米国の屈服をたくらむ中国
【論説】孫子の兵法で戦わずに米国の屈服をたくらむ中国(本論)
楊慶安(ニユーヨーク州立大学名誉教授)
中国は戦わずに米国を屈服して、21世紀後半に中国を宗主国とする
新世界秩序の建設をたくらんでいる。これを阻碍できる唯一の国家は
米国で、万がいち中米戦争が勃發したら竜鷲相い倒れるのは必至で、
中国はかくて2千余年前に孫子が喝破した“百戦百勝は善の善にあらず、
戦わずに敵軍を屈服させるのが善の善なり”の兵法で、戦わずに国内、
対米国と国際の三戦略で、米国を倒して、その目標を達成しようとしている.
幸か不幸か米国は中国のたくらみを阻止するどころか往々にして助けている。
I. 国内戦略 “強兵”になるのが長年の半植民地国家転落の屈辱史を
一掃し、主権独立国家の国際的地位を獲得する第一条件で、“富国”が
強兵の前提、国内安定が“富国強兵”先決条件であると判断。
1.社会主義的市場経済の推進。 トウ小平は1978年から毛沢東の
継続革命と蘇聯の計画経済を経済改革・開放に転換し、米欧、日本から
資本、ハイテクと機械・設備を導入して“社会主義的市場経済”を推進。
温家宝首相が春の全国人民代表大会で2004年にGDPが前年比9.5%
伸び、世界第3位の貿易大国に成長、国際的地位が更に上昇したと誇示
したが無理もない。
2.軍事現代化と拡大。 中国は蓄積した巨富で軍事の現代化をすすめ、
1989年以降軍事費を毎年二桁増やしロシアから最先端戦闘機、ミサイル
誘導のSovremmenny 駆逐艦や巡航ミサイルを購買した。
軍事戦略も人民戦争から,ハイテク条件下の局地戦争に勝てる積極的
防衛戦略に転換し、情報化と統合化を導入した軍事戦略を推進。
海軍戦略も沿岸防衛から沿海防衛に転換して、活動範囲を第一列島線から
第二列島線(千島列島、小笠原列島、硫黄島、サイパン島、グワム島)に拡張。
730余基の短距離弾道ミサイルを台湾対岸に備え、台湾の北京の条件での
統一、米国の干渉抑止、軍事衝突があったら米軍と日本自衛隊を攻撃する
のを企図、ラムスフェルド米国国防長官が最近警告したように、台湾、日本、
米国と他の周辺諸国の脅威になった
3.国内安定固守。 ゴバルチョフのグラスノスト(政治自由化)と
ペレストロイカ(経済開放)の同時推進が、東欧とソ連の崩壊を招いたのに
衝動を受け、北京は共産党独裁政権の堅持と人民解放軍、武装警察と公安で
国内安定を固守している。
II. 対米国戦略 戦わずに米国を屈服するために、中国は国内戦略に次いで
、対米国戦略を進めている。
1.まずワシントンとの安定した友好的関係を最重要外交関係と定義。
2001年に発足したブツシ政権の米中関係の競争的パートナーシツプの推進と
海南島近海での米偵察機と中国戦闘機の衝突を重大危機視し、2001年
9月11日の同時多発テロ発生後のブツシ政権の対中関係の変化
— 反テロ、イラク戦争と北朝鮮の核脅威除去での中国協力獲得為の米中の
建設的協力関係を建立 — を天から落ちてきた恩恵とした。しかし他面、
米国の覇権と強権政治反対、“公正で合理的な新国際秩序”建設の外交政策を
繰り返してきた。
2.次に米国をターゲットした軍事現代化をすすめているが、国内戦略で
触れたので繰り返し不要である。
3.第三に、四つの三次的策略で構成する対米国経済的・金融戦略を推進。
(1)日本と違い1992年から積極的に外国資本の直接投資(FDI)を導入。
1979年から1984年までのFDIは総計$31億ドルの少額にすぎなかったが、
1992年には$110億ドルに、1996年以後は実行ベースで年間$400億ドル、
