捕鯨船員たちはさらに危険な状態に追い込まれるだろうーテキサス親父(トニー・マラーノ) | 日本のお姉さん

捕鯨船員たちはさらに危険な状態に追い込まれるだろうーテキサス親父(トニー・マラーノ)

2015.3.10 18:00
シー・シェパード、今度は南極海のメロ漁を妨害 「資金集め」か
日本の捕鯨やイルカ漁を妨害する過激団体シー・シェパード(SS)が今年、新たに南極海のメロ漁を標的にして活動資金を集めている。メロは日本の食卓にも並ぶ人気魚種。高値で取引されるため、密漁船による違法操業も報告され、SSはこの密漁船に圧力をかけるため、南極海に妨害船を派遣した。しかし、SSの自警団的な行為は国際法上、何の権限も与えられておらず、密漁船との衝突などで公海上での危険が伴う。今回の活動も「日本の調査捕鯨が縮小され、資金集めのための穴埋め的な行為」との説が有力だ。(佐々木正明)
毎年12月から翌3月までの期間、オーストラリアやニュージーランドではシー・シェパードの活動が主要メディアをにぎわせる。
この時期に、日本の調査捕鯨船団が南極海に派遣され、SSとの激しい衝突が繰り広げられるためだ。しかし、昨年3月に国際司法裁判所(ICJ)の捕鯨裁判で敗北した日本政府は今回、活動を縮小。クジラを捕獲せずに、船上から調査員がクジラの数を調べる目視船の派遣に止め、SSとの衝突は回避された。
SSにとって、日本船団に対する過激な捕鯨妨害は自らの存在感をアピールして、全世界の支持者に活動資金を呼びかける「大事なお金もうけのための手段」(評論家、テキサス親父)だ。SSの活動に詳しい日本の水産関係者は「船の維持費や燃料が高いために、毎年、派手な妨害を行って寄付金集めをしなければ、SSはすぐに活動資金が枯渇してしまうだろう」と話す。さらに、米国で行われている日本側との訴訟による裁判対策費用も膨らんでおり、SSには特別な出費もかさんでいる。
そうした状況の中で、SSは今年も黙ってはいなかった。目をつけたのは、南極海のメロ漁だった。
メロは日本市場での呼び名で本来の名称はマゼランアイナメ。体長1メートルを超える大型魚で南極大陸周辺の深海に生息し、その大半が日本や北米で消費されている。近年、人気魚種になって資源量が減少傾向にあり、それに伴い、市場でも値段が上がっている。
昨年12月、SSは「メロ漁の密漁をパトロールする」として、南極海に2隻の妨害船を派遣した。いずれも、近年の日本の調査捕鯨妨害による寄付金収入の増加でSSが購入した、高性能の設備を整えた船だ。
妨害船は現在、パリに逃亡している創設者ポール・ワトソン容疑者(国際指名手配)が育てたSS幹部が率いている。乗組員は全てSS公式サイトにプロフィルが掲載され、17カ国出身の総勢58人。うち最も多いのは22人のオーストラリア人で、9人の米国人、6人のドイツ人と続く。3分の1が女性で、初めて長期航海に臨む者たちも多い。活動家たちは、南極海の危険な海へと繰り出す「ヒーロー」「ヒロイン」のような演出が施されている。
今年2月、再び、シー・シェパードの文字はオーストラリア、ニュージーランドの紙面におどった。オーストラリアの公共放送(ABC)は「シー・シェパードが、オーストラリアの南極大陸基地近くでメロ漁の違法船を見つけ出した」と伝えた。
SSの公式発表や妨害船の船長へのインタビューによると、国際的な枠組みの中で船籍登録のない3隻の漁船を南極海域で発見し、追跡しているという。
この漁船は、ニュージーランド海保当局も存在を確認。ニュージーランドのマカリー外相もさらにふみこみ、「うち2隻はスペインの犯罪集団とつながっている」と指摘した。
SSはこの「密漁船」を追跡し、漁船が海域に広げた網を回収したり、逃走する漁船や乗組員の写真を公式サイトなどで公開した。
「(日本との)捕鯨戦争が停戦となったかわりに、SSは新たな標的を追跡した」と報じた総合情報通信社ブルームバーグ(電子版)のように、各国の海保当局が取り締まることができない密漁船の違法操業の実態を明るみに出したSSを評価する声もある。ブルームバーグは「SSが行ったことは素晴らしい。彼らは公海上の漁業の問題に注目を集めさせた」とする専門家の指摘を紹介した。
しかし、SSは公海上で標的の船に妨害船を体当たりさせるなど過激な行為を活動の柱にしており、海洋専門家らから「航行の安全を冒す非合法団体」と強い非難を浴びている。
その上、彼らが大義名分としている自警団的行動にも何の法的権限もない。実際、SSはオーストラリアやニュージーランドの海保当局に共同での監視活動を要請したが、両国は相手にしなかった。
SSが今回、標的にしたメロ漁漁船は国際刑事警察機構(ICPO)が手配している「密漁船だ」と主張しても、SS自身、日本と中米コスタリカ両政府が立件した、ポール・ワトソン容疑者に対するICPOの手配を無視し続けている。
日本は今年、新たな南極海調査捕鯨計画を作成し、12月ごろ、再び調査船団を南極海に派遣する。近年、力をつけたSSは相当の準備と装備をかけて、捕鯨妨害に臨むことが危惧されている。今回のメロ漁妨害も、活動家たちに航海経験を学ばせる「試運転」の側面があることは否めない。
シー・シェパードの動向を分析している評論家、テキサス親父(トニー・マラーノ)さんは「日本政府は海上保安庁などのエスコート船を派遣しなければ、捕鯨船員たちはさらに危険な状態に追い込まれるだろう」と指摘している。