対イスラム国で“共闘”しつつ示威行為に出る狙いは | 日本のお姉さん

対イスラム国で“共闘”しつつ示威行為に出る狙いは

2015年3月9日
イランが米空母爆破の衝撃映像公開!? 実は激似の大型模型…対イスラム国で“共闘”しつつ示威行為に出る狙いは
イラン軍のミサイル攻撃で大爆発を起こす模造空母(AP)
海上の米空母をイラン軍がミサイルで爆破-。そんな衝撃的な動画映像をイランが公開した。といってもこの米空母、実はイランが作った実物大に近い大型模型。対艦ミサイルが次々と命中し、黒煙を上げる様子は実にリアルだが、本物の戦闘ではなく、米国向けの示威行為にほかならない。一方、その米国からは「ハリウッド映画のセットの張りぼてを破壊したようなもの」と酷評される始末。イランは1979年の革命以来、米国とは犬猿の仲だが、今この時期にこんなデモンストレーションを行う狙いは何なのか。(岡田敏彦)
黒煙を上げる“米空母”
白煙をひいて海面すれすれを飛ぶミサイルが一発、また一発と“米空母”に命中する。ついに空母からは炎があがり、巨大な船体を覆うほどの黒煙が吹き上がる-。
映像は、2月25日にホルムズ海峡近くで行われたイラン軍の演習「偉大な予言者9」を撮影したもので、イランニュースネットワーク(IRINN)やテヘランのFARSニュースエージェンシーで放映・公開された。
この模造空母は実在する米原子力空母「ニミッツ」の艦番「68」が鮮やかにペイントされており、ニミッツを想定した模型とされる。動画では対艦ミサイルの攻撃に続いて多数の小型高速艇が空母の至近距離まで近づき、砲撃する様子も写っている。