2002年以降は年平均$500億ドルを超し、中国経済、輸出、雇用と国家収入に
大きく寄与した。
又合法的(米中政府間条約、協定)と非法的手段で米国の先端的技術を導入。
重商主義貿易・産業政策と法律で、合弁企業の外国会社の中国へのハイテクの
移転義務を課し、且中国市場へのアクセス、利潤の送還を制限をした。
米国政治家への献金、知的財産権の窃盗、商業インセンチブでの米国企業の
衛星・ミサイル技術の移転強制などの非法的手段も使用。
FBIは3000の小中国人会社と個人のミサイルシステムの精密性を助ける
コンピユーター部品の送付を調査、シリコンヴァリーは中国スパイの温床になり、
FBIの中国人スパイの調査は毎年20%から30%増えているとのことである。
(2)巨額の対米貿易黒字で米国から巨富強奪。 2004年$6170億ドルに達した
米国貿易赤字の四分の一は中国との貿易に起因した。
勿論赤字の大多の責任は、米国の製造業、サービース産業の低コストの
中国産業との競争力喪失と中国消費品に対する巨大需要のある米国自身にある。
オールマート一社だけで昨年$166億ドルの消費品を輸入した。
国際貿易は中国が米国に押し付ける一方的通行ではなく、米中二国間,否、
数カ国通行で、比較優位、貯蓄率、又外交と安全保障政策などの諸要因に
左右される。しかし中国が重商主義貿易・産業政策と中国元と米ドルをリンクした
固定為替政策で、米国と欧州連合(EU)に対して巨額の黒字貿易を強行したのも
確かである。
米国はこの二十余年の短時間で世界最大債権国から最大負債国に転落したが、
中国の対米貿易・金融政策も一主要原因である。
(3)ハイテク会社の生産工場・研究・デザインセンターの中国への移転誘導による、
米国産業の斜陽加速。
今まで低利を支払い経営権を授与しなかった米国国債の購買に甘んじてきた
国有企業の経営権獲得を含めた戦略的米国企業の買収に乗り出し。
昨年のレノボのIBMのP.C.部門の購買、今年に入ってからのハイエルの
メイタグの購買と中国海洋石油(CNOOC)のユノカル(Unocal)の$185億ドル
の買収企図がそうである。
ユノカルの購買はハンター衆議院軍事委員会委員長らの反対で撤回したが、
米国、欧州の戦略的企業の買収は激化する。
(4)米国国債の購買による対米国レバーの獲得。外貨保有額は今年年末で
日本を越して$9300億ドルに達して世界一になり、巨額の米国国債の購買は、
一面米国の貿易と財政の赤字を融資するが、他面米国財政だけではなく
外交・安全保障を影響する大きなレバーとなり、台湾問題や北朝鮮核問題解決
での米国との交渉で、取引チツプとして利用している。
4.米国の分割。 北京はすべての事物に正・反の矛盾と弁証法的総合があり、
分割克服可能との毛沢東の矛盾論を適用し、米国国内の矛盾・闘争
(民主党対共和党;社会保守派対経済保守派;行政府対議会;議会対法廷;
政府官庁間の矛盾など枚挙にきりがない)を特別注目してきた。
特に国家安全補佐官対国務長官(たとえば、第一次ニクソン政権のキシンジャー
対ロジャー国務長官;カーター政権のブリジンスキー対ヴァンス国務長官)や
国防長官対国務長官(第二次レーガーン政権のワインベルガー対シユルツ
国務長官;第一次ジヨージw.ブツシユ政権のラムスフェルド国防長官対
パウウェル国務長官)の矛盾・闘争を巧妙に操縦、利用。
又中国市場への進出を望んでいる企業をブツシュ政府の“一つの中国”政策に
反対している国会議員に圧力をかける政治的武器に使ってきた。
III. 国際戦略 中国は戦わずに米国を屈服させる為に、国内と対米国戦略の
