世界の在り方を米中2大国で決めようという、私たちから見れば不遜な対話でもある。 | 日本のお姉さん

世界の在り方を米中2大国で決めようという、私たちから見れば不遜な対話でもある。

受け身の米国 世界の力関係転換の瀬戸際
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
櫻井よしこ

6月23、24日の両日、これからの世界のパワーバランスを予測するのに最も重要な対話がワシントンで行われた。米中戦略・経済対話である。

これはブッシュ政権が米中の経済問題を主題として話し合うために始め、オバマ政権が経済にとどまらず、戦略を話し合う場に昇格させた。
世界の在り方を米中2大国で決めようという、私たちから見れば不遜な対話でもある。
副大統領、副首相らを筆頭に双方から多くの閣僚が出席し、まさに米中が国を挙げて臨んだ。

詳細な情報はまだ入手していないが、初日の主要演説を読めば大きな流れは見て取れる。
オバマ政権は卑屈なほど中国に気兼ねし、中国は極めてビジネスライクに対処した。
完全に米国側の「負け」である。
とりわけジョー・バイデン副大統領の冒頭演説は冗長で自負も気概も欠いていた。

「率直に言って、貴国はわれわれを覚醒させました。
われわれは少し鈍化していた。
われわれは少し──私の同僚たちが私がこのように語るのを好まないのは承知しているが──しかし、われわれは少し、なんといえばよいのか、20世紀の終わりの時期、快適であり過ぎた」

バイデン氏の発言をそのまま日本語にしたのだが、このくだりは、心ある米国人にとって苦々しいのではないか。
正直といえば正直な感想なのだろうが、その後、副大統領は台頭する中国を延々と褒めたたえ、米国はその中国の台頭を歓迎すると繰り返した。
また超大国の威厳を全く感じさせない演説の最後で、氏はこう語った。

「全ての政治、特に国際政治は個人的なものです(All politics is personal.)。
個人的関係によってのみ、それが唯一、信頼を築く手段です」

文脈が不確かな語り口調で氏は習近平氏についても絶賛した。

「彼は主席になったとき5時間も私に会ってくれるほど、よくしてくれた。私は彼をよく知っていると思う。われわれは彼のことを知っている」

この種の「個人的関係」の上に、外交が成り立っているという氏の主張は国際政治の常識には当てはまらない。外交を決定付けるのは国益である。

バイデン演説を受けた中国の副首相、劉延東氏の演説はバイデン演説の約5分の1の短さで、情緒たっぷりの前者の演説に比べてあっさりした内容だった。

後はただ肝腎なこと、習近平国家主席が新型大国関係の堅固な樹立を願っていることだけを2度、強調した。
その後、ジョン・ケリー国務長官がこれまた情緒的な演説をし、それを受けて汪洋副首相が、ケリー演説の半分にも満たない短い演説で、またもや新型大国関係樹立の重要性を強調した。

ジェイコブ・ルー財務長官は「政府支援のサイバー攻撃による知的財産の盗み取りに深い懸念を抱いている」と中国側に警告を発したが、その後に演説した楊潔?(よう・けつち)国務委員は「中国は近隣諸国に対して誠
実さ、親和性、真の利益と抱擁性を実践してきた」とうそぶいた。

米国の抗議など一向に気にしないといった風情で「高所に立って遠い未来を見据え、新型大国関係を構築しよう」と呼び掛けた。

新型大国関係の柱は核心的利益の相互尊重である。
チベット、ウイグル、台湾、南シナ海、尖閣諸島は中国の核心的利益であり、米国はそれを受け入れよと、中国側要人全員が口をそろえて要求し続けた。
彼らの狙いは米国に中国流の国際社会の支配を受け入れさせることである。
その基軸が新型大国関係なのである。

世界の力関係が大きく転換する瀬戸際で、中国が冷徹に攻め、米国が情緒的受け身に回った。
今後いよいよ、米国に頼っていては大変なことになると予感させる展開だった。
日本の国益を守るのは日本でしかあり得ないと心を引き締めたい。

『週刊ダイヤモンド』 2015年7月4日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1090
(採録: 松本市 久保田 康文)

日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信 ┃ http://www.realist.jp
2015年7月6日 アメリカが中国に対して取るべきたった6つのオプションとは?

