つづき | 日本のお姉さん

つづき





<私個人とアメリカとの出会いは、カリフォルニアで過ごした学生時代にさかのぼります。

家に住まわせてくれたのは、キャサリン・デル・フランシア夫人。

寡婦でした。亡くした夫のことを、いつもこう言いました、「ゲイリー・クーパーより男前だったのよ」と。心から信じていたようです。


ギャラリーに、私の妻、昭恵がいます。

彼女が日ごろ、私のことをどう言っているのかはあえて聞かないことにします。

デル・フランシア夫人のイタリア料理は、世界一。

彼女の明るさと親切は、たくさんの人をひきつけました。その人たちがなんと多様なこと。「アメリカは、すごい国だ」。

驚いたものです。


のち、鉄鋼メーカーに就職した私は、ニューヨーク勤務の機会を与えられました。

上下関係にとらわれない実力主義。地位や長幼の差に関わりなく意見を戦わせ、正しい見方ならちゅうちょなく採用する。

この文化に毒されたのか、やがて政治家になったら、先輩大物議員たちに、アベは生意気だと随分言われました。>


この部分。

安倍さんは、「私は実際にアメリカに住んでみて、アメリカを尊敬しているし、大好きなんだ。

あまりにアメリカが好きなので、アメリカナイズされた」という意味。

これを聞いたアメリカ人は、「全然軍国主義者じゃないし、俺たちの仲間じゃないか」と思ったことでしょう。




<私の名字ですが、「エイブ」ではありません。

アメリカの方に時たまそう呼ばれると、悪い気はしません。

民主政治の基礎を、日本人は、近代化を始めてこのかた、ゲティズバーグ演説の有名な一節に求めてきたからです。


農民大工の息子が大統領になれる──、そういう国があることは、19世紀後半の日本を、民主主義に開眼させました。

日本にとって、アメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした。

出会いは150年以上前にさかのぼり、年季を経ています。>



ここで総理は、「リンカーン」を尊敬し、「民主主義」を非常に大切にしていることを明らかにしています。


「アメリカとの出会いは民主主義との遭遇」だった。


「浦賀に来航したペリーは、『開国しなければ、攻撃するぞ』と恫喝したのです」

とはいわず、「民主主義との遭遇」とした。

「目的」から考えればまったく正しいことです。




▼安倍総理は、戦争で亡くなったアメリカの兵士に謝罪したつづいて総理は、第2次大戦の話をされます。


< 先刻私は、第2次大戦メモリアルを訪れました。

神殿を思わせる、静謐(せいひつ)な場所でした。

耳朶(じだ)を打つのは、噴水の、水の砕ける音ばかり。

一角にフリーダム・ウォールというものがあって、壁面には金色の、4000個を超す星が埋め込まれている。

その星一つ、ひとつが、斃(たお)れた兵士100人分の命を表すと聞いたとき、私を戦慄が襲いました。


金色(こんじき)の星は、自由を守った代償として、誇りのシンボルに違いありません。

しかしそこには、さもなければ幸福な人生を送っただろうアメリカの若者の、痛み、悲しみが宿っている。

家族への愛も。


真珠湾、バターン・コレヒドール、珊瑚海……、メモリアルに刻まれた戦場の名が心をよぎり、私はアメリカの若者の、失われた夢、未来を思いました。

歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。

私は深い悔悟を胸に、しばしその場に立って、黙とうをささげました。


親愛なる、友人の皆さん、日本国と、日本国民を代表し、先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼をささげます。

とこしえの、哀悼をささげます。>



ここで明確に、第2次大戦で亡くなったアメリカ兵士にお詫びしています。



「中韓に謝罪しなかったこと」を理由に演説を批判する人がいます。


しかし、アメリカにいってなぜ「中韓」に謝罪しなければならないのでしょうか?


