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彼が来る窓

わたしは、待っているだけ

いつ来るとも知れないあなたの足音を

耳をすませて待っている


わたしの部屋には窓がある

窓からは緑色の草原が見えて

その向こうから、あなたがやってくる

わたしはその姿を見たくて

いつまでも窓を眺めている


あなたはわたしに会うために

遠くからやってくる

ときには走ってやってくる

わたしの部屋では

あなたはわたしだけのもの

ふたりっきりで

誰にも邪魔されないの


わたしはあなただけのもの

それはあなたの負った責任


わたしの失われた足なんて

惜しくもなんともないの

たとえそれがあなたのせいだったとしても

あなたがそばにいてくれれば

わたしの足なんて

あってもなくても一緒なの



届けるのは愛?償い?



ある日を境にあなたはこなくなった

きっとわたしのことなんて忘れてしまって

どこかで違う誰かと笑ってる

わかっていたんだ

こんな日が来ること

100年前から

わかっていたの


わたしは車椅子によじ登って

街に出る

腕の力だけで目指すには街は遠すぎて

だけどわたしにはあきらめることなんてできなかった


わたしは街でアイビーを買った

行った道を

気が遠くなるほどの道のりを

乗り越えて

わたしはアイビーを窓の下に置いた


アイビーはゆっくり育った

わたしはやっぱり毎日窓を眺めてすごした

今度は

彼の姿を見つけるためじゃなくて

アイビーがきちんと窓をおおいつくしてくれるかを

見届けるため




窓なんて、いらない

あなたが来ない窓なんて



そのうちわたしに眠りが訪れる

誰にも知られず

わたしは目を閉じる

わたしだけが

もう二度とまぶたを開けることがないことを知っている


その眠りの到来からしばらくして

わたしの部屋は光を失った

アイビーが、きれいにつたを伸ばして

窓を覆った




それは昔

彼が来る窓だった

だけど今はもう

思い出も一緒に

鮮やかな緑色で

アイビーが覆い隠した

いつも、夢見ている


誰かのあたたかい腕の中


涙でぬれた頬を、やわらかなぬくもりで癒して



寂しいときは


目を閉じたら死んでしまいそうで


雪の降る森のひっそりとした深い場所


誰にも知られずに


そのまま凍えて


冷たくなっていくの


動かなくなって


固まって


すべての記憶に置き去りにされたわたしは



ひとりぼっちで


いつも夢見てる


見果てぬ夢ばかりだけれど


温かな腕の中


涙だけの夜に


凍えそうな夜に


やまない雪の中で

たりない

そんなんじゃ足りない


早く


もっと


声だけじゃ


何にも満たされない


もっと強く


つかんで


はなさないで


痛いくらいに



優しさなんて



全然ほしくない



そんなに小さな声じゃ


何も


なんにも


伝わらない


もっと強くふれて


わたしの心に


爪が食い込むくらいに


わたしの皮膚を食い破るくらいに


噛んで



愛なんていらない


そんな形のないもの


信じられない



信じられるのは


わたしの肌に真っ赤に残る傷跡と


記憶の中の、恥ずかしいくらいの痛みだけ