一方的に米国に責任を押しつけた。
2015.6.9 08:49更新
中国念頭に安保の観点からTPP必要性訴える 米外務、国防相が米紙に寄稿
【ワシントン=加納宏幸】米国のケリー国務長官、カーター国防長官は8日、米紙「USA TODAY」(電子版)に連名で論評記事を発表し、安全保障の観点から環太
平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉合意の必要性を訴えた。中国主導による低い水準の貿易ルールが作られれば「海外における米国の影響力を損なう」としている。
論評は、米上院を可決し、下院に送られた通商交渉の権限を大統領に委ねる貿易促進権限(TPA)法案の早期可決を求める内容となっている。
ケリー、カーター両氏は、TPPが米国による同盟関係の深化や、アジア太平洋への持続的な関与を示すために重要であるとし、「今後数十年にわたり米国が地域のリーダーであることを再確認する」ためにも合意が必要だと強調。参加国の開発に資することで、暴力的過激主義の拡大を防ぐ効果もあるとした。
その一方で、両氏は中国を念頭に、TPPがアジア太平洋地域で「より開かれていない」ルールとの競争状態にあると指摘。「中国が提供するような低い水準の合意」がなされ、開放性や公正性が損なわれる可能性に警鐘を鳴らした。
http://www.sankei.com/world/news/150609/wor1506090014-n1.html
2015.6.1 11:30更新
【環球異見】
南シナ海の米軍機偵察飛行 米紙が「正しい」と評価 中国紙は「戦争」と反発
(1/5ページ)【不穏な米中対立】 .
中国による人工島建設が進む南シナ海上空を偵察飛行する米軍機。米海軍が5月21日、公開した (ロイター)
中国が領有権を主張して各国と対立する南シナ海に、米政府はメディア同乗の軍偵察機を飛ばして公開した。人工島を建設し領有の既成事実化を図る中国に対し、言葉のみならず行動で牽制(けんせい)した形だ。一歩前に出た米政府の姿勢を米紙が評価する一方、中国紙は「戦争」との言葉まで持ち出して反発した。かつて米軍基地を撤収させたフィリピンのメディアもいまは、米国との軍事協力の重要性を訴えている。
◇
ウォールストリート・ジャーナル(米国) 最も強い抗議の意思示した
米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は5月22日、中国の領土に関する主張に対して「米国が異議を唱えるのは正しい」とする社説を掲載した。
社説は、米軍偵察機が5月20日、南シナ海のファイアリークロス(永暑)礁周辺などを飛行したことをめぐり、「沿岸部から600マイルも離れているのに主権を主張する中国に対し、米国は最も強い抗議の意思を示した」と指摘。その上で、「(米政権は)パートナー国の海洋の自由と海域の権利を防衛する姿勢も示した」と強調した。
中国はここ数年、ベトナム船などを妨害する一方、同礁に人工島を造成してきた経緯がある。中国は2012年、スカボロー礁でフィリピンの艦船とにらみ合ったこともある。オバマ政権はこのとき、艦船を派遣するなどの対応を見せなかったが、アジア全体で警戒感が強まったことから対策を強化してきた。
とはいえ13年11月、尖閣諸島(沖縄県石垣市)上空に中国が防空識別圏を設定した後、米軍がB52爆撃機2機を飛行させた際、米高官は「事前に予定されていた飛行だった」と言うにとどまった。
これとは反対に、20日に偵察機を飛行させたことについて社説は「メディア(米CNNテレビ取材班)を同乗させ、中国の(人工島)建設に明確な(反対)姿勢を示すことになった」と評価した。
米与野党の有力上院議員は3月、中国の一方的な行動を阻止するため、包括的な戦略を策定するようケリー米国務長官らに要求した。米高官もまた、スプラトリー諸島は中国の支配下にはないことを強調するため、艦船を人工島付近に派遣することも検討中だと述べた。社説はこれらの動きを「正しい行動だ」と強調。「米国が南シナ海での中国の主張に異議を唱えない事態が長く続けば、中国は主張をより強化するだろう」とし、「中国の海上の要求に抵抗するのは今だ」と訴えている。(ニューヨーク 黒沢潤)