これは、アメリカ大統領に、「中国にいったとき、『広島に原爆を落して申し訳ない』と謝罪しろ!」というほど、おかしなことです。





▼総理は、日米の和解を劇的に演出した




この後、演説の見所がやってきます。



<みなさま、いまギャラリーに、ローレンス・スノーデン海兵隊中将がお座りです。

70年前の2月、23歳の海兵隊大尉として中隊を率い、硫黄島に上陸した方です。

近年、中将は、硫黄島で開く日米合同の慰霊祭にしばしば参加してこられました。

こう、おっしゃっています。



「硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。

その厳かなる目的は、双方の戦死者を追悼し、栄誉をたたえることだ」



もうおひとかた、中将の隣にいるのは、新藤義孝国会議員。

かつて私の内閣で閣僚を務めた方ですが、この方のおじいさんこそ、勇猛がいまに伝わる栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官でした。

これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう。


熾烈(しれつ)に戦い合った敵は、心の紐帯(ちゅうたい)が結ぶ友になりました。

スノーデン中将、和解の努力を尊く思います。

ほんとうに、ありがとうございました。>




硫黄島で実際に戦ったスノーデンさん。


栗林大将のお孫さんである新藤さん。


この二人ががっちり握手する姿を見て、大きな拍手が起こりました。


その場にいたアメリカ議員さんたちも、感動したことでしょう。




▼戦後、日本はアメリカ側につくことで繁栄した



つづいて総理は、「大戦の反省」を述べます。



<戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻みました。

自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。

これらの点についての思いは、歴代首相と全く変わるものではありません。>




アメリカを除けば、先の大戦に関する言及はこれだけです。

それで、中韓も、日本のメディアの一部も批判しています。


しかし、アメリカの反応を見れば、この部分は「十分だ」といえるでしょう。




< アジアの発展にどこまでも寄与し、地域の平和と、繁栄のため、力を惜しんではならない。自らに言い聞かせ、歩んできました。

この歩みを、私は、誇りに思います。

焦土と化した日本に、子ども達の飲むミルク、身につけるセーターが、毎月毎月、米国の市民から届きました。

山羊も、2036頭、やってきました。


米国が自らの市場を開け放ち、世界経済に自由を求めて育てた戦後経済システムによって、最も早くから、最大の便益を得たのは、日本です。

下って1980年代以降、韓国が、台湾が、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国が、やがて中国が勃興します。

今度は日本も、資本と、技術を献身的に注ぎ、彼らの成長を支えました。

一方米国で、日本は外国勢として2位、英国に次ぐ数の雇用を作り出しました。

ここで総理は、「日本が戦後発展したのはアメリカのおかげです」といっている。

確かに、ソ連に占領されていれば、戦後の発展はなかったことでしょう。




▼日本の改革は、「アメリカの利益」でもある



この後、安倍総理は、TPPの意義について語りました。


この部分は、省略させていただきます。


そして、総理は、「日本の改革の意義」について語ります。



< 私たちは、アジア太平洋地域の平和と安全のため、米国の「リバランス」(再均衡)を支持します。徹頭徹尾支持するということを、ここに明言します。>




アメリカの「リバランス」とは、「アジア重視」のことです。


「アジア重視」とは、要するに「中国に対抗する」こと。


ですから、日本がこれを支持するのは当然ですね。




< アジアの海について、私がいう3つの原則をここで強調させてください。

第1に、国家が何か主張をするときは、国際法にもとづいてなすこと。

第2に、武力や威嚇は、自己の主張のため用いないこと。

そして

第3に、紛争の解決は、あくまで平和的手段によること。


太平洋から、インド洋にかけての広い海を、自由で、法の支配が貫徹する平和の海にしなければなりません。

そのためにこそ、日米同盟を強くしなくてはなりません。

私たちには、その責任があります。>



これは、名指しはさけているものの、明確に、「日米で中国の野望を粉砕しましょう」といっている。


中国が「アメリカから覇権を奪おう」と行動している。


ですから、アメリカにとって、安倍総理の言葉はありがたかったことでしょう。


そして、日本としても、「アメリカが中国を封じ込めてくれなければ勝てない」という切実な問題がある。



つまりこの件で、日米は「利害を共有している関係」にあるのです。



< 日本はいま、安保法制の充実に取り組んでいます。

実現のあかつき、日本は、危機の程度に応じ、切れ目のない対応が、はるかによくできるようになります。

この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟は、より一層堅固になります。

それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらすでしょう。


戦後、初めての大改革です。

この夏までに、成就させます。

ここで皆様にご報告したいことがあります。

一昨日、ケリー国務長官、カーター国防長官は、私たちの岸田外相、中谷防衛相と会って、協議をしました。

いま申し上げた法整備を前提として、日米がそのもてる力をよく合わせられるようにする仕組みができました。

一層確実な平和を築くのに必要な枠組みです。


それこそが、日米防衛協力の新しいガイドラインにほかなりません。

昨日、オバマ大統領と私は、その意義について、互いに認め合いました。

皆様、私たちは、真に歴史的な文書に、合意をしたのです。>



まさに「歴史的」です。

これで、日本はもっと米軍をサポートできるようになる。

このことはアメリカの利益であると同時に日本の利益でもある。


なぜか?

