買うより難しい、中古マンション「売り」事情
買うより難しい、中古マンション「売り」事情
週刊SPA! 3月8日(日)16時21分配信
(日刊SPA!)
― 木村和久の「オヤ充のススメ」その62 ―
みなさんマンションや持ち家を売ったことありますか? これがなかなか希望通りの価格で売れなくてね。物件の良しあしに関わらず、苦労します。一応不動産には相場ってあるじゃないですか、その値段を提示しても、そんな簡単には売れません。過去にマンションを売ったことがあるので、その時の苦労話を聞いて下さいな。
まず物件ですが、代官山の1DKの事務所を売ろうと決めた。出版不況で自宅と両方を維持するのがしんどくなったからだけど、どうやって売っていいか全く分からない。そういえば、郵便受けにマンション売却を誘うチラシが入っていたっけなあ。そのチラシには「世田谷にお住まいの資産家の息子様が、都心にお部屋を探しています」とかさ「まもなく定年を迎える大手メガバンクの役員の方が、投資用にマンションをお探しです」とかさ、うまいこと書いてあるわけ。へえ~そんなに部屋を探しているやつがいるのか、だったらすぐ売れるじゃんと、その大手有名不動産会社に電話をしてみた。
話はとんとん拍子に進み、じゃ明日にでも売りだしますからと。売却を開始して2~3日は数人、物件を見に来たけど、あとはなしのつぶて。しかも、チラシに該当するようなお金持ちのお客さんは、全く見えず。あれって、ただの釣り広告だったのね。
これはまんまとやられた。この不動産屋を切るしかないな。ところが自分が全くの素人だったから、言われるままに「専任媒介」契約を結んでしまっていた。しかも3ケ月も。つまり他の不動産屋さんとは、契約が出来ない仕組みになっていた。これは焦りますよ。だいたいそいつのやっていることって、インターネットにアップして、お客さんが来るのを待ってるだけだからね。ヤフーオークションよりひどいかも。ちゃんと客連れて来いってば。
すでにマンションの荷物の多くは引き払い、無駄なローンを払っている状態だった。元本はともかく、利子は全くの捨て金だ。焦って来たので、2ケ月目にぶち切れて、専任契約を解除したい旨を通知する。解除に応じない場合は、次の「一般媒介」契約の時、あんたを除外するとね。そしたら上司と相談して、しぶしぶその話に応じて来た。
ここで「専任媒介」と「一般媒介」の違いだが、業務内容はほぼ一緒。より詳しい業務報告が頻繁に出るのが専任の方。そんなレポートもらっても意味ないからね。もし不動産を売るなら、絶対一般媒介で契約するに限ります。
さあこれで、複数の不動産会社と契約できるようになった。そうなると競争原理が働いて、またたく間に売れるんじゃないか、そう目論んだ。確かに超有名どこの不動産販売会社が何件も来て、契約を結んでくれた。けどね、やってることは、どこも同じ。ネット、特にヤフー不動産に上げてさ、同じ物件が何回も紹介され、被ってしょうがない。最初の値段より、値段を下げてネットに提示すると、その時は数人やって来るんだけど、契約の話までは進まない。
結局ネットでいったん値段を下げると、もっと下がるんじゃないかという心理が働き、買おうと思っている人がさらに待つ悪循環に陥る。もはや持久戦の様相を見せて来た。いやほんとまずい、こんだけ大手不動産販売会社が顔を揃えていながら、ネット以外、営業しないし。これ以上売る価格を下げたくない。どうしたらいいんだ、暗澹たる気分で売却開始、3か月目を迎えたのだ。
― 木村和久の「オヤ充のススメ」その63 ―
代官山のマンションを売ると決めて、大手不動産屋さんと5社と一般媒介契約を結んだが、3か月経っても進展せず。価格も2回下げ、これ以上安く売りたくない状況だった。
代官山 さあ次の一手はどうする。実は次の一手は、相手側から連絡があったのだ。新宿の聞いたことのない中堅不動産屋さんの営業マンがやって来て、部屋を見るなり「この物件は絶対売れますよ。価格も妥当だし。是非売らせて下さい」と言って来たのだ。
実はその営業マン、日ごろネットで物件を見て、売れそうなお値ごろ物件を見ては、横やり営業をしかけてたのだ。そもそも売れてなんぼの世界、売れば当然手当も付くから俄然頑張るという。そうなると、中小の不動産屋さんの方がシビアですね。
新宿の新担当は、売り方を実に心得ていて、いきなりオープンハウスをしましょうと言って来た。当時部屋に荷物が3割ぐらい残っていたので、ダメだろうと思ってたが、別に出来ないことはないから、荷物をまとめておいて下さいという。
そこからが凄い。彼の論理で言うと、物件は特に代官山などの人気エリアは、近くに住んでいる人が買いたがる。それはこのエリアにこだわっているからだ。そうなると、やや古い物件に住んでいる人や、狭い間取りに住んでいる人に、物件を紹介すれば、食いついてくるはずだという。
オープンハウス前日から、ビラを作って、付近の古めの物件に撒きまくり。オートロックも超えれるとこは越えて、じかに入れたり、とにかくその撒き方が半端じゃない。
とある週末、のぼりを立ててオープンハウス開始でございます。確かに効果は抜群だった。お客さんは今まででは、一番来た。けど契約の話となると、前へ進まない。どうしたものか。結局丸2日が過ぎ、日曜日の夕方、のぼりを仕舞い、また来週にでもしましょうか、なんて言ってる時に、ひとりのお客さんが物件を見に来たのだ。
結局、最終的には、その物件を見に来た人が買ってくれた。担当が言うように、近所に住んでて、わりと古めの物件で、もっと新しいマンションはないかと探していたという。彼の予想通りの展開であった。
新宿の不動産屋さんには、今でも感謝している。彼がいなかったら、相当安い値段で売っていたかも知れない。それにもまして、大手不動産販売会社って役立たずだよね。
マンションを売る時は、誰が買うのか想定して、売った方がいい。理想は優秀な営業マンを見つけることなんだけど、それはなかなかいない。とにかくそう簡単に売れない。昨年、知り合いのご近所さんが、子供が大きくなったので、広い物件に移るために売ってたけど、売れるまで半年かかっている。それだけ体力がないと、凄く安く買いたたかれるんですな。
結局、マンションは見事売れて、しかもローンを差し引いても、そこそこお金が残った。人気エリアの物件は、すぐ売れないけど、価格はあまり下がらない。だから買うときに優良物件を買うことをオススメする。
北斗の拳で言うなら、あたたた~お前のマンションの売却価格は、すでに買ったときに決まっている~、そんな感じです。
■木村和久(きむらかずひさ)■
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦
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