環球時報(中国) 摩擦の臨界点に近づく
米軍機による南シナ海での警戒・監視活動を受け、中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報は5月25日付の社説で、「南シナ海における中米軍事衝突の可能性は確かに過去より高くなった」と“警報”を発した。
米国はこれまで、南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンやベトナムを「間接的」に支持してきた。社説は米軍の警戒・監視活動を「直接的な挑発」と受け止め、「米軍は戦術上、しだいに両軍の摩擦の臨界点に近づいており、中国が無制限に譲歩しない限り、この趨勢(すうせい)の結末は危険なものとなる」と米軍の行動を批判した。
社説は、中国が「無制限の譲歩」をしないことを前提に、「双方が容認できるぎりぎりの線を示し、相手側のぎりぎりの線を理解し、尊重することが極めて重要だ」と主張。中国にとって、その「線」とは岩礁埋め立て工事の完遂を意味するとした上で、「米国があくまで工事停止を求めるならば、南シナ海での中米戦争は避けられない」と予測している。
「米国の目的が単なる威嚇と嫌がらせならば、中国は自制を働かせる」とする辺りに軍事衝突を避けたいという本音も垣間見えるが、社説は衝突への備えを強く訴えた。「もし米国が中国に教訓を与えるという傲慢なたくらみを持ち、南シナ海で一戦を交えることも辞さないというならば、中国軍は尊厳のために戦う」と宣言している。
社説が習近平指導部の方針に沿ったものであることは、5月26日発表の国防白書に海上での軍事闘争に備える方針が盛り込まれたことからもうかがえる。白書を「中国の透明性を上げた」とたたえる27日付の社説でも同紙は、「中国の合法的な行動を、かんかんになって怒っている米国は、中国に抑制を求めている。米国が中国の台頭を戦略的思考で理解しているならば、21世紀の両国関係は闇に隠れる」と、一方的に米国に責任を押しつけた。(北京 川越一)
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インクワイアラー(フィリピン) 米国との協力が国益にかなう
南シナ海、スプラトリー諸島の領有権を主張し中国と対立するフィリピンにとって、米軍が中国が建設を進める人工島周辺に偵察機を接近させて牽制(けんせい)を強めたことは歓迎すべき対応だ。ただ、フィリピンは国内米軍基地の返還を実現するなど、旧統治国である米国の影響からの脱却を図ってきた歴史的経緯がある。フィリピンの英字紙インクワイアラー(電子版)は5月22日付の社説で、中国の進出圧力と、昨年4月に米国と調印した新軍事協定の重要性を冷静に評価すべきだと主張した。
社説はまず、公正で偏見のない「政治的に正しい」フィリピン人が、国内の2つのナショナリストの板挟みになり悩んでいると指摘した。一方は、南シナ海のほとんどを自国領域だとする中国の不当な主張に対抗し、立ち向かおうとの意見を唱える。他方は、かつて米国に植民地化された屈辱を忘れず、安全保障面でも米軍の役割を拒絶すべきだと訴える。
その上で社説は、資源豊かな領海を中国に奪われるより、米国との慎重で熟考された協力関係が国益にかなうという現実を「国民がしっかりと考えるときが来た」と訴えた。理由として、中国は埋め立てた岩礁を「島」と主張し、フィリピンの漁船や石油探査船を追いやり、自国領に近づこうとしているフィリピン海軍に「許可」申請を求めているとした。
米国の有力シンクタンクが、米国のアジア重視政策の中で、フィリピンを「自発的かつ同等のパートナー」と位置付け、従属関係だとはみなされていないことも強調した。