The Debate Over US China Strategy
By:Aaron L. Friedberg
Survival 15-5/11
https://www.iiss.org/en/publications/survival/sections/2015-1e95/survival--global-politics-and-strategy-june-july-2015-b48d/57-3-06-friedberg-b1f3
-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-
※ ↓明日(7日)の生放送で今回の「アメ通」の内容をじっくり解説します↓

【生放送】奥山真司の「アメリカ通信」LIVE!
2015/07/07(火) 開場:19:57 開演:20:00
http://live.nicovideo.jp/gate/lv225853765
-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-

おくやまです。

「中国の台頭にどのように対処していけばいいのか?」
という疑問について、アメリカの安全保障の専門家や、
とりわけ「リアリスト」と呼ばれる学者や専門家たちの間では、
すでに90年代後半に本格的な議論が始まっておりました。

その成果のうちの一つが、
私が翻訳したミアシャイマーの『大国政治の悲劇』
(http://goo.gl/PQfwlc)なのですが、
その原著の初版が出た2001年当時のアメリカでは、
まだ中国の脅威が一般的には認知されていなかったにもかかわらず、
ミアシャイマーはすでに「中国の台頭は平和的なものとはならない」
と警告しておりました。

結果としてそれから10年ほどたってみると、
中国の脅威はたしかに
ミアシャイマーの予測した通りの状況になっているわけですが、
その合間にアメリカでの対中戦略の議論も色々と進んできました。

今回紹介する論文は、そのような議論を進めた人物の一人である、
プリンストン大学教授のアーロン・フリードバーグのものです。

この人は、どちらかといえば共和党寄りの中国専門家でありまして、
日本では『支配への競争: 米中対立の構図とアジアの将来』
(http://goo.gl/KjA7Rx)という本が出ているので、
ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

この論文の議論ですが、フリードバーグは
これからアメリカがとるべき対中戦略のモデルとして、
なんと6つものオプションを挙げて、
これらをそれぞれ比較検討(!)しております。

その詳細は火曜日の夜の生放送で詳しくご紹介するつもりですが、
このような戦略面での選択肢を挙げて論じている分だけ、
まだアメリカには物理的な面や、知的な面でも「余裕がある」
ということも言えそうです。

いやはや羨ましい限りですな。

ということで、火曜日の夜をぜひお楽しみに。
http://live.nicovideo.jp/gate/lv225853765

( おくやま )

編集後記-(和田)
■------------------------------------------------■

アジア諸国も中国の台頭を面白く思っていません。
アメリカと日本で協力して抑えこんでくれればいいと考えていても、いつアメリカが引くかわからないので中国にもいい顔するしかない状況です。
アメリカの協力が必要ですが、自力解決するなら、日本は経済成長するしかありません。

敵失に期待するのは愚かですが、
1.経済崩壊、
2.共産党の内紛、
3.人民解放軍の反乱、
4.チベットウイグル等の独立戦争、
5.人民の反乱
6.環境破壊による人民の分散
あたりでは、やはり1の経済崩壊でしょうか。
すでに30%値下がりした上海株には大いに期待したいとろこです。

( 和田 / https://twitter.com/media_otb )
▼復活する地政学!

日本で唯一の地政学者・奥山真司が、「地政学とは、なにか?」を徹底的に
わかりやすく解説するCD「奥山真司の地政学講座」全10回をつくりました。

日本でこの地政学的思考をもった知識人を増やしたい、
という想いから今回の開講に至りました。
これを学べば、この日本において、地政学の専門家に最も近づける
と言っても過言ではありません。何しろ他に教材がないのですから。

http://www.realist.jp/geopolitics.html
このメルマガは転送自由です。(ただし出典を残して下さい)
▼Youtube THE STANDARD JOURNAL
https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal
▼「THE STANDARD JOURNAL ~『アメリカ通信』」
http://ch.nicovideo.jp/strategy
▼FacebookPage:「THE STANDARD JOURNAL」
 https://www.facebook.com/realist.jp
★奥山真司への講演依頼・執筆依頼は、
【webmaster@realist.jp】までお問合せ下さい。
◎日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信 のバックナンバーはこちら
⇒ http://archive.mag2.com/0000110606/index.html
~~~~~~~~~~~~~~~