企業は深刻に「チャイナリスク」を考えるとき「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年10月7日(日曜日)
通巻第3778号 <前日発行>
経済戦争はすでに始まっている
中国の対日経済制裁は、経済戦争の宣戦布告に等しい
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尖閣諸島をめぐる日中間の係争で第壱弾の現場はレアアースだった。
次世代エンジン、携帯電話の部品に絶対不可欠の原材料である。
突如、レアアース禁輸措置にでた中国は、一方で日本企業のレアアース加工工場を中国誘致という成功例に導いたが、昭和電工など進出は二社にとどまり、他方、日本はレアアース供給源を南米、米国、カザフスタン、マレーシアなどに一気に多角化した。
安全保障の根幹にあるリスク分散の措置を遅ればせながら執った。
この結果、中国は言い値で買ってくれた大事な顧客(日本)を失って、レアアースシティといわれた内蒙古自治区パオトウは悲鳴をあげるに到った。
九月の反日暴動に付随して中国は経済制裁にでた。
陰湿に税関検査を遅らせて自動車部品の輸入を遅延さえ、生産を遅らせる手法が用いられ、たとえばトヨタはレクサス生産工場で生産停止に追い込まれる。住友化学など、原材料が工場に着かなければ操業停止となる。
そしてこう言い放つ。
「経済反制『購島』中方手握 王牌」(日本の尖閣国有化に対して中国の対日経済制裁は王手をかけた)、「可採連串『精確打撃』日経済料難承受」(連続しての制裁手段に日本経済は大被害を覚悟せよ)。
次の手段を行使せよと中国の新聞には書いてある。
――日中貿易で日本の中国市場への依存度は30%である
――レアアースの対中依存度は49・3%である
――中国と韓国との間でFTAが成立すれば日本企業は関税比で不利になる
――日本への中国人旅行者が激減する
――金融手段。中国は日本の国債を18兆円分保有している。いまや外国投資期間で日本国債最大の投資者は中国である
さきにこれらの中国側の対応の愚妹さに反論しておくと、第一に日本から中国への輸出は製造機械、ロボット、原材料などで、これらで中国は製造が可能となっているのが実態。日本が建機、クレーン輸出をやめると、困るのは中国である。JUKIなどミシンの輸出を日本がやめると数千、数万のアパレル、繊維産業が立ちゆかず、失業が溢れ(すでにミシン工は数百万が解雇の危機にちょく面している)、困窮するのは中国ではないか。
第二にレアアースは既にパオトウ、イリンホトで輸出業者が悲鳴をあげている。内蒙古自治区は石炭とレアアースで持っている脆弱な構造であり、日本に勝っていただけなるとダンピングして田のバイヤーをみつけなければならない
第三にFTAが韓国と結ばれても、日本が韓国の工場で生産し「韓国製」として対中輸出する迂回路があって、影響は微弱だろう
第四に日本へ来る中国人ツアーは評判が悪いうえ、値切るので儲けがない。旅館は設備、備品が盗まれるのでホンネはきてほしくなかった。団体客のキャンセルで巨額損出をだしたホテルは中国人経営が殆どである。観光業界の一部をのぞき、多くの日本人は中国からの団体ツアーが減ったことを歓迎している。
第五に中国が日本国債を購入しているのは、それが金融商品として有利だからで、たとい中国が報復だと言って、市場で売却しようが、日本国債の人気に陰りはない。
現象的な被害を見渡すと、次の変動要因がある。
――アディダス、中国工場閉鎖
――トヨタ、中国での生産半減、日本車販売が急減。日産も減産と操短。
――レアアース、日本は中国から代替生産地を確保
――フィリピン、中国撤退組はいらっしゃい
――ヤマダ電機、出店計画見直し、コンビニも出店加速勢いとまる
――フランスの高級ホテル「中国人観光客お断り」
――中国観光業界が「日本からのツアー激減」で悲鳴をあげた
日本企業は14600社が中国へ進出しているが、このペースがぴたりと止んだ。
トヨタ、日産、ホンダは減産に踏み切ったので、工場は稼働率がガタンと落ち、いずれ工員の大量解雇となるだろう。しわ寄せは中国人労働者にいく。関連部品、下請け、孫請けの日本企業も撤退を検討し始めているので、他方では労働者のストライキが頻発し、さらに操短、停止がつづくことになる。
▼企業は深刻に「チャイナリスク」を考えるとき
自動車に限らず、ほぼ全ての産業が中国での生産減産、一部撤退、数年後に完全撤退というシナリオの検討に入った。
保険業界は『反日暴動』リスクを勘案した保険の掛け金を一斉に引き上げるか、或いは保険の受付を停止するだろう。
これらは無法国家である中国側に全責任がある。
まさに石平氏が次のようにまとめる。
「中国の法的秩序を維持して内外の企業や人民の安全を守る義務を有する中国政府は、その時には事実上、自らの義務を完全放棄して違法的破壊行為や略奪を容認していた。
つまりこの国は、場合によっては完全な無法地帯と化してしまうこともあり得るのである。
しかも反日デモ収束後、莫大な損害を被った日本企業に対し、中国政府は責任を取って賠償するつもりはまったくない。
それどころか、お詫びの一言すら発していない。
「全ての責任は日本政府にある」と当の中国政府が言っている程だ。
この国はまったく、世界の基準から大きく外れた「無法国家」なのである。
◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ☆
傲慢不遜な中国人の性格は何から生まれたのか
誇大妄想と嘘が嘘を作った巨大な嘘の固まり国家がシナだ
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黄文雄『捏造だらけの中国史』(産経新聞出版)