さらに、人工島への米軍機の接近に反発する中国政府の対応を「耳障りだ」と批判。フィリピンへの米軍派遣拡大を可能にする新たな軍事協定を進め、日本やオーストラリアなど価値観を共有する周辺国とも協力関係を広げ、中国という「巨獣」の脅威に対する防衛強化を訴えた。(シンガポール 吉村英輝)
http://www.sankei.com/world/news/150601/wor1506010005-n1.html
2015.5.21 15:29更新
「こちらは中国海軍、退去せよ」…南シナ海上空で米軍機に警告 CNNが映像公開
【不穏な米中対立】
「こちらは中国海軍。退去せよ」。米CNNテレビは20日、中国が岩礁埋め立てを進める南シナ海の海域で米軍機に同乗取材した際の映像を公開した。
取材班が同日乗った対潜哨戒機P8は中国側から8回にわたって退去警告を受けた。
これに関連してハーフ国務省副報道官は20日のCNNの番組で、米国が大規模埋め立てに反対し、監視していることを中国側に知らせる必要があると述べた。
スプラトリー(中国名・南沙)諸島のファイアリクロス(同・永暑)礁などの大規模埋め立ての鮮明な映像も公開。管制塔や滑走路、レーダー施設などとする施設を映し出した。
米軍搭乗員は「軍の施設のように見える」と話した。
周辺海域には中国海軍の多数の艦船が見えたという。
中国側が「外国軍機」に対し即時退去を求めるたびに、P8の操縦士らは公海上を飛行していると応じたとしている。
近くには米民間機も飛行していたという。(共同)
http://www.sankei.com/world/news/150521/wor1505210033-n1.html
2015.5.11 06:00更新
【野口裕之の軍事情勢】
南シナ海を睥睨する中国のコンクリート製「不沈空母」
【不穏な米中対立】 .
中国による埋め立て作業が進む南シナ海の7岩礁のうち、ガベン礁(中国名・南薫礁)ではすでに5階建て以上とみられるビルも建設中だ=2015年1月29日(フィリピン政府当局者提供・共同)
米海軍作戦部長のジョナサン・グリナート大将(61)は、4月下旬に行った中国人民解放軍海軍司令官の呉勝利・上(大)将(69)との初の《テレビ会談》を、さぞ後悔したことだろう。互いの顔が見えぬ《電話会談》にすればよかった、と。グリナート大将にしてみれば、米中海軍の軍服組トップ会談で笑い転げるわけにはいかず、懸命にこらえていたに違いない。呉上将のボケ役ブリは、漫才であれば名人肌と称賛されたはず。グリナート大将が、南シナ海における外国との領有紛争海域で、海面スレスレの岩礁や満潮時には水没する暗礁、サンゴ礁、砂州を埋め立て、次々と軍事基地を築いている侵略行為にツッコミを入れると、以下の如くボケた。
「航行や飛行の自由を脅かすものではなく、国際海域の安全を守る義務の履行のため」
「???」
さすがに呉上将は補足した。
「気象予報や海難救助などの能力向上につながる」
「????」
「将来、条件が整えば、米国を含む関係国や国際組織が施設を利用することを歓迎する」
「?????」
中国海軍司令官のボケ
呉上将はニコリともせず言い放ったようだが、笑いのツボを押さえる?辺りは喜劇役者・三木のり平(1924~99年)に迫る。三木を知らない世代には、桃屋の《ごはんですよ!》のCMキャラクターを思い出していただきたい。小欄はかつて、とある芸能人に、三木のおかしさについて教わった。映画で共演したベテラン俳優が撮影の際、皆笑ってしまうのだという。NGの連続だった。その芸能人は「のり平さんは笑いを取ろうとはしない。むしろ、真面目に演技するほど、周りは吹き出した」と話していた。
1日の記者会見で「気象予報や海難救助などの能力向上につながる」としても「紛争地域での施設建設は平和と安定に寄与しない」と反論した米国務省副報道官代理も宮仕えとはいえ、深刻な顔でコメントしなければならぬバカバカしさを、噛み締めたであろう。
ただ、自由や民主主義、人権、法の支配といった基本的・普遍的価値を大切にするまともな国では、三木には腹の底から笑えても、呉上将のそれへは「冷ややかな笑い」になる。
