N猫ちゃんの二日間の思春期
N猫ちゃんが7ヶ月になった頃だった。心配になるほど、
鳴かない猫だったのに、一日中狂おしい声でオスを呼ぶようになった。
昼も夜も鳴いて一睡もできない。大げさではなく、激しくうるさかった。
このままでは、近所迷惑で飼い主共々追い出されそうだ。
わざわざお風呂場に行って鳴くので響いて仕方がない。
二晩我慢したが、もうダメだった。オスを呼ぶのは自然だけれど、
これ以上子猫を育てたり、子猫の里親さんを探したりはできない。
N猫ちゃん一匹で精一杯だよ。
かわいそうだが、避妊手術を施しに病院に連れて行くことにした。
三毛猫のブリーダーになって、日本猫の純粋種を定着させたい
なんて、悠長なことは言ってられない。
昼前に病院にN猫ちゃんを手渡し、夕方6時に受け取りに行った。
迎えに行くとN猫ちゃんは悲しげな声で鳴いていた。
避妊をしないと、猫は自然な用で消耗する。鳴いてもオスが身近に
いないとすごいストレスがかかるんだそうだ。う~ん。わかるような
気がする。若い時に、異性が側にいないと飢えて来る感じって、
ストレスだよなあ。人間はすましていることができるけど、本当は
猫並に飢えていて、夜空に叫びたい時ってあるよなあ。にゃお~ん!!
若くて健康なら、だれでも結婚したいものなのさっ。別に変じゃない。
道に外れたら罪だけど、二人の人間が愛しあって結婚して、赤ちゃんが
できるのは、自然でいいじゃないか。しかし、誰でもいいって訳には
いかないからなあ。人間は難しい。猫でも犬でも、一応選んでいるのかな。
夜空に叫んで、寄ってきた異性を好きになっているのかしら。
お盛り状態の猫ちゃんって、とにかくすごい声で叫ぶし、身もだえ
してるし、セクシーになってすりすり体を摺り寄せてくるし、可愛いけれど
悩ましいって感じ。実際人間でも、そういう状態の時は、他人から見ると
変だね。早く誰でもいいから身近な人と結婚しろと言いたい。
猫ちゃんの場合、避妊手術をしておくと、子宮の病気になりにくく、
長生きできるし、変なストレスがかからずいいことずくめなんだそうだ。
手術はかわいそうと言っても、実際赤ちゃん猫がわらわら生まれて
きたら、困惑してしまう。大きな屋敷に住んで、広いお庭があれば、
いくらでも産んでくれて猫屋敷になってもかまわないんだが、、、。
ごめんね、N猫ちゃん。友達の猫は体が弱くて、避妊手術ができずに、
大人の猫になったが、年を取ってから子宮蓄膿症になって、手術で
子宮を取ることになった。猫でも子宮はデリケートな器官なんだ。
早めに避妊手術してもかまわないと、わたしは思っている。ただ、避妊を
すると太りやすくなるので、食べ過ぎないようチェックが必要らしい。
そういうわけでN猫ちゃんの思春期はわずか二日でしたが、避妊をした後でも、
どのオス猫も、N猫ちゃんに恋をして愛を語っていたので、もてる猫は存在すると
わかった。もてる猫は年を取ってももてる!人間でもそうだろうか。
ペンギンはそうらしい。ある動物園のペンギンはおばあさんになっても、
もてまくっていたとか!側に若いメスのペンギンがいても、そのペンギンが
いたら、オスのペンギンはくるっと、向きを変えておばあさんペンギンに愛を語
ったそうだ。もてる理由って、なんなんだろう。フェロモンかな。
ペンギンでも、ペンギンの目から見て可愛いとかセクシーとか、
何かあるんだろうな。
N猫ちゃんは性格も良くて、顔も可愛く、三毛の柄も美しかった。
もてるのは当然だ。猫にも人間にも愛されていた。愛情深い猫だった。