デング熱の国内感染者数103人に!
デング熱の国内感染者数103人に!~今後も耳慣れない疾病が増えるのか?
2014年9月12日
1940年代の大流行以来、デング熱の国内感染事例は確認されていなかったが、今年8月末に、海外渡航歴がないデング熱患者が国内で発見された。地球温暖化による気候変動の影響なのかもしれないが、今後は、デング熱以外にも耳慣れない疾病が国内で発生することを覚悟する必要があるだろう。今回のデング熱、まずは正確な情報を収集して、あわてずに対処してほしい。
デング熱とは?
国立感染症研究所によると、デング熱は、ネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介されるデングウイルスの感染症。非致死性の熱性疾患であるデング熱と、重症型のデング出血熱やデングショック症候群の二つの病態がある。
全世界では、年間約1億人がデング熱を発症し、約25万人がデング出血熱を発症すると推定されている。デングウイルス感染症が見られるのは、媒介する蚊の存在する熱帯・亜熱帯地域、特に東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国である。
デング熱は、感染3~7日後、突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともある。発症後、3~4日後より胸部・体幹から始まる発疹が出現し、四肢・顔面へ広がる。これらの症状は1週間程度で消失し、通常、後遺症なく回復する。
デング熱に対する特別な治療薬や予防薬はないが、対症療法として、アセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)の投与や点滴などが行われる。アスピリンは、出血を増強するおそれがあるので禁忌となっている。
蚊に刺されないことが唯一の予防法
デング熱の予防方法は、現時点では、化学的には一切なく、蚊に刺されないことが唯一の予防法だ。
屋外に外出する際は、(1)長袖・長ズボンを着用し、シャツはズボンに入れ裾を縛る、(2)防虫スプレーをこまめにつける、(3)蚊は黒いものに集まるため、明るい色の服を着るなどに留意することが大切だ。
⇒ デング熱疑いにはどの解熱鎮痛薬を薦めるべき?(DI Online)
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デングワクチンの開発進行中
これまでは、蚊に刺されないことが唯一の予防策だったが、現在、デングワクチン開発が進行中で、早ければ来年にも実用化されそうだ。最も早期の実用化が見込まれているのは、サノフィのワクチン部門であるサノフィパスツールが開発中の4価デングワクチン(血清型1~4型が対象)。東南アジア諸国で約1万人の小児を対象に行われた臨床試験で、ワクチン接種によりデング熱発症数が56.5%低下することが示されている。
⇒ 開発進むデングワクチン 世界の患者は毎年1億人にも、待望のワクチンは来年にも実用化か(日経メディカル Online)
日本におけるデング熱感染状況
厚生労働省によると、2014年8月以降に発生しているデング熱の国内感染事例は、103名(2014年9月11日現在)。感染したと考えられている場所は、代々木公園周辺(97名)、新宿中央公園(2名)、神宮外苑もしくは外濠公園(1名)、千葉県千葉市(1名)、外濠公園又は都立青山公園(1名)、東京都台東区(1名)だ。
デング熱の国内での感染については、1940年代に神戸・大阪・広島・呉・佐世保・長崎などで約20万人に上るデング熱の大流行があったが、その後は確認されていなかった。
海外から帰国後のデング熱発症も急増中
海外から帰国後にデング熱を発症する患者も、2010年以降増加している。患者数は、日本人の海外流行者数と、旅行先での流行が反映しているようだ。
デング熱の原因となるデングウイルスを媒介するネッタイシマカは、熱帯地域の都市部に生息しているため、日本人観光客がよく訪れる東南アジアの観光地は、デングウイルス感染の高リスク地域となっている。実際、今年はシンガポールでデング熱が大流行しており、フィリピンやベトナム、マレーシアなどでも多数の患者が報告されている。
⇒ 【蚊】帰国後のデング熱が急増 渡航予定者には感染対策を(日経メディカル Online)
ネット上のデング熱情報
○国立感染症研究所:デング熱とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/encycropedia/392-encyclopedia/238-dengue-info.html
○厚生労働省:デング熱について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever.html
○厚生労働省:デング熱に関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever_qa.html
○厚生労働省検疫所(FORTH):デング熱
http://www.forth.go.jp/topics/fragment4.html
○東京都感染症情報センター:デング熱 Dengue fever
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/dengue/
○東京都福祉保健局:デング熱について
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kansen/dengue.html
○外務省:在外公館医務官情報 各論3 デング熱
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/kakuron03.html
○日本旅行業組合:デング熱
http://www.jata-net.or.jp/travel/info/safety/health/medical/1203.html
○国立感染症研究所ウイルス第一部 第2室:デングウイルス感染症情報
http://www0.nih.go.jp/vir1/NVL/dengue.htm
○CDC(Centers for Disease Control and Prevention):Dengue(英語)
http://www.cdc.gov/dengue/
○WHO(World Health Organization):Dengue(英語)
http://www.who.int/topics/dengue/en/