党宣伝部は実際、絶大な権力を持っているようだ。
北京=野口東秀】中国の言論統制の元締めで、中国青年報の
付属週刊紙「冰点周刊」を停刊処分とした中国共産党宣伝部を解体
すべきだとの声が知識人の間で高まっている。
同社内でも宣伝部に反発し「冰点」の編集方針を支持する
動きが出始めた。
背景には最近の報道規制の強化に対するメディア界や学術界の
危機感がある。
青年報関係者によると、「冰点」の李大同編集長更迭などに反発する
メールや電話が社内外から相次いでいる。
著名な元党幹部や学者らも抗議声明を次々に発表、「同部は存在しなくてもよい」
(李普・元新華社副社長)などの解体論が公言され始めている。
李前編集長も広範な支持を受けて、「中国では党の権力は法の束縛を
受けない。しかし、どんな権力であれ渇望する自由を抹殺できない」
と左遷処分に屈しない姿勢をみせている。
しかし、宣伝部は「冰点」事件を国内メディアに一切報じさせず、
中国外務省もホームページから、会見での関係質問を削除するなど
“情報封鎖措置”を徹底している。
こうした同部の強気の姿勢は、「党指導部の意思が反映されている」
(消息筋)とみるべきで、宣伝工作が一党独裁を維持するための重要な
要素であることを考えれば明らかだ。
〇四年の地方官僚による農民虐待などを描いたルポ「中国農民調査」の発禁処分、
各地で昨年相次いだ土地強制収用をめぐる暴動の報道禁止など、
宣伝部の活動の広がりは国内情勢の悪化に比例して拡大している。
北京市西部の繁華街近くに位置する宣伝部は表札すら掲げられていない謎めいた
場所だ。同部は文化大革命時の閉鎖を経て一九七七年に復活。
宣伝教育局、新聞出版局、文化芸術局、政策法規研究室、幹部管理局など
八局以上で構成されている。トップは党中央政治局員の劉雲山部長。
内モンゴル自治区で国営新華社通信記者、同自治区の党委宣伝部などを
経て二〇〇二年から現職に就いた。
宣伝部では、日々の新聞・テレビ、インターネット、出版ほか学術界、
世論の動きを追う。
また、「抗日戦争を材料に愛国教育を推進」(劉部長)するなど、昨年の
抗日戦争勝利六十周年の愛国キャンペーンでも重要な役割を担った。
胡錦濤総書記の「科学的発展観」など指導思想の宣伝計画も立案。
末端行政単位にも宣伝部が設置され、網羅的に情報管理にあたる仕組みに
なっている。
一昨年、焦国標・北京大助教授(当時)は、論文「中央宣伝部を討伐せよ」
を発表、新型肺炎(SARS)の感染者隠しを告発した軍医に関する記事掲載を
宣伝部が禁止したことなどを批判し、同部の解散を求めたが、
辞職に追い込まれた。
この絶大な権力について、宣伝部関係者は「(報道の自由を奪う)権限は
宣伝部には与えられていない」と否定するが、北京の新聞社幹部は
「メディア幹部の人事権を握っており、批判する者は排除される」と説明する。