なぜ中国はソニーを目の敵にする? | 日本のお姉さん

なぜ中国はソニーを目の敵にする?

日系企業は現地における社会貢献のPR強化を―本間俊典(週刊エコノミスト編集委員)

 中国でも人気ブランドであるソニーが、デジタルカメラの品質で浙江省のクレームを受け、問題デジカメの回収・交換に乗り出した。この問題、第三者として見る限り、浙江省の発表には首を傾げざるを得ない。デジカメが故障したわけでもないうえ、やはり品質が問題になったソニー以外のメーカー名や機種を明らかにしなかったからだ。

 問題は2005年12月、浙江省がソニー製デジカメの品質に問題があるとして、該当品の省内での販売中止を決めた。ソニー側は当初、「当局からなんら連絡や指示がない」と困惑していたが、中国メディアが決定を大きく報じ、販売店が販売自粛を始めたため、対応せざるを得なくなったようだ。

 同省の工商行政管理局が、省内で販売されているデジカメ34機種の品質や機能を検査した結果、13機種が一定基準を満たさない「不合格品」となり、その中にソニーのサイバーショット(Cyber-shot)6機種が含まれていた。これを地元紙が報じ、全国に広がった。

 しかし、その後の現地メディアによる「ソニー・バッシング」となると、かなり的外れだ。当初の対応のもたつきに対する批判はともかく、それが転じて「日本企業は欧米に一流品を売り、日本では二流品、中国には三流品を売る」という批判に至っては、悪意に満ちた偏見でしかない。

 参考までに、私自身、サイバーショットを使っているが、他社製品に比べて優れているという実感はない。しかし、欧米で売っている同じ製品と比べる機会があったが、いかなる意味でも私のが「二流品」だとは思えなかった。画質や操作性など、ほぼ同じである。

 中国での動きに対して、日本側メディアには「中国でも人気のソニーブランドを狙った中国企業の陰謀ではないか」との憶測が流れている。これでは政府間の靖国問題と同様に、妥協の糸口のない感情論に終始するだけであろう。

 05年4月の大規模な反日デモから、間もなく1年になろうとしている。政府当局の締め付けもあって、その後は沈静化しているが、中国人の日本嫌いが根底にあるだけに、いつどんな形で再噴火するかわからず、進出企業にとっては「日系」であること自体がリスク要因になっている。

 知日派ジャーナリストの莫邦富氏は、日系企業が中国で失敗する事例を数多く取材し、「現地に愛される企業を目指せ」「会社の利益と離れたところで、有意義な活動をしていることを認識してもらう努力が必要」と指摘している。ということは、現地に溶け込んでいない日系企業も少なからずありそうだ。

 しかし、東レは上海国際マラソンの後援を続け、すっかり市民権を得ている。イトーヨーカ堂は定期的に障害者寄付を実施。ソニーも大学生を対象にした電子設計コンテストを開くなど、日系企業が数多くの社会貢献活動をしているのは確かな事実だ。

 問題は、これらの活動がなかなか広く地元に伝わらず、「企業市民」として認知されない点にある。進出企業としては歯がゆさが伴うであろうが、政府間の「政冷」が改善の兆しがない以上、しばらく我慢の日々を送るしかない。個別の「事件」に過剰反応することは避け、企業市民として努力を重ねていることをアピールし続けることが、今は重要ではないかと思う。(執筆者:週刊エコノミスト編集委員 本間俊典)

 

(サーチナ・中国情報局) - 1月27日15時41分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060127-00000009-scn-int