中国は2008年に危険になる?
弾道ミサイル増/6万トン級空母?
【ワシントン=山本秀也】米国の軍事・安保専門家らが、
米議会の超党派諮問機関である「米中経済安保調査委員会」の
公聴会(十六-十七日)で、中国の軍事動向についての分析を報告した。
公表ベースで十八年連続の国防費二けた増という中国の軍拡の背景には、
台湾への武力行使と日米の介入を排除する狙いがあり、
台湾をめぐる緊張は、二〇〇八年から一五年の間に最も高まる
-などという分析でほぼ一致した。
遠洋型海軍への転換や弾道・巡航ミサイルの大量配備といった
中国の軍拡が、台湾統一に向けた戦略の柱であることは多くの
専門家が指摘した。とりわけ、中国側が台湾に対して
絶対的な優位にある射程三百-千七百キロを中心とした弾道ミサイルは、
「年間七十五-百基のペース」で増加している状況に、
ほぼ全員が懸念を示した。
危機の訪れる時期について、米太平洋軍の統合情報本部で
上級分析官を務めたコルテス・クーパー氏
(ヒックス・アンド・アソシエーツ東アジア部長)は、
「二〇〇八年から二〇一五年の間を心配すべきだ」と語る。
中国の新型装備が〇八年ごろ配備を完了するのに対し、
ミサイル防衛など米軍の新たな地域抑止力が整うのは
一五年ごろと予想されるためだ。
この間には日本の役割が相対的に高まる一方、米台だけでなく
日本も潜在的な中国の攻撃目標に含まれるとの指摘が目立った。
国防総省で台湾問題を担当したマーク・ストークス氏
(米台エンタープライズ基金会長)は中国の移動式弾道ミサイルの
脅威が沖縄をはじめ在日米軍施設に向けられる可能性を挙げた。
長期戦略については、米軍のような地球規模での軍事展開能力の
獲得を中国が当面想定していないとの見方が強かった。
ただ、軍事力の強化を背景に、東南アジアや中央アジアを影響下に
収めることは視野にあるとの指摘も示された。
中国の実質国防費が公表分の「二-三倍」であることは、
公聴会に出席したロッドマン米国防次官補も重ねて確認した。
ロシアからの兵器調達額について、国際評価戦略センターの
リチャード・フィッシャー副会長は、潜水艦や戦闘機の調達ラッシュと
なった一九九五-二〇〇五年に「百五十億ドルに達した」と指摘。
〇四年は一年間で二十八億四千万ドル相当のロシア製兵器が
中国に輸出されたという。
中国の兵器調達リストとしては、各種の新型ミサイルや潜水艦の
拡充、早期空中警戒機や次世代戦闘機などが、専門家から
具体的に指摘された。
航空母艦も導入が確実との点で専門家の見方は一致。
ただ、大連で改装中の旧ソ連製空母ワリヤーグが転用されるのか、
ほぼ同型の国産空母を配備するかは、見解が分かれた。
予想される中国海軍の空母戦闘群は
(1)排水量四万五千-六万トンクラスの空母
(2)艦載機はスホイ30MKKなど三十-四十機
(3)随伴艦は二〇〇三年以降に建造された
「広州」「武漢」など防空能力にすぐれた駆逐艦-との輪郭でほぼ一致。
空母の配備時期について、クーパー氏は「二〇一五年」を予想している。
中国への新たな兵器供給源として、公聴会では
対中武器禁輸の解禁を模索する欧州連合(EU)への強い懸念と
不信感が示された。
調査委員会のカロリン・バーソロミュー副委員長は、台湾海峡有事への
米軍介入を念頭に「米軍兵士が欧州製兵器を手にした中国に直面することが
あってはならない」と語った。 (産経新聞) - 3月19日