日本はアメリカのお墨つきをえて、軍事力を強化していくことができる。

つまり、アメリカから抵抗を受けずに【軍事的自立】に近づくことがで
きるのです。




▼安倍総理は、日本の「世界観」と「政策」を示す




< 自衛隊員が積み重ねてきた実績と、援助関係者たちがたゆまず続けた努力と、その両方の蓄積は、いまやわたしたちに、新しい自己像を与えてくれました。

いまや私たちが掲げるバナーは、「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」という旗です。

繰り返しましょう、「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」こそは、日本の将来を導く旗印となります。


テロリズム、感染症、自然災害や、気候変動──。日米同盟は、これら新たな問題に対し、ともに立ち向かう時代を迎えました。

日米同盟は、米国史全体の、4分の1以上に及ぶ期間続いた堅牢(けんろう)さを備え、深い信頼と、友情に結ばれた同盟です。

自由世界第一、第二の民主主義大国を結ぶ同盟に、この先とも、新たな理由付けは全く無用です。

それは常に、法の支配、人権、そして自由を尊ぶ、価値観を共にする結びつきです。>



この部分、非常に重要です。

日本の世界観は、「法の支配」「人権」「自由」である。

つまり、「アメリカと同じですよ」といっている。


それを実現するために、


「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」


でいくと。

これは、別の言葉でいえば、「どんどん自衛隊を海外に出します」ということでしょう。

批判も多いでしょうが、私はよいことだと思います。



「平和憲法さえあれば日本は安全だ」なんて、「夢物語」です。


中国はそんなにあまくないですよ。




▼総理は、「アメリカは世界の希望である!」と宣言し、アメリカを味方につけた



そして、いよいよ演説のクライマックスがやってきます。



< まだ高校生だったとき、ラジオから流れてきたキャロル・キングの曲に、私は心を揺さぶられました。


「落ち込んだ時、困った時、……目を閉じて、私を思って。

私は行く。

あなたのもとに。たとえそれが、あなたにとっていちばん暗い、そんな夜でも、明るくするために」



2011年3月11日、日本に、いちばん暗い夜がきました。

日本の東北地方を、地震と津波、原発の事故が襲ったのです。

そして、そのときでした。

米軍は、未曽有の規模で救難作戦を展開してくれました。

本当にたくさんの米国人の皆さんが、東北の子供たちに、支援の手を差し伸べてくれました。

私たちには、トモダチがいました。

被災した人々と、一緒に涙を流してくれた。>




RPEの草案にも書きましたが、総理はラストで、東日本大震災後のサポートに感謝しました。


しかし、ここから、さらに感動的なラストにむかっていきます。




<そしてなにものにもかえられない、大切なものを与えてくれた。


希望、です。


米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはなりません。

米国国民を代表する皆様。私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。

アメリカと日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。


希望の同盟──。

一緒でなら、きっとできます。

ありがとうございました。>



なんと、「アメリカは、世界の【希望】だ!」というのです。


AIIBでは、イギリス、ドイツ、フランス等欧州の大国、オーストラリア、イスラエル、韓国までがアメリカを裏切った。


世界的に孤立し、不安を感じているアメリカのエリートに、安倍総理は、「アメリカは世界の希望だ!!!」


という。


こんなにありがたく、うれしいこと言葉はなかったことでしょう。




▼安倍演説は、「歴史的」であった



詳しくみてきました。


覇権を狙う中国の最重要戦略は、「日米分断」である。


だから日本は、「アメリカを味方につけなければならない」。


これが演説の「目的」でした。


そして、安倍総理は、そのミッションを見事にはたされました。


一日本国民として、総理のすばらしい演説に、心から感謝申し上げます。


北野幸伯

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