中国の砂嵐
中国の砂漠化が深刻だ。昨年1年間で東京都の面積の半分以上に
あたる1283平方キロが緑地から砂漠になった。
今年、日本列島でも多発し、被害を与えた黄砂の発生源となる。
「中国脅威論」の一因になりそうなほどだ。内陸部の砂漠地帯を歩いた。
【中国内モンゴル自治区阿拉善盟(あらぜんめい)で飯田和郎】
「昔、ここは緑の草木が生い茂り、羊を見失うほどだった。
ラクダの首だけが見えた。今や一面砂漠。トカゲが走り回るのだって見える」
◇「中国脅威論」の一因にも
内モンゴル自治区最西部、モンゴルと国境を接する阿拉善盟東部の
砂漠地帯。モンゴル族のバトゥールさん(64)が砂漠を見つめながら話す。
かつて羊飼いの遊牧をしていたが、進む砂漠化のため、ほとんどの羊を
手放したという。
強い西風が吹きつけるたびに、細かい砂が渦を巻きながら高く吹き上がる。
空も大地も黄色い。閉じていた口の中がざらざらする。
阿拉善盟は総面積27万平方キロと、東京都(2187平方キロ)の約120倍。
そのほとんどが砂地で、阿拉善砂漠と総称される。世界4番目の広さだ。
中国では砂嵐を沙塵暴(さじんぼう)と呼ぶ。中国北部では今年すでに13回
発生した。今春、最大級の沙塵暴が起きたのは4月10日。
阿拉善盟東部だけで家畜4500頭以上が死亡、飲料用井戸460カ所が埋没、
家屋やパオ(遊牧民の移動用住居)580軒が崩壊し、被害総額は1550万元
(2億3300万円)に達した。
阿拉善盟環境保護局によると、96~02年の6年間で東京都の面積より
大きい2471平方キロが砂漠になった。
北西部の防砂林になるポプラの植林面積は50年代の500平方キロから
現在は293平方キロ減少。
黄砂の源が広がり、乾いた砂は、春特有の低気圧による上昇気流に乗って、
高度5000~1万メートルで偏西風に運ばれ、数千キロの旅にたつ。
中国国家林業局砂防弁公室の劉拓(りゅうたく)主任は、今春、黄砂現象が
多発する理由として
(1)砂漠地帯の気温が高く雪解けが例年に比べ早かったため、
水分の蒸発が進んだ
(2)砂漠地帯の昨年の降水量が例年より3~8割少なかった
(3)例年より強いシベリア寒気が砂漠地帯を通過し、大量の砂が
巻き上がった--ことを挙げる。
風下にあたる北京でも黄砂は今年、大きな被害をもたらした。
特に4月17日には前夜から30万トン以上の黄砂が舞い降りたと推計され、
2年後に迫った北京五輪への影響を懸念する声も上がる。
資源獲得競争や軍事力の増強、中国製品のはんらんなどで国際社会に
広がる「中国脅威論」。
人体や環境への影響も指摘される黄砂の拡散は、これに拍車をかける可能性
もある。このため中国政府も砂漠化を食い止めようと、植林、かんがい工事を
進めている。
それでも対策は追いつかない。05年の調査によると、中国国内の砂漠
面積は174万平方キロ。05年の1年間で1283平方キロの緑地が消えたという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060516-00000020-maip-int