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まだ中国に幻想を抱いている素朴な人々に是非、本書を勧めたい。日中友好屋さんに推奨したい。河野洋平、田中真紀子、鳩山由紀夫は是非とも本書を読むべし。
中国人が死んでも認めたがらない真実とは
(1)中国歴史は嘘の固まりであり
(2)その嘘が次の嘘を作り出し
(3)自らが嘘に酔って、何が嘘で、どれが嘘の嘘かの判定さえ出来ない。
すなわち「中国歴史五千年」という自己中毒的な巨大な嘘は黄帝伝説をでっち上げたばかりか、あちこちに黄帝の巨大な陵墓をコンクリートで造成した(ちなみに評者も西安北方三百キロほどにある巨大な伽藍を見学したことがあるが、嘘による歴史遺産の捏造という愚かな作業に熱中するシナ人って、いったい何者なのか、という感想を抱いた)。
黄さんは次々とパンチのあるフレーズを並べる。
いわく「当時の『中国』は満州人、清国の植民地だった」「孫文は辛亥革命を知らなかった」「日本軍に勝ったのが中国人民解放軍だったという大嘘」で国民を騙してきた。
しかしうすうす中国の知識人等は次のことに気がついている。
――人民解放軍は「解放」ではなく、強盗、匪賊だった
――日本人が中国に近代文化を教えた
――対華二十一箇条の要求は嘘の通説がまかり徹っているが、あれは袁世凱のでっち上げ宣伝で、尖閣は昔から中国領土だったという非論理に似ている。日本は理不尽な要求をしていない
矛盾だらけの歴史解釈を「正しい歴史認識」と中国が獅子吼するのは、日本人がとうてい理解不能な「中華思想」に依拠するもので、日本精神があっても中国精神がないと同様である。
そもそも「精神」という語彙の解釈が日本とは異なる。中国語には「根性」という概念がないし当該の語彙がない。強いてあげれば「列根性」だろうか。
誇大妄想の元凶は司馬遷『史記』と『資治通鑑』であり、五千年の歴史はただのタテマエに過ぎず、孔子はすべての免罪符とされる。
孫文はじつは革命にとっての疫病神だったうえ、戦後、捏造された歴史でペテン師が革命の父として蘇った。
そして本書の決定打。
徐福伝説が日本各地に残るが、中国人が言いたいのは「日本人は中国人が祖先」「日本の弥生式稲作は中国の江南から流れていったものである」という妄想である。どうしても中国人が日本の上位に立たないと気が済まないからである。
黄文雄さんは次のようにまとめる
「中国人だけは周辺諸民族は中国人の子孫という国自慢をしたがる」(中略)。徐福や邪馬台国論争があるが、「中国人が語りたがるのは、そんな『渡来人』説の真偽になるような話ではなく、『日本人は中国人の子孫』、すなわち中国人は偉大だという『祖先自慢』だけである。その目的は日本人は先祖である中国人に『考を尽くす』べきだということである」
壮大無比の誇大妄想に取り憑かれた隣人、まさに『厄介な大国、中国という隣人』である。
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(読者の声1) 貴誌前号のオスプレイの解説ですが、原義は「魚類ではなく、海岸に生息して魚を主食とするタカ科の猛禽・和名ミサゴ」
です。
ある事典によれば、「オスプレイ=和名ミサゴ。タカ目タカ科の鳥。大きさはほぼトビに同じ。頭と下面は白色。海浜に棲み、海上を飛翔し、急降下して魚類を捕食。世界中に広く分布し、日本でも繁殖。別名:ウオタカ・スドリ」の由です。
(後期高齢龍)
(編集部から)早とちりで間違えました。魚鷹は、その字句通りです。
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(読者の声2)昨日(10月5日)、東京ホテル・オークラで在日台湾大使館(駐日台北経済文化代表処)主催の「双十節」パーティが行われました。急遽日本に戻った台湾大使は「尖閣」に関してひとことも触れませんでした。抽象的に「平和のメカニズムの構築」を言っただけです。
これは何かの合図ですかね? ただし参会者は1500名、会場から溢れるほどでしたが、日本の政治家はすくなかったです。日台関係も尖閣問題で冷却するのでしょうか?
(MM生、港区)
(宮崎正弘のコメント)小生も参加しておりました。例年のように参加者で会場が溢れ、誰がどこにいるのか、探すのに一苦労でした。
第一、安部晋三さんか石原都知事がくるかもしれないとTV各局が控えていましたが、結局は平沼赳夫、藤井孝男あたりだけ。
第二に台湾側の参加者も、じつは様変わりでした。民進党時代の金美齢、黄文雄氏らは、もちろん欠席です。
第三に日本側も、新聞とマスコミ関係者は仕事柄、多いですが、学者、外交官は参加が目立って減っていました。小生が立ち話をしたのは加瀬英明、植田剛彦、河添恵子の各氏と、某シンクタンク理事ならびに新聞各社の外報部、雑誌編集長、中国専門家の幾人かでした。
というわけで、あの台湾漁船団の尖閣諸島海域侵入事件は、おおきなしこりとなりましたね。
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
(C)有限会社宮崎正弘事務所 2012 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示
すでに筆者は七年も前に『中国よ、反日有り難う』を書いたし、五年前には『日本企業は中国から撤退せよ』(阪急コミュニケーションズ)と連続して書いてきたので、これ以上、撤退の勧めを演繹するつもりはないが。。。
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