そう、AIIB問題の本質は外交・安全保障であり、平和なインフラ融資話は表看板にすぎない。 | 日本のお姉さん

そう、AIIB問題の本質は外交・安全保障であり、平和なインフラ融資話は表看板にすぎない。

インフラ銀 「戦わずして日米に勝つ」 総裁は中国元財政次官か産経新聞 4月1日(水)7時55分配信

AIIB設立に向けた今後の日程(写真:産経新聞)

【上海=河崎真澄】

中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐり、日米を尻目に、アジアや欧州の国々が雪崩を打って参加を申請した。

上海の大学教授は、「(日米に対抗する)21世紀の『孫子の兵法』だ」と評した。

米ドルを基軸通貨とする既存の国際金融秩序とは別に、自国に有利なルールを作り上げたい中国は、潤沢な資金力を武器に多くの国々を陣営に引き入れ、「戦わずして日米に勝つ」との策を実行に移しつつあるからだ。


習近平指導部はAIIBについて、「世界銀行やアジア開発銀行(ADB)への対抗組織ではなく、補完関係にある」などと繰り返し説明。


だが、自らが最大出資国となり、銀行の本部を北京に置く意向とみられる中国の主張を額面通りに受け取る専門家はいない。


創設メンバー国は承認作業を経て15日前後に正式決定する。

その後、メンバー国で出資比率や組織運営の方法、インフラ建設のための融資制度や入札制度、評価方法などを取り決め、6月にも調印する。


そこでカギとなるのが初代総裁の人事だ。 31日までカザフスタンで開かれたAIIB準備会合をリードしたのは、元中国財政次官で、ADB副総裁も経験した金立群氏。

中国紙は、金氏が初代総裁として最有力と報じている。

習指導部が、2013年10月に提唱したAIIB構想に、「中国の事前想定すら大きく超えた参加国」(日中関係筋)が吸い寄せられた背景には、約4兆ドルの外貨準備高をもち、人民元の国際化も進めている中国の資金力への期待がある。


途上国のインフラ建設をめぐっては、20年までに8兆ドルの資金需要が見込まれるが、世銀やADBの資金では不足とされる。


また、環境評価や融資判断で世銀などの厳格な基準には途上国などの不満も根強い。


ただ、AIIBの融資基準が甘くなれば、採算性の低いインフラにも「初めに建設ありき」の融資が恣意(しい)的に行われたり、中国軍の利用を視野に、軍事転用が可能な施設に融資が行われたりする恐れもある。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150401-00000066-san-cn 2015.3.30


11:15 インフラ銀…その正体は「共産党支配機関」 参加論を斬る

【日曜経済講座】編集委員・田村秀男


中国のあらゆる政府組織、中央銀行(中国人民銀行)とも軍と同じく、習近平党総書記・国家主席を頂点とする共産党中央の指令下にある。


中国主導で設立準備が進められている「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」はどうか。


中国は当初から資本金の50%出資を表明し、今後出資国が増えても40%以上のシェアを維持する構えだ。


総裁は元政府高官、本部も北京、主要言語は中国語。


AIIBは中国財政省というよりも、同省を支配する党中央の意思に左右されるだろう。


今後、何が起きるか。 例えば、党中央が必要と判断したら、北朝鮮のAIIB加盟がただちに決まり、同国向け低利融資が行われ、日本の経済制裁は事実上無力化するだろう。


東南アジアや南アジアでの中国の軍艦が寄港する港湾設備がAIIB融資によって建設されることもありうる。


そう、AIIB問題の本質は外交・安全保障であり、平和なインフラ融資話は表看板にすぎない。


今、政府内部や産業界、日経新聞などメディアの一部で、AIIB出資論が出ている。


党指令先組織に日本もカネを出せ、というブラックジョークである。


反論もあるだろう。「AIIBは英独仏など欧州主要国も参加するではないか、党に支配されるはずはない」という具合に。


世界銀行、アジア開発銀行、国際通貨基金(IMF)など既存の国際金融機関は主要出資国代表で理事会を構成し、運営されている。


これに対し、楼継偉財政相は22日に北京で開いた国際会合で「西側諸国のルールが最適とはかぎらない」と強調した。


同財政相らは世銀やアジア開銀などの理事会決定方式を否定し、トップダウンによる即断即決方式を示唆する。


圧倒的な出資シェアを持つ中国の意図は、世銀やアジア開銀などと全く違う中国式の意思決定方式なのである。


日経新聞は「AIIBの否定や対立ではなく、むしろ積極的に関与し、関係国の立場から建設的に注文を出していく道があるはずだ」(3月20日付社説)と論じたが、仮に日本がマイナーな出資比率で参加したところで、党中央政治局に伺いを立世界最大の外貨準備という「資力」を持つ中国が、アジアなどのインフラ建設資金融通を主導するのは理にかなっている、と思い込む向きもあるだろうが、とんでもない誤解である。


中国の外準残高は2014年末で3兆8430億ドル(世界2位の日本は1兆2千億ドル)もあるが、実は半年間で約1500億ドルも減った。


景気の低迷や不動産相場の下落の中で、資金流出が年間で4千億ドル以上に上るからである(本欄3月1日付参照)。


無論、習近平政権による不正蓄財追及から逃れるために、一部党幹部らが裏ルートで資産を外に持ち出していることも影響している。


外準は人民銀行による人民元資金発行の原資になっている。


外準が減ると、中国経済が貧血症状を起こす。


そこで、中国は急激な勢いで、国際金融市場から借り入れを増やしている。


グラフは、最近の外準と海外の銀行からの借り入れの増減額の推移である。


昨年9月末には、外準の増加額を借入額が上回った。


12月末のデータはまだ公表されていないが、借り入れは資金流出分を補うためにも、かなり高水準になると推計される。


このまま資金流出が止まらないと、ロンドンなど国際金融市場から借金を増やさないと、外準は数年間で半減してしまうだろう。


しかも、人民元金融システムを維持するためにこれ以上減らすわけにいかないのだから、外準をアジアのインフラ整備のために活用すること自体、ありえない。


「世界一の外貨資産」というのは、いわば見せ金にすぎないのだ。


中国がAIIBを創立し、アジア地域全体でインフラ投資ブームを演出する背景には、自身の窮状を打開するためでもある。


鉄道、港湾、道路などで需要を創出し、中国の過剰生産能力、余剰労働力を動員する。


そのために必要な資金はAIIBの名義で国際金融市場から調達する。


そして、中国主導の経済圏が拡大するにつれて、人民元が流通する領域を拡大して、人民元経済圏を構築する。


各国が人民元に頼るようになれば、外交面での中国の影響力が格段に強化される。


AIIBは党支配体制維持・強化のための先兵なのである。


政府は参加するかどうか、6月までに最終的に決めるが、北京の思うつぼにはまりこんでよいはずはない。 http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/150330/ecn15033011150002-n1.html