何だかよく分からないが、重要なニュースかもしれない。
華南における事業再編(1)-加藤修
最近、華南ではさまざまな事業再編を目の当たりにする。営業面での問題提起がそのきっかけとなるケースは多い。主な課題としては、次のようなものが挙げられる。
1.広州市周辺の自動車産業台頭による人民元ビジネス・ニーズ拡大への対応。特に最近の自動車には電装品が多く用いられることから、珠江デルタ南部の家電・IT事業を行う企業にも参入チャンスが拡大している。
2.グループ内企業による工場乱立で、工場ごとに営業部隊を持つことから、グループ全体としてみた場合に営業効率が低い。
3.日本サイドのコンプライアンス強化策への対応。駐在員事務所や保税区商社ではコンプライアンス面の根拠が弱い。
これら課題の解決には、外商投資商業領域管理弁法に基づく卸売会社の設立が受け皿として用いられやすい。2006年3月1日からは審査批准権限が商務部から省級政府・計画単列都市政府等に委譲されたことにより、ますます実現の可能性が高まり、これを機に一気に華南地区のビジネススキーム再編・効率化を図ろうとする動きが生じている。同時に、競合他社がこのような動きをとれば、自社も競争力維持のために対応せざるを得なくなり、連鎖的に検討案件が増加しているのが現状だ。
確かに地方政府へ批准権限が委譲され、卸売会社の設立は検討しやすくなった。時代の流れにもマッチしており、華南に1社程度は持っておきたいと思うのもうなずける。しかし卸売会社の設立は、同時に香港現法の再編にも波及することは認識しておかなければならない。何故なら香港現法もまた、華南地域を主戦場に営業展開をしているケースが大半だからだ。
実際の再編では、香港現法の中国内営業部隊や可能な範囲での事務部門を新設卸売会社に移設するケースが多い。しかし通常、決済や一部物流、香港現法に対する営業活動等は残される。香港の方が使い勝手の良いもの、香港市場をカバーする上で必要なもの、高度なサービスが要求されるものが対象となる。
華南に香港現法と新設卸売会社の、2社の販社が本当に必要なのか、という議論がよく出てくる。大半の事例に基づく回答は「必要」である。何しろ華南ではアジアを見渡しても珍しい2極ビジネスが展開されている。どちらか片方がないだけでも営業上ハンディキャップとなるほか、香港の外貨建て売上規模は華南地域のそれを圧倒している。また香港における一国二制度のメリットがあるように、ビジネス上も近隣での二制度をうまく活用すればさらに力を発揮できる。日本と中国の組み合わせで不景気から脱却した日本も同様の手法をとってきた。香港-華南でもこの手法により、外貨建てビジネスと人民元建てビジネスの両方を捕捉することができるのである。(執筆者:みずほコーポレート銀行香港支店 中国アセアン・リサーチアドバイザリー課 次長・加藤修)
※本コラムはいかなる助言を含むものではなく、これによって生じた損害について、当行は責任を負いません。(サーチナ・中国情報局) - 5月2日