■中国が仕掛ける「歴史戦」に決着をつけた安倍首相の米議会演説(4) | 日本のお姉さん

■中国が仕掛ける「歴史戦」に決着をつけた安倍首相の米議会演説(4)

~誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考~
石平(せきへい)のチャイナウォッチ http://www.seki-hei.com
■中国が仕掛ける「歴史戦」に決着をつけた安倍首相の米議会演説(4)
歴史との正しい向き合い方
そしてその後、安倍首相の演説はこう続いた。
「みなさま、いまギャラリーに、ローレンス・スノーデン海兵隊中将がお座りです。
70年前の2月、23歳の海兵隊大尉として中隊を率い、硫黄島に上陸した方です。
近年、中将は、硫黄島で開く日米合同の慰霊祭にしばしば参加してこられました。
こう、仰っています」
「硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。
その厳かなる目的は、双方の戦死者を追悼し、栄誉を称えることだ」
「もうおひとかた、中将の隣にいるのは、新藤義孝国会議員。
かつて私の内閣で閣僚を務めた方ですが、この方のお祖父さんこそ、
勇猛がいまに伝わる栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官でした」
「これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう」
「熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯が結ぶ友になりました。
スノーデン中将、和解の努力を尊く思います。ほんとうに、ありがとうございました」
演説のこの部分では、中国の挑んできた歴史戦に対して安倍首相はまさに余裕綽々の勝利を手に入れたのではないかと、筆者は演説の原稿を読みながら強く感じずにはいられなかった。
その前段では、アメリカとの戦争の出来事に自ら触れて戦死したアメリカ兵士に追悼を捧げることによって、安倍首相は中国などによって押しつけられた「歴史修正主義者」の誤ったイメージを完全に払拭したのは前述の通りだが、それに続いて、ここでは安倍首相は見事に、歴史を乗り越えての両国の「和解」を演出してみせたからである。
その演出のために、事前に新藤義孝議員をワシントンに呼んできてローレンス・スノーデン海兵隊中将の隣に座らせたのはまさに用意周到というべきものであるが、この2人を握手させる場面を米議会で演出させることによって、そして自らの語った「熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯が結ぶ友になりました」
との詩的な言葉によって、安倍首相はアメリカとの「歴史の和解」を強く印象づけたのと同時に、過去の「歴史問題」に対する一国の指導者の正しい姿勢を世界に向かって示すことも出来た。
そう、「和解」によって克服することこそ、歴史との正しい向き合い方であると、安倍首相は示したのである。
新藤義孝議員とスノーデン海兵隊中将の拍手によって象徴された日米両国の和解は、まさに「歴史の和解」の1つの理想的な形、1つの模範的な見本として世界中の人々に提示された。
中国の習近平主席は当然その場にはいなかったが、筆者の耳には、安倍首相の発した言葉の一つひとつが見事に、習主席たちの歪んだ論理に対する痛烈な批判にも聞こえた。
日米の和解と比べれば、いつまでも「歴史」に固執する中国の了簡はいかに狭いものなのか。
中国の主張する「歴史認識」はどれほど歪んでいるか。
それはまさに日米の和解との対比において浮き彫りにされた。
思えば、習主席はいつも日本に対して「正しい歴史認識」を求めているが、歴史をきちんと見つめた上でそれを乗り越えて未来へ向かって和解の道を歩むことこそ本当の正しい歴史認識ではないのかと、安倍首相は見事に、より高い次元から習主席の歴史認識論を完全に論破した。
その後、演説は「アジア諸国民に苦しみを与えた事実」に触れてから、戦後日本の歩んだ「平和の道」を強調して、日本と米国は今後、アジアと世界の平和を守っていくためにどうすべきなのか、と語った。
まさにこの「未来志向」の演説の部分で、
安倍首相は「武力や威嚇は、自己の主張のため用いないこと」との原則を強調して中国の習政権の乱暴な覇権主義政策を暗に批判しながら、
それに対処するために、日本はアメリカとの間で、
「法の支配・人権・自由を尊重する価値観」の共有に基づく「希望の同盟」関係のよりいっそうの強化を訴えてその歴史的演説を結んだ。
・・・つづく・・・
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