中国旅客船転覆 国交省担当者「日本では考えにくい事故」
中国旅客船転覆 国交省担当者「日本では考えにくい事故」
産経新聞 6月2日(火)18時0分配信
中国湖北省の長江で1日夜に旅客船が竜巻に巻き込まれ転覆し、多くの行方不明者が出ている事故。当時の詳しい状況は分かっていないが、運航時の悪天候や転覆した旅客船の構造などからは日本とは異なる状況も見える。国土交通省の担当者は「ハード、ソフトの両面から安全が守られている日本では考えにくい事故」と指摘する。
国交省によると、日本では船舶安全法で、船体の重心を低くすることで、傾いても元の姿勢に戻る「復原性」を一定程度保つよう義務付けている。突風なども考慮したレベルの復原性を求めているという。
また、海上運送法の安全管理規定で、どのくらいの風速や波の高さに達すれば出航を取りやめるか、出航後の場合はどこに避難するかを船ごとに定めるほか、航行の安全に当たっては、船長と陸上の運行管理者が密に連絡を取り合うことなども義務付けている。
今回の事故では、現場付近は激しい風雨だったとされる。その上、国交省の担当者は「転覆船の写真を見ると、船底からデッキまでの高さ(舷)が低いし、船上の構造物も高い」と指摘。水面からデッキまでの距離が短いと、傾いたときに船内に水が入り込みやすくなり、構造物が高いと重心が高くなる。いずれも船体のバランスが失われやすくなる要因になるという。
担当者は「当時の状況や中国のルールがどうなっていたのか分からない」とした上で、「複合的な要因が重なって事故に至ったのではないか」と話す。
一方、水上交通を含め中国の物流に詳しい日本貿易振興機構(JETRO)の大西康雄・上席主任調査研究員は「長江は水深がとても浅く、船底が深くて重心が低い船を航行させることができない。さらに近年は上流に大きなダムができて水量が減っている。バランスが不安定な船が多く、貨物船などもよく転覆している」と話している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150602-00000570-san-soci