ほかに三つの二次的策略で構成する国際戦略を展開してきた。
1.世界多極化 北京は長年覇権主義と強権政治反対の暗語で米国支配の
一極世界に反対し、中国、米国、日本、ロシア,EUの五極世界の発展を推進
してきた。
湾岸戦争とイラク戦争でのハイテク軍事力に感嘆し、米国の超大国地位を
不本意に受け入れたが、世界多極化計画を放棄せず、近年中央アジア、
ASEAN、中東、中南米に対する外交攻勢をすすめ、諸地域の多極要員へ
の発展と米国けん制を努力している。
2.戦略的パートナーシツプの締結。 胡主席と温首相は2004年に強烈な
大国外交を打ち出し、世界多極化の一環としてフランス(20年1月)、EU(5月)、
英国(5月)と総合的戦略的パートナーシツプを締結。
ロシアとはすでに1998年に戦略的パートナーシツプを結んだが,2001年には
中・露と四中央アジア国家で米国の影響力排除の目的で組織した上海協力
機構とも同パートナーシツプを結び、2004年にはイタリー(5月)とASEAN
(6月)とも戦略的パートナーシツプを締結した。
2001年1月には長年の宿敵のインドと、2004年9月には同盟国のパキスタン
とも友好的協力協定を、2004年3月には韓国と総合的協力パートナーシツプを
結んだ。
又2002年11月にASEANと十年の自由貿易協定地域と東アジア共同体の
形成を意図した“包括的経済協力協定”に調印。
感嘆すべきなのは、米国とEUに対して貿易黒字政策で巨富を稼いだのと
正反対に、ASEAN諸国に対しては大幅赤字貿易政策を押して、東南アジア
諸国に巨富を流している。
3.米国キヤンプの逆包囲・封鎖。 中国は9・11後の米日同盟の強化、
米国の中央アジアでの軍事基地建設、パキスタンとの同盟締結、インドとの
関係改善、フィリピン等の東南アジアとオーシヤンニア諸国との軍事提携を
中国包囲・封鎖の一環と警戒したが、経済、軍事大国に成長してから米国
キヤンプの分割による米国の逆包囲・封鎖を試みている。
二例だけ挙げると、2004年にキユーバとの軍事的交流を拡大して、米国の
衛星通信を捕捉;アルゼンチンと中国製の戦闘爆撃機の購買をひそかに交渉;
ベネズエラに特別軍を送って現在の左翼政権を支持し;
又ブラジルと米国の宇宙軍事情報収集を阻碍する協定を結んだ。
米中経済・安全再調査委員会の一委員であるドライア教授によると、中国は
2004年一年だけで二十の軍事視察団を中南米に派遣した。
中東にも大きく手を伸ばしている。ガルフ協力会議(UAE,サウジ・アラビア、
バハレイン、クウエイト、カター、オマン)との貿易は2003年の$169億ドル
から2004年には$200億ドルに増加。
中国石油・科学会社は2004年5月にサウジ・アラビアと年間1500万バレル
の原油を中国に輸出する$3億ドルの契約を結んだ。
国有会社もイラン、スダン、イラクなどでテレビ、自動車の組立工場の建設に
乗り出している。
これらは商業的活動だけではなく、中国の影響力拡大と中東諸国の米国との
関係切断を企図する戦略の一環である。
結論 本小論は中国が経済・軍事大国に成長し、中国を宗主国とする世界
秩序建設の目標を阻止しうる唯一の米国を、孫子の兵法で戦わずに屈服させ
る為にいかに国内、対米国、国際の三戦略を展開してきたかの予備的考察を
試みた。
今後の中米関係はどうなるか、米国は中国の戦略にいかに対応すべきかは
二大問題であるが、後日の研究を待つべある。
1. 中米の競争的共存 中米の大国関係は当面競争的共存を特徴とする
であろう。台頭する中国は、現状維持国家ではなく、米国を挑戦しない平和的
