「TOKYOチャレンジネット」は3年間で終了する期間限定事業
都の“ネットカフェ難民”救済事業
「TOKYOチャレンジネット」の中身は?
「TOKYOチャレンジネット」の相談室の様子。オープン当日の段階で、すでに59人の住所喪失者から相談予約の申し込みが殺到していた。なかには年金生活者からの相談もあったという
24時間営業のネットカフェやファストフード店に寝泊りしながら、日雇い派遣などの不安定労働に従事する人々――いわゆる“ネットカフェ難民”が社会問題化し始めたのは、ここ数年のこと。平成19年に実施された厚生労働省の調査によると、東京都内には現在、約2000人の“難民”が存在すると推計されている。
生活基盤が不安定で住居を借りられない→定職に就きたくても就職活動ができない→不安定な仕事をするしかない→(以下、無限ループ)。そんな悪循環に落ち入ってしまった人々をサポートすべく、東京都と厚労省は今年4月、ネットカフェが数多く集まる新宿・歌舞伎町に、自立支援相談窓口「TOKYOチャレンジネット」を開設した。
利用条件は、何らかの理由で住む家を失った状態にあり、かつ東京都内で直近6カ月以上生活している20歳以上の男女。総じて“住居喪失不安定就労者”と呼ばれる人々に、どのような支援が行われるのか。運営に携わる東京都福祉保健局の松本功氏に話を聞いてみた。
「まず相談員が現在の生活について詳しい聞き取りを行い、就労についての相談や、債務者には法律相談を紹介するなど、今後の生活設計を一緒に考えていきます。そのうえで、民間の借りやすい賃貸物件の情報を提供し、必要ならば住宅資金40万円、生活資金20万円を上限に無利子で貸し付けます」
しかし、ただお金だけあっても、それだけでは自立は難しい。
「安いアパートを借りるにも、契約時には連帯保証人や緊急連絡先などが必要になるので、それらの対応も行います。まったくのゼロから自立した生活を始めるには、誰かのサポートが必要不可欠なんです」
筆者が取材に訪れたオープン当日、早速相談に来ていた20代の男性に話を聞けた。男性はすでに7年間もネットカフェ難民生活を続けており、心身ともに限界を感じているという。
「ネットでこの事業を知って“転機だ”と思った。今の生活は、ただ日々の暮らしをつなぐだけで精一杯で、死んでいないことが唯一の生きがい。だけど、まだあきらめたくない。ここから抜け出したら、キャリアを積んでやりたい仕事に就きたい」
「TOKYOチャレンジネット」は3年間で終了する期間限定事業だが、都内2000人分の支援予算が用意されている。格差社会といわれる昨今、出口の見えない苦難にあえぐ人々にとって、この事業はひと筋の「蜘蛛の糸」なのかもしれない。
(呉 琢磨)
生活基盤が不安定で住居を借りられない→定職に就きたくても就職活動ができない→不安定な仕事をするしかない→(以下、無限ループ)。そんな悪循環に落ち入ってしまった人々をサポートすべく、東京都と厚労省は今年4月、ネットカフェが数多く集まる新宿・歌舞伎町に、自立支援相談窓口「TOKYOチャレンジネット」を開設した。
利用条件は、何らかの理由で住む家を失った状態にあり、かつ東京都内で直近6カ月以上生活している20歳以上の男女。総じて“住居喪失不安定就労者”と呼ばれる人々に、どのような支援が行われるのか。運営に携わる東京都福祉保健局の松本功氏に話を聞いてみた。
「まず相談員が現在の生活について詳しい聞き取りを行い、就労についての相談や、債務者には法律相談を紹介するなど、今後の生活設計を一緒に考えていきます。そのうえで、民間の借りやすい賃貸物件の情報を提供し、必要ならば住宅資金40万円、生活資金20万円を上限に無利子で貸し付けます」
しかし、ただお金だけあっても、それだけでは自立は難しい。
「安いアパートを借りるにも、契約時には連帯保証人や緊急連絡先などが必要になるので、それらの対応も行います。まったくのゼロから自立した生活を始めるには、誰かのサポートが必要不可欠なんです」
筆者が取材に訪れたオープン当日、早速相談に来ていた20代の男性に話を聞けた。男性はすでに7年間もネットカフェ難民生活を続けており、心身ともに限界を感じているという。
「ネットでこの事業を知って“転機だ”と思った。今の生活は、ただ日々の暮らしをつなぐだけで精一杯で、死んでいないことが唯一の生きがい。だけど、まだあきらめたくない。ここから抜け出したら、キャリアを積んでやりたい仕事に就きたい」
「TOKYOチャレンジネット」は3年間で終了する期間限定事業だが、都内2000人分の支援予算が用意されている。格差社会といわれる昨今、出口の見えない苦難にあえぐ人々にとって、この事業はひと筋の「蜘蛛の糸」なのかもしれない。
(呉 琢磨)