客引きは、路上版振り込め詐欺■手口は「なんとなく高い額」 | 日本のお姉さん

客引きは、路上版振り込め詐欺■手口は「なんとなく高い額」

客引きは、路上版振り込め詐欺
2015.2.26 20:00
キャバクラ10分24万円…ぼったくり巧妙手口、居酒屋でも
今宵(こよい)も都心の繁華街で行われているであろう「ぼったくり」。あくまで正当な請求を装う高額キャバクラや、サービス料を重ねて取ろうとする居酒屋など、あざとい手口に絡む通報が急増している。そのぼったくりの片棒を担ぐのが客引きだが、責任の所在を曖昧にするため、店との雇用関係を表立っては持たないのが業界流だ。ここ数年、客引きに対する規制強化が進んでいるが、果たしてぼったくりを撲滅することはできるのだろうか。
■請求多く、落ち度少なく
「21万円です」
不夜城として知られる日本最大の歓楽街、東京・歌舞伎町。たった10分間、キャバクラ店に滞在した値段がこの額だった。
昨年10月15日、男子大学生3人が入店するとすぐ、テーブルについたホステスがそれぞれの飲み物を勝手に注文し始めた。3人は不審に思って退店しようとしたところ、21万円を請求された。
ホステスの注文した飲み物の料金はメニューに明記してあり、高額ながらも一応、“明朗会計”になっていた。支払いを拒むと、従業員は「交番に行こう」と話し、警察官の前で「無銭飲食だ」と訴えた。
結局、3人は再び店に戻り、クレジットカードで支払ったが、請求額はさらに3万円増えており、支払額は24万円になっていた。
3人から後日、相談を受けた警視庁は、店側が威圧的な態度で支払わせたとして、昨年12月にこのキャバクラ店の従業員3人を都ぼったくり防止条例違反容疑で逮捕した。
「店側もよく勉強していて、落ち度をなくすような営業をしている」と捜査関係者。同条例には明確な料金表示の義務化や、乱暴な言動による料金取立の禁止が盛り込まれている。最近は、ほかの悪徳店も、金額表示や請求の仕方に気を使っているという。
歌舞伎町を管内に抱える警視庁新宿署によると、昨年1年間でキャバクラ店の料金トラブルに絡む通報は650件を超え、特に夏以降、うなぎ上りに数を伸ばしたという。しかし、条例違反に該当するのはほんの一部だ。
■手口は「なんとなく高い額」
きわどい手口は居酒屋にも広がっており、「プチぼったくり」と呼ばれて注目を集めている。
「ぼったくられました」。昨年末、ツイッターに投稿された写真には、居酒屋でかかった料金として、お通しのほかに席料3780円▽週末料金3780円▽チャージ料7174円-が計上された伝票が写っていた。
この居酒屋は、投稿を皮切りに批判が殺到して閉店した。居酒屋の運営会社は「飲食以外の多額の料金を頂戴していた」とホームページで謝罪。過剰請求分の返金に応じると発表した。
こうした外食の高額料金に関する相談も年々増加している。
国民生活センターに寄せられた相談は、平成22年に411件だったのが、昨年は749件に上った。「呼び込みに誘われて居酒屋に入店したら、お通しとは別に、席料とチャージ料で1人1000円請求された」という、高すぎるとも適正価格とも言い切れない請求が相次いでいる。
■「路上版振り込め詐欺」との指摘も
これらのトラブルの多くに関わっているのが、路上での「客引き」だ。
「追加料金はいらない」「いい娘がいる」「ぐるなびと提携しているからいろんな店を紹介できる」-。
客引きは次々と「好条件」のせりふを繰り出して通行人を籠絡しようとするが、客引きに苦慮する歌舞伎町商店街振興組合の城克(じょう・まさる)事務局長(61)に聞くと、「120%嘘。もはや路上の振り込め詐欺と思った方がいい」と断言する。
歌舞伎町での客引き歴が約5年の男性(29)によると、多くは呼び込んだ客の売り上げや人数によって店側から報酬を受け取っており、月に数十万円を稼ぐ呼び込みもいるという。
「最近、客引きが増えたように思う。ぼったくりを専門にしている人もいて、嘘をついて呼び込む人もいると思う」
この男性はそう話す。
最近は、価格相場が分からない外国人観光客をターゲットにする手口も横行。英語を話すナイジェリア人や中国人が日本人の客引きと組んでいる場合もあり、道を歩きながら風俗店などに誘導する。帰国しなければならない観光客は、被害届も出せない。
別の客引きの男性(31)は、「狙われやすいのは海外や関東地区以外からの観光客。都内の人なら、これだけニュースでもやっているのに、だまされる方が不勉強」と笑った。
■条例への罰則盛り込みも検討
こうした事態を重視する都内の多くの自治体では「客引き防止条例」を施行している。新宿区の場合、風俗店のほか居酒屋やカラオケ店の客引きそのものを規制。指導員がパトロールして注意に当たっている。
しかし、多くの客引きは店と雇用関係にあるわけではない。そのため、効果的な指導はできないのが実態で、新宿区危機管理課の担当者は「客引きに金を出す店側を注意するのが最も効果的だが、確実に店の関係者といえないと逆に苦情を浴びせられる。どちらも本当のことは言わないので、実態はつかみきれない」と頭を抱える。同区では、条例に罰則を盛り込むことも検討している。
新宿署は昨年から、客引きの被害に遭わないように注意を促すアナウンスを街頭で流している。新宿区などは2月に入ってから、「客引きは100%ぼったくり」と書いた看板を置いた。それでも「お兄さんどう?」とささやく客引きたちが集まる。
「絶対、鵜呑(うの)みにしてはいけない」。関係者が口をそろえるように、客側の心構えが、一番の客引き対策のようだ。
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/150226/evt15022620000001-n1.html