NGが許されぬグリナート大将と副報道官代理氏には同情申し上げるが、呉上将の8年前の発言を思い出して「冷ややかな笑い」どころか「背筋が寒くなった」と思量する。2008年3月、米太平洋軍司令官(海軍大将)が上院軍事委員会の公聴会で証言した。
「昨年5月の訪中で、中国海軍幹部より『航空母艦を保有した場合、ハワイ以東を米国が、以西を中国が管理することで合意を図れないか』と打診された」
7岩礁に基地
「中国海軍幹部」は呉上将と観てよい。太平洋軍司令官は「冗談だとしても、人民解放軍の戦略構想を示す発言。中国は影響圏拡大を欲している」と、強い警戒感を表した。中国が伝統的国防圏としていた「沖縄以西」を大きく踏み出す野望を物語っており、「冗談のような本音」であったのだ。この脈絡に従えば、呉上将の言う岩礁埋め立てによる、世界の誰もが利用できる「海難救助」施設建設は「冗談のようなウソ」だと、世界の誰もが疑わぬ。
米太平洋艦隊司令官(海軍大将)は3月下旬、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)を含む軍事基地の面積は現時点で、東京ドーム85個分に相当する「4平方キロ超」だと明言。中国が占拠・不法管轄する7岩礁の相当部分に「浚渫(しゅんせつ)船とブルドーザーで万里の長城を築いた」と形容したが、表現力が乏しい。万里の長城は異民族侵入に備えた防御壁の側面が強い。一方の南シナ海上の軍事基地は、強力な攻撃力を備えた「不沈空母」であり「不沈強襲揚陸艦」と呼ぶべきだ。
各軍事基地にレーダー▽各種艦艇▽戦闘機▽対艦・対潜水艦ヘリコプター▽対艦・対空ミサイル▽水陸両用戦闘部隊-を配備すれば、南シナ海の軍事情勢が激変。海空軍力に乏しい周辺国を睥睨→ますます萎縮させ、米軍でさえ容易に手は出せなくなる。それどころか、日本をはじめ世界のエネルギー・食料の生命線が通る海域に、不沈空母と不沈強襲揚陸艦を核とする「7個艦隊」が出現し、経済面でも脅され、支配される。凶暴な中国漁民=海上民兵の資源乱獲も、中国の軍事・準軍事力の恫喝に支援され激化する。
初任務は水没救助出動?
中国の南シナ海における武威による勝手し放題を威嚇に来る、米軍の介入を阻止する意味では万里の長城とも言える。南シナ海ほぼ全ての上空域に防空識別圏(ADIZ)を設定し、“侵入機”に対し不沈空母より戦闘機の発進が可能になれば、長城は完成する。
埋め立てに際しては、周辺で掘り出したサンゴや砂・岩が投入され、大量のコンクリートを流し込み環境破壊も深刻。1つの基地だけで数百万トンの土砂が掘削されているもようだ。
幸い、工事は中国の業者と軍工兵部隊が担う。党や政府、軍の高官が工事費をピンハネし、セメントの量や鉄筋の数を減らす手抜き(おから)工事を行うだろうから、厳しい洋上環境のこと。不沈空母の「自爆」も有り得る。呉上将はグリナート大将に、中国の軍事基地群が「海難救助」施設だと“説明”したが、駐留部隊の初任務は水没した隣接の中国軍基地に向けた救助出動も見込まれる。
もちろん、周辺諸国に協力依頼はできまい。「自分の庭で行う工事を他人にアレコレ言われる筋合いはない」(王毅外相)から、協力すれば大きなお世話となろう。もっとも、習近平国家主席(61)は3月下旬、中国海南省での国際会議《ボアオ・アジアフォーラム》で、「紛争の平和的解決」「武力行使や威嚇への反対」に加え、こう公言なされている。
「海洋をアジアをつなぐ平和・友好・協力の海に」
発言はセンス・ゼロ。前述した呉上将の「冗談のような本音」「冗談のようなウソ」には、多少の分析が必要だったが、習発言は「ウソのようなウソ」だと、習氏の家族にすらバレる。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)
http://www.sankei.com/world/news/150511/wor1505110007-n1.html