N猫ちゃんの日課
N猫ちゃんは、毎朝7時になると、わたしを起こしに来た。
まるで、わたしが7時に起きて家を出て行かないといけないと
知っているかのようだった。ちゃんと家を出るまでじっと見つめて
いてくれた。7時に起きずに二度寝しようものなら、起きるまで
ざらざらの舌で顔を舐めて起こしてくれた。
わたしが帰ると玄関に座って待っていた。遠くからわたしの気配を
感じて玄関に来ているのか、ずっと待っているのかそれはわからない。
わたしが旅行で家にいないときは、友達にネコの世話をお願い
している。そんな時は必死で友達に甘えて、足に何度もすりよる
のだそうだ。やっぱりネコでも、主人がいないと寂しいらしい。
毎朝7時に起こしてくれるN猫ちゃんが、12年歳半になって4時に
起こすようになった。4時に起こされて迷惑したわたしはN猫ちゃんを
寝室に入れないようにした。N猫ちゃんはそれに懲りたか4時にも
7時にも起こしにこなくなったので、また寝室を開放したのだが、
なんとなく元気がなくなったように感じた。今から思えばその時に
病院に連れて行けばよかったのだ。N猫ちゃんは4時に起こし始めて
3ヶ月目に具合が悪くなった。病院に連れていくと、腎臓が弱っている
ということだった。体に点滴で水分を入れて、デトックスの墨が入った黒い
錠剤をもらって飲ませていた。でも、医者が言うには、猫はだいたい13歳で
老化で肝臓が弱ってくるので、仕方がないとのことだった。
飼い猫の様子が変わったら直ぐに病院に連れていくべきなのだった。
もっと早めに病院に連れて行けば老化で腎臓が弱っても、もう少し延命
できたかもしれないと思うとつい自分を責めてしまう。
N猫ちゃんは、2ヶ月半頑張って、13歳と幾日かで死んでしまった。
体が弱ってあまり動かなくなってずっと寝ていたが、わたしが「N猫ちゃん。
大好きだよ!」と言って触るたびに、小さくごろごろと喉をならして
喜んでいた。N猫ちゃんが死んで一年がたったが、今でもN猫ちゃんが
恋しい。N猫ちゃんにまた会いたくなる。わたしがN猫ちゃんに世話されて
いたのかなと思う時がある。今は人間の友達がN猫ちゃんの代わりに
モーニングコールをしてくれている。友達ってありがたい。
N猫ちゃんと楽しく過ごした13年間は、わたしの宝物になった。
すばらしい猫に出会えてわたしは幸せだった。N猫ちゃんは、ペットというより
まるでお母さんのようにわたしを愛してくれていたように思う。