職場でパワハラを受けたら「逃げろ」と助言
悪くて強い子に暴力を受けたら、逃げるが勝ち。無抵抗でいると終いには殺される。悪くて支配的な職場も確信犯だから、同じだと労務士が助言している。
悪い子や悪い職場を改善するなんて、なかなか無理だってこと。逆恨みされて復讐されるだけだ。それより逃げて自分の命を守ろう。
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川崎市の中学1年生殺害事件の動機「逆恨み」は、職場のパワハラにも通じる話だ (榊 裕葵 社会保険労務士)
シェアーズカフェ・オンライン 3月11日(水)6時3分配信
川崎市で中学1年の男子生徒が殺害された事件が大きな注目を集めている。
報道によると、主犯とされている18歳の少年の犯行の動機は、男子生徒が顔を腫らしていることに気付いた部活の先輩らが、事件の8日前に、18歳の少年の自宅を訪れ謝罪を要求し、この出来事を「チクリやがったから、むかついた」と、逆恨みをして犯行に及んだということだ。
この「逆恨み」という言葉が、私にはとても重く響いた。
■職場における「逆恨み」のきっかけ
というのも、社会保険労務士として仕事をしていると、個人の方から「会社が残業代を払ってくれない」とか「社長からパワハラを受けた」というような相談をいただくことがあるのだが、このようなトラブルの解決を図ろうとすると、しばしば今回の事件と同じ「逆恨み」の構図に直面するからだ。
会社が残業代を払わなかったり、有給休暇を取得させてくれないといったような労働基準法違反がある場合、教科書的には労働基準監督署(以下「労基署」という)に申告をすればよいということになっている。
たとえば残業代不払いの事案であれば、タイムカードと給与明細のコピーを持っていけば、残業したのに残業代が払われていないという明確な証拠になるので、労働基準監督官は会社に対して指導や、場合によっては立入り検査を行ったりする。
そして、検査の結果、残業代不払いの事実が確認されたならば、労働基準監督官は「指導書」を発行する。
この指導書を無視すると、労働基準監督官は司法警察官としての権限を持っており、最終的には逮捕までされる可能性があるので、会社は「指導書」に対する是正として、残業代を支払わざるを得なくなるのが一般的な流れだ。
■犯人探しと仕返し
だが、これで「めでたしめでたし」になるわけではない。
その後、会社で何が起こるかというと、労基署に申告を行った「犯人探し」である。
小さな会社であれば、「犯人」の特定は難しくないであろう。
犯人として特定された社員は、「無視をされる」「仕事を与えられない」「慣れない仕事に職務変更させられる」といったような冷遇を受けることが少なくない。暴力的な社長であればパワハラがエスカレートするかもしれない。
社員が「仕返しをされた」と再び労基署に申告をしても、よほどあからさまでない限り、「無視」のようないじめは立証が難しいし、職務変更にしても「ちょうどジョブローテーションの時期だった」と言われればそれまでである。
結局のところ、在職のまま会社を労基署に訴えたとしたら、実務上は、社員が自分自身の首を絞める結末になる可能性が高いというのが私の実務感覚だ。
■退職するのが最良の方法だ
したがって、私は、労基署に訴えなければおさまりがつかないような会社だったら、退職することが最善の方法であると考えており、相談者の方にそうアドバイスをすることも少なくない。「君子危うきところに近づかず」である。
順法意識のある会社であれば、そもそも残業代の不払いは起きないし、仮に計算ミスや法律の解釈の勘違いで一部の残業代が未払いになっていたとしても、社員からの指摘があればすぐに是正してくれるであろう。パワハラやセクハラだって自浄作用が働く。
社員から指摘があっても労働基準法違反を自発的に改めようとしない会社は、確信犯である。そのような確信犯の会社や、経営者である社長の考えを、いち労働者である自分が、はたして悔い改めさせることができるであろうか。
そんなことにパワーを使うよりも、さっさと見切りをつけて、もっと働きやすい会社へ転職を試みるべきである。
他人を変えるのは至難の業であるし、行政に訴えるなどすれば、それこそ「逆恨み」のターゲットにされてしまうので、そんな会社や社長は相手にせず、自分自身の環境を変えることが、やはり最良の解決策ではないだろうか。
■「甘い言葉」に惑わされないこと
そして、気をつけたいのは、「甘い言葉」である。
意を決して社員が「残業代を払ってもらえないので辞めます」と言うと、社長は「おいおい、ちょっと待てよ。俺も悪いと思ってるから、今度まとめて払うよ。だからやめるなんて言うなよ。」と諭すのである。
このとき、退職を思いとどまったら社員の負けである。社長は「よし、まだこいつは安く使えるな」と、内心ほくそ笑むのである。
そしてまた、残業代不払いやパワハラの日々が始まるのだ。この構図も、今回の事件と全く同じである。
殺害された中学1年生の生徒も、あれだけ目の周りが腫れあがるくらい殴られるというのは尋常ではないことだから、結果論になってはしまうが、謝罪を受け入れず、その時点で18歳の少年との交際をきっぱり絶てば、最悪の結果にはならなかったかもしれない。
■結び
確かに、今いる環境を変えることにはエネルギーや勇気がいることなので、精神的に負担を感じるかもしれない。だが、それはいっときの出来事である。逆に環境をかえられなければ、ずるずると搾取や抑圧が続くのだ。
残業代も払われずに長時間労働を続けたり、パワハラが日常化している職場に長時間身を置いていると、心身の疲労が蓄積し、過労死をしたり、精神を病んで自殺をしてしまったりと、「職場に殺される」ということにもなりかねない。それこそ、最悪の結果である。
繰り返しになるが、労基署に申告しなければならないような劣悪な職場で自分の身を守るためには、「1・順法意識の欠如した会社や社長を変えることはできない」、ということを認識た上で、「2・どんなに甘い言葉をかけられても、その職場を離れる勇気を持つ」、という2点がポイントである。
被害者の上村遼太さんには謹んで哀悼の意を表します。
あおいヒューマンリソースコンサルティング代表
特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150311-00010001-scafe-bus_all&p=1