アメリカは台湾海峡の現状維持を望んでいる。
【ワシントン=山本秀也】台湾の馬英九・中国国民党主席
(台北市長)は二十三日、ナショナル・プレス・クラブでの講演など
訪米の核だったワシントンでの日程を終えた。
米側ではホワイトハウス、国務省に加え、同日には国防総省高官も
馬氏と非公式に会談するなど、台湾の政党関係者の訪米としては
異例の対応をみせた。
関係筋によると、馬氏は同日午後(日本時間二十四日早朝)、
ワシントン市内の米国在台協会(AIT、米政府の対台湾窓口)で、
国防総省のロッドマン次官補(国際安全保障担当)、
アレン・アジア太平洋部長らと台湾の米国製兵器調達問題で
意見を交わした。
米政府高官と台湾要人の接触については、慣例通り米台とも
確認を拒んでいる。
しかし、二十二日午後のゼーリック国務副長官、クラウチ大統領
次席補佐官との非公式会談は、全体で三時間を超える本格的な
ものとなった。
台湾の政党首脳では、昨年七月に与党・民主進歩党の蘇貞昌主席
(当時)が訪米したが、米側要人との接触は議会関係者らが中心だった。
米側が異例の布陣で馬氏との接触を図った背景としては、
台湾海峡の「現状維持」を最重視する米側の地域政策が
影響している。つまり、
(1)「国家統一綱領」の実質廃止など、民進党政権の
対中政策に対する“懸念”を国民党への対応で表明
(2)米国製兵器の調達問題で国民党首脳に直接説明を求める
(3)次期総統選への出馬が確実視される馬氏への米側政策の
説明と信頼醸成-などが指摘される。
在米経験の豊富な馬氏も、こうした米側の意向を十分
理解していたようだ。ナショナル・プレス・クラブでの講演では、
中台の「対話再開」と「現状維持」を強調する一方、基本的には
対中接近よりも伝統的な米台関係を重視する考えを米側にアピール。
台湾が東アジアで「責任を分担する役割(ステークホルダー)」を
果たすことを強調した。
馬氏は二十三日、ワシントンでの日程を終えてサンフランシスコに移った。