【軍事ワールド】イランが米空母爆破の衝撃映像公開!? 実は激似の大型模型…対イスラム国で“共闘”しつつ示威行為に出る狙いは
産経新聞2015年3月9日(月)11:22
海上の米空母をイラン軍がミサイルで爆破-。そんな衝撃的な動画映像をイランが公開した。といってもこの米空母、実はイランが作った実物大に近い大型模型。対艦ミサイルが次々と命中し、黒煙を上げる様子は実にリアルだが、本物の戦闘ではなく、米国向けの示威行為にほかならない。一方、その米国からは「ハリウッド映画のセットの張りぼてを破壊したようなもの」と酷評される始末。イランは1979年の革命以来、米国とは犬猿の仲だが、今この時期にこんなデモンストレーションを行う狙いは何なのか。(岡田敏彦)
黒煙を上げる“米空母”
白煙をひいて海面すれすれを飛ぶミサイルが一発、また一発と“米空母”に命中する。ついに空母からは炎があがり、巨大な船体を覆うほどの黒煙が吹き上がる-。
映像は、2月25日にホルムズ海峡近くで行われたイラン軍の演習「偉大な予言者9」を撮影したもので、イランニュースネットワーク(IRINN)やテヘランのFARSニュースエージェンシーで放映・公開された。
この模造空母は実在する米原子力空母「ニミッツ」の艦番「68」が鮮やかにペイントされており、ニミッツを想定した模型とされる。動画では対艦ミサイルの攻撃に続いて多数の小型高速艇が空母の至近距離まで近づき、砲撃する様子も写っている。
精密兵器の代表格ともいえる対艦ミサイルは、米国のAGM(RGM)-84ハープーンやロシアのP-800オーニクスが知られているが、イランも国産の「ファテフ110」シリーズ(最大速度マッハ3)を開発・生産しており、今回使用されたのはファテフ110の第4世代もしくは最新改良型の「ハリージェ・ファールス(ペルシャ湾のペルシア語名)」とみられている。
北朝鮮の日本海へのミサイル発射や中国の軍事演習など、極東アジアではこうした軍事プレゼンスの誇示は珍しくないが、火薬庫ともいえる中東での実弾演習はきな臭さが違う。
“標的”となった空母ニミッツといえば映画「ファイナル・カウント・ダウン」で一躍有名になった艦だが、そんな米海軍を代表する艦艇をモデルにするあたり、明確に「仮想敵」を米国と名指しする行為だ。ところが米軍の対応は、拍子抜けするものだった。
現実に撃沈は無理
ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、バーレーンに司令部を置く米第5艦隊の報道官は「彼らのやっていることは、ハリウッド映画のセットと同程度の張りぼてを破壊しただけ」とコメント。国防省の報道官も「米国海軍は、その艦隊をあらゆる脅威から防衛する能力がある」と述べた。
実際の米空母艦隊は原子力空母を中心に、周囲をイージス艦で固め、上空には「空飛ぶレーダーサイト」の早期警戒機E-2、水面下には原子力潜水艦がウヨウヨと遊弋(ゆうよく)する鉄壁の守りだ。
旧ソ連の編み出した「飽和攻撃」から艦隊を守るため“進化”してきた現代の米空母艦隊に対し、映像のような散発的なミサイル発射では到底通用しそうにない。米軍報道官らの自信も当然だが、相手にされないもうひとつの原因は、この模造空母の“ポンコツぶり”だ。
模造空母の正体
この模造空母がお目見えするのは今回が初めてではない。存在が明らかになったのは昨年3月。米CNNやロイターなどによると、イラン南部のバンダルアバス港近くの造船所で、米空母ニミッツ級に似た巨大模型が建造されているのが衛星写真などから判明した。
当初、イランメディアは「1988年のイラン航空機撃墜事件を題材にした映画を制作するため」と説明。映画のセットという触れ込みだったのだ。
後にイランはこの巨大模型を国内メディアに公開したが、大きさは本物の約3分の2。甲板に米空母飛行隊(VF-84ジョリーロジャース)のペイントを施した戦闘機の実物大模型を並べるなど外見は凝った作りだったが、中身はなく実態は「はしけ」レベルで、ほぼ張りぼてだった。随伴護衛艦もなく、スピードもないに等しく、ミサイルが当たらない方が問題だ。
演習の真意は
こんな演習を実施したイランの狙いは、実は米空母ではない。ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、イラン軍(イスラム革命防衛隊)のモハマド・アリ・ジャファリ将軍は「(米と)戦闘状態になれば、イラン海軍はホルムズ海峡とペルシャ湾、オマーン湾を完全な支配下に置く」と宣言。演習の場所も、世界の石油の2割以上が行き交うホルムズ海峡の近くだった。
つまり米国がイランを攻撃するようなら、海峡を行き交うタンカーを撃沈してやる-。そんな示威行為だとみられる。とはいえ、今回の演習をイランの「本気の威嚇」ととるのは早計だ。
米との不思議な関係
現在、中東地域を揺るがしている過激組織「イスラム国」との戦闘では、イランは明確にイスラム国を敵として攻勢を強めるとともに米国とは“共闘”している。最近はイラク北部の要衝ティクリート奪還作戦をめぐり、イラク政府軍を支援。精鋭部隊のイラン革命防衛隊「コッズ部隊」を派遣する一方、米国主導の有志連合の戦闘空域とは別の空域で空爆を行うなど、米国とは阿吽(あうん)の呼吸とまではいかなくとも、暗黙の了解は成立している。
米国を威嚇しつつ、共闘する不思議-。そこには、イランの「背に腹は変えられぬ」切迫した事情がある。
核協議をめぐるかけひき
イランは80年代に原子力開発を始め、紆余(うよ)曲折を経て2005年にウラン濃縮活動を再開。11年にIAEAが核兵器開発疑惑の根拠を示したことから、米国とEUはイランに対し石油禁輸や金融制裁を強化した。さらに最近の原油安で、イラン経済は危険水域をさまよっている。
核開発をめぐる問題でイランと米国は協議を続けてきたが、最終合意に向けた枠組みをまとめる期限は3月下旬。オバマ大統領は「開発の10年凍結」という案を示すものの、イランのイスラエルのネタニヤフ首相がこれに強硬に反対するなど、着地点は見えていない。
威嚇で示す強硬さと、共闘で示す柔軟姿勢は、イランが現在の危機的状況を乗り切るための外交カードともいえる。

エサをもらいながら「シャ~ッ!!」と威嚇するノラ猫みたいなもんかな。