何でも陰謀論を簡単に信じてはいけない。
陰謀論「アポロ11号は月には行ってない」を中学生があっさり論破
2015年6月15日2015年6月14日 1,077
Ebic/Shutterstock
「と学会」の初代会長としても知られるSF作家・山本弘の著作『ニセ科学を10倍楽しむ本』。最近文庫版も出たこの本ですが、現役クリエイターが発行するメルマガ『日刊デジタルクリエイターズ』でも“面白い”と評判となってるようです。
ナントカ陰謀説が好きだ。
またもや『ニセ科学を10倍楽しむ本』から。お気に入りは「アポロ11号は月に行っていない」「9.11はアメリカの自作自演」である。もちろん、両方とも陰謀論者たちが作り上げた大ウソだが、かなりもっともらしいことを主張しているので、コロッと騙された人は少なくないようだ。
アポロに関する疑惑として、「月の空に星が写っていない」「太陽が当たっていない部分が明るく写っている」「影の向きがおかしい」「旗が風で揺れている」など13項目ある。明らかに間違った項目もあるが、そういえばそうだなと思う疑惑もある。「なぜもう一度行けないのか」、これには同意してしまう。
この本では、中学生が本やビデオやネットで調べて「アポロ陰謀説の真相」というレポートを書くという設定で、彼女らがあまりに頭が良すぎるのはともかく、13項目すべてにしっかり答えを出している。「なぜもう一度行けないのか」の答えは「お金がないから」である。1960年代、アメリカがアポロに使った金は250億ドル、1ドル360円の時代、日本円でざっと9兆円、当時の物価は今より安かったから、今やるとなったら何10兆円になるかもしれない。ソ連との宇宙開発競争という動機があったからできたことで、それに勝利したからもう月に行く意味がなくなり、20号までの予定が17号で打ち切られたのだ。
「40年前に月に行けたというなら、もう一度行ってみせろ」は「400年前に大阪城を建てられたというのなら、もう一度建ててみせろ」と言っているのと同じというたとえがうまい。金があればできるが、もう誰もアポロや大阪城に金を出さないのだ。
「テレビもインターネットも、不正確な情報やウソの情報をいっぱい流している。だから、それをすぐ信じちゃだめなの。『ほんとかな?』と思ったら調べてみる。怪しい話は信じない、それがメディア・リテラシーというものよ」中学生にいわれちゃったよ。最後にある「ニセ科学にひっかからないための10箇条」は当たり前のことながら、なかなか実践できないものだ。
2014年にアメリカの半導体メーカーINVIDEA社が、最新のCG技術を用いて、アポロ11号の月面写真が本物かどうか分析した。船長が撮影した写真(疑惑の写真)をCGで再現し、月面と同じ条件で光の強さや当たり方が同じになるか調べた結果、間違いなく真正の写真であった。
1969年にはまだCG技術はなかった。撮影しようとしたらセットで人工照明を当てるしかないが、それではCG再現写真とは光の当たり方が違ってしまう。CGで本物そっくりの写真がつくれるようになったからこそ、逆に写真が本物であることが証明できるようになったわけだという。実におもしろい話だ。ニセモノは必ずバレるんだ。
ニセ科学を10倍楽しむ本 (ちくま文庫)
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著者は最後の章において、このようなニセ科学にひっかからないようにするために心がけるべきこととして、話の出どころを確認する、誰が言っているのかを調べる、キーワードに注目する、反論に目を通す、数字に注目する、理屈で考える、実験をやってみる、自分の目を疑う、願望と事実を区別する、正しい科学知識を身につける、といったことを挙げている。
ただ、中国から輸入される食品の不安に関しての著者の説明はどうだろうか。そもそもこの命題は、「水は言葉を理解しない」という命題のように科学原理に照らしてありえないというような証明は難しい。
著者の主張の根拠も、単に報告されている違反件数は少ないというデータを示しているに過ぎない。
確かに意外感はあるものの、輸入される食品の種類は国によって偏りがあるし、この違反件数での比較というのがどこまで安全性の証明の根拠として妥当といえるかという前提条件についての検証が不十分であり、そもそもこれだけなら日本の消費者の中国産への不信感が圧力となって日本へ輸出される食品については中国国内向け以上の品質管理が行われるようになったとりあえずの成果であるという解釈も可能である。
よって、この程度の説明だけで中国産食品に対する安全上の不安をニセ科学と同列に扱うのはどうだろうか。
また、中国毒入り餃子事件で多くの消費者が強く不安を感じたのは事件そのものだけではなく、毒入り餃子をリサイクルして中国国内でも同様の被害が出るまで中国側が官民挙げて「悪いのは日本」と言い続けた事件の背後にある中国側の意識そのものであり、その点に触れずに国内でも似たような食品犯罪があったという面だけを強調するやり方は不安を払拭する科学的に十分な説明になっているとは言いがたい。
百歩譲っても、この程度の説明であれば、こういう別の見方もできるという情報を示しただけにすぎず、ニセ科学を科学的原理基づいて論破しているわけではない。
それから、P267に「『すべての物質は毒である』ってことね。光も例外じゃないんだ」とあるが、質量があるわけではない光子を物質と例えるのはあまり適切な例えでないように思われる 。
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アメリカの教科書に進化論と創造論が同時に載っているということをバカにするのは良くない。神さまがいないという証拠がどこにある?
いるという証拠の方が多いと思います。