時事通信7月9日。
<ウファでは、新興5カ国(BRICS)と上海協力機構(SCO)の両首脳会議が開幕。
BRICSメンバーのインドは今回、SCOでも準加盟国からの加盟プロセスが始まる予定だ。
ただ、来年を目標とするパキスタンとの同時加盟にはインドの協力が不可欠という背景がある。>
インドが、オブザーバーから正式加盟国になる可能性が高くなっている。
これは、覇権を維持したいアメリカにとって、「極めて不都合な事態」ですね。
未来を見るに、「世界経済をけん引していける大国」は二つしかありません。
中国とインドです。
しかし、中国はすでに成長期後期で、栄華が終わりつつある。
一方で、インドはまだ成長期前期で、今後15年ぐらいは成長がのぞめる。
今から10年後、インドのGDPは、日本を軽く凌駕するようになっているでしょう。
(●インドのライフサイクルについての詳細は、「クレムリン・メソッド」を参考にしてください。)
いまはそれほど仲のよくない中国とインド。
しかし、中国、ロシアが、「インドと組めば、アメリカに勝てるよね」と考え、
取り込みに成功すれば、欧米の時代は決定的に終わります。
▼勝敗のカギは誰に?
08年まで、世界は「アメリカ一極時代」でした。
しかし、リーマンショックから世界的危機が起こり、アメリカが衰退した。
09年から世界は、「米中覇権争奪戦」を軸にまわっています。
14年3月、ロシアがクリミアを併合。
これでプーチン・ロシアが、「アメリカの敵ナンバー1」になりました。
15年3月、「AIIB事件」。
これは、「中国はアメリカのつくった世界秩序内で台頭したいだけ。
脅威になりません」
という、アメリカのお気楽リベラルの主張を粉砕しました。
「AIIB」は明らかに、「アメリカがつくった秩序の外に、【新たな秩序】を構築すること」だからです。
これで、キッシンジャーもブレジンスキーも「親中派をやめた」といわれています。
中国は、再びアメリカの仮想敵ナンバー1に返り咲き、世界は「米中覇権争奪戦」を軸にまわっています。
で、どっちが勝つのでしょうか?
これ、決めるのは、アメリカ、中国ではないのですね。
他の大国群が「どちらにつくか?」で決まるのです。
「他の大国群」とは、
・日本
・EU
・ロシア
・インド
など。
・日本
日本は、明確にアメリカ側についていると思いきや。「3000人訪中団事件」もあり、フラフラしている印象です。
・EU
EUは、明確にアメリカ側と思いきや。
「AIIB事件」では、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア他多くのEU諸国がアメリカを裏切り、中国側につきました。
・ロシア
ロシアは、「クリミア問題」で欧米にいじめられているので、明確に中国側についています。
ルトワックさんやミアシャイマーさんは、「ロシアを中国包囲網にいれろ!」と主張していますが、うまくいくかどうか。
・インド
完全自立外交をつづけるインド。
確かに親日ではありますが、ロシアとも良好な関係。
そして、中国とも和解を模索している。
結局、これら大国群が、「米中どっちにつくのがお得なのかな?」と考えながら、フラフラしている。
しかし、時と共に、勝敗が見えてくることでしょう。
中国の「成長期」が後3~5年で終わることから、ここ数年がとても重要であることがわかります。
日本は、情勢を熟視しつつ、今度は「勝つ方」につかなければなりません。
そして、中国が勝つような事態になった時に備えて、「軍事の自立」も急ぐ必要があります。
(そういう意味で、(手法の問題はありますが)「安保関連法案」の成立は不可欠だと思います。)
でなければ、
「僕のお父さんは、アメリカ幕府の天領・日本でうまれました。
僕自身は、中国の小日本省で生まれました。
学校で日本語の授業はありません。
中国語がうまく話せないので、中国人に差別されています。」
なんてことになりかねません。