共存と戦争リスクを賭する熾烈な対米国挑戦の両極端を避けた、競争的共存を
選ぶであろう。しかし攻撃されたら米国本土の核攻撃をするだろう。
アジアの国際関係はしばらくの間日米同盟と中露戦略的パートナーシツプ対峙
の力の構造に左右される。
ワシントンは今北朝鮮の核脅威除去の為に六カ国会議を支持しているが、
従来の日米同盟を基軸とする二国間同盟,所謂,車輪スポーク戦略の基本的
戦略を保持するであろう。
日米同盟の強化は台湾海峡の力の均衡を維持し、台湾の安全を強め、
東南アジアと南アジア諸国の独立外交保持決意を固め、中国バンドワゴンへ
の競争的搭乗を阻止し、中国を宗主国とする階層的新アジア秩序の形成を
遅延する。
逆に,日米同盟の弱化は,台湾の安全を傷つけ、アジア諸国の独立外交
維持決意を弱め、中国バンドワゴンへの競争的搭乗を加速し、中国を宗主国と
する新アジア秩序の到来を早めるであろう。
2. 米国は現実的アプローチで中国に対応すべし。 米国は中国の戦略に
いかに対応すべきか?クリントン前大統領の対応は一方法である。
彼は2000年1月27日の議会での米国現状についての演説で“中国の安定、
繁栄、民主的国家への発展と世界貿易組織への加盟は、中国市場の開放
だけではなく、アジアの平和と中国の変化に寄与する”と宣言した。
典型的な自由主義派のアプローチ、即ち、中国の経済現代化への支援は、
中国の政治民主化と国際社会との相互依存の深化を助け、民主的中国は
平和な国家になり、他の民主国家を脅やかさないとの、自由主義派の対応
である。
残念なことには、中国の首脳は、欧米の中国経済発展の援助は、商業的動機
だけではなく、中国の“平和的変化”をたくらむ政治的陰謀を潜んでいると
認識し,経済的改革・開放は積極的に押しすすめたが、政治の民主化を断固
拒否して、共産党独裁政権を堅持してきた。
中国は超経済大国になったが、民主的、平和国家になるどころか、台湾、
日本、米国の軍事的脅威になった。
経済現代化、民主化、国際協調に依存する自由主義派のアプローチは、
極冷酷な食うか食われるかの国際政治の世界に通用しない。
現実的対応のみ、即ち、米国と日本の総合的国力(経済、軍事、社会、
指導者、国民の意思)の増強、日・米・台と他の同盟国との法的、事実的
(de facto)同盟の強化による、中国に対する軍事的優位、少なくても力の
均衡、の獲得が戦わずに米国を屈服させて、“中国帝国”を宗主とする
新世界秩序の建設をたくらむ中国に対応する唯一の方法である。
『台湾の声』 http://www.emaga.com/info/3407.html
『日本之声』 http://groups.yahoo.com/group/nihonnokoe Big5漢文
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「中国は超経済大国になったが、民主的、平和国家になるどころか、台湾、
日本、米国の軍事的脅威になった。」というところが現実的で悲しい。
中国の夢は第二のアメリカになることなのだろう。
日本も、世界の平和に貢献する国という良い印象を保ち、世界で注目され
続けるようでないと、それこそ中国のトップが以前オーストラリアで語った
ように、「そのうちに衰退して消えていく」国になりかねない。
気を引き締めて頑張らないと、日本は戦わずして中国に屈服する国に
なりかねない。
アメリカの議員が中国に取り込まれたら、アメリカの言いなりになっている
日本は、靖国参拝もできない国になるのだ。気が付けば敵は、中国人に
取り込まれたアメリカ人議員だということになっているかもしれない。